「名義は亡くなった配偶者のまま。このマンションを売るには、何から始めればいいの?」と迷う人は多いでしょう。
売る前にすることは、相続登記で名義を移すことと、住宅ローンが団信でどこまで返されたかを確かめることで、税金は住み続けている配偶者が受け継ぐと軽くできます。
この記事では、相続手続きの流れ、団信の扱い、税金の特例と期日、住みながら売る場合と先に引っ越す場合の比べ方まで紹介します。
亡くなった配偶者名義のマンションを売る前の、相続手続きの流れ
亡くなった配偶者の名義のマンションを売るには、先に相続登記で、名義を相続人へ移す必要があります。
査定の依頼や不動産会社への相談は、登記の前から始められます。ただ、買主へ名義を移す登記は、相続登記を済ませてから申請する決まりです。売買契約の前に終えておくと安心です。
手続きは、次の順に進めます。
- 管理組合へ届け出て、引き落とし口座を変える
- 登記事項証明書で、名義と持分を確かめる
- 遺言書があるかを確かめる
- 遺言書がなければ、相続人全員で遺産分割協議をする
- 相続登記と抵当権抹消登記を申請する
管理組合へ届け出て、引き落とし口座を変える
配偶者が亡くなったら、相続の手続きより先に、マンションの管理組合へ連絡しておきましょう。
管理費と修繕積立金が配偶者の口座から引き落とされていると、銀行が死亡を知った時点で口座が凍結され、引き落としも止まります。そのまま数か月たつと、その分が滞納として積み上がります。
滞納が残ったまま売り出すと、売買契約の前に買主へ説明し、引き渡しまでに精算することになります。
連絡先は、管理組合から管理を任されている管理会社の窓口が一般的です。管理会社へ伝える内容は、次の3つです。
- 配偶者が亡くなったこと
- 新しい引き落とし口座
- 相続人が決まるまでの連絡先
所有者が変わったことの届け出は、相続登記が終わってから、改めて出す流れになります。
登記事項証明書で、名義と持分を確かめる
次は、法務局で登記事項証明書を取って、今の名義人と持分を確かめておくと安心です。
登記事項証明書は、法務局が管理している不動産の記録を写した書類です。法務局の窓口で取れるほか、オンラインで申し込めば、郵送でも受け取れます。
「権利証を見れば分かるのでは?」と思う人もいるでしょう。
権利証(登記識別情報)は、マンションを買ったときに受け取った書類です。その後に持分を変えていれば、書かれている内容は買ったときのままです。今の名義と持分は、証明書で確かめられます。
夫婦の共有名義なら、相続の手続きは、亡くなった配偶者の持分について進めます。自分の持分は、もともと自分のものだからです。
出典: 法務局「登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です」
遺言書があるかを確かめる
遺産分割の話し合いを始める前に、配偶者が遺言書を残していたかを確かめましょう。
遺言書でマンションを受け継ぐ人が決まっていれば、相続人どうしの話し合いを省いて、その人が相続登記を申請できます。その後の手続きは、遺言書の種類で変わります。
| 遺言書の種類 | 家庭裁判所の検認 |
|---|---|
| 公正証書遺言(公証役場で作った遺言書) | 不要 |
| 法務局に預けていた自筆の遺言書 | 不要 |
| 自宅などで見つかった自筆の遺言書 | 必要 |
法務局に預けていた遺言書は、法務局で受け取る「遺言書情報証明書」を相続登記に使います。
自宅などで見つかった自筆の遺言書は、家庭裁判所に出して、検認を受ける必要があります。検認は、相続人に遺言書があることと内容を知らせ、その時点の状態を記録する手続きです。
封印のある遺言書は、家庭裁判所で開けることになっています。見つけたら、封をしたまま家庭裁判所へ持ち込みましょう。
出典: 裁判所「遺言書の検認」
遺言書がなければ、相続人全員で遺産分割協議をする
遺言書がなければ、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で、マンションを誰が受け継ぐかを決めることになります。
配偶者は必ず相続人になり、次の順で、ほかの家族が加わります。
- 子ども
- 子どもがいなければ、亡くなった人の親
- 親もいなければ、亡くなった人の兄弟姉妹
子どものいない夫婦では、義理の兄弟姉妹と話し合うこともあります。
売るなら、住んでいる配偶者が受け継いで売主になると、3,000万円特別控除を使いやすくなります。この控除は、売る人が自分で住んでいる家に限られるからです。
決めた内容をまとめた遺産分割協議書には、相続人全員の署名と実印、印鑑証明書が必要です。遠方の子どもとも、郵送で進められます。
相続人に認知症の人や未成年者がいると、家庭裁判所に代理人を選んでもらうため、時間がかかります。
出典: 国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」/e-Gov法令検索「民法」第887条・第889条・第890条・第907条/裁判所「後見開始」/裁判所「特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)」
相続登記と抵当権抹消登記を申請する
相続する人が決まったら、法務局へ相続登記を申請しましょう。
団信(団体信用生命保険)でローンが完済されていれば、抵当権抹消登記も一緒に申請できます。主な必要書類は、次のとおりです。
- 亡くなった配偶者の、生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 亡くなった配偶者の住民票の除票
- 遺産分割協議書と、相続人全員の印鑑証明書
- マンションを相続する人の住民票
- 固定資産評価証明書
戸籍の束は、「法定相続情報一覧図」に置き換えられます。法務局に戸籍の束と一覧図を出すと、認証された写しを無料で受け取れ、以後はこの写しを戸籍の束の代わりに使えます。
銀行の相続手続きにも使えるので、先に作っておくと手間が減ります。
| 登記 | 登録免許税 |
|---|---|
| 相続登記 | 固定資産税評価額の0.4% |
| 抵当権抹消登記 | 不動産1個につき1,000円 |
マンションの評価額は、建物と、土地のうち敷地権の割合の分を合わせて計算します。
抵当権は、ローンを返し終えたあとも、抹消の登記をするまで記録に残ります。抹消で数える不動産の個数は、登記事項証明書で確かめられます。申請は自分でもでき、司法書士に頼むこともできます。
出典: 国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」/法務局「法定相続情報証明制度について」/e-Gov法令検索「登録免許税法」
住宅ローンの組み方別に見る、団信で完済される範囲
団信は、ローンを借りた人が亡くなったときに、保険金で残りのローンを返す保険です。
保険金で返す対象は、団信に入っていた人の借入です。そのため、どこまで返されるかは、住宅ローンの組み方で変わります。
| ローンの組み方 | 配偶者が亡くなったとき |
|---|---|
| 配偶者の単独ローン | 全額が完済される |
| ペアローン | 配偶者の借入だけが完済される |
| 連帯債務・連帯保証 | 団信の契約で、完済の額が変わる |
| 団信なしのローン | 相続人が返済を引き継ぐ |
保険金は、金融機関へ死亡を届け出て、請求したときに支払われます。まずローンの契約書で組み方と団信の種類を確かめ、金融機関へ連絡しましょう。
亡くなった人の単独ローンは全額完済
亡くなった配偶者がひとりでローンを借り、団信に入っていたなら、残りのローンは保険金で全額返されます。
請求の手続きが終わると、金融機関から完済の知らせと、抵当権を抹消するための書類が届きます。売った代金は、諸費用と税金を引いた額が、そのまま手元に残ります。
ローンを返し終えた後にかかるお金は、毎月の管理費と修繕積立金、年に一度の固定資産税です。返済のために急いで売る理由は消えるので、住み続ける暮らしと、売った後の暮らしを落ち着いて比べられます。
請求してから保険金が支払われるまでの間、毎月の引き落としをどう扱うかは、金融機関ごとに違います。死亡を届け出るときに、あわせて聞いておくと安心です。
ペアローンは亡くなった人の借入だけ完済
ペアローンでは、亡くなった配偶者のローンは完済され、自分のローンはそのまま残ります。
ペアローンは、夫婦がそれぞれ1本ずつローンを組み、それぞれが団信に入る形です。
マンションを売るには、2本のローンに付いた抵当権を、どちらも消す必要があります。
残った自分のローンは、売った代金で返すのが一般的です。売れた金額が残高より少ないときは、差額を手元の資金で埋めることになります。
住み替え先もローンで買うなら、今のローンの返済額も審査で数えられます。先に売って自分のローンを返してから次の住まいを決めると、審査で見られる返済の負担が軽くなります。
連帯債務・連帯保証は、団信の契約で完済の額が変わる
連帯債務と連帯保証は、1本のローンを夫婦で返していく形で、完済される額は団信の入り方で決まります。
| 組み方 | 団信の入り方 | 配偶者が亡くなったとき |
|---|---|---|
| 連帯債務 | 夫婦2人で1つの団信(夫婦連生団信) | 全額が返される |
| 連帯債務 | 1人だけが加入 | 加入していた人なら、契約で決めた範囲(全額か一部)が返される |
| 連帯保証(収入合算) | 一般に、借りた本人だけが加入 | 本人なら全額が返され、保証人なら本人が返済を続ける |
連帯債務は、夫婦の両方が、借入の全額について返す責任を負う形です。
連帯保証(収入合算)は、ローンを借りる人は1人で、もう1人が保証人になる形です。亡くなったのが保証人のほうなら、残りのローンは、借りた本人が返し続けます。
どの範囲まで保障されるかは、団信に入ったときの書類か、金融機関への問い合わせで確かめられます。
団信なしのローンは、相続人が返済を引き継ぐ
団信なしで借りたローンは、亡くなった配偶者の借金として、相続人が返済を引き継ぎます。
団信に入るかを借りる人が選べるローンでは、団信なしで借りている場合があります。
相続人が複数いて、遺産分割で「ローンは配偶者がまとめて引き継ぐ」と決めるなら、金融機関とも相談して、承諾を得ておく必要があります。
対応は、主に次の2つです。
- マンションを売った代金で、残りのローンを返す
- 相続放棄をする
相続放棄は、相続を知ったときから3か月以内に、家庭裁判所へ申し立てる手続きです。放棄すると、借金と一緒に、マンションや預金も手放すことになります。
売れる金額がローンの残高より多いなら、相続してから売って返すほうが、手元にお金が残ります。期限は3か月なので、早めに査定を取って、残高と比べておきましょう。
出典: 裁判所「相続の放棄の申述」
配偶者から相続したマンションの売却で使える、税金の特例
マンションを売って利益(売却益)が出ると、所得税と住民税がかかります。配偶者から相続したマンションなら、次の特例で税金を減らせます。
売却益は、売った金額から、取得費と売るための費用を引いて計算します。相続したマンションの取得費は、亡くなった配偶者が買ったときの代金などが基になります。
買ったときの売買契約書を紛失していると、取得費は売った金額の5%で計算され、売却益が大きくなります。契約書は、早めに探しておきましょう。
特例は、確定申告をして初めて使えます。名前の似た「相続した空き家の特例」は、マンションのような区分所有の建物を対象から外しています。
出典: 国税庁「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」/国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」/国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
住まいを売ったときの3,000万円特別控除
相続した後も配偶者がそのマンションに住み続けていれば、売却益から最大3,000万円を差し引けます。
この特例は、自分が住んでいる家を売ったときに使える制度です。夫婦で暮らしてきたマンションを受け継いだ配偶者は、相続の前から住み続けているので、自分の住まいとして対象になります。
夫婦の共有名義だった場合は、もともとの自分の持分と、相続した持分の両方が対象になります。
子どもや親族に買ってもらうときは、注意が必要です。親子や夫婦など、特別な関係のある人への売却は特例から除かれています。この控除を使うなら、買主は第三者に限られます。
出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
所有期間10年超の軽減税率
売った年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていれば、3,000万円を差し引いた後の売却益に、通常より低い税率がかかります。
相続したマンションの所有期間は、亡くなった配偶者が買った日から数えます。夫婦で長く住んできたマンションなら、相続した直後に売っても、この条件を満たせます。
| 区分 | 所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 軽減税率(6,000万円以下の部分) | 10% | 所得税額の2.1% | 4% | 14.21% |
| 通常の税率(所有期間5年超) | 15% | 所得税額の2.1% | 5% | 20.315% |
この特例は、3,000万円特別控除と一緒に使えます。控除しても売却益が残りそうなら、この特例の条件も確かめておきたい点です。
出典: 国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」/国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」/国税庁「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」/e-Gov法令検索「地方税法」附則第34条の3
3,000万円特別控除と住宅ローン控除は、どちらか一方を選ぶ
住み替え先を住宅ローンで買って住宅ローン控除を受けるなら、3,000万円特別控除とのどちらか一方を選ぶことになります。
今のマンションの売却で3,000万円特別控除や軽減税率を使うと、新しい住まいは住宅ローン控除の対象から外れます。制限がかかる期間は、新しい住まいに住み始めた年と、その前2年・後3年の計6年間です。
2020年3月31日以前に売った場合は、住み始めた年とその前後2年の計5年間でした。以前の期間を覚えている人は、今の6年間で数え直しておきましょう。
どちらを選ぶかは、次の2つの金額を比べて決めます。
- 特例なしで売ったときの税金(売却益×20.315%が目安)
- 住宅ローン控除で戻る税金の見込み総額
税金のほうが小さければ、住宅ローン控除を選ぶほうがお金が残ります。
次の住まいを売った代金と手元の資金で、現金で買うなら、特例をそのまま使えます。
出典: 国税庁「No.1211-1 住宅を新築または新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」/国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
マンションを売る時期に関わる、相続手続きと税金の期日
配偶者が亡くなったあと、マンションをいつ売るかは、気持ちの整理がついてから決められます。
売る時期に関わる期日は、次の4つです。
| 手続き・特例 | 期日 | 過ぎたとき |
|---|---|---|
| 相続税の申告 | 亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内 | 遺産分割がまとまる前に期限が来ると、配偶者の税額軽減などが後回しになる |
| 相続登記の申請 | 相続で取得したことを知った日から3年以内 | 10万円以下の過料を科される可能性がある |
| 3,000万円特別控除 | 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで | 売却益の全額に税金がかかる |
| 軽減税率 | 売った年の1月1日時点で所有期間10年超 | 10年以下なら通常の税率になる |
売り出してから引き渡すまでには数か月かかるので、期日から逆算して動き始めましょう。
相続税の申告期限は10か月以内
相続税がかかる人は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に申告する必要があります。
特例を使う前の遺産の合計が基礎控除以下なら、相続税は0円です。この場合は、売る時期をこの期日と切り離して決められます。
| 亡くなった日 | 基礎控除 |
|---|---|
| 2015年1月1日以後 | 3,000万円+600万円×法定相続人の数 |
| 2014年12月31日以前 | 5,000万円+1,000万円×法定相続人の数 |
以前の相続で聞いた額より、今の基礎控除は低くなっています。
遺産分割がまとまる前に期限が来ると、次の2つの特例を外して、いったん相続税を計算し、申告することになります。
- 配偶者の税額軽減(配偶者が受け継いだ遺産が、1億6千万円か法定相続分の多いほうまでなら、配偶者の相続税が0円になる制度)
- 小規模宅地等の特例(自宅の土地の評価を、330㎡まで80%減らす制度)
配偶者の税額軽減は、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を付けておけば、分割がまとまった後に使えます。
配偶者が相続した場合、小規模宅地等の特例は、申告期限より前に売っても使えます。10か月の期限より前でも、売る時期は自由に決められます。
出典: 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」/国税庁「No.4152 相続税の計算」/財務省「相続税の改正に関する資料」/国税庁「相続税の申告要否判定コーナー」/国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」/国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
相続登記の申請期限は3年以内
相続でマンションを取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する義務があります。
それまで任意だった相続登記の申請は、2024年4月1日に義務になりました。正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料を科される可能性があります。
それより前に相続したマンションも対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。売るかを決めかねて時間がたつときは、この期限に注意しておきましょう。
遺産分割が長引いて期限が近づいたときは、法務局へ「相続人申告登記」を申し出ると、申請の義務を果たせます。
その後、遺産分割が成立したら、その日から3年以内に、分割の内容で相続登記を申請する必要があります。この登記を終えると、マンションを売れる状態になります。
出典: 法務省「相続登記の申請義務化」/鹿児島地方法務局「相続登記のご案内」
3,000万円特別控除の期限は転居から3年後の年末
先に引っ越してから売るなら、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ると、3,000万円特別控除を使えます。
つまり、3年ちょうどより少し長く、その年の年末まで売れる期間があります。
期限は、住まなくなった日から数え始めます。住みながら売るなら、売り出す時期を自分の都合で選べます。
空室にしたあと売り出しを先延ばしにすると、期限はいつの間にか近づきます。売り出してから引き渡すまでに数か月かかることもあるので、期限まで余裕のあるうちに売り出しておくと安心です。
出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
軽減税率の判定日は売った年の1月1日
所有期間10年超の軽減税率は、売った年の1月1日時点で、所有期間が10年を超えているかで判定します。
つまり、売る年を1年ずらすだけで、税率が下がる場合があります。
売った日は、原則として、マンションを買主に引き渡した日です。売買契約の効力が生じた日を選ぶこともできます。年末に契約して年明けに引き渡すなら、どちらの日で申告するかで、判定の年が変わります。
3,000万円特別控除を差し引いても売却益が残る人は、この判定日で税金が変わります。当てはまりそうなら、売る年を決める前に確かめておきましょう。
出典: 国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」/国税庁「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」/国税庁「所得税基本通達36-12」
住みながら売る場合と先に引っ越す場合の、メリットとデメリット
住みながら売ると住居費の負担が軽く、先に引っ越して売ると内覧や片付けの負担が軽くなります。
主な違いは、次のとおりです。
| 比べる点 | 住みながら売る | 先に引っ越して売る |
|---|---|---|
| 住居費 | 今のマンションの分だけ | 売れるまで新しい住まいの分も重なる |
| 内覧 | 毎回、片付けと立ち会いが必要 | 買い手の都合に合わせて組める |
| 遺品整理 | 内覧と並行して進める | 売り出す前に済ませられる |
| 3,000万円特別控除の期限 | 売り出す時期を自由に選べる | 転居から3年後の年末まで |
住みながら売ると、住居費の二重払いを避けられる
住みながら売れば、売れるまでにかかる住居費は、今のマンションの分だけで済みます。
管理費・修繕積立金・固定資産税は、売れて引き渡すまで払い続ける費用です。先に引っ越すと、ここに新しい住まいの家賃やローンの返済が加わります。
引っ越しが1回で済むのも利点です。売買契約が決まってから、引き渡しの日を買主と相談して決め、その日に合わせて次の住まいへ移れます。
売れた金額が分かってから次の住まいの予算を決められるので、資金の計画も立てやすくなります。
年金収入が中心で、売った代金を次の住まいの購入資金に充てたい人には、この順番がおすすめです。
住みながら売ると、内覧の立ち会いと遺品整理が重なる
住みながら売ると、内覧のたびに部屋を片付けて立ち会うことになり、その時期が遺品整理とも重なります。
内覧は買い手の休みに合わせて、週末に入ることが多くあります。そのたびに、見せられる状態に部屋を整える手間がかかります。
亡くなった配偶者の衣類や趣味の品を整理しながら部屋を保つのは、体力的にも負担です。思い出のある部屋に初めて会う人が入ることを、つらく感じる人もいます。
負担を減らす方法は、次の3つです。
- 内覧の案内は不動産会社の担当者に任せ、立ち会いは挨拶程度にする
- 居間や寝室など、人目に触れやすい部屋の遺品整理を、売り出す前に済ませる
- 内覧の予定に合わせて、子どもに来てもらう
子どもが内覧の日に来てくれれば、片付けと立ち会いを一度に分担できます。
先に引っ越すと、空室で内覧の日程を組みやすい
先に引っ越して空室にすると、買い手の都合に合わせて内覧の日を組めます。
鍵を不動産会社に預けておけば、平日や急な申し込みにも、担当者だけで対応できます。担当者だけの案内なら、買い手は落ち着いて収納や水回りを見られます。
空室なら、ハウスクリーニングや小さな修繕も入れやすくなります。家具を運び出した部屋は広さが伝わりやすく、内覧のたびに部屋を整える手間も省けます。
遺品整理を、売り出す前に終えられるのも利点です。配偶者の持ち物を整理する時間を、売る準備と切り離して取れるので、気持ちに区切りをつけてから売り出せます。
先に引っ越すと、住居費が二重になる
先に引っ越すと、マンションが売れて引き渡すまで、管理費・修繕積立金・固定資産税と、新しい住まいの費用を両方払うことになります。
次の家を先に買うなら、マンションの売却代金が入る前に、購入資金を用意することになります。
賃貸に仮住まいする場合も、高齢の一人暮らしでは、入居審査が厳しくなる場合があります。早めに探し始めておくと安心です。
3,000万円特別控除の期限にも、気をつけておきましょう。期限は住まなくなった日から数え始めるので、空室の期間が長引くほど、売る時期の余裕が減ります。
期限の数え方は、「3,000万円特別控除の期限は転居から3年後の年末」で確かめられます。
出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
まとめ:名義を移し、住み続けている配偶者が売主になると税金を抑えられる
配偶者名義のマンションを売るには、先に相続登記で名義を移す必要があります。売るなら、住み続けている配偶者が受け継いで売主になると、3,000万円特別控除を使え、所有期間が10年を超えていれば軽減税率も重ねて、税金を大きく抑えられます。
最初の一歩は、管理組合へ連絡して、管理費と修繕積立金の引き落とし口座を変えることです。この一歩を飛ばすと、凍結された口座のまま管理費が滞納として積み上がり、売るときに買主への説明と精算が必要になります。
次は、住宅ローンの契約書で、組み方と団信の種類を確かめておきましょう。住み替えのトビラでは、配偶者が亡くなった後のマンションの売り方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
住み替えのトビラ 
