専任媒介の3か月|法定上限の仕組みと更新しないときの断り方・見直す条件

専任媒介の3か月|法定上限の仕組みと更新しないときの断り方・見直す条件

専任媒介で売り出して2か月半。会社から「そろそろ更新の時期ですね」と連絡が来た。更新すべきなのか、断ってよいのか、断ったら費用を請求されるのか。ここで迷う人は多いはずです。

先に答えを書きます。専任媒介の3か月は宅地建物取引業法が定めた上限で、更新は売主の申出があってはじめて起き、自動更新の特約は無効です。満了で終えることに違約金も費用償還も付かず、残るのは会社の紹介で知った買主との直接取引の条項だけです。そして更新するときは、「別段の合意」をすれば価格・報酬・広告・期間を書き直せます。

この記事では、3か月が決まっている仕組み、契約から満了までに起きる流れ、更新するかどうかの判断基準、更新しないときの伝え方、更新するときに見直せる条件を順に見ていきます。

専任媒介の3か月が法律で決まっている仕組み

専任媒介契約の「3か月」は、不動産会社の慣行ではなく、宅地建物取引業法と国土交通省の標準媒介契約約款で決まっている期間です。先に決まりを一覧にします。

決まり根拠
有効期間は3か月を超えられない宅地建物取引業法34条の2第3項
3か月より長い期間を定めても3か月になる同第3項
更新は売主の申出による。更新後も3か月まで同第4項
自動更新など上記に反する特約は無効同第10項
有効期間と解除に関する事項は書面に記載する同第1項5号
3か月を超えない範囲で協議して決める標準媒介契約約款(専任)第7条
一般媒介には法律の規制がなく約款で3月以内解釈・運用の考え方 6(3)④

3種類の媒介契約の違いは、別の記事で扱っています。

媒介契約の違いは5つ|一般・専任・専属専任を比較し自分で選ぶ 媒介契約の違いは5つ|一般・専任・専属専任を比較し自分で選ぶ

有効期間は3か月が上限で超える定めは3か月になる

宅地建物取引業法34条の2第3項は、専任媒介契約の有効期間の上限を3か月と定めています。

依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約(以下「専任媒介契約」という。)の有効期間は、三月を超えることができない。これより長い期間を定めたときは、その期間は、三月とする。

後段が効いてくる場面があります。契約書に「6か月」と書かれていても、その期間は法律上3か月に読み替えられます。専属専任媒介契約も同じ34条の2第3項の対象で、上限は3か月です。

この決まりは、売主を1社に縛る期間を短く保つためのものです。専任媒介は他の会社に重ねて頼めない契約なので、会社の動きが鈍いまま長期間続くと売主の側が不利になります。3か月ごとに見直す機会を法律が保証している形です。満了日そのものは、34条の2第1項5号が「媒介契約の有効期間及び解除に関する事項」を書面の記載事項としているため、手元の契約書で確かめられます。

一般媒介契約の3か月は、法律とは別のところに由来します。国土交通省の解釈・運用の考え方は「一般媒介契約については、法律上の規制はないが、実情にかんがみ、専任媒介契約等と同じく3月以内で定めている」と説明しています。一般媒介の3か月は、法律ではなく標準約款の側の定めです。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第1項第5号・第3項) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)④)

更新は売主の申出が要り自動更新の特約は無効になる

34条の2第4項は、更新の主語を売主に置いています。

前項の有効期間は、依頼者の申出により、更新することができる。ただし、更新の時から三月を超えることができない。

条文にある「依頼者」は売主です。会社が「更新しておきますね」と一方的に進める形は、この条文の外にあります。更新後の期間も3か月が上限です。

契約書に「期間満了の1か月前までに申出がなければ自動更新」と書かれていても、同条10項は「第三項から第六項まで及び前二項の規定に反する特約は、無効とする」と定めています。有効期間の3項と更新の4項がこの範囲に入るため、売主の申出を要件から外す形の特約は無効になります。国土交通省の解釈・運用の考え方も、あらかじめの約定について次のように述べています。

更新の申出は、有効期間満了の都度行われるべきもので、あらかじめ更新することを約定することは許されない。

一方で、売主が更新を申し出ても、会社の同意がなければ契約はそこで終わります。同じ解釈・運用の考え方は「依頼者の申出はあっても、宅地建物取引業者が更新に同意しないときは契約は更新されない」としています。更新は売主と会社の両方の意思で成り立つ仕組みです。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第4項・第10項) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)⑧)

3か月より短い期間で結ぶこともできる

3か月は上限であって、固定の期間とは別です。標準媒介契約約款の専任媒介版は、第7条でこう定めています。

専任媒介契約の有効期間は、3ヶ月を超えない範囲で、甲乙協議の上、定めます。

甲は売主、乙は会社です。1か月や2か月で結ぶことも、この条文の範囲に収まります。標準の専任媒介契約書にも「5 有効期間 この媒介契約締結後 ヶ月( 年 月 日まで)とします。」という欄があり、月数と満了日を書き込む形になっています。

現場では有効期間の欄に3か月と記入する例が広く見られます。売主の側から見ても、レインズ登録や広告の準備から成約までを一巡させるには、ある程度まとまった期間が要るという事情は理解できるところです。ただ、初めて頼む会社の動きを短期間で見たい、住み替え先の都合で1か月だけ試したい、といった事情があれば、短い期間を協議する余地は約款の側に残されています。

短くするほど更新の手続きが増える点は、売主側の負担になります。更新のたびに売主の申出と、会社の同意が要るためです。3か月で結んで満了時に評価する形が、手間と見直しの機会のバランスとしては選びやすい選択です。

出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約書 5 有効期間・専任媒介契約約款第7条)

期間満了は解除と違い違約金も費用償還も生じない

「3か月で更新しないと、広告費を請求されるのでは」という不安をよく聞きます。標準約款の条文で確かめると、期間満了で契約を終えることは、お金の請求の対象から外れています。

専任媒介の約款で売主に金銭の請求が生じる場面は、有効期間内に他の会社に媒介や代理を依頼して契約を成立させたとき(違約金・第12条)、有効期間内に自ら発見した相手方と契約を締結したとき(費用償還・第14条1項)、そして「乙の責めに帰すことができない事由によって専任媒介契約が解除されたとき」(費用償還・第14条1項)の3つです。期間満了は「解除」ではなく、契約が予定どおり終わる形なので、第14条の2つの要件のいずれとも別の場面です。費用償還が生じる場面でも、その額は約定報酬額が上限です(同条2項)。

通常の広告や物件調査の費用は、もともと会社の負担です。解釈・運用の考え方は「指定流通機構への情報登録はもちろんのこと、通常の広告、物件の調査等のための費用は、宅地建物取引業者の負担となる」としています。売主が特別に依頼した広告や遠隔地への出張旅費は売主の負担ですが(約款第10条)、これは通常の販売活動とは別枠の話です。

満了後も残る条項は1つあります。会社の紹介で知った買主と、会社を外して直接契約したときの報酬請求(第11条)で、満了後2年以内が対象です。この点は更新しないときの伝え方の章で扱います。

出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第10条・第11条・第12条・第14条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)⑤)

契約から満了までに起きる流れ

契約から満了までの3か月に、法律と約款で決まっている出来事を時系列で並べます。

時期起きること根拠
契約の日意思の合致で契約成立。書面は遅滞なく交付34条の2第1項
契約の翌日から7日以内レインズ登録(休業日を除く)。登録証明書の交付同第5・6項、規則15条の10、約款第4条
2週間に1回以上業務処理状況の報告同第9項
申込みがあったときそのつど遅滞なく報告同第8項
満了の前会社から更新の意思確認(会社側の運用)解釈・運用の考え方 6(3)⑧
満了日契約終了。レインズは物件削除の対象約款第7条、中部圏の規程

契約の翌日から7日以内にレインズへ登録される

専任媒介を結んだ会社には、レインズへ物件を登録する義務があります。期限は宅地建物取引業法34条の2第5項の「国土交通省令で定める期間」で、施行規則15条の10第1項が専任媒介契約は7日、専属専任媒介契約は5日と定め、同条2項が休業日数を算入しない扱いを置いています。

起算日には注意点があります。解釈・運用の考え方は「媒介契約締結の日」を意思の合致のあった日とし、書面の交付の日とは別である点に留意するよう求めたうえで、契約を締結した当日そのものは民法上の初日不算入により登録期間に含まれないとしています。標準の専任媒介契約約款も、この扱いに沿って第4条1項4号で「媒介契約の締結の日の翌日から」と書いています。契約日の翌日から数えて7日、そこから会社の休業日を除く、という数え方です。

登録が済むと、会社は登録を証する書面(登録証明書)を遅滞なく売主に引き渡します(同条6項)。解釈・運用の考え方は、依頼者への周知事項として、登録証明書の交付を受けて登録を確認するとともに、レインズのステータス管理機能を通じて取引の申込みの受付に関する状況等の最新の登録内容を確認することを挙げています。7日を過ぎても登録証明書が届かないときは、登録の有無を会社に確かめます。3か月の最初の1週間で、会社が義務を守る会社かどうかが見えます。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第5項・第6項) 出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(第15条の10) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 1(4)・6(3)①ハ) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第4条)

2週間に1回の報告が満了まで続く

専任媒介の会社は、2週間に1回以上、業務の処理状況を売主に報告する義務があります(宅地建物取引業法34条の2第9項)。3か月の契約なら、満了までに6回前後の報告が届く計算です。

報告の中身は、解釈・運用の考え方が定めています。報告すべき事項は「宅地建物取引業者が契約の相手方を探索するために行った措置(指定流通機構への依頼物件の登録、広告等)、引き合いの状況等」です。問い合わせが何件、内見が何件、内見後の反応はどうだったか。これが2週間ごとに積み上がります。購入の申込みが入ったときは、この定期報告とは別に、そのつど遅滞なく報告されます(同条8項)。解釈・運用の考え方は、依頼者の希望条件を満たさない申込みの場合等であっても、その都度報告する必要があるとしています。

この報告の記録が、満了時に更新するかどうかを決める材料になります。電話だけで済まされると比べにくいので、報告の方法を契約時に決めておきます。標準の専任媒介契約書は、報告の方法を「文書又は電子メールのうちいずれかの方法を選択して記入すること」、頻度を「2週間に1回以上の範囲内で具体的な頻度を記入すること」として、契約書に書き込む形にしています。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第8項・第9項) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)①イ・ロ) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約書 1 成約に向けての義務)

満了が近づくと会社から更新の意思確認が来る

満了が近づくと、会社から「更新しますか」と確認が入る流れが広く見られます。更新には売主の申出が要るため、会社の側から意思を聞く運用です。売主から見れば、この連絡が3か月を振り返る合図になります。

ここで押さえたいのは、法律の仕組みでは売主の申出が更新の起点だという点です。会社から更新の書類が届いた場合でも、更新が成立するのは売主が申し出たときです。標準約款も「有効期間の更新をしようとするときは、有効期間の満了に際して甲から乙に対し文書等でその旨を申し出るものとします」と定めています(第15条2項)。中部圏不動産流通機構のレインズ利用ガイドラインも「依頼者からの申し出に基づかない媒介契約の更新の禁止」を項目として掲げ、会員にこう求めています。

媒介契約の更新は売主・貸主からの申し出に基づき、書面によって行ってください。

意思確認の連絡が来たら、続けるか終えるかを決める時期です。返事を先延ばしにすると、満了日を過ぎたのか続いているのかが売主にも会社にも分かりにくい状態が生まれます。契約書の有効期間の欄で満了日を確かめ、その前に返事をします。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第4項) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第15条) 出典: 中部圏不動産流通機構「レインズ利用ガイドライン(令和7年1月1日改正版)」

満了するとレインズの登録は削除される

契約が満了すると、レインズに登録された物件情報はどうなるのか。流通機構の規程で確かめます。ここでは中部圏不動産流通機構のレインズ利用ガイドライン(令和7年1月1日改正版)を見ます。

同ガイドラインは、物件情報の管理について「全物件種別で92 日間(登録日を含まない)物件更新を行わなければ自動削除されます。(物件変更を行っても登録期間は延長されません)」と定め、「媒介契約の更新あるいは登録期間の満了によって登録期間の延長が必要な場合は物件更新を行ってください」と会員に求めています。機能の一覧では、「物件更新」が登録期間の延長(登録期間満了前もしくは媒介契約更新時)、「物件削除」が媒介(代理)契約の途中解約・期間満了、売却等中止のときの操作と説明されています。

つまり、契約が満了すれば会社は物件を削除し、更新すれば物件更新で登録期間を延ばす作りです。92日という登録期間は3か月の契約とほぼ同じ長さで、契約と登録が連動しています。満了後に別の会社と契約すれば、同ガイドラインの機能一覧が「物件登録=新規の登録〔*媒介種類変更時も含む〕」としているとおり新規の登録になり、他社から見た掲載期間はそこから始まります。ポータルサイトの掲載は会社の運用に委ねられている部分ですが、契約が終われば掲載を下げる扱いが通例です。なお、この規程は中部圏不動産流通機構のもので、他の流通機構の運用は各機構の規程で確かめます。

出典: 中部圏不動産流通機構「レインズ利用ガイドライン(令和7年1月1日改正版)」

3か月で更新するか決める判断基準

満了が近づいたとき、更新するかどうかを何で決めるか。「売れなかったから替える」だけでは判断を誤ります。3つの軸で見ます。

  • 3か月で売れなかった事実だけでは判断できない
  • 報告と登録の義務が果たされていたかで会社を評価する
  • 価格を見直せば売れる見込みがあるかを分ける

3か月で売れなかった事実だけでは判断できない

首都圏の中古マンションは、売り出しから3か月以内に成約するのが約半数です。東京カンテイが2026年7月に公表した2025年の分析では、売却期間が1か月以内の事例シェアが22.7%、3か月以内の累計事例シェアが50.8%でした。同社はさらに、売り出し開始から2回目の媒介契約の有効期間が終了するまでには全体の約4分の3にあたる73.8%のケースで成約に至っていた、としています。専任媒介の有効期間は3か月が上限なので、その2回分の6か月を指した言い方です。

東日本不動産流通機構の年報でも、首都圏の中古マンションがレインズに登録されてから成約するまでの日数は、2025年で平均82.5日(前年比−3.3%、2024年は85.3日)です。

3か月で売れなかったのは半数の売主が通る状態で、会社や価格の問題を示す証拠としては弱いままです。逆に、3か月で売れたからといって会社の力量が高かったと言い切るのも早計です。判断の材料は「売れたか」ではなく、「売れる条件が整っていたか」にあります。会社の義務が果たされていたか、価格が成約事例に沿っていたか。この2つを次のh3で見ます。

出典: 東京カンテイ「中古マンションの価格乖離率&売却期間(首都圏)」(2026年7月30日) 出典: 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」(登録から成約に至る日数)

報告と登録の義務が果たされていたかで会社を評価する

会社を評価する物差しは、法律と約款の義務が守られていたかです。3か月分の記録を並べて確かめます。

登録証明書は期限内に届いたか。売主専用画面で確認したステータスは「公開中」だったか。2週間に1回の報告に、行った措置と引き合いの状況(問い合わせ数・内見数・反応)が書かれていたか。契約時に約束した広告(ポータルサイト・チラシ)は実施されたか。値下げを勧められたとき、成約事例の根拠が示されたか。

これらが揃っていれば、会社は義務を果たしています。売れなかった原因は価格か市況か物件の側にあり、同じ会社で条件を見直して更新する選択が合理的です。揃っていない項目があれば、更新しない判断の根拠になります。原因の切り分けの詳しい手順は、別の記事で扱います。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第6項・第9項) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 1(4)・6(3)①イ)

価格を見直せば売れる見込みがあるかを分ける

会社の義務が果たされていて内見が少ないなら、価格が成約事例から外れている可能性があります。東京カンテイの2025年の分析では、専属専任媒介・専任媒介契約の有効期間である3か月以内での価格乖離率の平均は−3.57%で、売り出し開始からの3か月間は最初の売出価格から概ね5%以内の値下げで成約に至っていた、とされています。売り出し価格が査定額より大きく上乗せされているなら、見直しの余地があります。なお、この−3.57%は1か月以内から3か月以内までをまとめた平均で、3か月目に成約した事例の値とは別です。

このとき、会社に根拠を示した助言を求めます。標準約款第5条は、媒介価額が地価や物価の変動その他事情の変更によって不適当と認められるに至ったときは、会社が売主に対して媒介価額の変更について根拠を示して助言する、と定めています。直近の成約事例と自分の物件の差が数字で示されれば、値下げして同じ会社で更新する判断ができます。売主の側から価格を変えるときは会社に通知する形で、引上げのときは会社の承諾が要ります(同条2項)。承諾を拒むときは会社が根拠を示す決まりです(同条3項)。

一方、住み替え先の引渡し日など売主側の期限がある場合は、更新の判断に期限を組み込みます。あと3か月で売る必要があるなら、価格の見直しと会社の変更のどちらが早いかを比べます。

出典: 東京カンテイ「中古マンションの価格乖離率&売却期間(首都圏)」(2026年7月30日) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第5条)

更新しないときの伝え方

更新しないと決めたときの伝え方です。法律上は売主が申し出るまで更新は起きませんが、会社との関係を荒立てず、満了後の処理を漏れなく進めるために、文書で伝えます。

  • 満了日の前に文書で更新しないと伝える
  • 理由は事実だけを短く書く
  • 満了後の処理を同じ文書で依頼する
  • 引き止めの提案は更新の条件として聞く
  • 会社の紹介で知った買主との直接取引は2年間残る

満了日の前に文書で更新しないと伝える

契約書の有効期間の欄で満了日を確かめ、その1〜2週間前にメールで伝えます。文面は短くて足ります。

件名: 媒介契約の満了について

(会社名)(担当者名)様

お世話になっております。6月30日付で締結した専任媒介契約について、9月30日の有効期間満了をもって更新しない旨をお伝えします。満了日までの販売活動と報告は、契約どおりお願いいたします。

日付は例示なので、自分の契約書の締結日と満了日に置き換えます。電話で伝えると、その場で引き止めの提案が始まり、返事を求められます。メールなら送信日時と内容が残り、後からの食い違いを防げます。国土交通省の解釈・運用の考え方も、更新の申出について「後日の紛争を避けるため文書によって確認することが望ましい」としています。更新しない意思も同じ形で残しておくと安心です。

会社から更新の書類が届いていても、署名せずに上の文面を送れば足ります。更新は売主の申出を起点とし(34条の2第4項)、標準約款はその申出を文書等によるものとしています(第15条2項)。会社から返信が来ない場合でも、売主が申し出ていない以上、契約は満了日で終わる仕組みです。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第4項) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第15条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)⑧)

理由は事実だけを短く書く

更新しない理由の説明は、法律や約款が売主に課している義務の外にあります。伝えるかどうかは売主の自由です。伝えるなら、感情や評価ではなく事実だけを書きます。

「6月30日以降、業務報告が未着」「契約時に伺ったポータルサイトへの掲載を確認できなかった」「売主専用画面で紹介停止中の表示があった」。こうした事実は会社側も記録で確認できるため、話が短く済みます。

反対に、「熱意が感じられなかった」「担当者と合わなかった」といった評価は、会社側の弁明を招きます。弁明に答えるうちに引き止めに乗ってしまう例もあります。理由を書かずに済ませる選択も残されています。会社との関係を保ちたいなら「住み替えの計画を見直すため」など、会社の責任に触れない書き方もあります。

満了後の処理を同じ文書で依頼する

更新しないと伝える文書に、満了後の処理も書いておきます。4つあります。

  • レインズの登録の削除(中部圏不動産流通機構のガイドラインでは期間満了が物件削除の場面。削除の完了を確認する)
  • ポータルサイトの掲載停止
  • 鍵を預けているなら返却の方法と日程
  • 物件資料(登記事項証明書、管理規約、間取り図など)を渡しているなら返却

もう一つ、検討中の買主がいる場合の扱いです。満了の直前に内見があり、申込みを検討している買主がいるなら、その買主は会社の紹介によって知った相手にあたります。次のh3で扱う直接取引の条項は「乙を排除して」契約を結んだ場合を対象にしているため、満了後にその買主と話を進める形が条項に当たるかどうかは、進め方によって変わります。会社に「検討中の買主がいるか」を確認し、いるなら短期で更新するか、その買主との話は会社を通して進めるかを決めておくと、後の食い違いを避けられます。

出典: 中部圏不動産流通機構「レインズ利用ガイドライン(令和7年1月1日改正版)」 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第11条)

引き止めの提案は更新の条件として聞く

更新しないと伝えると、会社から提案が来ることがあります。

「あと100万円下げれば動くと思います」「更新していただけるなら報酬の割合を見直します」「来月から広告を強化します」。更新しないと伝えた翌日に、こうした提案が届く。

これらは、更新時に条件を見直す材料として聞く価値があります。会社としても、3か月かけた物件を手放したくない時期です。

ただし、その場で決めるのは避けます。提案が本当なら、文書にしてもらえます。値下げの提案には成約事例の根拠を、報酬の提案には契約書の約定報酬額の欄への反映を、広告の強化には媒体と期間の明示を求めます。文書で出てきた条件が納得できるものなら、更新する判断に変えてよい場面です。

口頭の「頑張ります」で更新すると、次の3か月も同じ結果になりがちです。更新する場合に何を書き直せるかは、次の章で扱います。

出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約書 6 約定報酬額・専任媒介契約約款第5条)

会社の紹介で知った買主との直接取引は2年間残る

更新しないで契約を終えても、1つだけ残る条項があります。標準約款の第11条は、専任媒介契約の有効期間内または有効期間の満了後2年以内に、売主が会社の紹介によって知った相手方と、会社を排除して売買または交換の契約を締結したときは、会社が契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を請求できる、と定めています。解釈・運用の考え方にも同旨の説明があります。

内見に来た買主から、満了後に「不動産会社を通さず直接契約しましょう」と持ちかけられる場面が、この条項の想定するところです。応じれば、会社から報酬の請求が来る可能性があります。

満了後に別の会社と契約し、その会社の仲介で同じ買主と契約する場合は、前の会社を「排除して」契約したかどうかが問われます。食い違いを避けるなら、前の会社で内見した買主については、前の会社に事情を伝えてから進めます。この条項は一般媒介契約約款にも第13条として同じ形で置かれていて、専任媒介に限った縛りとは別のものです。

出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第11条・一般媒介契約約款第13条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)③)

更新するときに見直せる条件

同じ会社で更新すると決めたときは、条件を見直す機会です。約款の仕組みを知っていると、交渉の入口が見えます。

  • 同じ内容で更新されるのは別段の合意がないとき
  • 価格と広告と報告の約束を更新時に書き直す
  • 期間を短くして更新する
  • 契約の種類を変えて更新する

同じ内容で更新されるのは別段の合意がないとき

標準約款の第15条3項は、更新のときの内容についてこう定めています。

前2項の規定による有効期間の更新に当たり、甲乙間で専任媒介契約の内容について別段の合意がなされなかったときは、従前の契約と同一内容の契約が成立したものとみなします。

裏返すと、更新時に「別段の合意」をすれば、内容を変えられます。価格、報酬、広告と報告の約束、期間。どれも更新のときに書き直せる項目です。会社は更新してほしい立場なので、条件の見直しに応じやすい時期でもあります。

何も言わずに更新の書類に署名すると、前の3か月と同じ内容で次の3か月が始まります。売れなかった理由が価格や広告の側にあるなら、同じ条件で更新した先の結果も似た形になりがちです。更新の書類を受け取ったら、署名の前に見直す項目を決めます。

出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第15条)

価格と広告と報告の約束を更新時に書き直す

見直す項目は3つです。

価格は、会社に根拠を示した助言を求めたうえで決めます。標準約款第5条は、媒介価額の変更について会社が根拠を示して助言することを定め、売主が価格を変えるときは会社に通知する形にしています。成約事例との差を数字で出してもらい、値下げ幅を決めます。

報酬(仲介手数料)は、告示の上限の範囲内で協議して決める事項です。解釈・運用の考え方は「報酬の限度額を当然に請求できるものではなく、具体的な報酬額については、宅地建物取引業者が行おうとする媒介業務の内容等を考慮して、依頼者と協議して決める事項である」としており、標準約款第8条2項も「国土交通省告示に定める限度額の範囲内で、甲乙協議の上、定めます」と置いています。3か月売れなかった状況は、報酬を相談する材料になります。

広告と報告は、契約書に具体的に書いてもらいます。標準の専任媒介契約書は「1 成約に向けての義務」の欄に、報告の方法(文書か電子メールか)、報告の頻度、指定流通機構の名称、レインズ登録の期限を記入する欄を置いています。掲載するポータルサイト、写真の撮り直し、チラシの範囲を加えたいときは、解釈・運用の考え方2(2)②ロが、相手方を探索するために行う具体的措置に関する条項の追加と、業務処理状況の報告・連絡等に関する条項の追加を、標準媒介契約約款に基づく契約の範囲として認めています。追加した条項はアンダーライン等で明示する決まりです。

出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約書 1 成約に向けての義務・専任媒介契約約款第5条・第8条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 1(3)・2(2)②ロ)

期間を短くして更新する

更新後の期間も3か月が上限ですが(34条の2第4項)、短くすることもできます。約款第7条の「3ヶ月を超えない範囲で、甲乙協議の上、定めます」は、更新後の有効期間にも当てはまります。

たとえば、値下げして反応を見るなら1か月、広告を強化して様子を見るなら2か月、という形です。短い期間で更新すれば、見直しの機会が早く来ます。会社にとっても、短期で成果を出す動機になります。

一方、更新のたびに売主の申出と会社の同意が要るため、手続きは増えます。1か月ごとの更新を3回重ねるより、条件を書き直して3か月で更新する方が手間は少なくて済みます。満了の直前に申込みを検討している買主がいる場合は、その買主との話がまとまるまでの短期更新が向いています。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第4項) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第7条)

契約の種類を変えて更新する

更新のときに、契約の種類そのものを変える選択肢もあります。専任媒介から一般媒介に切り替えて複数の会社に頼む、または専属専任媒介に変えて報告を1週間に1回以上にする形です。専属専任媒介の報告頻度は34条の2第9項の括弧書きで定められています。

契約の種類を変える場合は、同じ契約の更新ではなく、別の類型の契約を結び直す形になります。中部圏不動産流通機構のガイドラインでも、レインズの「物件登録」は新規の登録で、媒介種類の変更時も含むとされています。専任から一般に切り替える手順と注意点は、別の記事で扱います。

どの形にするにせよ、更新は売主の申出と会社の同意で成り立ちます。解釈・運用の考え方は「依頼者の申出はあっても、宅地建物取引業者が更新に同意しないときは契約は更新されない」としています。条件を厳しくしすぎると、会社が更新に応じない可能性もあります。会社が続けたいと思える条件と、売主が納得できる条件の重なりを探すのが、更新時の交渉です。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第9項) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)⑧) 出典: 中部圏不動産流通機構「レインズ利用ガイドライン(令和7年1月1日改正版)」

まとめ:専任媒介の3か月は、売主が3か月ごとに選び直せる期間

いちばん重いのは、更新の起点が売主の側にあるという点です。宅地建物取引業法34条の2第3項が有効期間の上限を3か月とし、4項が更新を「依頼者の申出により」と定め、10項がこれらに反する特約を無効としています。契約書に自動更新と書かれていても効力を持たず、満了で終えることは違約金の条項とも費用償還の条項とも別の場面です。3か月は縛られる期間ではなく、3か月ごとに選び直せる期間です。

次の一歩は、契約書の有効期間の欄を開いて満了日を確かめ、そこから逆算して1〜2週間前を返事の期限に決めることです。更新するなら、価格・報酬・広告と報告の約束・期間のうち何を書き直すかを、署名の前に並べます。更新しないなら、その日までにメールで伝え、レインズの削除、ポータルの掲載停止、鍵と資料の返却を同じ文書で依頼します。ここを飛ばして返事を先延ばしにすると、満了日を過ぎたのか続いているのかが分かりにくい状態のまま、次の会社を探す時間だけが減っていきます。

そのうえで、3か月分の業務報告を読み返し、行った措置と引き合いの状況が書かれていたかを確かめます。会社の紹介で知った買主との直接取引が満了後2年以内は報酬請求の対象になる点も、終える前に押さえておきたいところです。住み替えのトビラでは、専任媒介の3か月の仕組みと更新するかどうかの決め方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。