「リースバックはやばい」「やめたほうがいい」。検索するとそんな言葉が並びます。ところが、そこに挙がっているデメリットの項目そのものは、どのサイトを見てもほぼ同じです。
判断の助けになるのは、価格・家賃・住める期間を自分の条件に当てはめることです。国土交通省の事業者調査も参考になりますが、その回答割合はトラブルの発生確率ではありません。
この記事では、6つのデメリット、実態調査の読み方、契約で減らせる負担と残る負担を整理し、自分に合うかを判断する順番を説明します。
リースバックのデメリットは、価格・家賃・住める期間から見る
リースバックは、家を売ったあとに家賃を払い、同じ家に住む方法です。売却代金だけを見ると魅力的でも、家賃や契約期間まで含めると選び方が変わります。
| デメリット | 確かめること | 判断への影響 |
|---|---|---|
| 通常売却より安くなることがある | 普通に売った場合の査定額との差 | 今受け取れるお金が減る |
| 家賃が負担になる | 月額だけでなく住む期間の総額 | 売却代金が生活費として残りにくくなる |
| 希望する期間住めないことがある | 借家の種類・期間・再契約条件 | 次の住まいを用意する時期が変わる |
| 買い戻せるとは限らない | 権利・期限・価格を書面で確認 | 将来の資金計画が変わる |
| 修繕や解約で支出が増える | 設備の故障・退去・解除の負担 | 家賃以外にもお金が必要になる |
| 所有権を失う | 改修や管理組合での立場 | 自分だけで決められることが減る |
この6点をすべて同じ重さで考える必要はありません。長く住みたい人は契約期間と家賃、買い戻したい人は買戻し条件、短く住んで転居する人はその期間の総支出が大切です。
仕組みと基本的なメリットは、別の記事で確認できます。
実態調査で分かるのは、事業者が扱う条件の違い
国土交通省が2024年12月~2025年1月に行った調査には、価格や契約条件の回答が載っています。事業者の回答割合であり、利用者にトラブルが起きる確率ではありません。
買取価格は6~7割という回答が最多。ただし自宅の価格は別に確かめる
買取を行う27事業者の回答では、周辺相場に対する買取価格は「6~7割」が52%、「8~9割」が22%、「10割」が11%でした。回答した会社の取引件数で重み付けした数字ではありません。
この数字から「自分の家も必ず7割」「どの会社でも同じ」とは言えません。物件の条件と契約内容をそろえて提示を受ける必要があります。
例えば通常売却を3,000万円、リースバックを2,100万円と仮定すると、売却代金の差は900万円です。これは計算例で、実際の査定結果ではありません。引っ越さずに住むために、その差を受け入れられるかを考える材料になります。
家賃の決め方は一つではない
賃貸・管理に関わる21事業者の回答では、家賃を「売却金額を踏まえて決める」が43%、「周辺相場を踏まえて決める」が24%でした。「リースバックの家賃は必ず周辺より高い」と示す調査ではありません。
確認するのは、提示された家賃と周辺の似た部屋の家賃の差です。リースバックが月13万円、別の賃貸が月10万円なら差は年36万円。引っ越し費用なども足して、どちらにお金が残るか比べます。
定期借家48%は、48%の利用者が退去するという意味ではない
同じ21事業者のうち、普通借家を扱う回答は71%、定期借家は48%でした。複数回答なので、両方を扱う会社も含まれます。
定期借家は、期間が満了すると更新なく終了する契約です。再契約には双方の合意が必要で、希望すれば必ず続けられるわけではありません。普通借家でも家賃の滞納などを無視して住み続けられるわけではないため、名前だけで安心せず条件を読みます。
平均居住期間の短さから「一定年数で追い出される」と判断することもできません。転居など、契約終了以外の理由も区別する必要があるからです。
買戻しと修繕費は、会社ごとの違いが大きい
買取27事業者では、買戻し特約と価格を必ず両方設定する回答は15%、両方設定しない回答は56%、希望があれば設定する回答は22%でした。広告の説明だけで買戻しを前提にせず、期限と金額を契約書で確認します。
修繕費については、賃貸・管理21事業者の38%が借主負担と回答しています。これは契約全体の38%を集計した数字ではありません。給湯器やエアコンなど、どの設備を誰が直すのか、自分の契約に当てはめて確かめましょう。
出典:不動産適正取引推進機構「住宅のリースバックに関する実態調査」
家賃の査定方法・修繕費負担の内訳:国土交通省「不動産取引に係る新たなサービス形態について」32頁
契約で減らせる負担と、仕組みとして残る負担
「書面を読めばすべて防げる」という取引ではありません。契約条件を明確にしても、家賃の支払い、所有権を失うこと、将来の収入変化は残ります。
条件を交渉して減らせるもの
| 項目 | 契約前に依頼すること | 残る注意点 |
|---|---|---|
| 居住期間 | 希望する退去時期までの契約案を出してもらう | 再契約の確約がない期間には頼らない |
| 家賃 | 初期家賃と改定条件を明記する | 将来の交渉や法令の適用は個別に判断される |
| 修繕費 | 設備ごとの負担範囲を示してもらう | 「借主負担」の一文だけで済ませない |
| 途中退去 | 予告期間・違約金・原状回復を確認する | 早く出るほど必ず得とは限らない |
| 買戻し | 価格・期限・権利を明確にする | 資金を用意できることとは別問題 |
口頭の約束にも法的な意味が生じる場合はありますが、後から内容を証明しにくくなります。大切な条件は書面に残してから判断します。
条件を整えても残るもの
売却すれば、自宅は自分の所有物ではなくなります。マンションの管理組合で所有者として議決する立場も変わり、設備の追加や改修には貸主の承諾が必要になることがあります。
貸主が第三者へ売却する場合もあります。特に定期借家の再契約を前提にしているなら、新しい貸主との再契約まで保証されるのかを慎重に考えます。
また、今の収入で払える家賃でも、退職後や医療費が増えた後に同じ余裕があるとは限りません。住む期間が長いほど、毎月の収支が重要になります。
自分にとって重いデメリットから順に判断する
長く住みたい人は、家賃と契約期間を先に決める
売却代金で家賃を払えばよいと考える前に、普段の収入からいくら払えるかを見ます。売却後の手取り1,800万円、家賃月13万円なら、10年分の家賃は1,560万円です。残りは240万円ですが、生活費や修繕費、家賃の変更は含んでいません。
これは「10年住める」という予測ではなく、家賃だけを置いた試算です。希望する期間の契約を結べるかと、暮らしを続けられるかを別々に確認します。
買い戻したい人は、価格が分からないまま売らない
買戻し価格が未定なら、必要な資金も決まりません。買い戻すときの借入れが通るかも別の審査です。「いつか戻せる」を前提にするほど、期限・費用・資金の出どころを具体的にします。
転居まで短く住む人も、通常売却と総額で比べる
短期間なら家賃の総額は小さくなりますが、売却価格の差が小さくなるとは限りません。通常売却で引渡し時期を調整できるか、仮住まいの費用はいくらかも比べます。引渡しの猶予は買主との合意が必要です。
まず、普通に売ったらいくらかを知る。その価格が、提示額を判断する物差しになります。 査定を受ける段階で売却を決める必要はありません。近隣の成約事例と、見込む売却期間も一緒に聞くと比較しやすくなります。
実際の相談事例や、契約後に困ったときの対応は次の記事にまとめています。
まとめ:調査を正しく読み、自分の期間と支出で判断する
リースバックは、売却代金だけでなく家賃、住む期間、買戻し、修繕などを合わせて判断します。事業者の調査結果を、自分がトラブルに遭う確率と読み替えないことも大切です。
まず通常売却の査定額を取り、価格差を確かめましょう。そのうえで契約書の期間・再契約・家賃変更・費用負担を確認します。
条件を明確にしても、所有権を失うことや将来の収入変化は残ります。自分が住みたい期間と、払い続けられる家賃を軸に選びましょう。
住み替えのトビラ 
