相続対策のマンション、2024年の評価見直し後も持ち続ける?4択の税額比較

相続対策のマンション、2024年の評価見直し後も持ち続ける?4択の税額比較

2024年1月から、相続税を計算するときのマンションの評価額が、築浅で高い階の部屋では約2倍に上がりました。

それでも評価額は時価の6割ほどで、同じ額の現金で持つより相続税は安く済みます。

この記事では、住み替えを考えている人に向けて、住み続ける・売る・貸す・空き家の4択を税額で比べます。

「マンション節税は終わった」は半分だけ本当:2024年の評価見直しで何が変わったか

2024年1月から、時価よりかなり低く評価されていたマンションは、評価額が時価の6割まで引き上げられます。

築浅で高い階の部屋では、評価額が2倍近くに上がる例もあります。それでも評価額は時価の6割なので、同じ額の現金で持つより相続税は安く済みます。

評価額は約2倍に:築浅タワーマンションの試算では約2,870万円が約6,000万円に

時価1億円の築浅タワーマンションの部屋では、相続税評価額が約2,870万円から約6,000万円に上がります。

相続税は、時価(実際に売れる値段)ではなく、国のルールで決めた「相続税評価額」をもとに計算します。

これまでのルールでは、マンションの評価額が時価よりかなり低く出ていました。マンションは土地を何十世帯で分け合うので、1部屋あたりの土地の評価が小さくなります。建物の評価も、上の階と下の階でほぼ同じでした。

国税庁が2023年1月の有識者会議で示した例に、東京都の43階建ての23階にある部屋があります。この部屋の市場価格は1億1,900万円で、評価額は3,720万円でした。時価は評価額の約3.2倍です。

この差を縮めるため、国は2024年から、マンションの評価額に「区分所有補正率」という倍率を掛けることにしました。当サイトでは、築8年・40階建ての30階にある時価1億円の部屋を例に試算しました。

試算の前提(仮定の値)
  • 専有面積70㎡、土地の持分15㎡
  • 路線価(道路ごとに国税庁が決める、土地1㎡あたりの評価額)は1㎡あたり100万円
  • 建物の固定資産税評価額は1,374万円
  • ほかに預貯金5,000万円があり、子2人が受け継ぐ
  • 補正率は国税庁の計算式で出した2.087

計算は、次の順番で進めています。

  • これまでの評価額を出す(土地は100万円×15㎡=1,500万円、建物は1,374万円で、合計2,874万円)
  • 補正率を掛ける(2,874万円×2.087=約5,998万円)
  • 預貯金を足し、基礎控除を引く(約5,998万円+5,000万円−4,200万円=約6,798万円)
  • 子1人分の税額を出して2倍する(約3,399万円×20%−200万円=約480万円、2人で約960万円)

この前提で計算すると、子2人が払う相続税の合計は約450万円から約960万円になり、約510万円増えます。自分の部屋で試すときは、路線価・土地の持分・建物の評価額を自分の数字に置き換えて、同じ順番で計算するとよいでしょう。

出典: 国税庁「No.4667 居住用の区分所有財産の評価」

出典: 国税庁「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について」(2023年1月31日)

出典: 国税庁「No.4152 相続税の計算」

出典: 国税庁「No.4155 相続税の税率」

それでも評価額は時価の6割までで、現金より4割低い

新しいルールで引き上げられても、マンションの評価額は時価の6割で止まります。

国は、一戸建ての評価がおよそ時価の6割であることに合わせて、この線を決めました。もともと評価額が時価の6割以上ある部屋は、引き上げの対象外です。

つまり、現金1億円は1億円として計算されますが、時価1億円のマンションは6,000万円として計算されます。上の試算の部屋を持つ場合と、同じ額の現金を持つ場合の相続税を比べると、次のとおりです。

持っている財産相続税(子2人の合計)
時価1億円のマンション+預貯金5,000万円約960万円
現金1億円+預貯金5,000万円約1,840万円

財産をマンションで持つほうが、相続税は約880万円安くなります。

この記事でいう時価は、国税庁の計算式から推定した値段です。実際の売値が推定より高ければ、評価額は実際の売値の6割を下回ることもあります。

見直しでなくなったのは、評価額が時価の2〜3割で済むような大きな節税です。それでもマンションは、今も時価より4割ほど低く評価されます。

出典: 国税庁「No.4667 居住用の区分所有財産の評価」

これから変わる点:2027年1月の新ルールと、補正率の計算式

2027年1月1日以後の相続・贈与からは、人に貸している不動産の評価のルールも変わる予定です。

2026年9月18日に国税庁が公表した通達案では、亡くなる前5年以内に買った貸付用の不動産を時価に近い値段で評価します。国税庁は、10月18日までこの案への意見を募集しました。

このルールは、2026年10月26日時点ではまだ案の段階です。自分が住んでいる家は対象外です。住み替えを機に投資用の部屋を買う人は、この新しいルールに当てはまる可能性があります。

補正率を出す計算式も、今後変わる可能性があります。計算式に使う数字は、過去の売買データをもとに国税庁が決めました。

マンションの値段が大きく動けば、国税庁がこの数字を見直すことも考えられます。数字が見直されれば、同じ部屋でも評価額は変わります。

出典: e-Govパブリック・コメント「『貸付用不動産の評価について』の法令解釈通達(案)に対する意見公募手続の実施について」(国税庁)

出典: 国税庁「No.4667 居住用の区分所有財産の評価」

あなたのマンションの評価額はどれだけ上がった?築年数や階数で3タイプに分かれる

評価額の上がり方は、築年数・建物の総階数・部屋のある階・土地の持分の4つで決まります。

国税庁はこの4つから、時価が評価額の何倍かを推定する計算式を作りました。推定した倍率が大きい部屋ほど、評価額は大きく引き上げられます。

4つの要素ごとに、評価額が上がりやすい条件をまとめると次のとおりです。

要素評価額が上がりやすい条件
築年数新しい建物ほど
建物の総階数高い建物ほど(33階以上はどれも同じ扱い)
部屋のある階上の階ほど
土地の持分部屋の広さに比べて小さいほど

この4つの組み合わせで、部屋は大きく3つのタイプに分かれます。当サイトでは、どのタイプも専有面積70㎡の部屋を例にして、国税庁の計算式で評価額を試算しました。条件の組み合わせが変われば、結果も変わります。

大きく上がった部屋:築浅・高層階・土地の持分が小さい

新しくて高い建物の上の階にある部屋は、評価額が約2倍に上がりました。

例えば、都心のタワーマンションで上の階にある部屋がこれに当たります。築8年・40階建ての30階で、土地の持分が15㎡の部屋を例に計算しました。

計算式で推定すると、この部屋の時価は評価額の約3.5倍です。言いかえると、これまでの評価額は時価の約29%でした。

新しいルールで時価の6割まで引き上げると、評価額は約2.1倍になります。もっと新しい部屋や、もっと上の階の部屋なら、倍率はさらに大きくなります。

それでも、引き上げた後の評価額は時価の6割です。この部屋は、同じ額の現金で持つより4割低く評価されます。

出典: 国税庁「No.4667 居住用の区分所有財産の評価」

少し上がった部屋:築20〜30年の中層マンション

築20年を過ぎた10階前後の建物の部屋は、評価額が2割ほど上がりました。

例えば、郊外や地方の駅の近くに多い中層マンションの部屋がこれに当たります。築25年・10階建ての5階で、土地の持分が30㎡の部屋を例に計算しました。

計算式で推定すると、この部屋の時価は評価額の約2倍です。これまでの評価額は、時価の約49%でした。

これまでの評価額を時価の6割まで引き上げるので、評価額は約1.23倍になります。相続税が増えるとしても、増え方はタワーマンションの部屋よりずっと小さく収まります。

引き上げた後の評価額は時価の6割なので、この部屋も同じ額の現金で持つより4割低く評価されます。この点は、大きく上がった部屋と同じです。

出典: 国税庁「No.4667 居住用の区分所有財産の評価」

変わらなかった部屋:築古・低層で土地の持分が大きい

古くて低い建物で土地の持分が大きい部屋は、評価額がこれまでと同じ額になることがあります。

築35年・5階建ての2階で、土地の持分が45㎡の部屋を例に計算しました。計算式で推定すると、この部屋の時価は評価額の約1.4倍です。

この部屋では、これまでの評価額が時価の約73%あり、6割の線を上回っています。評価額が時価の6割以上ある部屋は補正率を掛ける対象外なので、評価額はこれまでと同じです。

地上2階以下の建物や、3戸以下ですべてを自分と親族で使っている二世帯住宅も、新しいルールの対象外です。こうした建物の部屋も、評価額はこれまでと同じです。

評価額がこれまでと同じでも、このタイプの部屋はもともと評価額が時価に近い額です。そのため、同じ額の現金で持つ場合と比べた相続税の差は、3タイプの中で最も小さくなります。

出典: 国税庁「No.4667 居住用の区分所有財産の評価」

自分の部屋の補正率は、国税庁の計算明細書で計算できる

自分の部屋の補正率は、国税庁のホームページにあるExcelの「計算明細書」に6つの項目を入れると計算できます。

6つの項目のほとんどは、法務局で取れる「登記事項証明書」に書いてあります。それぞれの項目を見る場所は、次のとおりです。

入力する項目登記事項証明書で見る場所
築年数専有部分の建物の表示の「原因及びその日付」(〇年〇月〇日新築)
総階数一棟の建物の表示の「構造」(「鉄筋コンクリート造14階建」など)
所在階専有部分の建物の表示の「床面積」(「7階部分」など)
専有面積同じ欄の面積
敷地の面積敷地権の目的である土地の表示の「地積」(複数あれば合計)
敷地権の割合敷地権の表示の「敷地権の割合」

専有面積の欄には、登記事項証明書に書かれた面積を入力しましょう。販売時のチラシに載っている面積は壁の中心から測っているので、登記の面積より少し広くなっています。

出た補正率をこれまでの評価額に掛けると、新しい評価額がわかります。これまでの評価額は、土地と建物の額を足して出します。それぞれの出し方は次のとおりです。

部分これまでの評価額の出し方
土地路線価×敷地の面積×敷地権の割合
建物毎年届く固定資産税の課税明細書にある評価額

新しい評価額を時価で割ると、時価に対する評価額の割合がわかります。この割合が低いほど、同じ額の現金で持つより相続税は安くなります。

時価の目安は、不動産会社の査定額や、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」に載っている近くの成約価格でつけられます。

出典: 国税庁「居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書」

出典: 国税庁「『居住用の区分所有財産の評価に関するQ&A』について(情報)」

出典: 国土交通省「不動産情報ライブラリ」

本当に大事なのは2回目の相続:誰が受け継ぐかで相続税が数百万円変わる

評価見直しで増えた相続税は、多くの場合、2回目の相続で子が払うことになります。

夫婦でマンションに住んでいる場合、相続はふつう2回起きます。

相続亡くなる人受け継ぐ人
1回目夫または妻残った配偶者
2回目残った配偶者子

1回目の相続では、配偶者向けの仕組みを使うと、相続税が0円で済む家庭が多くあります。2回目の相続では、使える仕組みが減ります。受け継ぐ子が親と一緒に住んでいたかによって、相続税は数百万円変わります。

配偶者が受け継ぐ:税額軽減で、相続税が0円で済むことが多い

1回目の相続で配偶者が受け継ぐ場合、マンションの評価額が上がっても、相続税は0円で済むことが多くあります。

配偶者には「配偶者の税額軽減」という仕組みがあります。配偶者が受け継いだ財産が1億6,000万円まで、または法律で決められた取り分(法定相続分)までなら、相続税は0円です。

自宅の土地の評価を減らす「小規模宅地等の特例」も、配偶者なら住み続けるなどの条件なしで使えます。

ただし、1回目で配偶者にほとんどの財産を集めると、2回目の相続で子が払う相続税が重くなります。配偶者の税額軽減は、配偶者だけが使える仕組みです。2回目の相続では相続人も1人減るので、基礎控除が600万円小さくなります。

1回目の相続で財産の分け方を決めるときは、税理士に2回目の相続税まで計算してもらうとよいでしょう。

出典: 国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」

出典: 国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」

出典: 国税庁「No.4152 相続税の計算」

同居している子が受け継ぐ:小規模宅地等の特例で、土地部分の評価を8割減らせる

2回目の相続でも、亡くなった親と一緒に住んでいた子が受け継げば、土地部分の評価を8割減らせます。

同居していた子は、小規模宅地等の特例を使えます。この特例は、自宅の土地のうち330㎡までが対象です。

特例を使うには、亡くなる直前から相続税の申告期限まで、子がその家に住み続け、持ち続ける必要があります。申告期限は、亡くなってから10か月後です。

マンションの場合、評価を減らせるのは土地の部分で、建物の部分はそのままです。時価1億円のタワーマンションの試算では、評価額約6,000万円のうち土地の部分が約3,130万円です。

特例を使うと、土地の部分の評価額は約630万円になります。その結果、子2人の相続税は約960万円から約540万円に下がります。

特例の対象は、親が亡くなったときに住んでいた家です。親が住み替えた後なら、旧居ではなく新しい家が対象になります。

出典: 国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」

別に家を持つ子が受け継ぐ:補正後の評価額にそのまま相続税がかかる

親と別に暮らし、自分の持ち家がある子が受け継ぐと、補正後の評価額にそのまま相続税がかかります。

こうした子の多くは、小規模宅地等の特例の対象から外れます。時価1億円のタワーマンションの試算では、同居している子なら約540万円で済む相続税が、約960万円になります。

例外は、いわゆる「家なき子」に当たる子です。別に住んでいても、次の条件をすべて満たせば特例を使えます。

  • 亡くなった親に、配偶者も同居の相続人もいない
  • 亡くなる前の3年間、子が賃貸住宅などに住んでいた
  • 子が、今住んでいる家を過去に一度も持ったことがない
  • 受け継いだ土地を、相続税の申告期限まで持ち続ける

子自身や子の配偶者、3親等内の親族、関係のある会社が持つ家に住んでいた場合は、2つ目の条件から外れます。

賃貸住宅に住んでいる子なら、特例を使える可能性があります。持ち家に住んでいる子や、配偶者の実家に住んでいる子は対象外です。

出典: 国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」

住み続ける・売る・貸す・空き家のまま持つ:モデルケースで税金を円で比べる

1つの家族を例に比べると、住み続ける・貸す・空き家のまま持つの3つは、どれも売るより相続税が安くなります。

比べるのは、この3つに「売って住み替える」を加えた4つの選択肢です。相続税と、マンションを売るときの税金の両方を、円で示します。

相続税がかかる家庭の目安と、モデルケースの前提

4つの選択肢を比べる前に、自分の家庭に相続税がかかるかを、基礎控除の額で確かめておきましょう。

相続税には、財産からまず差し引ける「基礎控除」があります。亡くなった人の財産の合計がこの額以下なら、相続税は0円です。基礎控除は「3,000万円+600万円×相続人の数」で、相続人が子2人なら4,200万円になります。

2024年に亡くなった人のうち、相続税がかかった人の割合は、全国で10.4%でした。東京国税局の管内(東京・神奈川・千葉・山梨)では、この割合が16.2%です。

都市部でマンションを持っている人は、相続税の対象になりやすいといえます。家庭の財産の合計は、マンションの評価額に預貯金や株などを足して見積もれます。

この記事のモデルケースは、次のとおりです。

モデルケース(2回目の相続の場面・仮定の値)
  • 本人は70代で、配偶者はすでに亡くなっている
  • 相続人は子2人で、どちらも別の場所に持ち家がある
  • マンションは築8年・40階建ての30階(時価1億円、評価額約6,000万円)
  • 2018年に新築を6,000万円で購入(土地3,000万円・建物3,000万円)
  • 預貯金は5,000万円
  • 住み替え先は賃貸住宅(比べやすくするため)
  • 家賃収入・管理費などの支出・今後の値動きは計算から除いた

このあと比べる4つの選択肢の税金は、すべてこのモデルケースで計算しています。

出典: 国税庁「No.4152 相続税の計算」

出典: 国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」

出典: 東京国税局「令和6年分 相続税の申告事績の概要」

4つの選択肢の税金を1つの表で比べる

モデルケースの相続税は、3年を超えて貸した場合がいちばん安く、売った場合がいちばん高くなります。

選択肢ごとの税金は、次のとおりです。相続税は子2人の合計です。

選択肢相続税本人が売るときの税金子が受け継いだ後に1億円で売るときの税金
住み続ける約960万円なし約700万円
売って住み替える約1,680万円約200万円なし(現金で受け継ぐ)
貸して住み替える(貸して3年超)約510万円なし約770万円
貸して住み替える(貸して3年以内)約690万円なし約740万円
空き家のまま持つ約960万円なし約700万円

売った場合の税金は、相続税と売るときの税金を合わせて約1,880万円です。住み続けた場合の相続税(約960万円)より、900万円ほど多くなります。

ただし、子が受け継いだ後に売るなら、表の右の列の税金もかかります。住み続けた場合でも、相続税と子が売るときの税金の合計は約1,660万円です。売った場合との差は、約220万円まで縮まります。

子が受け継いだマンションを売るときに知っておきたい仕組みが、2つあります。

相続した空き家を売るときの特別控除(最大3,000万円)は、1981年5月31日以前に建った一戸建てなどが対象です。マンションのような区分所有の建物は、この控除の対象外です。

一方、親が亡くなってから3年10か月以内に売れば、子が払った相続税の一部を、売るときの経費に足せます。表の右の列は、この仕組みを使う前提で、次の順番で計算しています。

  • 売却益を出す(1億円−親が買ったときの値段から建物の目減りを引いた約5,676万円−仲介手数料約337万円)
  • 経費に足せる相続税を引く(子が払った相続税×マンションの評価額÷相続した財産全体の評価額)
  • 残った額に税率20.315%を掛ける

出典: 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

出典: 国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」

出典: 国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」

住み続ける:同居の子が受け継げば、相続税は約540万円まで下がる

住み続けた場合の相続税は、受け継ぐ子が親と同居しているかで、約540万円と約960万円に分かれます。

住み続けると、マンションは補正後の評価額約6,000万円で計算されます。評価額が時価1億円より4,000万円低いので、現金で持つより相続税は安くなります。

モデルケースの子は2人とも別に持ち家があるので、小規模宅地等の特例の対象外です。そのため、相続税は約960万円です。子の1人が同居して受け継げば、相続税は約540万円まで下がります。

住み続けるなら、子に「この家に住む気があるか」を早めに聞いておくとよいでしょう。同居して受け継ぐ子がいれば、相続税を約420万円抑えられます。

出典: 国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」

売って住み替える:売るときの税金は約200万円、相続税は4つの中で最も高い

マンションを1億円で売ると、売るときの税金は約200万円ですが、相続税は4つの中で最も高くなります。

売ったお金は現金なので、ほぼそのままの額で相続税の計算に入ります。

2018年に6,000万円で買った部屋を1億円で売ると、売却益は約3,990万円です。自宅を売るときの3,000万円特別控除を使うと、税金がかかるのは残りの約990万円です。

売るときの税金は、次の順番で計算しています。

  • 買ったときの値段から建物の目減りを引く(建物3,000万円×0.9×0.015×8年=324万円なので、6,000万円−324万円=5,676万円)
  • 仲介手数料を出す((1億円×3%+6万円)×1.1=約337万円)
  • 売却益を出す(1億円−5,676万円−約337万円=約3,987万円)
  • 3,000万円特別控除を引いて税率を掛ける(約987万円×20.315%=約200万円)

売ったあと、手元には約9,460万円が残ります。このお金と預貯金5,000万円に相続税がかかり、税額は約1,680万円です。住み続けた場合より、相続税は約720万円多くなります。

一方で、現金は子2人で分けやすい財産です。また、売ったお金で新しいマンションを買って住めば、その部屋も時価より低く評価されます。そのため、住み続けた場合との相続税の差は縮まります。

出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」

出典: 国税庁「No.3261 建物の取得費の計算」

出典: 国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」

出典: 国土交通省「不動産取引に関するお知らせ」

貸して住み替える:相続税は最も安いが、売るときの控除の期限が進む

旧居を3年を超えて貸し続けると、相続税は4つの中で最も安い約510万円になります。

借りている人がいる部屋は、持ち主が自由に使える場面が限られるので、評価額が下がります。モデルケースでは、建物の評価が3割、土地の評価が2割ほど下がります。部屋全体の評価額は、約6,000万円から約4,480万円になります。

評価額は、次の順番で計算しています。

  • 建物は、借家権割合30%を差し引く(約2,868万円×(1−30%)=約2,007万円)
  • 土地は、借地権割合70%×借家権割合30%を差し引く(約3,130万円×(1−70%×30%)=約2,473万円)
  • 合計すると約4,480万円

借地権割合は路線価図に地域ごとに示されていて、このモデルケースでは70%としました。

貸し始めてから3年を超えていれば、貸付事業用の小規模宅地等の特例も使えます。この特例で土地の評価を200㎡まで半分にできるので、相続税は約510万円まで下がります。

貸して3年以内に親が亡くなった場合は、この特例の対象外です。その場合の相続税は約690万円です。

2027年から始まる予定の新しいルールは、亡くなる前5年以内に買った貸付用の不動産が対象です。2018年に買った自宅を貸す場合は、ふつうは対象外です。

注意したいのは、貸している間も、自宅を売るときの3,000万円特別控除の期限が進むことです。期限を過ぎてから売ると、売るときの税金は大きく増えます。子が受け継いだ後に売る場合もこの控除の対象外で、約770万円の税金がかかります。

マンションは売るか貸すかどっちが得?10年の収支シミュレーション マンションは売るか貸すかどっちが得?10年の収支シミュレーション

出典: 国税庁「No.4602 土地家屋の評価」

出典: 国税庁「No.4614 貸家建付地の評価」

出典: 国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」

空き家のまま持つ:相続税は住み続けた場合と同じで、出費だけが増える

住み替えた後に空き家のまま持つと、相続税は住み続けた場合と同じでも、税金以外の出費がかさみます。

子が別に家を持つモデルケースでは、住み続けても空き家にしても、小規模宅地等の特例の対象外です。どちらの場合も、相続税は約960万円になります。

ただし、親が老人ホームなどに入ったときは例外があります。親が要介護・要支援の認定を受けて施設に入り、元の家を空けたままにしておけば、その家は親の自宅として扱われます。

この場合、家なき子に当たる子などが受け継げば、小規模宅地等の特例を使える可能性があります。

空き家でも、管理費・修繕積立金・固定資産税は払い続けることになります。仮に年70万円とすると、5年で350万円になります。その間の家賃収入は0円です。

空き家にしている間も、自宅を売るときの3,000万円特別控除の期限は進みます。また、空いたままの部屋は傷みやすく、売るときの値段も下がりやすくなります。

空き家の期間が長いほど、出費が積み重なり、売るときの税金も増えやすくなります。

出典: 国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」

出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」

住み替えの前に知っておきたい、税金が変わる3つの期限

住み替えには、過ぎると税金が数百万円増える期限が3つあります。

3つの期限をまとめると、次のとおりです。

場面期限
旧居を売る引っ越して3年たつ年の12月31日まで
旧居を貸す亡くなる3年以上前に貸し始める
投資用の部屋を買い足す2027年1月から、買って5年以内の相続では時価に近い評価

売る・貸す・買う時期が少しずれるだけで、税金は数百万円変わります。住み替えの日程を決める前に、この表で自分の家族に関係する期限を確かめておくと安心です。

売るなら:引っ越して3年たつ年の12月31日までに売る

旧居から引っ越して3年たつ年の年末までに売れば、売却益から3,000万円を差し引けます。

この「3,000万円特別控除」は、住まなくなった後でも、期限内なら使えます。例えば2026年10月に引っ越した場合、3年たつのは2029年10月なので、2029年12月31日が期限です。

モデルケースでは、期限内に売れば税金は約200万円です。期限を過ぎると控除の対象外になり、税金は約810万円に増えます。売る時期が少しずれるだけで、600万円ほどの差がつきます。

期限内に売っても、控除の対象外になる場合が2つあります。親子や夫婦など特別な関係の人に売る場合と、売った年の前年か前々年に、この控除などをすでに使った場合です。

売った年の1月1日時点で持っていた期間が10年を超えると、税率が下がる特例も合わせて使えます。モデルケースの部屋は2018年に買ったので、2029年に売ればこの特例も使え、税金はさらに下がります。

マイホーム売却の3000万円特別控除|要件・節税額・住宅ローン控除との比較 マイホーム売却の3000万円特別控除|要件・節税額・住宅ローン控除との比較

出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」

出典: 国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」

貸すなら:亡くなる3年以上前から貸していれば、貸付事業用の特例を使える

旧居を亡くなる3年以上前から貸していれば、土地の評価を200㎡まで半分にできます。

この仕組みを「貸付事業用の小規模宅地等の特例」といいます。亡くなる前3年以内に貸し始めた土地は、原則としてこの特例の対象外です。

国がこの3年の線を設けたのは、相続の直前に貸し始めて相続税を減らす使い方を防ぐためです。例外は、もともと事業といえる規模で貸していた人です。マンションを1室だけ貸す人は、ふつう原則どおりに扱われます。

モデルケースの相続税は、貸して3年を超えていれば約510万円、3年以内なら約690万円です。貸した期間の違いで、約180万円の差がつきます。

ただし、貸している間も、3,000万円特別控除の期限は進みます。そのため、3年以上貸してから売ろうとすると、控除の期限をすでに過ぎている可能性が高くなります。

旧居を貸すなら、子に残すまで持ち続ける前提で考えておきましょう。

出典: 国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」

出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」

投資用を買い足すなら:2027年1月からは、買って5年以内の物件は時価に近い額で評価される予定

2027年1月1日以後の相続では、亡くなる前5年以内に買った貸付用の不動産が、時価に近い額で評価される予定です。

住み替えで手元にお金ができると、相続対策として投資用のマンションを買う人もいます。新しいルールでは、買ってから5年以内に相続が起きると、評価を下げる効果はほとんどなくなります。

ただし、買った値段がその時の時価に見合っていれば、別の評価方法も選べるとされています。土地は買った値段に地価の変動率を掛け、建物は買った値段から目減りを引き、その額の8割で評価する方法です。

また、不動産を小口に分けて売る投資商品は、持っている期間に関係なく、時価に近い値段で評価される方向です。

自分が住むための家は、このルールの対象外です。このルールは、2026年10月26日時点ではまだ案の段階です。投資用の部屋を買う前に、国税庁が公表する確定版の内容を確かめておくと安心です。

出典: e-Govパブリック・コメント「『貸付用不動産の評価について』の法令解釈通達(案)に対する意見公募手続の実施について」(国税庁)

持ち続けて得をする家庭、売って得をする家庭

持ち続けて得をする家庭と、売って得をする家庭は、受け継ぐ人と財産の額でおおよそ分かれます。

この章では、住み続ける・貸す・空き家のまま持つの3つを「持ち続ける」、売ることを「手放す」と呼びます。

税金以外の負担:分けにくさ、修繕積立金、建物の老朽化

持ち続けると、税金の計算には出てこない3つの負担を、受け継ぐ子が抱えることになります。

  • 分けにくさ
  • 管理費と修繕積立金
  • 建物の老朽化

マンション1部屋を子2人で受け継ぐと、2人で1つの部屋を持つ「共有」になりやすくなります。共有の部屋を売るには、持ち主全員の同意が必要です。子2人が半分ずつ持つ場合は、貸すときも2人の賛成がそろう必要があります。

修繕積立金は、多くのマンションで、年数とともに段階的に上がる計画になっています。子は管理費と合わせて、毎月払い続けることになります。空き家のまま持つと、家賃などの収入が0円のまま支払いだけが続きます。

マンションは、築年数がたつほど買い手が見つかりにくくなります。建て替えには所有者の多くの賛成が必要で、話がまとまるまでに長い時間がかかります。

税金で数百万円得をしても、これらの負担が子に重くのしかかることがあります。持ち続けたときに子が負う手間や出費を、税額の差と並べて家族で話しておきましょう。

出典: e-Gov法令検索「民法」(第251条・第252条)

持ち続けるほうが得な人

財産が基礎控除を超え、受け継ぐ人が特例を使える家庭は、持ち続けると相続税を抑えられます。

次の項目に多く当てはまるほど、持ち続ける意味は大きくなります。

  • 財産の合計が基礎控除(3,000万円+600万円×相続人の数)を超える見込み
  • 部屋の評価額が、見直しの後も時価の6割前後
  • 受け継ぐ人が、配偶者・同居している子・家なき子のどれか
  • 旧居を貸すなら、亡くなるまで3年以上貸せる見込みがある
  • 受け継ぐ子が1人に決まっているか、ほかの子に現金などで公平に渡せる
  • マンションの管理がよく、修繕積立金も十分にたまっている

とくに大事なのは、受け継ぐ人の項目です。受け継ぐ人が小規模宅地等の特例を使えるかで、相続税は数百万円変わります。

モデルケースでは、住み続けた場合の相続税は約960万円でした。売った場合の約1,880万円(相続税と売るときの税金の合計)より、900万円ほど少なく済みます。

子が受け継いだ後も住んだり貸したりして持ち続ければ、この差はそのまま家族の手元に残ります。

出典: 国税庁「No.4152 相続税の計算」

売って住み替えるほうが得な人

財産が基礎控除の範囲に収まり、子がみな別に持ち家を持っている家庭は、売って住み替えると家族の負担が軽くなります。

次の項目に多く当てはまるほど、手放す意味は大きくなります。

  • 財産の合計が基礎控除の範囲に収まる
  • 部屋の評価額がもともと時価に近い(築古・低層で土地の持分が大きい)
  • 子がみな別に持ち家があり、旧居は手放してよいと考えている
  • 引っ越して3年たつ年の12月31日までに売れる
  • 子が複数いて、1部屋を公平に分けるのが難しい
  • 建物が古く、修繕積立金が不足しているなど、将来の負担が見えている

財産が基礎控除の範囲に収まるなら、相続税は0円です。この場合、財産をマンションで持つことで得られる節税の利点はなくなります。

財産が基礎控除を超える家庭でも、持ち続けた場合と売った場合の税金の差は、小さく収まることがあります。

モデルケースでは、住み続けた後に子が売る場合と、本人が売る場合の税金の差は約220万円でした。この差で分けにくさや管理の手間をなくせると考えれば、手放す価値は十分にあります。

判断に迷ったら、評価額の計算明細と不動産会社の査定額を持って、税理士に相談するとよいでしょう。財産が基礎控除の前後にある人や、受け継ぐ人を家族で話し合っている途中の人は、早めに相談しておくと安心です。

出典: 国税庁「No.4152 相続税の計算」

まとめ:見直し後もマンションは現金より低く評価され、持ち続けるかは受け継ぐ人で決まる

2024年の見直しで、築浅で高い階の部屋の評価額は約2倍になりました。それでも評価額は時価の6割で止まるので、マンションで持つほうが現金より相続税は安く済みます。持ち続けて得をするかは、受け継ぐ子が親と同居するかで数百万円変わります。

まずは、受け継ぐ予定の子に「この家に住む気があるか」を聞いておきましょう。聞かないまま旧居を売ると、その子が同居して受け継ぐ道がなくなり、モデルケースでは約420万円の節税の機会を失います。

あわせて、2027年1月からの貸付用不動産のルールが確定版でどうなるかを、国税庁の公表で確かめておくと安心です。住み替えのトビラでは、相続対策で持つマンションの評価と住み替えの税金も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。