マンションは売るか貸すかどっちが得?10年の収支シミュレーション

マンションは売るか貸すかどっちが得?10年の収支シミュレーション

住み替えが決まると、今のマンションを売って現金にするか、貸して家賃を受け取りながら持ち続けるかを決めることになります。

損得は、毎月の家賃より「何年か貸した後にいくらで売れるか」と「税の特例の期限」でほぼ決まります。比べるのは、今売った場合の手取りと、貸している間の手残りにその後売った手取りを足した合計です。

この記事では、判断基準、手取りの計算手順と10年の試算例、貸すと見落としやすい費用と税金、貸した後に売るときに手取りが減る原因を、国税庁や国土交通省、レインズの公表資料をもとに順に見ていきます。

マンションを売るか貸すかを決める判断基準

細かい計算に入る前に、方向はおおむね3つの物差しで決まります。

  • 将来、その部屋に住み戻る予定があるか
  • 売却価格に対して、家賃がどのくらい取れるか
  • 新居の購入に、売却代金が必要か

どれか1つでも「売る寄り」に当たるなら、貸すと決める前に一度立ち止まる価値があります。

将来その部屋に住み戻る予定があるか

戻って住む時期が決まっているなら、貸す理由ははっきりしています。「子どもが独立したら、駅に近い今の部屋に夫婦で戻る」のように、時期と理由を言える場合です。

反対に「いつか戻るかもしれない」くらいなら、売る寄りで考えるほうが安全です。

理由は税金の期限です。自宅を売ったときに利益から3,000万円を差し引ける特例は、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。迷いながら貸し続けているうちに、この期限を過ぎてしまうことがあります。期限の数え方は、後の章で説明します。

戻る予定がある人も、入居者との契約の種類で戻れる時期が変わります。戻る前提なら、期間が満了すると更新なしで終わる契約(定期建物賃貸借、いわゆる定期借家)で貸すのが基本です。定期借家は書面で契約し、更新がなく期間の満了で終わることを、前もって書面を渡して説明する決まりです。

転勤で家を離れ、戻る時期が会社の事情で決まる人は、転勤に絞って売却と賃貸を比べた記事もあわせて読むと、判断の材料がそろいます。

転勤の持ち家、売却と賃貸どっち?5軸の比較と収支で判断 転勤の持ち家、売却と賃貸どっち?5軸の比較と収支で判断

出典: 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例 出典: e-Gov法令検索 借地借家法(第38条)

売却価格に対する家賃の割合

貸して採算が合う部屋かどうかは、次の式で大まかに分かります。

  • 家賃×12か月÷今売った場合の価格=表面利回り

たとえば、4,000万円で売れる部屋を月15万円で貸せるなら、15万円×12÷4,000万円で4.5%です。ここから空室の月の分、管理費・修繕積立金、固定資産税、管理会社への委託料などを引くと、手元に残る割合はさらに下がります。後の試算例の条件では、ローン返済の前に残るのは年約86万円で、今売った場合の価格の約2.2%です。

家賃は売却価格と同じ割合で上がるとは限らず、価格が高い部屋ほどこの割合は小さくなることがあります。高く売れる部屋ほど「貸して稼ぐ」より「売って現金にする」ほうが有利になりやすい、という見方ができます。

まずは同じマンションか近い条件の賃貸募集を2〜3件調べ、自分の部屋の割合を出してみると、方向が見えてきます。

新居の購入資金に売却代金が必要か

新居の頭金や、新居のローンを小さくするお金に売却代金を充てるつもりなら、売る寄りです。

貸すと売却代金は入ってこないので、新居のローンを多めに借りることになります。今のローンと新居のローンが同時に続く、いわゆるダブルローンです。

ダブルローンの審査では、今のローンの返済も「年収に対する返済の割合」に入ります。家賃収入を返済の見込みとしてどこまで認めるかは、金融機関ごとに違います。

逆に、手元のお金だけで新居を買える人や、2つのローンを並べても審査に通る見込みがある人なら、貸す選択も現実的になります。

ダブルローンは組むべき?避けるべき?自分の状況で判断する5つの基準 ダブルローンは組むべき?避けるべき?自分の状況で判断する5つの基準

売る場合と貸す場合の収支を比べる手順

売るか貸すかを比べるとき、「売却代金」と「毎月の家賃」を並べるだけでは、材料が半分です。貸す人も、いつかは売るか住み戻るからです。

比べるのは、次の2つです。

  • 今売った場合の手取り
  • 何年か貸して、その後に売った場合の手取りの合計

同じ年数で並べると、損得が数字で見えてきます。

今売った場合の手取りの出し方

今売った場合の手取りは、次の式で出します。

  • 手取り=売却価格−売却にかかる費用−ローン残債−税金

売却にかかる費用でいちばん大きいのは、仲介手数料です。国土交通省の告示は、売買代金を200万円以下・200万円超400万円以下・400万円超の部分に分け、それぞれに5.5%・4.4%・3.3%(消費税込み)を掛けて合計した額を上限と定めています。400万円を超える物件では、この合計は「売却価格×3%+6万円」に消費税を足した額と同じになり、4,000万円なら138万6,000円です。ほかに、売買契約書の印紙代や、抵当権を消す登記の費用がかかります。

税金は、売って利益(譲渡所得)が出たときにだけかかります。住んでいた家を売る場合は、利益から3,000万円を差し引ける特例があるので、利益が3,000万円以内なら税金は0円で済みます。

ここで、新居を住宅ローンで買う人が見落としやすい点があります。新居に住み始めた年とその前2年・後3年の計6年間に、旧居の売却で3,000万円の特例や軽減税率の特例を使うと、新居の住宅ローン控除は対象外になります。売却益が小さいなら、特例を使わずに税金を払い、新居の住宅ローン控除を受けるほうが手元に多く残ることがあります。比べるのは、特例を使わずに払う税額(所有期間が5年を超えるなら利益×20.315%)と、新居の住宅ローン控除で戻る見込みの総額です。後の試算例の条件では、利益は約263万円で、特例を使わない場合の税額は約53.5万円です。

ローン残債は、金融機関の返済予定表で確かめられます。売却価格は、査定額より、近い条件の成約価格に寄せて見積もると安全です。

出典: 国土交通省 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(最終改正 令和6年6月21日) 出典: 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例 出典: 国税庁 No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除) 出典: 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算

貸した場合の毎年の手残りの出し方

貸した場合の手残りは、1年単位で出します。

足す・引く項目見積もりの方法
+家賃×入居している月数入れ替えの空室を年1か月ほど見込む
−管理費・修繕積立金今の額と、値上げの予定
−固定資産税・都市計画税納税通知書の額
−管理会社への委託料管理会社の見積もり
−火災保険など貸す用の契約に切り替えた後の額
−修繕・入れ替えの費用年あたりに均した額
−ローン返済返済予定表の額
−所得税・住民税家賃の利益×税率

よくある見落としは、家賃から管理費とローン返済だけを引いて「月○万円のプラス」と考えることです。

空室の月や入れ替えの費用は、毎月ではなく数年に一度まとめてやってきます。年単位で均して入れておくと、実際の手残りに近づきます。

数年貸してから売る場合の手取りの出し方

貸した後に売るときも、式は今売る場合と同じです。変わるのは、中に入る数字です。

項目今売る場合と比べた変化
売却価格築年数が進んで下がりやすい・入居者付きならさらに下がることがある
ローン残債貸している間の返済で小さくなる
税金期限を過ぎると3,000万円の特例と軽減税率が使えなくなる
取得費建物の目減り分だけ小さくなり、利益が大きく出る

4つのうち、手取りを増やす方向に働くのはローン残債だけで、残りの3つは手取りを減らす方向に働きます。

この4つを入れて売ったときの手取りを出し、貸していた年数分の手残りの合計を足します。これが「貸す」を選んだ場合の、最終的な手取りです。

10年で比べた試算例

条件を置いて、今売る場合と、10年貸してから売る場合を比べてみます。数字はすべて仮定です。

【試算の条件(すべて仮定)】

  • 15年前に4,000万円で新築を購入(建物2,000万円・土地2,000万円)、今売ると4,000万円
  • ローン残債2,000万円・金利0.8%・残り20年(元利均等で返済は年約108万円)
  • 家賃は月15万円、空室は年1か月
  • 管理費・修繕積立金は月3.5万円、固定資産税等は年12万円
  • 委託料は家賃の5%、保険は年1.5万円、修繕・入れ替え費用は年15万円
  • 家賃にかかる税は年6万円(家賃の利益を年約30万円、税率を20%と置いた額)
  • 印紙代・抵当権を消す費用などは、売るときに合計3万円
  • 10年後に売るときは3,000万円の特例の期限を過ぎているので、利益に20.315%の税金がかかる
今売る10年貸して売る
10年間の手残り0円約−280万円
売ったときの手取り約1,858万円約2,213万円(10年後に3,400万円で売れた場合)
合計約1,858万円約1,933万円

計算の順番は次のとおりです。

  • 今売る:4,000万円−仲介手数料138.6万円−諸費用3万円−残債2,000万円=約1,858万円(利益は約263万円で、3,000万円の特例により税金0円)
  • 貸している間:家賃165万円(11か月分)−諸費用78.75万円−ローン返済約108万円−税6万円=年約−28万円、10年で約−280万円
  • 10年後に売る:3,400万円−仲介手数料118.8万円−諸費用3万円−税金約25万円−残債約1,040万円=約2,213万円(取得費は後の章の計算で3,155万円、利益は約123万円)

貸している間は、ローン返済まで含めると毎年持ち出しになります。それでも合計で上回るのは、10年の返済で残債が約1,040万円まで減るからです。

ところが、10年後に3,000万円でしか売れなければ、貸した場合の合計は約1,571万円です。今売るほうが、約287万円多く残ります。

差を決めるのは「10年後の売却価格」

この条件では、10年後の売却価格が約3,300万円(今より約17%低い価格)を下回ると、今売るほうが多く残ります。自分の数字で試すときは、売却価格を「今と同じ」「1割下がる」「2割下がる」の3通りで計算しておくと、判断がぶれにくくなります。

【自分の数字に置き換える式】

  • 今売る場合=今の売却価格−仲介手数料−諸費用−今の残債−税金
  • 貸す場合=(1年の手残り×貸す年数)+(N年後の売却価格−仲介手数料−諸費用−N年後の残債−税金)
  • 1年の手残り=家賃×入居月数−管理費・修繕積立金−固定資産税等−委託料−保険−修繕費−ローン返済−家賃にかかる税

この試算は、今売った代金で新居のローンを減らせる利息の差や、新居の住宅ローン控除の額を除いて計算しています。新居で住宅ローン控除を受けるために今売る側で特例を使わない場合は、税金の約53.5万円が引かれ、そのかわり新居の控除で戻る分が加わります。

出典: 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算 出典: 国土交通省 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(最終改正 令和6年6月21日)

貸す場合に見落としやすい費用と税金

家賃の額面と、実際に手元に残るお金の間には差があります。その差を生むのが、貸してみて初めて気づく費用と税金です。ここでは、収支の見積もりで入れ忘れやすい4つを挙げます。

空室と入居者の入れ替えでかかる費用

入居者が出ていくと、次の人が決まるまで家賃は止まります。その間も、管理費・修繕積立金・固定資産税は持ち主が払い続けます。

退去のときは、部屋を元に戻す費用(原状回復)の分担が問題になります。民法は、通常の使い方で生じた損耗と年数による変化を、入居者が元に戻す対象から外しています。国土交通省のガイドラインも、日照などによる壁紙の変色や、家具を置いた床・カーペットのへこみを、貸主の負担としています。入居者に請求できるのは、わざと、または不注意で傷つけた分などです。

さらにガイドラインは、入居者が負担する分も年数がたつほど小さくなる考え方をとっていて、カーペットの例では6年で残存価値1円としています。長く住んだ入居者の退去ほど、張り替え費用のうち貸主が持つ割合は大きくなります。

次の入居者を募集するときは、仲介会社への手数料や広告の費用がかかることもあります。壁紙の張り替えやクリーニングを含めると、入れ替えのたびにまとまった出費になることもあるので、年あたりに均して積み立てておくと安心です。

出典: 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版) 出典: e-Gov法令検索 民法(第621条)

設備の故障と交換の費用

貸した部屋の設備が壊れたとき、直す義務は貸主にあります(民法606条)。給湯器、エアコン、トイレ、換気扇など、部屋に付けたまま貸した設備は、入居者の責任で壊れた場合を除いて、持ち主の負担で直すのが原則です。

自分で住んでいたときは「まだ使える」と我慢できた不具合も、入居者がいると早めの修理や交換が求められます。築年数が進むと、給湯器など複数の設備の交換時期が重なることもあります。

貸す前に主な設備の年数と状態を確かめ、交換が近いものは見積もりを取っておくと、収支の見積もりが現実に近づきます。

出典: e-Gov法令検索 民法(第606条)

家賃収入にかかる所得税・住民税

家賃収入は「不動産所得」として、所得税と住民税の対象になります。税金がかかるのは家賃そのものではなく、家賃から必要経費を引いた利益です。

必要経費には、次のようなものが入ります。

  • 管理費・修繕積立金、固定資産税
  • 管理会社への委託料、損害保険料、修繕費
  • ローンの利息(元本の返済分は入らない)
  • 建物の減価償却費

給与を1か所から受けている会社員でも、家賃の利益など給与以外の所得の合計が年20万円を超えると、確定申告が必要です。

気をつけたいのは、ローン返済のうち元本の部分は経費にならない点です。手元のお金は返済で出ていくのに、税金の計算では利益が出る、ということが起こります。収支の見積もりでは、税金を「利益×税率」で別に計算して引いておきます。

出典: 国税庁 No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得) 出典: 国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人

住宅ローン控除の停止と借入の扱い

住宅ローン控除は、その年の12月31日まで住み続けている家のローンに使える制度です。貸すために住まなくなると、その年の分から控除は対象外になります。控除の年数が残っている人は、その分の税金の戻りがなくなる点を収支に入れておきます。

もう1つは、住宅ローンそのものの扱いです。住宅ローンは本人や家族が住むための融資です。たとえばフラット35は、本人や家族が実際に住んでいるかを定期的に確かめ、第三者に貸すなどの使い方が分かった場合は借入れの全額を一括で返すよう求めるとしています。ほかの金融機関でも、承諾が得られなければ、賃貸用のローンへの借り換えなどを求められることがあります。

貸すと決める前に、まず借りている金融機関に「住み替えで貸したい」と相談し、条件を確かめておく。これが順番です。

出典: 国税庁 No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除) 出典: 住宅金融支援機構 【フラット35】ご利用条件

貸してから売るときに手取りが減る原因

「とりあえず貸して、売るのは後で考える」という選び方は、売る時点で損得が逆転することがあります。原因は、次の4つです。

  • 税の特例の期限
  • 入居者が住んだままの売却
  • 取得費の目減り
  • 築年数の経過

3,000万円特別控除と軽減税率の期限

自宅を売ったときに利益から3,000万円を差し引ける特例は、貸した後でも使えます。国税庁は、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることを条件とし、住まなくなった日以後はどのような用途に使ってもかまわないとしています。住まなくなった後に貸していても、この期限の中で売れば対象になります。

【期限の数え方の例】

2026年10月に引っ越して貸し始めた場合

  • 3年を経過する日:2029年10月
  • 売る期限:2029年12月31日

同じ期限は、売った年の1月1日で所有期間が10年を超える自宅を売ったときに税率が下がる特例(軽減税率)にもかかわります。この特例も、自宅として売ることが条件だからです。

よく「貸すと特例が使えなくなる」と言われますが、正しくは「期限を過ぎると使えなくなる」です。期限から逆算して、いつまでに売るかを先に決めておくと、貸す選択の損が小さくなります。

ただし、新居を住宅ローンで買った人は、もう1つの決まりと重なります。新居に住み始めた年の前2年から後3年までの間に旧居を売ってこれらの特例を使うと、新居の住宅ローン控除は対象外になり、すでに受けた控除は修正申告をして納め直します。旧居を出た年と新居に住み始めた年が同じなら、上の売る期限はこの6年間の最後の日にあたるので、期限内に特例を使って売るか、新居の住宅ローン控除を続けるかのどちらかを選ぶことになります。

出典: 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例 出典: 国税庁 No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例 出典: 国税庁 No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除) 出典: e-Gov法令検索 租税特別措置法(第35条・第41条第25項・第41条の3)

入居者付きで売ると価格が下がりやすい理由

入居者が住んだまま売ると、買い手は「自分で住みたい人」から「家賃収入がほしい投資家」に変わります。住宅ローンは買った人が自分で住むための融資で、たとえばフラット35は第三者に貸す目的の物件には使えないとしています。住む人向けのローンで買える人が減り、投資家は家賃に対して価格が高すぎないか(利回り)で値段を決めるので、住む人向けの相場より安い価格になりやすいのです。

では、入居者に出てもらってから売ればよいかというと、ここにも壁があります。一般的な賃貸契約(普通借家)では、貸主から更新を断ったり解約を申し入れたりするのに「正当の事由」が必要です(借地借家法28条)。正当の事由は、貸主と入居者のそれぞれが建物を使う必要性や、立ち退き料などのお金の申し出も合わせて判断されます。

売る可能性があるなら、最初から期間が満了すると終わる契約(定期借家、同38条)で貸すと、空室にして売る道を残せます。そのかわり、期間の決まった契約は家賃や入居者の決まりやすさに影響することもあるので、募集を任せる管理会社に条件を確かめ、その分も収支に入れておきます。

出典: e-Gov法令検索 借地借家法(第28条・第38条) 出典: 住宅金融支援機構 【フラット35】ご利用条件

減価償却で取得費が減る仕組み

売ったときの利益は「売却価格−取得費−売るための費用」で計算します。この取得費は、買ったときの価格そのままではなく、建物の分を年数に応じて減らした額です。

自分で住んでいた期間も、建物は目減りしたものとして計算します。国税庁が示している式は次のとおりです。

建物の取得価額×0.9×償却率×経過年数=減価償却費相当額

(国税庁 タックスアンサーNo.3261「建物の取得費の計算」より)

鉄筋コンクリート造のマンションなら、住んでいた期間の償却率は0.015です。経過年数の6か月以上の端数は1年とし、6か月未満の端数は切り捨てます。

貸していた期間は、さらに毎年の減価償却費を差し引きます。2007年4月1日以後に取得した建物なら、毎年の減価償却費は「建物の取得価額×償却率」で、鉄筋コンクリート造の住宅(耐用年数47年)の償却率は0.022です。

たとえば建物2,000万円の部屋に15年住むと、2,000万円×0.9×0.015×15年で405万円です。その後10年貸すと、2,000万円×0.022×10年で440万円がさらに減り、取得費は土地と合わせて3,155万円になります。取得費が小さくなるほど利益が大きく出て、3,000万円の特例が使えない時期に売ると、税金がかかりやすくなります。

出典: 国税庁 No.3261 建物の取得費の計算 出典: 国税庁 No.2109 新築家屋等を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却 出典: 国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表 出典: 国税庁 減価償却資産の償却率等表

築年数の経過による価格の下落

中古マンションの成約価格は、築年数が進むほど低くなる傾向があります。東日本不動産流通機構が公表した2025年の首都圏のデータでは、1㎡あたりの成約価格は次のとおりです。

首都圏の中古マンション 築年帯別の成約㎡単価(2025年)
  • 築11〜15年:114.11万円
  • 築16〜20年:99.13万円
  • 築21〜25年:86.10万円
  • 築26〜30年:64.45万円

築11〜15年と築21〜25年を比べると、約25%低い水準です。ただし、これは同じ年に取引された別々の物件の平均で、立地や建物の違いも含んだ数字です。同じ部屋が10年でこれだけ下がる、という意味とは別のものです。

貸している間にも、部屋は年を重ねます。築15年で貸し始めて10年たてば築25年で、買い手が比べる相手も築25年前後の物件になります。設備も古くなるので、売る前に手を入れる費用がかかることもあります。

相場全体は上がってきていて、2026年4〜6月の首都圏では、築20年を超える各築年帯の成約㎡単価がすべての都県・地域で前年同期を上回りました。10年後も今と同じか高く売れる可能性はありますが、それは相場が上がり続けた場合の話です。試算では売却価格を下げた場合も計算し、それでも貸すほうが得になるかを確かめておくと安心です。

出典: 東日本不動産流通機構 REINS TOPIC 築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2025年) 出典: 東日本不動産流通機構 REINS TOPIC 首都圏中古マンション・中古戸建住宅 地域別・築年帯別成約状況(2026年04〜06月)

まとめ:マンションは10年後の売却価格と税の期限で比べる

売るか貸すかの損得は、毎月の家賃より、貸した後にいくらで売れるかで決まります。この記事の試算では、10年後の売却価格が今より約17%下がるだけで、今売るほうが多く残りました。

次の一歩は、今の部屋の売却価格と賃料の相場を調べ、「今売る」と「N年貸して売る」の合計を、売却価格を3通りに変えて計算することです。この計算を飛ばして貸し始めると、売る時期を決めないまま3,000万円の特例の期限を過ぎ、税金の分だけ手取りが減ることがあります。

計算ができたら、借りている金融機関に貸す場合の条件を、新居を住宅ローンで買うなら住宅ローン控除と特例の重なりを確かめてみましょう。住み替えのトビラでは、マンションを売るか貸すかの収支の比べ方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。