一般媒介の注意点|デメリットが出る条件と契約書で踏みやすい5つの条項

一般媒介の注意点|デメリットが出る条件と契約書で踏みやすい5つの条項

一般媒介なら複数の会社に頼めて縛りも緩い。そう聞いて選びかけたところで、会社から「一般だと動きにくいんです」と言われ、何がデメリットなのかを確かめたくなった人は多いはずです。

先に答えを書きます。一般媒介のデメリットは、専任媒介にある義務(レインズ登録・登録証明書・定期報告)が会社側にない構造から生まれます。ただし「報告義務がない」「自由に動ける」は半分だけで、申込みの報告義務、直接取引の条項、費用償還の条項は一般媒介にも残っています。知らずに踏むのはこちらです。

この記事では、デメリットの全体像を表で示したうえで、会社の動きが鈍くなる理由、売主の手間が増える場面、契約書と通知で踏みやすい5つの条項、情報が市場に出ない条件、そして契約前に決めておく対策を順に見ていきます。

一般媒介のデメリットの全体像

一般媒介契約のデメリットは、「専任媒介にあって一般媒介にない義務」から生まれるものと、「一般媒介にも残っている義務や条項」を知らずに踏むものの2つに分かれます。解説記事は前者だけを書くことが多いので、まず両方を1つの表にします。

区分内容
専任媒介にあって一般媒介にないレインズ登録の義務/登録証明書の交付(専任媒介の登録に伴う義務)/売主専用画面での取引状況の確認/2週間に1回以上の業務報告/他の会社の仲介や自己発見取引に対する違約金の条項
一般媒介にも残っている購入の申込みがあったときの報告義務/会社の紹介で知った相手方との直接取引の条項/費用償還の条項/約款で3か月以内の有効期間/特別に依頼した広告の実費負担

3種類の契約の違いそのものは、別の記事で詳しく扱っています。

媒介契約の違いは5つ|一般・専任・専属専任を比較し自分で選ぶ 媒介契約の違いは5つ|一般・専任・専属専任を比較し自分で選ぶ

専任媒介にあって一般媒介にない義務

宅地建物取引業法34条の2は、専任媒介契約を結んだ会社にだけ、いくつかの義務を課しています。契約の日から7日以内(専属専任媒介は5日以内)にレインズへ登録すること(5項。期間は宅地建物取引業法施行規則15条の10が定め、休業日数を算入しない扱いです)、登録をした会社が登録を証する書面(登録証明書)を遅滞なく売主に引き渡すこと(6項)、2週間に1回以上(専属専任媒介は1週間に1回以上)業務の処理状況を報告すること(9項)です。

一般媒介の会社は、これらの義務の外にいます。レインズに登録するかどうかは契約書の欄で決め、定期的な報告も契約書に書いて初めて約款上の義務になります。

また、標準媒介契約約款のうち専任媒介契約約款には、他の会社の仲介で成約したときや自ら発見した相手方と契約したときに約定報酬額に相当する違約金を請求できる条項(第12条)がありますが、一般媒介契約約款にこの条項は置かれていない構造です。売主から見ると縛りが少ない契約ですが、裏返すと、会社の側にも「やらなければならないこと」が少ない契約です。デメリットの多くは、ここから生まれます。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第5項・第6項・第9項) 出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(第15条の10) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第12条)

一般媒介にも残る義務と条項

「一般媒介は報告義務がない」とよく言われますが、当てはまるのは2週間に1回の定期報告の方だけです。購入の申込みがあったときに遅滞なく売主へ報告する義務は、宅地建物取引業法34条の2第8項が「媒介契約を締結した宅地建物取引業者」に課しており、一般媒介の会社も含みます。中部圏不動産流通機構のレインズ利用ガイドラインも、この点を次のように書いています。

宅地建物取引業法第34条の2第8項では、媒介契約(一般媒介契約を含む)物件について購入等の申込みがあったときの依頼者への報告義務が定められています。

さらに同条10項は、3項から6項までと8項・9項の規定に反する特約を無効と定めています。「一般媒介だから申込みの報告は省く」という取り決めは、契約書に書いても効力を持たない扱いです。国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(以下、運用指針)は、購入申込書等の書面で購入の意思が示された申込みがあったときは遅滞なく報告し、依頼者の希望条件を満たさない申込みの場合等であっても、その都度報告する必要があるとしています。

約款の側にも、一般媒介に残る条項があります。

  • 会社の紹介で知った相手方と会社を外して契約したときの報酬請求(直接取引・第13条)
  • 依頼していることを明示していない会社の媒介で成約したときの費用償還(第14条。上限は約定報酬額)
  • 成約を通知しなかったときの費用償還(第15条第2項)
  • 売主が特別に頼んだ広告の料金と遠隔地への出張旅費の実費負担(第12条)

費用の請求にあたっては、会社が交通費・謄本代・広告費などの明細書を作成し、領収書等で金額を立証して請求する決まりです。運用指針は、依頼者が契約に違反したときは違約金または費用の償還の請求を受ける場合があるので契約書をよく読んで理解しておくべきだと、注意を促しています。次の章以降で1つずつ見ていきます。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第8項・第9項・第10項) 出典: 中部圏不動産流通機構「レインズ利用ガイドライン 令和7年1月1日改正版」 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 1(5)・6(3)①ロ・⑦) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(一般媒介契約約款第12条〜第15条)

デメリットが表に出る売主と物件の条件

一般媒介のデメリットは、すべての売主に同じ重さで出るわけではなく、次の3つが重なるときに表に出ます。

一つ目は、問い合わせが読めない物件です。駅から遠い、築年数が古い、周辺に同じ間取りの売り物件が多い。こうした物件では、各社が「売れたら幸い」の姿勢になり、どこも動かない状態が起きます。

二つ目は、売主が連絡の手間を持てないときです。一般媒介では進捗の確認、内見の調整、価格変更の連絡を売主が各社に回します。働きながら、または遠方から売る人には負担です。

三つ目は、依頼した全社がレインズに登録しないまま進むときです。情報が各社の顧客の中に閉じ、買主を探す範囲が狭まります。この3つから外れていれば、一般媒介のデメリットは対策で抑えられます。

不動産会社の動きが鈍くなる理由

一般媒介で最も聞くデメリットが「会社が本気で動かない」です。これは会社の怠慢ではなく、費用を負担する側としての合理的な判断から生まれます。理由を3つに分けます。

  • 仲介手数料が成約した1社にしか入らない
  • 専任媒介の物件が社内で優先されやすい
  • 売却保証や付帯サービスの適用条件が専任限定の会社がある

仲介手数料が成約した1社にしか入らない

不動産会社の売却側の収入は、成約したときの仲介手数料だけです。一般媒介で3社に頼めば、成約できるのは1社で、残る2社の収入はゼロです。

一方、費用は各社が負担します。運用指針は、指定流通機構への情報登録はもちろんのこと、通常の広告、物件の調査等のための費用は宅地建物取引業者の負担になるとしています。ポータルサイトへの掲載、チラシ、内見の案内にかかる人件費は、成約できなければそのまま持ち出しです。

成約の見込みが3分の1の物件に、見込みが1の専任物件と同じ広告費を使う会社はまれです。これが、一般媒介で会社の動きが鈍く見える最大の理由です。売主側でできる対策は、問い合わせが読める物件で一般媒介を選ぶことと、広告の予定を契約前に決めてしまうことの2つです。

出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)⑤)

専任媒介の物件が社内で優先されやすい

不動産会社の営業担当者は、同時に複数の売却物件を抱えています。専任媒介の物件には、契約の日から7日以内の登録(専属専任媒介は5日以内)、2週間に1回以上の報告という法律上の期限があり、社内の管理もこの期限を中心に回ります。

一般媒介の物件に法律上の期限はなく、報告も約款の義務の外です。担当者の手が足りないとき、期限のある仕事が先に片づくという順序になりがちです。後回しにする意図があるかどうかとは別に、期限の有無が順序を決めます。

この構造を知っていれば、対策は見えます。一般媒介でも、報告の頻度と方法を契約時に決めて文書に残せば、担当者の側に「この物件にも期限がある」状態を作れます。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第5項・第9項)

売却保証や付帯サービスの適用条件が専任限定の会社がある

大手の仲介会社は、売却保証(一定期間で売れなければ会社が買い取る)、設備の保証、ハウスクリーニングなどの付帯サービスを用意しています。これらの適用条件に、媒介契約の種類を入れている会社があります。

たとえば東急リバブルの「リバブル売却保証システム」は、適用基準の「媒介契約」の欄を「専属専任・専任」としています。マンションは「昭和57年(1982年)1月以降の築年」「30㎡以上」、保証額は「当社査定価格90%以下かつ1億円以下」(首都圏エリアのみ1億5,000万円以下)、販売期間は「3ヶ月以上〜6ヶ月未満」、対象種別は個人の居住用のマンション・土地・戸建で、適用の可否と保証額は同社の査定によると注記されています。

一方、三井のリハウスの「360°サポート」(設備や建物の保証)は、公式サイトで「媒介の種別は問いません。ただし、対象者・対象物件等の適用条件があります。」と書き、「『一般媒介契約によるご売却』を選択される売主様も…360°サポートの対象となります」としています。

つまり「一般媒介だと付帯サービスが受けられない」と一律には言えず、会社ごとに扱いが違います。使いたいサービスがあるなら、その適用条件に媒介契約の種別が入っているかを契約前に確かめます。

出典: 東急リバブル「リバブル売却保証システム」 出典: 三井のリハウス「360°サポート」

売主の手間が増える場面

一般媒介では、専任媒介なら会社がやってくれることを売主が引き受ける場面があります。具体的に3つです。

  • 販売状況の報告を自分から聞く
  • 内見の申込みが各社から別々に来る
  • 価格や掲載内容の変更を全社に同じ日に伝える

販売状況の報告を自分から聞く

専任媒介では、2週間に1回以上、問い合わせの件数や内見の結果などが会社から報告されます。一般媒介にこの定期報告の義務はなく、売主が各社に「今週はどうでしたか」と聞く形になります。

聞かなければ情報が来ない状態は、売れない理由が分からないまま時間が過ぎる原因になります。価格が高いのか、写真が弱いのか、そもそも問い合わせが届いていないのか。ここが分からないままでは、値下げの判断も手探りになります。

ただし、購入の申込みが入ったときの報告は一般媒介でも法律上の義務です。一般媒介契約約款第5条第1項第2号も、申込みがあったときは遅滞なく売主へ報告することを会社の義務として並べています。定期報告は自分から聞く、申込みの報告は義務として求める、と分けて考えます。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第8項・第9項) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(一般媒介契約約款第5条)

内見の申込みが各社から別々に来る

複数の会社に頼むと、内見の申込みはそれぞれの会社から別々に入ります。

A社から土曜の午後、B社から日曜の午前、C社から土曜の午前に内見の希望が届く。鍵の受け渡し、部屋の片づけ、在宅の調整を会社ごとにこなし、週末が内見で埋まる。

専任媒介なら窓口は1つで、会社が日程をまとめてくれます。一般媒介では、この調整役を売主が担います。同じ時間帯に2社の内見が重なる、といった事態も起きやすくなります。

対策は、内見できる曜日と時間帯を最初に全社へ同じ条件で伝えておくことです。「土日の13時以降」「平日は不可」と決めておけば、各社はその枠の中で調整します。

価格や掲載内容の変更を全社に同じ日に伝える

売り出し価格を変えるとき、写真を差し替えるとき、紹介文を直すとき。一般媒介では、これらを全社に同じ日に伝える必要があります。

1社だけ古い価格のまま残ると、ポータルサイトやレインズに同じ部屋が違う価格で並びます。買主側の会社は安い方に問い合わせ、買主本人は「どちらが正しいのか」と不信感を持ちます。写真の質が会社ごとに違えば、良い写真を出した会社に問い合わせが集まり、売主の意図しない形で会社の優劣が決まります。

なお、媒介価額を変えるときは、売主から会社へ通知する形が約款の定めです(第6条第2項)。価額の引上げには会社の承諾が要る点も押さえておきます。この手間は社数に比例して増えます。何社に頼むかの判断は別の記事で扱っていますが、注意点として押さえるのは、「情報は全社で揃える」を最初から運用に組み込むことです。

出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(一般媒介契約約款第6条)

契約書と通知で起きるトラブル

一般媒介契約約款の違約金は、反社会的勢力の排除の確約に反した場合(第19条第3項)に限られ、他の会社の仲介や自己発見取引に対する違約金の条項は置かれていない構造です。その代わり、知らずに踏むと費用や報酬を請求される条項が残っています。標準媒介契約約款の条文で5つ見ていきます。

踏みやすい場面請求されうるもの約款
依頼している会社名を明示せずに他社で成約契約の履行に要した費用の償還(上限は約定報酬額)第4条・第14条
成約の通知を怠る成約後に会社が善意で支出した費用第15条第2項
会社の紹介で知った相手方と直接契約寄与割合に応じた相当額の報酬第13条
特別に依頼した広告・遠隔地への出張実費第12条
有効期間・更新の特約約款の定めによる(法律上の規制なし)第8条・第16条

依頼している会社名を伝えずに他社で成約すると費用償還の対象になる

標準約款の一般媒介契約は「明示型」が基本です。契約書に、すでに依頼している会社の商号または名称と主たる事務所の所在地を書く欄があり、契約後に別の会社へ頼もうとするときは通知する決まりです(第4条)。

この通知をしないまま、明示していない会社の媒介で売買契約が成立すると、依頼していた会社は「一般媒介契約の履行のために要した費用」の償還を請求できます(第14条)。上限は約定報酬額、つまり契約時に協議して決めた報酬額で、会社は明細書を作成し、領収書等で金額を立証して請求する決まりです。

他の会社に頼んでいることを伝えたくないなら、「非明示型」の特約を契約書に入れてもらう方法があります。運用指針は、特約事項の欄に次の文言を記載し、「1 依頼する当社以外の宅地建物取引業者」の欄と「2 甲の通知義務」の第1号の箇所を斜線で抹消する等の方法によるとしています。

本契約では、約款第4条及び第14条は適用せず、依頼者が乙以外の宅地建物取引業者に重ねて依頼する場合でも、その宅地建物取引業者を明示する義務を負わないものとします。

黙って複数社に頼むのではなく、明示型か非明示型かを契約時に決めておくことが、この条項を踏まずに済む方法です。

出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(一般媒介契約約款第4条・第14条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)⑦・⑩)

成約の通知を怠ると会社が使った費用を請求される

他の会社の媒介で売買契約が成立したとき、または自ら発見した相手方と契約したとき、売主は依頼している各社に遅滞なく通知する義務があります(第15条第1項)。

通知を怠ると、各社は売却活動を続けます。契約の成立後に会社が善意で使った費用、たとえば広告の掲載継続や内見の案内にかかった費用は、売主に償還を請求できる根拠になります(第15条第2項)。

成約の翌日には全社へ連絡する、くらいの速さが目安です。連絡先を最初から一覧にしておけば、1度の作業で終わります。通知を受けた会社は、レインズの登録を削除し、ポータルサイトの掲載を下げます。中部圏不動産流通機構のガイドラインでは、複数の会員から登録されている物件の取引が成立した場合、仲介した会員だけが成約報告をし、他の会員は物件を削除する形です。

出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(一般媒介契約約款第15条) 出典: 中部圏不動産流通機構「レインズ利用ガイドライン 令和7年1月1日改正版」

会社の紹介で知った買主と直接契約すると報酬を請求される

一般媒介では、自ら発見した相手方と会社を通さずに契約できます。ただし、「自分で見つけた」と「会社に紹介された」は別です。

標準約款の第13条は、契約の有効期間内または有効期間の満了後2年以内に、売主が会社の紹介によって知った相手方と、会社を排除して売買契約を結んだときは、会社が契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を請求できると定めています。運用指針も、この報酬請求権が認められるものだと説明しています。

内見に来た人から「不動産会社を通さず直接契約すれば、お互い手数料が浮きますよ」と持ちかけられる。応じて契約すると、紹介した会社から寄与割合に応じた報酬の請求が届く。

会社が紹介した相手方である以上、会社を外しても報酬請求は残ります。2年という期間も長く、契約が終わった後に連絡が来ても対象です。自己発見取引ができるのは、会社の紹介を経ていない相手方に限ると覚えておきます。

出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(一般媒介契約約款第13条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)③)

広告費の請求は特別に依頼した分に限られる

「一般媒介なので広告費は売主負担になります」と言われることがあります。これは半分だけ正しい説明です。

運用指針では、指定流通機構への情報登録はもちろんのこと、通常の広告、物件の調査等のための費用は宅地建物取引業者の負担になるとされています。一般媒介でも専任媒介でも、この原則は同じです。

売主が負担するのは、売主が特別に依頼した広告の料金と、遠隔地への出張旅費の実費です(第12条)。新聞の全面広告を出してほしい、遠方の買主候補のところへ行ってほしい、といった依頼がこれにあたります。しかも会社は、あらかじめ請求する費用の見積りを説明してから実行すべきだとされています。特別に依頼した分の費用は、成約の有無に関わらず請求できる扱いです。

契約前や途中で「広告費をいただきます」と言われたら、それが通常の広告か特別な依頼か、見積りは先に示されたかを確かめます。通常の広告の費用を売主に請求する説明は、運用指針の考え方から外れています。

出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(一般媒介契約約款第12条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)⑤)

有効期間と更新の定めは約款任せなので契約書で確認する

専任媒介の有効期間は法律で3か月が上限で(34条の2第3項)、これに反する特約は無効です。一般媒介は、この法律上の規制の外にあります。運用指針も、一般媒介契約については法律上の規制はないが、実情にかんがみ、専任媒介契約等と同じく3月以内で定めていると説明しています。

標準約款では一般媒介も3か月を超えない範囲で協議して定め(第8条)、更新は売主と会社の合意と、満了に際しての売主からの文書等による申出を要件にしています(第16条)。運用指針は、更新の申出が有効期間満了の都度行われるべきもので、あらかじめ更新することを約定するのは許されないとしています。標準約款をそのまま使う会社なら、専任と同じ運用になります。

ただし、標準約款に基づかない契約書を使う会社や、特約欄に独自の定めを入れる会社もあります。期間が6か月になっていたり、「申出がなければ自動更新」と書かれていたりしても、一般媒介では法律が無効にしてくれる仕組みの外です。運用指針は、依頼者が一目で分かるよう契約書の右上すみに「この媒介契約は、国土交通省が定めた標準媒介契約約款に基づく契約です」と表示することとしています。この表示と、有効期間・更新の欄を自分で読む必要があります。途中で契約を終えるときの進め方は、別の記事で扱います。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第3項・第10項) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(一般媒介契約約款第8条・第16条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 2(2)②・6(3)④・⑧)

情報が広がらない状態になる条件

一般媒介の弱点として最も重いのは、会社の動きが鈍いことより、物件の情報が市場に出ない状態になりうることです。3つの条件を見ます。

  • 全社が「登録しない」で契約するとレインズに情報が出ない
  • 一般媒介の売主は売主専用画面で取引状況を確認できない
  • 広告を絞られるとポータルサイトにも露出しない

全社が「登録しない」で契約するとレインズに情報が出ない

一般媒介では、レインズに登録するかどうかを契約書の「指定流通機構への登録の有無」の欄で決めます。約款も、登録することとした場合に会社が登録する形(第9条)です。東日本不動産流通機構のQ&Aでは、「指定流通機構(レインズ)へ登録することとした一般媒介契約の場合、レインズに登録することとなります」と説明されています。同じQ&Aは、一般媒介の場合の具体的な登録期限は定められていない点にも触れています。

依頼した全社がこの欄を「無」で契約すると、物件の情報はレインズに出ないまま売却活動が進みます。他の会社が買主を連れてくる経路が閉じ、買主を探す範囲は各社の自社顧客だけになります。専任媒介なら法律で登録される情報が、一般媒介では契約書の1つの欄で止まってしまうわけです。

流通機構の側は、一般媒介の物件も登録するよう会員に求めています。中部圏不動産流通機構のガイドラインには、レインズ利用規程第5条第2項にあるように、売却の一般媒介契約や売主・代理物件、賃貸物件等についても積極的にレインズへ物件登録するよう書かれています。登録を渋られたら、この規程を根拠に頼めます。

出典: 東日本不動産流通機構「よくあるご質問」 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(一般媒介契約約款第9条) 出典: 中部圏不動産流通機構「レインズ利用ガイドライン 令和7年1月1日改正版」

一般媒介の売主は売主専用画面で取引状況を確認できない

レインズには、売主が自分の物件の取引状況を確認できる「ステータス管理機能」があります。登録項目は「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」の3種類で、売主は「売主専用画面」にアクセスして状況を見られます。令和7年(2025年)1月からは、会社から配布される登録証明書の二次元コードを読み取って、確認用のIDとパスワードでこの画面に入る形になりました。国土交通省と4つの流通機構は、この機能が囲い込みの防止にも役立つと案内しています。

ただし、この仕組みは専任媒介と専属専任媒介を結んだ場合のものです。国土交通省のチラシは、媒介契約の3種類のうち「①及び②を締結した際は、宅地建物取引業法により、宅建業者に、売り出し物件のレインズへの登録、売主への登録証明書の交付や定期的な業務状況の報告等が義務付けられています」と書いています(①は専属専任媒介契約、②は専任媒介契約)。東日本不動産流通機構のQ&Aも、売却に係る専属専任媒介契約・専任媒介契約の場合に登録証明書に売主専用のIDとパスワードが記載されるとし、一般媒介については次の形を案内しています。

一般媒介契約や賃貸物件の場合も、機構事務局に問い合わせて本人確認を実施した上で、登録状況をご回答することが可能です。

つまり一般媒介の売主は、取引状況を自分の画面で日常的に見る手段を持たない立場で、確認したいときは機構事務局への問い合わせになります。代わりになるのは、複数の会社に頼んでいる構造そのものです。1社が紹介を止めても、買主は別の会社から申し込めます。一般媒介で1社だけに頼むと、この代替も消えます。

出典: 国土交通省・4不動産流通機構「レインズの『ステータス管理機能』を活用しましょう」 出典: 東日本不動産流通機構「よくあるご質問」

広告を絞られるとポータルサイトにも露出しない

買主が物件を知る経路は、レインズ経由の会社の紹介と、不動産のポータルサイトの2つが中心です。一般媒介で会社が広告費を抑えると、ポータルサイトへの掲載が見送られたり、掲載の扱いが小さくなったりします。

レインズにも登録されず、ポータルにも出ない状態になると、物件の情報は各社の店舗と顧客リストの中だけに閉じます。売主はこの状態に気づきにくく、「一般媒介にしたのに問い合わせがない」という形で表に出ます。

対策は契約前に決まります。どのポータルサイトに、いつから、どの程度の期間掲載するかを各社に聞き、契約書の別紙か特約に書いてもらいます。掲載されているかは、売主自身がポータルサイトで物件の所在地や間取りから検索すれば確認できます。

一般媒介のデメリットを抑える対策

ここまでのデメリットは、契約前の取り決めと、売却中の運用で大半を抑えられます。4つにまとめます。

  • レインズに登録する会社を1社は確保する
  • 広告の予定と報告の方法を契約前に決める
  • 会社ごとの適用条件を契約前に聞く
  • 通知と連絡を管理表で回す

レインズに登録する会社を1社は確保する

契約書の「指定流通機構への登録の有無」を「有」にする会社を、最低1社は確保します。登録されれば全国の不動産会社が物件を見られるようになり、依頼していない会社からも買主が来ます。

登録されたら、登録証明書を渡してもらうよう頼みます。東日本不動産流通機構のQ&Aは、不動産会社はレインズへの登録後遅滞なく依頼主へ登録証明書を渡す決まりだと説明しています。ただし法律上の交付義務は専任媒介の登録に伴うもの(34条の2第6項)なので、一般媒介で登録した会社については、交付の運用を契約の席で確かめておくと安心です。登録証明書を受け取れれば、登録された事実と内容を書面で確認できます。複数の会社が登録しても、流通機構の運用では成約した会社だけが報告し、他社は削除する形が決まっているため、重複は気にせず進められます。

この1点を押さえるだけで、一般媒介の弱点のうち「情報が出ない」は消えます。

出典: 東日本不動産流通機構「よくあるご質問」 出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第5項・第6項)

広告の予定と報告の方法を契約前に決める

一般媒介の定期報告は法律の義務の外ですが、契約書に書けば約款上の義務になります。一般媒介契約約款第5条第1項第1号は、会社に「契約の相手方との契約条件の調整等を行い、契約の成立に向けて積極的に努力すること」を義務づけており、その中身を具体化する形で条項を足せます。

運用指針は、標準媒介契約約款として定められた契約書に、相手方を探索するために行う具体的措置(指定流通機構への情報登録、広告等)に関する条項や、業務処理状況の報告・連絡等に関する条項を追加しても、標準媒介契約約款に基づく契約として扱う範囲に入るとしています。追加した条項はアンダーライン等で示す決まりです。

決めておくのは2つです。

  • 広告: 掲載するポータルサイト、掲載開始日、チラシの有無と範囲
  • 報告: 頻度(2週間に1回など)と方法(メールで文書に残す)

これを契約書の別紙か特約欄に書いてもらいます。書面に残ることで、担当者の側にも「この物件には期限がある」状態が生まれ、専任物件に埋もれにくくなります。口頭の「しっかりやります」では、3か月後に比べる材料が残らないまま終わります。

出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(一般媒介契約約款第5条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 2(2)②)

会社ごとの適用条件を契約前に聞く

売却保証、設備や建物の保証、ハウスクリーニング、ホームステージングといった付帯サービスを使いたい場合は、適用条件に媒介契約の種別が入っているかを会社ごとに確かめます。

専任・専属専任が条件の会社(東急リバブルの売却保証など)と、媒介の種別を問わない会社(三井のリハウスの360°サポートなど)があり、同じ「保証」でも扱いが違います。築年数、面積、エリアの条件も別に付きます。

専任媒介は1社とだけ結ぶ契約なので、一般媒介で依頼する数社のうち付帯サービスを使いたい会社だけを専任にする、という形は成り立たない仕組みです。サービスを優先するなら、その会社と専任を結ぶか、サービスなしで一般媒介にするかの二択です。この判断を契約前にしておくと、売却の途中で「一般だから対象外」と言われて慌てる事態を避けられます。

出典: 東急リバブル「リバブル売却保証システム」 出典: 三井のリハウス「360°サポート」

通知と連絡を管理表で回す

明示型の通知(新しい会社を足したとき)、価格や掲載内容の変更、成約時の通知。一般媒介で売主が持つ連絡は、どれも「全社に、同じ日に」が原則です。

会社名、担当者、連絡手段、レインズ登録の有無、通知した日付を1枚の表にしておけば、漏れを防げます。表はメモアプリでも紙でも足ります。費用償還の条項(第14条・第15条第2項)はいずれも「明示しなかったこと」「通知しなかったこと」が引き金になるため、通知の記録が残っていること自体が売主を守ります。

この管理を続けるのが難しいと感じるなら、一般媒介より専任媒介が向いている可能性があります。専任媒介との選び方は、別の記事で扱っています。

出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(一般媒介契約約款第14条・第15条)

まとめ:一般媒介の注意点は、レインズ登録の欄と申込み報告・費用償還の条項に集まる

いちばん重いのは、一般媒介の弱点が「会社が動かない」より「物件の情報が市場に出ない」側にあるという点です。専任媒介なら法律でレインズに登録される情報が、一般媒介では契約書の「指定流通機構への登録の有無」という1つの欄で決まります。依頼した全社がここを「無」にすると、買主を探す範囲は各社の自社顧客だけに縮みます。

次の一歩は、契約の席でこの欄を確かめ、少なくとも1社に「有」で登録してもらうことです。ここを飛ばすと、複数社に頼んだのに問い合わせが届かない状態になり、しかも売主専用画面を持たない一般媒介では、その原因に気づくまでに時間がかかります。あわせて、依頼した全社の連絡先と登録の有無を1枚の管理表にまとめておくと、会社を追加するときの通知と、成約したときの通知を一度に回せます。

そのうえで、契約書の「依頼する当社以外の宅地建物取引業者」の欄と、費用償還・直接取引の条項に目を通します。明示型のまま通知を落とすと約定報酬額を上限とする費用償還の話になり、会社の紹介で知った相手方と直接契約すれば、満了後2年以内でも寄与割合に応じた報酬の請求が残ります。住み替えのトビラでは、一般媒介の注意点とデメリットの抑え方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。