近所で再開発が決まったら、マンションは今売るのと、完成を待って売るのと、どちらが高く売れるのでしょうか。
再開発で価格が上がるかは、駅や施設の中身、物件の位置、周りで売り出される新築の数で変わり、高く売れやすい時期も再開発の進み具合で動きます。
この記事では、価格が上がる条件と段階ごとの売り時、上がった分を成約価格(実際に売れた値段)と計画の資料で売り出し価格に乗せる方法を紹介します。
再開発でマンション価格が上がる条件
中古マンションの価格は、買い手が「この値段なら払ってもよい」と思える額で決まります。
再開発でその額が上がるかは、再開発の中身、物件の位置と築年数、周りの新築の数、地域全体の相場で変わります。
不動産会社のチラシにある「再開発で値上がり」は、こうした条件を物件ごとに確かめる前の、大まかな見通しです。
再開発で駅や駅前広場が整備される
再開発の中でも、駅の改良は中古マンションの価格に結びつきやすい内容です。
駅と直結する通路や新しい改札口、駅前広場、バス乗り場ができると、通勤や通学で毎日歩く道のりが短く、歩きやすくなるためです。
不動産広告の徒歩分数は、建物の出入口から駅の出入口までの道のりで測る決まりです。近くに駅の出入口が増えれば、広告に載る分数もそのぶん短くなります。
反対に、オフィスビルの建設が中心の再開発は、住む人の毎日の移動への影響が小さく、価格にも表れにくくなります。再開発の計画を調べるときは、まず駅とのつながりが変わる計画になっているかを見ておきましょう。
出典: 首都圏不動産公正取引協議会「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」(第9条第7号・第9号)
再開発で商業施設や子育て施設ができる
買い手は、毎日の暮らしで使う施設に価値を感じます。
スーパーやドラッグストア、保育園、図書館、区役所の出張所などが歩いて行ける場所にできると、買い物や子どもの送り迎えにかかる時間が減ります。
子育て中の家族は保育園や学校までの道のりを見て住まいを選ぶので、こうした施設があると買い手が増えます。
市街地再開発事業では、新しいビルの低い階に店舗や公共施設を入れる計画がよくあります。ただ、計画の段階では「商業施設」とだけ書かれていて、どの店が入るかは開業の近くになってから決まることもあります。
同じ商業施設でも、日用品を買える店が入るのか、観光客向けの飲食店が中心なのかで、住む人の暮らしは違ってきます。計画書に「商業施設」とあったら、入る店の種類が公表されているかも確かめておきたい点です。
物件が再開発区域から近い
再開発で生まれる便利さは、区域に近い物件ほど大きく受け取れます。
同じ駅を使うマンションでも、新しい施設まで歩いて3分の物件と15分の物件では、暮らしの変わり方が違います。
近さは、地図の上の直線距離より、実際に歩く道のりで決まります。踏切を渡った線路の向こう側や、交通量の多い大きな道路の向こう側は、直線では近くても行き来に手間がかかります。
自分の物件の位置は、自治体のホームページにある再開発区域の図と、地図アプリの徒歩経路で確かめられます。玄関から新しい施設の入口までを調べると、実際に歩く分数が分かります。
一方で、近すぎる物件には別の心配もあります。新しい高層ビルが南側に建つと、日当たりや眺めが悪くなり、その分だけ買い手の評価が下がることがあります。
物件の築年数が浅い
築年数が浅い物件ほど、再開発の分が価格に乗りやすくなります。
再開発エリアでは新築や築浅のマンションも売りに出ることが多く、買い手はそれらと比べて選びます。その中で築浅の物件は、「新築より安く、設備も新しい」と見てもらえます。
築年数が古い物件は、新築との差が大きく見えるため、同じエリアでも価格が伸びにくくなります。買い手が使う住宅ローン控除にも、建物の条件があります。
- 昭和57年1月1日以後に建てた住宅は、耐震基準に合う住宅として扱われる
- それより前の住宅は、耐震基準に合うことの証明が必要になる
- 2021年12月31日までに住み始めた場合は、マンションなどの耐火建築物は築25年以下が条件で、それより古い住宅は耐震基準に合うことの証明が必要だった
証明書のない物件は、買い手が住宅ローン控除なしの前提で価格を考えます。
それでも、近くの成約価格や再開発の計画を示せば、上乗せの理由を買い手に説明できます。示し方は「再開発の計画と成約事例を売り出し価格に反映する方法」で紹介します。
出典: 国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」 出典: 国税庁「No.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」
周辺で新築マンションの供給が少ない
周りで売り出される新築が少ないほど、中古マンションの価格は上がりやすくなります。
新しいマンションが建つと、中古にとっては競争相手が増えるからです。
市街地再開発事業では、新しいビルの床の一部を「保留床」として売り、その代金で工事などの費用をまかないます。住宅を含む再開発では、この保留床が新築マンションとして、まとめて売りに出されます。
新築の販売会社は広告で多くの買い手を集め、その買い手は中古を「新築よりどれだけ安いか」で比べます。つまり、新築がたくさん売られている間は、中古の価格を上げにくくなります。
新築の戸数は自治体や事業者が公表する計画の資料で、販売の時期は新築マンションの公式ホームページで確かめられます。新築の販売が終わると、新しい街に住みたい買い手が中古に目を向けるようになります。
出典: 東京都都市整備局「市街地再開発事業の概要(民間施行)」
地域全体の相場が上がっている
再開発による値上がりは、地域全体の相場の上に乗る上乗せです。
金利が上がったり景気が悪くなったりして地域の相場が下がれば、再開発エリアのマンションもその影響を受けます。
相場の動きは、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で確かめられます。地価公示(国が毎年公表する土地の価格)の地点ごとの推移や、マンションの取引価格を、地図から探して見られるサイトです。
再開発区域の近くの地点と、再開発のない隣の駅の地点を、同じ年の範囲で並べると、次のように読み取れます。
| 並べた結果 | 考えられること |
|---|---|
| どちらも同じくらい上がっている | 地域全体の相場の動きで、再開発による上乗せは小さい |
| 再開発区域の近くだけ大きく上がっている | その差が、再開発による上乗せの目安になる |
つまり、隣の駅と比べると、地域全体の値上がりと再開発の分を分けて考えられます。
再開発の段階ごとに選べるマンションの売却時期
再開発エリアのマンションは、再開発がどこまで進んだかで、売れる価格と売りやすさが変わります。
早く売るほど再開発の分の上乗せは小さく、待つほど工事の音や新築との競争といった別の心配が出てきます。組合が進める市街地再開発事業は、おおむね次の順に進みます。
| 段階 | この段階で決まること |
|---|---|
| まちづくりの検討 | 地権者の勉強会や計画案づくりが進む。計画が変わったり止まったりすることもある |
| 都市計画決定 | 再開発の区域や、建物の大まかな規模が都市計画として決まる |
| 組合設立の認可 | 地権者でつくる組合が、事業を進める主体として認められる |
| 権利変換計画の認可 | 地権者の土地や建物の権利を、新しいビルの床に移す内容が決まる |
| 工事 | 古い建物の解体と、新しいビルの建設が進む |
| 工事完了 | 建物が完成し、店舗や住宅が使えるようになる |
売る時期は、この6つの段階を「計画の発表から着工まで」「工事中」「完成の前後」「完成から数年後」の4つにまとめると選びやすくなります。
出典: 東京都都市整備局「市街地再開発事業の概要(民間施行)」
計画の発表から着工までに売る
計画の発表から着工までに売ると、価格への上乗せは小さくなります。
計画が変わることもあり、買い手は実現するか分からない再開発に多くのお金を出しにくいためです。
その代わり、工事の前なので街が静かで、内覧で騒音や通行止めを気にされにくくなります。入学や転勤で住み替え(買い替え)の時期が決まっている人は、この時期に売れば予定どおりに動けます。
買ってから年数が浅い人は、税金も確かめておきましょう。住んでいた家を売るときは、次の決まりがあります。
- 要件を満たせば、値上がり益から最高3,000万円を差し引ける(3,000万円特別控除)
- 住み替え先に入居した年とその前2年・後3年の計6年間にこの控除を使うと、住み替え先は住宅ローン控除の対象から外れる
- 2020年3月31日以前に売った場合は、この期間が入居した年とその前後2年の計5年間だった
値上がり益が控除の範囲に収まれば、税金は0円です。残るときは、売った年の1月1日時点の所有期間で税率が変わります。
| 売った年の1月1日時点の所有期間 | 所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 |
|---|---|---|---|
| 5年を超える | 15% | 所得税額の2.1% | 5% |
| 5年以下 | 30% | 所得税額の2.1% | 9% |
つまり、所有期間が5年以下だと、税率はおよそ2倍になります。
どちらの控除を使うと得かは、売る前に税務署か税理士に確かめておくと安心です。
出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」 出典: 国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」 出典: 国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」 出典: 国税庁「No.1211-1 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」
工事中に売る
工事が始まると、再開発への期待が価格に乗り始めます。
組合設立と権利変換計画の認可を経てから工事に入るので、計画が止まる心配が小さくなるからです。完成予想図や開業予定の時期が公表されていれば、完成後の街の姿も買い手に見せられます。
一方で、工事の騒音や振動、工事車両の出入り、通行止めは、内覧の印象を下げがちです。内覧の日は、工事現場の掲示板にある作業日と時間を見て、作業が休みの日や時間帯を選ぶとよいでしょう。
住み替えの時期が完成より前に来る人は、この時期に売る選択肢があります。所有期間が5年以下の人には、「計画の発表から着工までに売る」の表の税率の差が、この時期にも当てはまります。
売る年を翌年にずらすだけで所有期間が5年を超えるなら、税額の差も比べて売る時期を決めましょう。
出典: 国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」 出典: 国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」
完成の前後に売る
建物が完成して店舗や駅の通路が使えるようになる前後は、一般に、再開発の分が価格にもっとも乗りやすい時期です。
街の変化が目に見えるようになり、買い手は完成した街を歩いて確かめられます。
ただし、高く売れやすい時期は、売り物件が増える時期でもあります。同じ再開発の住宅棟の新築や、同じ時期に売り出される周辺の中古と比べられ、価格の交渉では買い手が強くなります。
時間に余裕があり、住み替え先が再開発エリアの外にある人は、この時期に売ると、上がった分を住み替えの資金に回しやすくなります。反対に、同じ地域で買い直す人は、次の家も上がった相場で買うことになります。
同じ地域で買い直すなら、売る価格と買う価格の差を見て、時期を考えるとよいでしょう。
完成から数年後に売る
完成から数年たつと、再開発の後に実際に売れた価格を根拠にして、売り出し価格を決められます。
その頃には街の人の流れが落ち着き、再開発の後の成約価格が積み重なっています。
その間に築年数は進み、新しい街という目新しさも薄れます。住宅ローンの金利が上がれば、買い手が借りられる額が減り、払える価格も下がります。
所有期間がもうすぐ10年を超える人には、待つ理由があります。住んでいた家を所有期間10年超で売ると、税率が軽くなる特例を使えるためです。
一方、先に引っ越して空き家にした人は、3,000万円特別控除の期限に注意が必要です。
- 10年超の軽減税率では、3,000万円特別控除を引いた後の値上がり益のうち6,000万円以下の部分が、所得税10%・住民税4%になる(ほかに所得税額の2.1%の復興特別所得税)
- 軽減税率の特例も、住み替え先に入居した年とその前2年・後3年の計6年間に使うと、住み替え先は住宅ローン控除の対象から外れる
- 3,000万円特別控除は、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に使える
つまり、引っ越した年から数えて3年後の年末が、3,000万円特別控除を使って売れる期限です。
出典: 国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」 出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」 出典: 国税庁「No.1211-1 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」
再開発の計画と成約事例を売り出し価格に反映する方法
再開発の分を売り出し価格に乗せるには、買い手が納得できる根拠が必要です。
根拠になる資料は、次の3つです。
- 周辺のマンションの成約価格
- 先に再開発が終わった地域の価格の動き
- 公表された再開発計画の予定
これらを自分で調べておくと、査定で担当者に伝えられ、広告や内覧でも買い手に示せます。
周辺のマンションの成約価格を調べる
価格の根拠には、実際に売れた値段である成約価格が使えます。
売り出し価格は売主の希望の値段で、値下げの交渉を経て、それより安く売れることもあります。
成約価格は、レインズ・マーケット・インフォメーションと、国土交通省の不動産情報ライブラリで調べられます。
レインズは、国土交通大臣の指定を受けた不動産流通機構が運営する、不動産会社どうしで物件の情報を共有する仕組みです。そこに集まった成約の情報を、個人も地域や広さを指定して見られます。
比べる物件は、同じマンションか近くの物件で、築年数・広さ・駅からの徒歩分数が近いものを選ぶと、ずれが小さくなります。広さの違いは、1㎡あたりの価格にそろえると比べやすくなります。
出典: 指定流通機構「不動産取引情報提供サイト」 出典: 東日本不動産流通機構「レインズってなに?」 出典: 国土交通省「不動産情報ライブラリ」
再開発が先に完了した地域の価格推移と比べる
完成前の物件では、先に再開発が終わった地域の価格の動きを、上乗せの根拠にできます。
近くの成約価格は、まだ再開発の前の値段だからです。
比べる地域は、同じ沿線の駅や、駅前に商業施設と住宅をつくった再開発など、規模と中身が近いところを選ぶとよいでしょう。
不動産情報ライブラリでその地域の中古マンションの取引価格を年ごとに並べると、完成の数年前から完成後までに、1㎡あたりの価格がどう動いたかが分かります。
同じ期間の、再開発のない近くの駅の価格も並べると、再開発の分を取り出せます。
そこから駅の規模や物件からの距離が違う分を割り引くと、自分の物件に乗せられる額の目安になります。
査定時に再開発の計画図と開業予定時期を示す
査定のときに再開発の計画図と開業予定の時期を見せると、査定額に再開発の分が入りやすくなります。
不動産会社は、近くの成約価格をもとに査定額を出します。完成前の再開発は成約価格の外にあり、担当者が計画を知って初めて査定額に反映されます。
地域の外の会社ほど、担当者が計画を知る機会は少なくなります。
査定の前に、次の資料をそろえておきましょう。
- 自治体のホームページにある、再開発の区域を示した都市計画の図
- 組合や事業者が公表している完成予想図と、開業予定の時期
- 計画が今どの段階にあるか(都市計画決定、組合設立の認可、着工など)
計画の段階まで伝えると、担当者は実現の見込みを踏まえて上乗せの額を考えられます。都市計画決定の前と工事中とでは、同じ計画でも買い手の受け取り方が違うためです。
資料はコピーやデータで渡すと、担当者が査定書や販売の資料にそのまま使えます。
再開発を理由に上乗せされた査定額の根拠を確かめる
査定額が他社より高いときは、再開発の分の根拠を担当者に聞いておくと安心です。
査定額は「この価格なら売れそう」という見込みで、その価格で売れる約束とは別のものだからです。
いちばん高い査定額を出した会社に任せた結果、売り出し価格が高すぎて、値下げを繰り返すこともあります。長く掲載された物件は、物件をまとめて探せるポータルサイトで「売れ残り」と受け取られがちです。
売却の依頼を取るために、再開発を理由に高めの査定額を出す会社もあります。高い査定額には、次の3つを聞いておきましょう。
- どの成約事例をもとにしたか
- 再開発の分はいくらで、その根拠は何か
- その価格で売れなかったら、いつ、いくらに見直すか
3つ目は、住み替えの予定を守るための質問です。住み替え先の引き渡しの時期から逆に数えて、いつまでに売るかを先に決めておくと、価格を見直す時期を担当者と決めやすくなります。
販売広告と内覧で再開発の開業予定を伝える
広告と内覧で再開発を伝えるときは、公表された開業予定と計画の段階を添えると、買い手が安心して判断できます。
不動産広告の業界ルール(公正競争規約の施行規則)では、計画を進める主体が整備予定時期を公表したものに限って、再開発計画を広告に書けます。書くときは、整備予定時期と、計画が今どの段階かも示します。
つまり、うわさの段階の計画は、広告に書ける対象から外れます。公表資料を担当者に渡し、「2028年開業予定・現在工事中」のように時期と段階を添えて、広告に入れてもらいましょう。
内覧では、住んでいる本人の話が買い手に伝わりやすくなります。工事の進み具合や駅までの道の変化、新しい店の予定は、公表資料を見せながら話すとよいでしょう。
公表前の予定を決まったことのように話すと、買い手の誤解を招きます。
出典: 首都圏不動産公正取引協議会「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」(第9条第32号)
まとめ:再開発で上がった分は、根拠を示して売り出し価格に乗せる
再開発でマンションの価格が上がるかは、駅とのつながりや物件の位置、周りの新築の数で変わります。上がった分は、近くの成約価格や公表された計画で根拠を示すと、売り出し価格に乗せやすくなります。
まずは、自治体のホームページで、再開発の計画が今どの段階にあるかを確かめておきましょう。この確認を飛ばして売り出すと、上乗せが小さい時期に売ったり、工事や新築の販売と重なって値下げを求められたりします。
売る時期の目安がついたら、所有期間が5年・10年を超える時期と、3,000万円特別控除を使える期限も確かめておくと安心です。住み替えのトビラでは、再開発エリアのマンションの売り時と売り出し価格の決め方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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