マンション売却の囲い込みの見抜き方|レインズの取引状況と4つのサイン

マンション売却の囲い込みの見抜き方|レインズの取引状況と4つのサイン

内覧がまったく入らず、担当者に聞いても「反応が薄いですね」と返ってくる。そんなとき、頭をよぎるのが「囲い込みをされているのでは」という疑いです。

先に答えを書きます。囲い込みは、担当者への質問ではなく、会社の外側に残る痕跡で見抜きます。専任媒介ならレインズの売主専用画面で取引状況と図面を確かめ、内覧に来る人の出所と業務報告の中身を見て、別の会社から物件確認をしてもらう。この3方向を当てれば、囲い込みはかなりの確度で見抜けます。

2025年1月から、レインズの取引状況を事実と違う内容で登録すると行政処分の対象になりました。売主が自分で確かめる手段が、法律の後ろ盾つきで整ったということです。ただし規制が見ているのは登録内容までで、電話の応対や図面の運用は対象の外に残っています。この記事では、囲い込みが見えにくい仕組み、レインズでの確認手順、活動に表れるサイン、規制後も残る手口、疑ったときの対処の順に整理します。

囲い込みが売主に見えにくい仕組み

囲い込みとは、売却を任された不動産会社が、他社から来た買主の紹介を断り、自社の顧客だけで契約をまとめようとする運用です。国土交通省は、売主向けのチラシで次のように説明しています。

「囲い込み」とは、一部の宅建業者が自社の利益のため、売主・買主双方の媒介を行うことを目的として、故意に物件の取引状況を隠し、売主の意向に反して物件の紹介を行わないような行為を指します。

厄介なのは、起きていても担当者の報告からは分からない構造にあります。理由は3つです。

他社からの問い合わせは売主に届かない

買主を探している他の不動産会社は、レインズ(不動産会社だけが使う物件情報のネットワーク)で物件を見つけると、売主が依頼した会社に「この物件はまだ紹介できますか」と電話やメールで確認します。この問い合わせは、依頼した会社の担当者にだけ届きます。

担当者が「商談中です」「図面を作成中です」と答えて断れば、その問い合わせは売主のところに痕跡ひとつ残らず消えます。売主が受け取るのは、担当者がまとめた業務報告だけです。

つまり、売主が持っていないのは「問い合わせの数」ではなく「断られた問い合わせの数」です。ここが見えないため、担当者に「反応はどうですか」と聞いても、囲い込みの有無は判定できないままです。見抜くには、会社の外側に残る痕跡を当てる。これが本記事の出発点です。

出典: 国土交通省・4不動産流通機構 レインズの「ステータス管理機能」を活用しましょう!

両手仲介の報酬が囲い込みの動機になる

不動産会社の報酬は、売主と買主のそれぞれから受け取る仲介手数料です。売主側だけを担当すれば売主からの手数料のみ、買主も自社で見つければ両方から受け取れます。後者を両手仲介と呼び、報酬は片手の2倍になります。

同じ1件の売却で報酬が2倍になるため、他社が連れてきた買主より、自社の顧客で決めたい動機が生まれます。これは特定の会社だけの問題というより、両手を優先する営業の習慣がある会社なら、悪意がなくても囲い込みに近い運用になり得る、という構造の問題です。

両手仲介そのものは法律で認められています。売主にとっての損失は、他社の買主を断ったせいで、より高く買う人と出会う機会を失う点にあります。仲介手数料の仕組みは別記事で整理しています。

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専任媒介の3か月が囲い込みの時間になる

専任媒介契約を結ぶと、売主はその会社1社にだけ売却を依頼する形になります。契約期間の上限は3か月で、これより長い期間を定めても3か月として扱われます(宅地建物取引業法34条の2第3項)。会社側には、契約書に記入された日数以内にレインズへ登録する義務と、2週間に1回以上、売主へ業務の状況を報告する義務があります。

契約の種類レインズ登録の期限業務報告の頻度
専属専任媒介契約締結日の翌日から、契約書に記入された日数以内(上限5日)1週間に1回以上
専任媒介契約締結日の翌日から、契約書に記入された日数以内(上限7日)2週間に1回以上
一般媒介法律上の義務なし(登録は可能)法律上の義務なし(求めることは可能)

登録期限の日数から、会社の休業日とレインズの休止日は除きます(施行規則15条の10第2項)。また、購入の申込みがあったときに遅滞なく売主へ報告する義務は、契約の種類を問わず課されています(同法34条の2第8項)。これらに反する特約は無効です(同条10項)。

裏返すと、登録までの数日間と3か月の独占期間は、他社が物件を知らない、または知っていても紹介を通せる相手が1社しかいない時間です。この期間に自社の顧客で決められれば、両手仲介が成立します。

売主が専任媒介を選ぶこと自体は自然です。1社に集中して動いてもらえる利点があります。ただし、この3か月は「会社の外側から確かめる習慣」とセットで運用するのが前提になります。次章から、その確かめ方を順に見ていきます。

出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法 出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法施行規則 出典: 東日本不動産流通機構 媒介契約制度

レインズの取引状況で囲い込みを確認する方法

専任媒介または専属専任媒介で依頼している売主は、レインズに登録された自分の物件の状態を、自分の目で確かめられます。2025年1月からは、この登録内容が事実と異なる場合に指示処分の対象となりました。手順と、どこを見れば痕跡が分かるかを整理します。

登録証明書の二次元コードから売主専用画面に入る

不動産会社がレインズに物件を登録すると、レインズから「登録証明書」が発行されます。専任媒介と専属専任媒介では、会社はこの証明書を売主に渡す義務を負います。東日本レインズの案内書は、この義務を「請求の有無にかかわらず」交付するものと説明しています。まだ受け取っていなければ、担当者に請求します。渡されない状態が続くこと自体が、登録されていない可能性を示すサインです。交付は書面のほか、電子メールなどのデータでも行われます。

2025年1月から、登録証明書の下部に二次元コード・登録内容確認URL・物件ごとの確認用IDとパスワードが載るようになりました。スマートフォンで二次元コードを読み取ると、レインズの「売主専用画面」に入れます。二次元コードを使わずURLへ進み、証明書に載る確認用IDとパスワードでログインする方法でも入れます。

売主専用画面では、自分の物件がレインズ上でどのような状態にあるかを、表示時点の日時つきで見られます。2週間に1回の業務報告を受けるたびに、この画面を開いて報告と見比べる。この習慣があれば、ズレが出た時点で気づけます。

出典: 東日本不動産流通機構 売却依頼主物件確認案内書 出典: 東日本不動産流通機構 媒介契約制度

取引状況の3つのステータスを報告と突き合わせる

売主専用画面で見る「取引状況」は、次の3種類です。定義は東日本レインズの案内書の説明に沿っています。

ステータス案内書の説明
公開中他の不動産会社から問い合わせを受け付けている状態
書面による購入申込みあり不動産会社が書面による購入申込みを受けた状態
売主都合で一時紹介停止中売却依頼主の事情により一時的に物件を紹介できない状態

そのすぐ下に「取引状況の補足」という欄があります。ここが売主にとっていちばん役に立つ場所です。案内書は、補足欄に売却条件のほか、「書面による購入申込みあり」の書面受領日と、「売主都合で一時紹介停止中」の具体的内容・期間や売主の意向や了解を得た日などを記載すると説明しています。覚えのない紹介停止を見つけたとき、この補足欄に「了解を得た日」が書かれていれば、その日に自分が何を答えたかを突き合わせるだけで、事実との食い違いが形になります。

国土交通省が囲い込みの例として挙げているのは、事実に反して「売主都合で一時紹介停止中」と登録し、他の業者への紹介を意図的に拒否する行為です。同じく、担当者から申込みの報告を受けていないのに「書面による購入申込みあり」になっていれば、他社の紹介を止めるために立てられた可能性があります。購入の申込みがあったときは遅滞なく売主へ報告する義務があるため(宅地建物取引業法34条の2第8項)、この状態は登録内容と報告の両面から質せます。

2025年1月以降、専属専任媒介契約および専任媒介契約に基づいて登録した物件について、取引の申込みの受付に関する状況等の登録内容が事実と異なるときは、宅地建物取引業法65条1項の指示処分の対象になります。国土交通省の解釈・運用の考え方は、次のように書いています。

なお、宅地建物取引業者が専属専任媒介契約及び専任媒介契約に基づき指定流通機構に登録した物件について、当該物件に係る取引の申込みの受付に関する状況等の登録内容が事実と異なるときは、法第65条第1項の指示処分の対象となる。

判断を急ぐ前に、1つだけ置いておきたい注記があります。案内書は、実際に取引の状況が変更されたときからレインズ上の欄が更新されるまで、システム等の都合により2日程度を要する場合があると説明しています。申込みを受けた直後の食い違いは、このタイムラグで説明が付くこともあります。数日おいて同じ画面を見直し、それでも報告と合わないときに疑うのが順序として穏当です。

出典: 東日本不動産流通機構 売却依頼主物件確認案内書 出典: 国土交通省 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 出典: 国土交通省・4不動産流通機構 レインズの「ステータス管理機能」を活用しましょう!

図面の登録有無と登録日を確かめる

図面(間取りなどを載せた販売用の資料)と登録日も、囲い込みの痕跡が出やすい欄です。見る場所は2か所あります。

  • 登録証明書: 「図面」の欄に有か無かが印字され、「登録年月日」「最新更新年月日」「媒介契約年月日」も並びます
  • 売主専用画面: 販売図面が登録されているときだけ、画面右上に「図面表示」ボタンが出ます

図面が無のまま長く置かれていると、他社の担当者は買主に物件を説明しづらく、紹介が進みにくくなります。ステータスは「公開中」でも、図面を登録しないことで実質的に紹介を止める運用が成り立ちます。売り出しから2週間ほど経っても図面が無であれば、理由を聞く価値があります。この2週間は目安であり、制度で定まった期限とは別のものです。

登録日は、登録証明書の「媒介契約年月日」と「登録年月日」を並べて見ます。その間隔が、契約書に記入された日数(専任は7日以内、専属専任は5日以内。会社の休業日とレインズの休止日は除く)に収まっているかを確かめます。期限ぎりぎりまで登録を遅らせ、その間に自社の顧客へ先に紹介する運用も、売主からは登録日で確かめられます。期限を過ぎていれば、それ自体が義務違反です。

出典: 東日本不動産流通機構 売却依頼主物件確認案内書 出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法施行規則

一般媒介では売主専用画面が使えない

ここまでの確認方法は、専任媒介と専属専任媒介の物件に限られます。東日本レインズの案内書も、確認できる対象物件を次のように区切っています。

「専任」もしくは「専属専任」媒介契約の売却依頼物件 ※一般媒介契約の売却依頼物件につきましては対応しておりません。

一般媒介契約では、レインズへの登録義務も登録証明書の交付義務も、法律の外に置かれています。取引状況を登録する仕組みも、専任・専属専任の物件を対象にしています。会社が任意でレインズに登録すれば証明書を受け取れる場合があり、東日本レインズは一般媒介でも証明書を受け取るよう案内しています。

売主専用画面が使えない代わりの道も1つ用意されています。東日本レインズは、一般媒介の物件について、機構事務局に問い合わせて本人確認を受ければ、登録状況等を回答すると案内しています。自分の物件が本当に登録されているかは、この窓口で確かめられます。ただし取引状況の表示項目そのものが一般媒介には無いため、ステータスで紹介停止を見抜く道は、ここで途切れます。

一般媒介は複数の会社に同時に依頼できるため、囲い込みそのものは起きにくい契約です。その代わり、日常の確認は各社のポータルサイトへの掲載状況と、内覧や問い合わせの動きが中心になります。次章のサインは、一般媒介の売主にも当てはまる形で書きます。

出典: 東日本不動産流通機構 売却依頼主物件確認案内書 出典: 東日本不動産流通機構 媒介契約制度

売却活動に表れる囲い込みのサイン

レインズの登録内容が正しくても、囲い込みは起こり得ます。そこで、日々の売却活動に表れるサインを合わせて見ます。どれか1つでは決め手になりにくく、市況が悪くて内覧が少ないだけの場合もあります。複数のサインが重なり、前章のレインズの登録内容とズレがあるときに、囲い込みを疑います。

内覧に来るのが自社の顧客ばかりになる

内覧には、買主本人と、買主を担当する不動産会社の担当者が来ます。居住中の物件なら売主が立ち会えるので、担当者の名刺や会社名で、買主が自社の顧客か他社の顧客かが分かります。

レインズに公開中で登録され、図面も登録されていれば、通常はいくつかの内覧が他社の担当者を通じて入ります。売り出しから1か月ほど経っても、内覧に来る買主がすべて依頼した会社の顧客であれば、他社からの紹介が通っていない可能性があります。この1か月は目安であり、制度上の基準とは別のものです。

空室で売主が立ち会わない場合は、担当者に「今回の内覧は他社のお客様ですか」と聞き、内覧の記録に買主側の会社名を書いてもらうよう頼みます。後から見返すと、内訳の偏りが分かります。

報告に他社からの問い合わせ件数が出てこない

専任媒介では2週間に1回以上、専属専任媒介では1週間に1回以上、会社は売主に業務の処理状況を文書または電子メールで報告する義務を負います。この報告の中身が、囲い込みを見抜く材料になります。

東日本レインズは、業務報告の中身として、レインズへの登録状況や広告などの販売活動の内容、引き合い(問い合わせ)の状況が報告されると説明しています。見るべき点は、他の不動産会社からの問い合わせ(物件確認・図面請求・内覧依頼)が何件あり、それぞれにどう応対したかが書かれているかです。「問い合わせはありますが、まだ検討中のようです」のように件数と応対を欠いた報告が続くなら、書面で「他社からの問い合わせ件数と、その応対を報告に含めてほしい」と頼みます。

正当に活動している会社なら、他社からの問い合わせは売却が進んでいる証拠なので、むしろ積極的に報告します。頼んでも出てこない、または急に数字が曖昧になる。これはレインズの取引状況と合わせて疑うサインです。

出典: 東日本不動産流通機構 媒介契約制度

売り出しから1か月以内に値下げや買取を勧められる

囲い込みで他社の買主を断ると、売却は当然長引きます。すると担当者は「反応が薄いので値下げしましょう」「当社で買い取ります」「買取保証を付けましょう」と提案しやすくなります。値下げすれば自社の顧客で決めやすくなり、買取なら会社の利益はさらに大きくなります。

ただし、値下げの提案には正当なものもあります。相場より高く売り出していれば、値下げの提案は当然です。見分ける目安は、提案の時期と根拠です。売り出しから1か月以内に、他社からの問い合わせ件数や内覧の内訳を示さないまま値下げや買取を勧められるなら、他社に紹介する前に自社で決めようとしている可能性があります。この1か月も目安であり、制度で区切られた期間とは別のものです。

このとき「他社からの問い合わせは何件で、なぜ決まらなかったのですか」と聞きます。囲い込みをしている担当者は、この質問に答えづらくなります。値下げに応じる前に、必ずこの質問を挟みます。

別の会社からの物件確認に商談中と答えられる

いちばん分かりやすいサインは、他の不動産会社が問い合わせたときの応対です。査定を受けた別の会社や、知り合いの不動産会社に「この物件について、紹介できるか確認の電話をしてほしい」と頼みます。

問い合わせを受けた会社が「商談中です」「図面を作成中です」「売主の都合で今は案内を止めています」と答えた。ところが売主本人には、申込みも紹介停止も聞いた覚えがまったくない状態です。

この食い違いが確認できれば、囲い込みが行われている可能性は高いと言えます。売主本人が不動産会社を装って電話する方法は、勧めかねます。頼める相手がいなければ、前章の売主専用画面の取引状況と補足欄、業務報告の中身で判断します。

一般媒介で複数社に依頼している場合は、各社のポータルサイトへの掲載が止まっていないかも合わせて見ます。専任媒介では他社のポータル掲載がないのが正常です。

規制強化後も残る囲い込みの手口

2025年1月から、専任媒介と専属専任媒介でレインズに登録した物件について、取引の申込みの受付に関する状況等の登録内容が事実と異なる場合は指示処分の対象になりました。売主が専用画面で確かめる仕組みも整いました。ただし、規制が見ているのは「レインズの登録内容」です。電話での応対や図面の運用、契約の種類は対象の外にあります。規制の外側に残る手口を、売主から見える痕跡とセットで整理します。

ステータスは公開中のまま電話で他社を断る

取引状況を「公開中」のままにしておけば、レインズの登録内容は事実と一致しています。その上で、他社から物件確認の電話が来たときに「先に申込みが入りそうです」「売主が忙しくて案内は先になります」と口頭で断れば、登録内容の虚偽という枠からは外れます。

この手口は、売主専用画面をいくら見ても「公開中」のまま映り続けます。登録内容そのものは事実どおりだからです。見抜く手がかりは、前章の「別の会社からの物件確認」と「報告の中の問い合わせ件数」に絞られます。

規制ができたことで安心し、画面を見て公開中なら大丈夫だと考えるのは危険です。規制は「見える場所」を1つ作ったもので、電話の応対という「見えない場所」は残っています。売主は、画面の表示に加えて、外側からの確認を続ける必要があります。

図面を登録せず情報を自社に留める

レインズには物件の基本情報とは別に、販売図面を登録します。図面がないと、他社の担当者は買主に間取りや設備を説明しづらく、紹介の優先度が下がります。そこで、基本情報だけ登録して図面は「作成中」のまま置く運用があります。

この場合も取引状況は公開中のままなので、登録内容の虚偽の外側にあります。売主から見える痕跡は、登録証明書の「図面」欄と、売主専用画面の「図面表示」ボタンの有無です。売り出しから2週間ほど経っても図面が無のままなら、「図面はいつ登録されますか」と聞きます。

他社が図面を請求しても「作成中です」と答え続ければ、実質的に紹介を止められます。売主が図面のデータを受け取り、レインズに登録された図面と同じ内容かを確かめておくと、この手口に対抗できます。

一般媒介に切り替えて登録義務の外に出る

規制は専任媒介と専属専任媒介でレインズに登録した物件を対象にしています。一般媒介には法律上の登録義務がなく、取引状況を登録する仕組みも対象外です。そのため、「一般媒介なら縛られずに済みます」「専任にすると他社に取られます」と勧め、一般媒介の形で実質的に1社に任せさせる運用があります。

売主が他社にも依頼せず、実際には1社だけが動いている一般媒介は、売主専用画面での確認ができない分、専任媒介より囲い込みが見えにくくなります。

一般媒介を選ぶなら、必ず2社以上に依頼します。1社しか動いていない一般媒介は、専任媒介の確認手段を手放しただけの状態です。逆に、専任媒介を提案されたときに「登録証明書と売主専用画面で確認します」と伝えておくと、会社側も登録を丁寧に扱います。

買取業者に売って再販の専任を取り直す

「専任返し」と呼ばれる手口です。売主の物件を自社の関係する買取業者に安く買わせ、その買取業者が改装して再び売り出すときに、同じ会社が専任媒介を取り直します。1件の物件で、売主からの手数料、買取業者からの手数料、再販時の売主(買取業者)と買主からの手数料と、報酬の機会が重なります。

売主にとっての損失は、市場で買主を探せば付いたはずの価格より安く手放すことです。買取価格が市場価格より低くなるのは、改装費と業者の利益が先に引かれるためです。

この手口の痕跡は、売り出しから間もない時期に「当社の提携する業者が買い取ります」と、他社の買主の反応を示さないまま提案されることです。買取そのものは、早く現金化したい売主には正当な選択肢です。ただし、他社に紹介した結果を聞いた上で判断する順番を守ります。

囲い込みを疑ったときの対処法

サインが重なり、レインズの登録内容にもズレがあると分かったとき、どう動くかを整理します。順番は「聞く→直す→変える→相談する」です。最初から契約解除や苦情を持ち込むと、残りの期間の売却活動が止まり、売主自身が損をします。事実を根拠に静かに直してもらい、直らなければ次の手に進みます。

売主専用画面の表示を根拠に担当者へ書面で聞く

最初にすることは、担当者への質問です。感情的に「囲い込んでいますか」と聞くのではなく、事実を根拠にします。メールなど記録に残る形で、次の3つを聞きます。

  • 売主専用画面で紹介停止中(または書面による購入申込みあり)と表示されている理由
  • 「取引状況の補足」欄に書かれた日付や期間の根拠
  • 他社からの問い合わせ件数と、それぞれの応対

国土交通省のチラシでも、覚えがないのに「売主都合で紹介停止」になっていたら依頼した宅建業者に問い合わせ、誤った取引状況登録が是正され、買主側の宅建業者から物件への問い合わせが可能になる、という流れが示されています。多くの場合、この段階で登録が直り、他社の紹介が再開されます。

書面で聞く理由は2つあります。1つは、担当者に「売主は見ている」と伝わること。もう1つは、後で行政に相談するときの記録になることです。返答も書面でもらいます。

出典: 国土交通省・4不動産流通機構 レインズの「ステータス管理機能」を活用しましょう!

是正されなければ専任媒介を更新しない

質問しても登録が直らない、他社からの問い合わせが相変わらず報告に出てこない場合は、契約の切れ目で会社を変えます。専任媒介と専属専任媒介の有効期間は3か月を超えられず、更新は依頼者の申出によります(宅地建物取引業法34条の2第3項・4項)。標準媒介契約約款15条2項も、更新をしようとするときは有効期間の満了に際して依頼者から会社へ文書等で申し出るものと定めています。東日本レインズも、自動更新契約は認められていないと案内しています。

つまり、3か月の満了時に売主が何も申し出なければ契約は終わります。会社から「更新しましょう」と言われても、売主は断れます。満了で終える場合、約款の違約金(12条)は「有効期間内に他の不動産会社へ依頼して売買契約を成立させたとき」に限られ、費用償還(14条)も「売主が自ら発見した相手方と契約したとき」か「会社の責めに帰すことができない事由で契約が解除されたとき」が条件なので、どちらの要件からも外れます。

ただし、満了後も残る負担が2つあります。1つは、売主が特別に依頼した広告の料金と遠隔地への出張旅費で、これは売主の負担です(10条)。もう1つは、有効期間内または満了後2年以内に、その会社の紹介で知った相手方とその会社を外して売買契約を結んだ場合で、寄与の割合に応じた相当額の報酬を請求されます(11条)。会社を変えるときは、前の会社から紹介を受けた買主の名前を控えておきます。

次の依頼先は、複数社に依頼できる一般媒介で2〜3社に分ける、または他社の買主を断らない運用(片手仲介)を明示している会社を選ぶ、のどちらかが囲い込みへの備えになります。売り出し価格や写真は前の会社から引き継がず、新しい会社と見直します。囲い込みで長引いた物件は「売れ残り」の印象が付くため、仕切り直しが要ります。

出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法 出典: 国土交通省 標準媒介契約約款 出典: 東日本不動産流通機構 媒介契約制度

登録や報告の不履行があれば途中でも解除できる

満了まで待てない場合は、途中解除を検討します。国土交通省が定めた標準媒介契約約款には、解除の道が2つ書かれています。手順が違うので、分けて押さえます。

条項使える場面手順
16条会社が約款に定める義務(レインズへの登録、業務の報告など)の本旨に従った履行をしないとき相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときに解除できる
17条会社が誠実に遂行する義務に違反したとき/重要な事項について故意もしくは重過失により事実を告げず、または不実のことを告げたとき/宅地建物取引業に関して不正または著しく不当な行為をしたとき催告を経ずに解除できる

解除の前に確認するのは、契約書が標準媒介契約約款に基づいているか(媒介契約書にその旨の記載欄があります)と、どの義務が果たされていないかです。登録証明書が交付されていない、登録日が期限を過ぎている、報告が2週間に1回来ていない、といった事実を、証明書と報告の日付で示します。

費用の扱いも約款で決まっています。費用償還を請求できるのは、売主が自ら発見した相手方と契約を結んだときか、「乙の責めに帰すことができない事由」によって契約が解除されたときで、その額は約定報酬額を超えられません(14条)。会社側の義務違反を理由とする解除は、この「責めに帰すことができない事由」の外にあります。裏返すと、会社の義務違反がないまま売主の都合で途中解除した場合は、それまでの広告費などの実費を約定報酬額の範囲で請求され得ます。解除の理由は、義務違反の事実に絞って書面で伝えます。

出典: 国土交通省 標準媒介契約約款

免許行政庁の窓口に相談する

質問しても是正されず、解除にも応じない場合や、事実と異なる登録が続いている場合は、相談先が2つあります。

1つはレインズです。東日本レインズの案内書には、不動産会社に登録内容や利用方法について問い合わせても対応してもらえない場合等の連絡先として、消費者相談室(電話03-5296-4113、対応時間9時30分〜17時30分、土日祝日・年末年始を除く)が載っています。ほかの3機構にも同様の窓口があります。

もう1つは、不動産会社に免許を出している行政庁です。事務所が1つの都道府県にだけある会社は都道府県知事免許、2つ以上の都道府県にある会社は国土交通大臣免許です(宅地建物取引業法3条1項)。知事免許なら都道府県の宅地建物取引業を担当する課、大臣免許なら地方整備局(北海道は北海道開発局)が窓口になります。大臣の権限の一部は、これらの局長に委任されています(同法78条の2)。加えて、大臣免許の会社でも、その都道府県の区域内の業務については、物件の所在する都道府県知事が指示処分を出せます(同法65条3項)。会社の免許の区分と番号は、媒介契約書と名刺に書かれています。

相談に持ち込むときは、次の4点を揃えます。

  • 売主専用画面の画面保存(表示時点の日時が入るように)
  • 登録証明書
  • 業務報告
  • 担当者とのメール
処分歴は公開されています

過去に指示処分などを受けた宅地建物取引業者は、国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」で調べられます。会社を選び直すときの材料の1つになります。

相談の目的は会社を処罰することではなく、自分の物件の売却を正常に戻すことです。行政からの指導で登録が是正されれば、他社からの紹介が再開されます。次に会社を選ぶときの、媒介契約の種類と依頼先の見極めは別記事で整理しています。

出典: 東日本不動産流通機構 売却依頼主物件確認案内書 出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法 出典: 国土交通省 ネガティブ情報等検索サイト

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まとめ:囲い込みは、会社の外側に残る痕跡で見抜く

囲い込みの有無は、担当者に聞くだけでは判定しきれない形をしています。売主の手元には「断られた問い合わせ」が届かないからです。いちばん重いのは、2025年1月から専任・専属専任の物件のレインズ登録内容が事実と異なれば指示処分の対象になり、その登録内容を売主自身が売主専用画面で見られるようになったことです。取引状況と「取引状況の補足」欄、図面表示ボタンの有無、登録年月日と媒介契約年月日の間隔。この4つが、会社の外側に残る痕跡です。

次の一歩は、登録証明書を手元に出すことです。受け取っていなければ担当者に請求し、下部の二次元コードから売主専用画面に入り、今日の表示を画面保存しておきます。これを飛ばすと、2週間後に報告を受けても比べる基準がない状態のまま、担当者の言葉だけで判断することになります。値下げの提案が来たときに「他社からの問い合わせは何件でしたか」と聞き返せるかどうかは、この基準を持っているかで決まります。

確かめた結果にズレがあったら、感情ではなく事実で聞く。それでも直らなければ、更新しない自由と、約款16条・17条の解除、免許行政庁への相談が順に用意されています。住み替えのトビラでは、マンション売却の囲い込みの見抜き方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。