住宅ローンの返済が、毎月きつい。収入が減った、教育費が増えた、金利が上がった。このまま払い続けられるのか不安で、住み替えたほうが楽になるのではと考え始めた人に向けた記事です。
先に答えを書きます。まずは家を残したまま返済の条件を変えるか、借り換えるかで足りるかを確かめ、足りなければ住み替えを考えます。家を買い直す住み替えまで選べるのは返済が遅れる前までで、遅れが続いて一括での返済を求められると、売り方は任意売却に、住み替え先は賃貸が中心に変わります。
この記事では、住宅金融支援機構や国税庁、信用情報機関の公式情報をもとに、返済がきついときの選択肢、住み替えで返済が軽くなるかの判断基準、通常の売却と任意売却を分ける段階、住み替えるときの注意点を順に見ていきます。
住宅ローンの返済がきついときの選択肢
住宅ローンの返済がきついとき、選べる道は大きく3つあります。家を残したまま返済の条件を変える、金利の低いローンに借り換える、売って住居費の安い住まいに移る、の3つです。
| 選択肢 | 毎月の返済 | 総返済額 | 家 |
|---|---|---|---|
| 返済条件の変更 | 下がる | 増える | 残る |
| 借り換え | 下がる | 下がる場合がある | 残る |
| 住み替え | 次の住まいによる | 次の住まいによる | 手放す |
まずは家を残す2つで足りるかを確かめ、足りなければ住み替えを考えます。どれも、返済が遅れる前に動くほど選べる幅が広がります。
金融機関に返済条件の変更を相談する
最初に考えたいのが、借りている金融機関に返済の条件を変えてもらう方法です。
住宅金融支援機構の融資(旧住宅金融公庫の融資や、民間の金融機関で申し込んだフラット35)には、返済が苦しくなった人向けの「返済方法の変更」のメニューがあり、手数料は不要です。相談と申請の窓口は、返済中の金融機関(融資を申し込んだ金融機関)です。
住宅金融支援機構の返済方法の変更(3つのタイプ)
- 返済特例: 経済事情や病気、失業などで収入が減った人向け。返済期間を延ばす(最長15年・完済時の年齢の上限は80歳)。失業中の人や収入が20%以上減った人は、元金の支払いを止める期間(最長3年)も設けられる
- 中ゆとり: 相談して決めた期間だけ、毎月の返済額を減らす。期間が終わった後の返済額と総返済額は増える
- ボーナス返済の見直し: ボーナス返済の月の変更、毎月分とボーナス分の内訳の変更、ボーナス返済の取りやめ
返済特例を使えるのは、収入が減って返済が難しくなり、変更すれば今後の返済を続けられる人のうち、次の収入基準のどれかに当てはまる人です。
- 年収が、機構への年間の総返済額の4倍以下
- 月収が、世帯の人数×64,000円以下
- 住宅ローン(機構のほか民間の住宅ローンも含む)の年間の返済額が年収に占める割合が、年収300万円未満で30%、300万円以上400万円未満で35%、400万円以上700万円未満で40%、700万円以上で45%を超え、収入減少割合が20%以上
収入減少割合は「(前々年の収入−前年の収入)÷前々年の収入×100」で計算します。仮に前々年の年収が600万円、前年が480万円なら、(600万円−480万円)÷600万円=20%です。自分の数字は、前年と前々年の源泉徴収票などで入れ替えて計算します。
どのタイプも、変更の期間中と終わった後に返済を続けられるかの審査があり、希望どおりにならない場合もあります。返済期間を延ばすと毎月の返済は軽くなる一方、利息を払う期間が延びるので総返済額は増えます。収入の減少が一時的なら、期間を区切って返済額を軽くする中ゆとりが向いています。
民間の銀行のローンでも、条件の変更を相談できます。金融庁は2022年3月の要請で、住宅ローンについて顧客の状況やニーズに応じた返済猶予などの条件変更に迅速かつ柔軟に対応するよう、金融機関に求めました。どこまで応じるかは銀行ごとの審査で決まるので、まず返済中の銀行の窓口に相談します。
大切なのは、返済が遅れる前に相談することです。遅れる前の相談なら、信用情報に延滞の記録が付く前に手を打てます。
出典: 住宅金融支援機構 月々の返済でお困りになったとき 出典: 住宅金融支援機構 ご返済が困難になっているお客さまへ(返済特例の概要) 出典: 住宅金融支援機構 返済方法の変更を希望するとき 出典: 【フラット35】月々の返済でお困りになったときは 出典: 金融庁 事業者等に対する金融の円滑化について(2022年3月8日)
金利の低いローンに借り換える
今のローンより金利の低いローンに借り換えると、毎月の返済額と総返済額の両方を下げられる場合があります。
借り換えの効果が大きいのは、金利の差が大きい、ローンの残高が多い、残りの返済期間が長い、の3つがそろうときです。反対に、残高が少なかったり、残りの期間が短かったりすると、効果は小さくなります。
借り換えには費用がかかります。主なものは、新しいローンの事務手数料、保証料(フラット35は保証料が要らず、融資手数料がかかる)、抵当権を付け替える登記の費用です。登記にかかる登録免許税は、抵当権の設定で債権金額の1,000分の4です。住宅を新築・取得するための借入れには1,000分の1に下がる特例がありますが、取得してから1年以内の登記などが要件なので、借り換えで使えるかは金融機関や司法書士に確かめます。
仮に2,500万円を借り換えるなら、登録免許税だけで2,500万円×0.4%=10万円です。ここに手数料や保証料、司法書士の報酬が加わり、総額が数十万円になることもあります(総額は金融機関と借りる額で変わる目安です)。機構も、借り換えは諸費用を含めた総費用で考えるよう案内しています。下がる返済額の合計と、かかる費用を比べて判断します。
また、借り換えには新しい審査があります。収入が下がっている場合は、審査が通りにくくなることがあります。
出典: 【フラット35】借換融資の検討 出典: 【フラット35】ご利用条件 出典: e-Gov法令検索 登録免許税法(別表第一 一(五)) 出典: 国税庁 No.7191 登録免許税の税額表
売って住居費の安い住まいに移る
条件の変更や借り換えでも足りないときは、ローンそのものが家計に対して重すぎる状態です。この場合は、今の家を売って、住居費の安い住まいに移る方法を考えます。
移り先は2通りです。1つは、今より価格の安い家を買い直す方法です。売った代金でローンを返し、残ったお金を頭金にして、借りる額を小さくします。もう1つは、賃貸に移る方法です。ローンがなくなり、毎月の住居費は家賃が中心になります。
どちらが合うかは、今の家がいくらで売れるか、ローンがいくら残っているか、新しいローンを組めるかで決まります。住み替えで本当に返済が軽くなるかは、次の章の計算で確かめます。
住み替えで返済を軽くできるかの判断基準
住み替えで返済が軽くなるかは、2つの計算で判断できます。売ったらいくら残るかと、次の住まいで毎月いくら払うかです。そこに、新しいローンを組めるかが加わります。
売却の手取りが残債を上回るか
最初に計算するのは、売ったときに手元にいくら残るかです。
手元に残る額 = 売却価格 − 仲介手数料などの費用 − ローンの残高
仮に置いた数字です。売却価格3,000万円・仲介手数料などの費用110万円・ローンの残高2,800万円の場合
・手元に残る額: 3,000万円 − 110万円 − 2,800万円 = 90万円
・ローンの残高が3,000万円なら: 3,000万円 − 110万円 − 3,000万円 = −110万円(売っても110万円足りない)
・自分の場合は、査定の価格・費用の見積もり・残高証明書の残高を同じ式に入れる
売却価格は、不動産会社の査定で目安を知ります。1社だけでは幅が分かりにくいので、複数の会社に頼みます。ローンの残高は、金融機関の残高証明書や返済予定表で正確に確かめます。
計算の結果がプラスなら、売ればローンを返し終え、残ったお金を次の住まいに回せます。マイナスなら、売ってもローンが残る状態(オーバーローン)で、売るには差額を手元のお金で払う必要があります。差額を用意できるかが、住み替えができるかの分かれ目になります。オーバーローンの差額の埋め方は、別の記事で扱っています。
次の住まいの住居費が今より下がるか
次に、毎月の住居費を今と比べます。ここで大事なのは、ローンの返済だけで比べるのをやめ、住まいにかかる費用をすべて並べることです。
| 項目 | 今の家 | 次の住まい |
|---|---|---|
| ローンの返済(または家賃) | ||
| 管理費・修繕積立金 | ||
| 固定資産税(月割り) | ||
| 合計 |
マンションの場合、ローンのほかに管理費、修繕積立金、固定資産税がかかります。修繕積立金を段階的に引き上げる計画(段階増額積立方式)のマンションでは、国土交通省のガイドラインも、築年数がたつにつれて必要な積立金が増えると説明しています。今は払えていても、数年後に負担が増えることがあるので、管理組合の長期修繕計画で今後の金額を確かめます。
次の住まいでも同じ項目を並べ、合計が今より下がるかを見ます。賃貸に移る場合は、家賃のほかに更新料や駐車場代も入れます。合計が十分に下がらなければ、住み替えても家計は楽になりにくいので、条件の変更や借り換えと比べ直します。
出典: 国土交通省 マンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和6年6月改定)
新しい住宅ローンを組めるか
家を買い直す場合は、新しい住宅ローンを組めるかを確かめます。
1つ目の条件は、これまでの返済に遅れがないことです。返済の遅れが長く続くと、その記録が信用情報に残り、新しいローンの審査は通りにくくなります(記録の基準は次の章で見ます)。
2つ目は、年収に対する返済の割合(返済負担率)です。収入が下がっていれば、借りられる額も下がります。今のローンが残っている間は、その返済も合計されます。フラット35では、売却で今のローンを返し終えられると確かめられる場合に限り、今のローンの返済を計算から外せる決まりです。
返済中の住宅ローンの融資対象となっている現在居住している住宅を売却予定で、その売却予定額により当該住宅ローンを完済できることが確認できる場合に限り、総返済負担率の算定において当該住宅ローンの返済額を年間返済額から除くことができることとします。
(住宅金融支援機構【フラット35】よくある質問 Q&A番号3222)
同じ回答では、売却予定額が残高に届かなくても、差額を手持ちのお金や新しい借入れで賄うと資料で確かめられれば外せるとしています。民間の銀行でどの段階から外して見てもらえるかは、銀行ごとに確かめます。
新しいローンを組めない、または組める額では欲しい家に届かない場合は、賃貸に移る方法が現実的な選択肢になります。
出典: 住宅金融支援機構【フラット35】よくある質問「総返済負担率はどのように算定すればよいですか。」
通常の売却と任意売却を分ける段階
返済がきついとき、売り方には「通常の売却」と「任意売却」があります。分かれ目は、返済が遅れているかどうかです。流れを時間の順に並べると、次のようになります。
- 返済がきつくなる
- 返済が遅れる(滞納)
- 金融機関から督促が届く
- 遅れが続き、一括での返済を求められる(期限の利益の喪失)
- 保証会社の付いたローンでは、保証会社が代わりに返済する(代位弁済)
- 任意売却か競売へ
通常の売却で住み替えられるのは、2の滞納の前までです。任意売却の詳しい仕組みは、別の記事で扱っています。
滞納する前なら通常の売却で住み替えられる
返済が遅れる前なら、今の家は通常の売却で売れます。売る価格も時期も、自分で決められます。
売った代金でローンを返し終えれば、信用情報に延滞の記録が付かないまま完済できます。新しい住宅ローンの審査にも進めるので、家を買い直す住み替えも選べます。
ただし、売るには時間がかかります。東日本不動産流通機構の集計では、2025年に首都圏で成約した中古マンションの、登録から成約に至る日数は平均82.5日でした。そこから決済と引き渡しまでの期間が加わるので、売り出しから引き渡しまでは3〜4か月ほどを見込みます(成約後の期間は物件と買主によって変わる目安です)。その間もローンの返済は続きます。
返済がきつくなってきたら、まだ払えているうちに査定を受け、売り出す準備を始めます。「あと何か月なら払い続けられるか」を数えて、その範囲で売り切れる計画を立てます。
出典: 東日本不動産流通機構 首都圏不動産流通市場の動向(2025年)
滞納が続くと期限の利益を失い一括返済を求められる
返済が遅れると、金融機関から督促の連絡や書面が届きます。この段階で遅れた分を払えば、元に戻せることもあります。
遅れが続くと、「期限の利益」を失います。期限の利益とは、決められた期日まで分けて返せばよい、という借りる側の権利です。これを失うと、残っているローンを一括で返すよう求められます。民法137条が定める期限の利益の喪失は、破産手続の開始や担保を減らしたときなどで、返済の遅れで失う場合は、ローンの契約(金銭消費貸借契約)の条項で決まります。何回・何か月の遅れで失うかは、手元の契約書の「期限の利益の喪失」の項目で確かめます(数か月の遅れが続いた後になるのが目安です)。
一括で返せない場合は、保証会社の付いたローンでは、保証会社が代わりに金融機関へ返します(代位弁済)。その後は、保証会社から残りを返すよう求められる形になります。フラット35は保証人も保証料も要らないローンで、機構や機構の業務を受託する金融機関・債権回収会社が回収に当たります。
フラット35には、見落とされやすい点がもう1つあります。借入申込日が2017年10月1日以後のフラット35(買取型)で新機構団信に入っている場合などは、期限の利益を失うと、全額の繰上償還を求める期限の日で団体信用生命保険の保障が終わります。
また、遅れが一定の期間を超えると、信用情報機関に遅れの記録が登録されます。CICの場合、約定の返済日から61日以上、または3か月以上の延滞が「異動」として扱われ、保証会社による代位弁済(保証履行)も異動に含まれます。こうした記録を含むクレジット情報は、契約期間中と契約終了後5年間保有されます。記録が残っている間は、新しいローンやクレジットカードの審査が通りにくくなります。全国銀行個人信用情報センターやJICCは基準が違う場合があるので、気になるときは各機関に本人開示を申し込んで確かめます。
出典: e-Gov法令検索 民法(第137条 期限の利益の喪失) 出典: 住宅金融支援機構 任意売却パンフレット(令和8年4月) 出典: 【フラット35】ご利用条件 出典: CIC CICが保有する信用情報 出典: CIC 割賦販売統計データ(異動情報の定義)
任意売却になると変わる手続きと信用情報
返済を続けられなくなったとき、売っても残るローンを抱えたまま、債権者の同意を得て抵当権を外してもらい、市場で家を売る方法が任意売却です。多くは期限の利益を失った後に進みますが、住宅金融支援機構の融資では、全額の繰上償還を求められる前でも「期限の利益放棄確認用」の申出書を出して任意売却に入れます。この申出書を出すと、月々の返済を続ける権利を手放す意思表示になり、残りの全額の繰上償還を求められます。通常の売却で返し終えられる見込みがあるなら、出す前にもう一度計算します。
任意売却では、自分だけで決められることが減ります。機構の手続きを例にすると、次のとおりです。
- 不動産会社: 自分で選び、専任媒介か専属専任媒介の契約を結ぶ
- 売る価格: 査定をもとに機構が売出価格を確かめて通知する。確かめていない価格で買い手を見つけても、抵当権を外してもらえない場合がある
- 売る期間: 最初の媒介契約から6か月たっても買い手が現れないと、競売の手続きに移る場合がある
- 売っても残った借金: 返す義務は残る。返済の計画は、生活の状況を踏まえて返せる額を相談して決める
一方で、機構は任意売却を勧める理由として、通常の取引として売るので一般に競売より高く売れると期待できること、状況によって売却代金から仲介手数料や抹消登記の費用を差し引ける場合や、延滞損害金を減らす相談に応じられる場合があること、引き渡しの時期を調整しやすいことを挙げています。任意売却でかかる費用は、別の記事で扱っています。
任意売却をしないまま進むと、債権者が裁判所に申し立てて、家が競売(担保不動産競売)にかけられます。競売は裁判所の手続きなので、引っ越しの時期も手続きに合わせることになります。競売と任意売却の違いは、別の記事で扱っています。
任意売却の段階では、信用情報に遅れの記録が残っているため、しばらくは新しい住宅ローンを組むのが難しくなります。住み替え先は、賃貸が中心になります。家を買い直す住み替えができるのは、滞納する前までだと考えておきます。
出典: 住宅金融支援機構 融資住宅等の任意売却 出典: 住宅金融支援機構 任意売却パンフレット(令和8年4月) 出典: e-Gov法令検索 民事執行法(第180条 不動産担保権の実行の方法)
返済がきつい人が住み替えるときの注意点
返済を軽くするための住み替えでは、借りる額を増やさないことと、売って損が出たときの税の特例を使うことが大切です。賃貸に移る場合は、借りられる部屋を先に確かめておきます。
住み替えローンで残債を上乗せすると返済は重くなる
住み替えローンは、今の家を売っても残るローンを、新しい家のローンにまとめて借りられる商品です。たとえば三井住友銀行は、新しい自宅の購入費用と、今の自宅のローンの残りから売却額を引いた分を合わせて借りられると案内しています。オーバーローンでも住み替えられる方法として紹介されることがあります。
ただし、返済を軽くしたい人には逆方向の方法です。新しい家の代金に、今の家の残りのローンが上乗せされるので、借りる額は家の価格より大きくなります。返済負担率も上がり、毎月の返済が今より重くなることもあります。
利用の条件にも注意します。三井住友銀行のWEB申込専用住み替えローンは、今の住宅ローンを借りてから4年以上たち、直近1年間に返済の遅れがないこと、前年度の税込年収が500万円以上であることなどを条件にしています(2025年11月20日現在)。返済が遅れ始めてからでは、こうした商品も選びにくくなります。金利の扱いは銀行によって違い、りそな銀行は、金利は審査で決まり、住みかえローンだからといって上乗せはしないと案内しています。
返済を軽くする目的で住み替えるなら、借りる額を今より小さくすることが前提です。住み替えローンの仕組みと使いどころは、別の記事で扱っています。
出典: 三井住友銀行 住宅ローン WEB申込専用住み替えローン 出典: りそな銀行 住みかえローンの金利はどうなりますか?
売って損が出たら税金が戻る特例を確かめる
住宅ローンが残るマイホームを、ローンの残高より安く売って損が出た場合、税金が戻る特例があります。国税庁のタックスアンサー No.3390 で説明されている「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」です。家を買い直さなくても使えます。
特例を使うための主な要件(国税庁 No.3390)
- 自分が住んでいる家とその敷地を売った(住まなくなった家は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合)
- 売った年の1月1日時点で、家と敷地の所有期間がともに5年を超えている
- 売買契約日の前日に、その家の償還期間10年以上の住宅ローンの残高がある
- 売った価格が、その住宅ローンの残高を下回っている
- 売った相手が、親子や夫婦など特別の関係がある人以外である
売った損(譲渡損失)は、その年の給与所得などから差し引けます(損益通算)。差し引ける上限は、売買契約日の前日の住宅ローンの残高から売った価格を引いた額です。その年に引ききれない分は、翌年以後3年間に繰り越せます(繰越控除)。所得の要件がかかるのは繰越控除だけで、繰越控除を使えるのは合計所得金額が3,000万円以下の年に限られます。損益通算は、所得の多い年でも使えます。
仮に置いた数字です。取得費(購入代金と諸費用から減価償却分を引いた額)3,800万円・売った価格2,700万円・譲渡費用100万円・売買契約日の前日のローン残高2,900万円の場合
・譲渡損失: 3,800万円 + 100万円 − 2,700万円 = 1,200万円
・損益通算の上限: 2,900万円 − 2,700万円 = 200万円
・差し引けるのは200万円まで
・自分の場合は、(取得費+譲渡費用−売った価格)で損失を出し、(ローン残高−売った価格)と比べて小さいほうが対象になる
所得から差し引けると、源泉徴収された所得税の一部が戻り、翌年の住民税も下がります。実際に戻る額は所得と税率で人ごとに変わるので、税務署で確かめます。
この特例は期限付きです。国税庁の現在の案内(令和8年4月1日現在の法令)では、令和9年12月31日までの売却が対象です。以前の条文では令和7年12月31日までの売却が対象で、令和8年度の税制改正で2年延長されました。
使うには、売った翌年に確定申告が要ります。ローンの残高証明書は、売買契約日の前日のもの(譲渡資産に係る住宅借入金等の残高証明書)が要るので、契約の前に金融機関に頼む段取りを決めておきます。売る前の年や前々年に3,000万円の特別控除などを使っていると対象外になる決まりもあるので、売る前に税務署で確かめておきます。家を買い直す場合は、要件を満たせば別の特例(国税庁 No.3370)を使え、2つの特例はどちらか一方を選びます。
出典: 国税庁 No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例) 出典: 国税庁 No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例) 出典: 財務省 令和8年度税制改正の大綱
賃貸に移るなら家賃と入居審査を先に確かめる
売って賃貸に移る場合は、売り出す前に、借りられる部屋を確かめておきます。
まず家賃です。今の住居費(ローン、管理費、修繕積立金、固定資産税)の合計と比べて、十分に下がる家賃の部屋を探します。家族の人数や通勤、子どもの学校を考えると、思ったほど家賃の安い部屋が見つからないこともあります。
次に入居審査です。賃貸の審査では、収入や勤め先のほか、家賃の保証会社の審査があります。返済の遅れの記録がある場合、保証会社によっては審査が厳しくなることがあります。
家を売った後に住む場所が決まらないと、引き渡しの日に困ります。売却の契約より前に、住み替え先の候補と審査の見通しを立てておきます。
まとめ:住み替えで返済を軽くできるのは返済が遅れる前まで
返済がきついときは、まず返済条件の変更と借り換えで足りるかを確かめ、足りなければ住み替えを考えます。家を買い直す住み替えまで選べるのは、返済が遅れて信用情報に記録が付く前までです。一括での返済を求められると、売り方は任意売却に、住み替え先は賃貸が中心に変わります。
次の一歩は、返済がまだ続けられるうちに、返済中の金融機関に条件の変更を相談しながら、今の家の査定とローンの残高を確かめることです。これを後回しにして遅れが続くと、売る価格や時期を自分で決められなくなり、売り出しから引き渡しまでの3〜4か月をしのぐ余裕も失われます。
売って損が出そうなら、税金が戻る特例の要件と期限、売買契約日の前日の残高証明書の段取りを、売る前に確かめておきましょう。住み替えのトビラでは、住宅ローンの返済がきついときの住み替えの判断や任意売却との線引きも含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
住み替えのトビラ 
