純資産を計算しようとして、持ち家を入れるか迷った人もいるでしょう。
住宅ローンを返している途中の家計は、持ち家を入れるか外すかで、計算した額がプラスにもマイナスにも変わります。
持ち家を含めた純資産の計算方法と、純金融資産との違い、目的ごとの使い分けを、仮の世帯の数字で紹介します。
純資産の計算に持ち家は含める|純金融資産との違い
純資産の計算では、持ち家も資産に含まれます。
持ち家は今売れる価格(時価)で資産に入り、住宅ローンの残高は負債として差し引かれます。持ち家を外して計算するのは「純金融資産」という別の指標です。
純資産と純金融資産の計算式の違い
持ち家などの不動産を資産に入れるのが純資産、金融資産だけで計算するのが純金融資産です。
差し引く負債は、どちらも同じです。
| 指標 | 資産に入れるもの | 差し引く負債 |
|---|---|---|
| 純資産 | ・預貯金・株式・投資信託などの金融資産 ・持ち家などの不動産(時価) | 住宅ローン・自動車ローン・カードローンなどの借入 |
| 純金融資産 | 預貯金・株式・投資信託などの金融資産 | 純資産と同じ |
純資産は、家計が持っている財産を全部合わせた正味の額です。持ち家を売って借入をすべて返したら、手元にいくら残るかを表します。
純金融資産は、お金として使える資産から借入を引いた額です。家は売ってはじめて現金になるので、純金融資産の計算では資産から外れます。
総務省統計局は、全国家計構造調査の家計資産を、次のように説明しています。
家計資産は、住宅・宅地資産に純金融資産(貯蓄-負債)を加えたものです。
(総務省統計局「統計データFAQ 19D-Q01 1世帯当たりの家計資産額」)
つまり、国の統計でも、家を含めた財産全体と、お金の正味の額を分けて数えています。
出典: 総務省統計局「統計データFAQ 19D-Q01 1世帯当たりの家計資産額」
純金融資産が住宅ローンでマイナスになる理由
住宅ローンを返している途中の世帯は、純金融資産がマイナスになりやすくなります。
純金融資産の計算では、住宅ローンの残高を負債として引く一方で、ローンで買った家は資産から外すからです。
Aさんの世帯で計算すると、次のようになります。
- 純金融資産=800万円−3,200万円−100万円=−2,500万円
- 純資産=800万円+4,500万円−3,200万円−100万円=2,000万円
同じ世帯でも、純金融資産はマイナス、純資産はプラスです。2つの差の4,500万円は、ローンで買ったマンションの時価です。
−2,500万円という数字を見て、家計が危ないのではと心配になる人もいるでしょう。このマイナスは、借入で手に入れた家が、計算の外に置かれているために生まれます。
持ち家を入れた計算でも、マイナスになることがあります。これはローン残高が家の時価を上回っているときに起きるもので、純金融資産のマイナスとは原因が別です。
持ち家を含めた純資産の計算方法|時価から住宅ローン残高を引く
計算は、足し算と引き算で済みます。
結果を大きく左右するのは、持ち家の時価にどの価格を使うかと、ローン残高と時価のどちらが大きいかの2点です。
純資産の計算式と計算例
持ち家を含めた純資産は、次の式で求められます。
純資産=預貯金+株式・投資信託など+持ち家の時価−住宅ローン残高−その他の借入
| 項目 | Aさんの世帯 |
|---|---|
| 預貯金・投資 | 800万円 |
| 持ち家(マンション)の時価 | 4,500万円 |
| 住宅ローン残高 | −3,200万円 |
| 自動車ローン残高 | −100万円 |
| 純資産 | 2,000万円 |
表の金額は想定の例です。自分の家計の金額に置き換えると、同じ式で計算できます。
住宅ローンの残高は、金融機関から届く返済予定表か、ネットバンキングの画面で確かめられます。住宅ローン控除を受けている人は、毎年届く年末残高証明書でも確認できます。
負債に入れるものは、次のとおりです。
- 住宅ローン
- 自動車ローン・カードローン
- リフォームローン
- 滞納しているマンションの管理費・修繕積立金
管理費や修繕積立金の滞納分は、マンションを売るときに、決済までに精算するお金です。そのため、借入と同じく負債に入ります。
持ち家の時価は成約価格で見積もる
持ち家の時価にいちばん近いのは、似たマンションが実際に売れた価格である「成約価格」です。
ほかの価格は、それぞれの理由で時価とずれます。
| 価格 | 何の価格か | 時価とのずれ |
|---|---|---|
| 購入価格 | 自分が買ったときの価格 | 買った時点の相場のまま |
| 売出価格 | 売り手が広告に出す希望の価格 | 値下げ前の価格で、高くなりやすい |
| 一括査定の査定額 | 不動産会社が売れそうだと見積もった価格 | 高めに出ることがあり、参考にとどめる |
| 固定資産税評価額・路線価 | 税金を計算するための評価額 | 売買の価格とは別の方法で決まる |
| 成約価格 | 実際に売買が成立した価格 | 時価にいちばん近い |
査定額は、仲介の契約を取りたい不動産会社が、高めに出すことがあります。高い査定額をそのまま入れると、純資産が実際より大きく見えてしまいます。
成約価格は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で調べられます。不動産会社どうしが物件情報を共有する仕組み「レインズ」の取引データを、国土交通省が個々の取引を見分けにくい形に加工して公開しています。
比べる物件は、同じマンションか、駅からの距離・築年数・広さが近い物件を選ぶと、時価に近い値が出ます。成約価格を面積で割って1㎡あたりの価格を出し、自分の部屋の面積を掛ければ、時価の目安になります。
出典: 国土交通省「不動産情報ライブラリ」/全国指定流通機構連絡協議会「RMI(REINS Market Information)」
住宅ローン残高が時価を上回るときはマイナスで計上する
住宅ローンの残高が時価を上回るときは、持ち家の項目をマイナスで計上し、その分だけ純資産が減ります。
この状態は、オーバーローンと呼ばれます。
このマイナスは、売るときに現金で埋める額でもあります。マンションを売るには、ローンを完済して抵当権(金融機関が家に付けている担保の権利)を外す必要があるからです。
売却代金で返したあとに残るローンの400万円は、預貯金などで補うことになります。
住み替える場合は、残ったローンを住み替え先のローンに上乗せして借りる「住み替えローン」という方法もあります。借りられる額や条件は、金融機関ごとに違います。
持ち家を含めた純資産の限界
持ち家を含めた純資産は、家計の財産を全部まとめて知るのに役立ちます。
ただ、計算した額をそのまま使えるお金と考えると、資金の見込みが狂います。気をつけたいのは、現金にするまでの時間、時価の変動、売るときに引かれる費用と税金、売った後の住居費の4つです。
持ち家は売却してはじめて現金になる
持ち家の時価は、売却して代金を受け取ったときに、はじめて現金になります。
売るまでには、時間もかかります。首都圏の中古マンションでは、物件をレインズに登録してから成約するまでの日数が、2025年の平均で82.5日でした。
売り出す前の査定や、成約後の買主のローン審査と引渡しの日数は、この前後に加わります。
住み続けたまま現金を用意する方法には、次の2つがあります。
- リースバック(家を売ったあと、同じ家を借りて住み続ける)
- リバースモーゲージ(家を担保にお金を借りる)
どちらも使える人や物件に条件があり、受け取れる額は、仲介で売る場合とは別の決め方になります。
出典: 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」
時価は相場と築年数で変わり続ける
計算に使った時価は、計算した時点の見込みです。
マンションの価格は、金利、地域の需要、築年数、管理の状態で動きます。首都圏の中古マンションの2025年の成約価格を1㎡あたりで比べると、次のとおりです。
| 築年数 | 1㎡あたりの成約価格(首都圏・2025年) |
|---|---|
| 築11〜15年 | 114.11万円 |
| 築21〜25年 | 86.10万円 |
| 築31〜35年 | 44.14万円 |
別々の物件を比べた値ですが、築11〜15年から築31〜35年にかけて、1㎡あたりの価格は半分以下になっています。
査定額や売出価格をもとにした時価は、成約までに下がることもあります。東京カンテイの集計では、首都圏の中古マンションの成約価格は、2025年下期に最初の売出価格を平均6.22%下回りました。
売り出しから3か月以内に成約した物件でも、平均3.57%下がっています。
純資産は、年に1回など時期を決めて、その時点の成約価格で計算し直しましょう。
出典: 東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2025年)」/東京カンテイ「中古マンションの価格乖離率&売却期間(首都圏)」
売却時に仲介手数料・登記費用・税金が差し引かれる
マンションを売ると、代金から仲介手数料や登記の費用が引かれ、利益が出れば税金もかかります。
| 費用 | 目安 | かかるとき |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 上限は売却価格×3.3%+6.6万円 (消費税込み・売却価格400万円超の場合) | 不動産会社の仲介で売るとき |
| 印紙税 | 1万円 (売却価格1,000万円超5,000万円以下・2027年3月31日までの軽減後の額) | 売買契約書を作るとき |
| 抵当権抹消の登録免許税 | 不動産1個につき1,000円 | ローンを完済して抵当権を外すとき |
| 抵当権抹消の司法書士報酬 | 全国平均17,470円 (日本司法書士会連合会のアンケート) | 抹消の登記を司法書士に頼むとき |
| ローンの一括返済手数料 | 金融機関ごとに違う | 売却代金でローンを完済するとき |
| 譲渡所得税・住民税 | 利益が出たときにかかる | 下の特例で0円になる場合がある |
税金は、売った価格から取得費(買った価格と購入時の諸費用から、建物の値下がり分を引いた額)と売却費用を引いた利益にかかります。
住んでいた家なら、利益から最大3,000万円を差し引ける特例があります。主な条件は次の2つです。
- 今住んでいる家か、家を出た日から3年たつ日のある年の12月31日までに売ること
- 親子や夫婦など、特別の関係がある人以外に売ること
売った年の前年か前々年に、この特例などを使った人は対象外です。使えるかは、税理士に確かめると安心です。
購入時の売買契約書をなくして取得費が不明だと、売った価格の5%で計算するので、利益が大きくなります。契約書は保管しておきましょう。
Aさんの世帯が4,500万円で売ると、手取りは次のとおりです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 4,500万円 |
| 仲介手数料(上限の額) | −155.1万円 |
| 印紙税 | −1万円 |
| 抵当権抹消の費用(不動産2個と仮定) | −約2万円 |
| 一括返済手数料・税金(0円と仮定) | 0円 |
| 住宅ローン残高 | −3,200万円 |
| 手取り | 約1,142万円 |
純資産の計算では1,300万円だった持ち家の項目は、売ると約1,142万円に減ります。
出典: 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」/国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」/e-Gov法令検索「登録免許税法」/日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」/国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」/国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」
売却後も次の住まいの購入費や家賃がかかる
マンションを売って手取りを受け取っても、住まいの費用は続きます。
買うなら物件の価格とは別に諸費用がかかり、借りるなら家賃と入居時の初期費用がかかります。
中古マンションを仲介で買うときの主な諸費用は、次のとおりです。
- 仲介手数料と、売買契約書の印紙税
- 所有権移転と抵当権設定の登記にかかる登録免許税と司法書士報酬
- 不動産取得税
- 住宅ローンの事務手数料や保証料、火災保険料
引越し代もかかります。今のマンションを売るのと住み替え先を買うのと、どちらを先にするかでも、加わる費用が変わります。
| 進め方 | 加わる費用 |
|---|---|
| 今のマンションを先に引き渡す | 住み替え先に入るまでの仮住まいの家賃と、2回分の引越し代 |
| 住み替え先を先に買う | 今のマンションが売れるまで、今のローンと新しいローンの2本の返済 |
2本のローンを返す期間が長引くほど、預貯金は減っていきます。
持ち家を含めた純資産から住み替えに使える額を考えるときは、これらの費用を先に差し引いておきましょう。
純資産と純金融資産を目的別に使い分ける
純資産と純金融資産のどちらを見るかは、計算する目的で決まります。
| 目的 | 見る指標 | 持ち家の扱い |
|---|---|---|
| 統計の平均と比べる | 比べる統計と同じ定義の指標 | 統計が含めていれば含める |
| 老後資金を見積もる | 純金融資産 | 外す |
| 資産の推移を追う | 持ち家を含めた純資産 | 時価で含める |
| 住み替えの予算を立てる | 金融資産+売却後の手取り | 売却後の手取りで含める |
統計の平均と比べるときは定義を揃える
統計の平均と比べる前に、その統計が持ち家を含めているかを確かめ、自分の計算を同じ定義に揃えておきましょう。
定義がずれたまま比べると、持ち家の時価の分だけ、数千万円の差が出ることもあります。
| 統計 | 持ち家の扱い | 揃える自分の指標 |
|---|---|---|
| 総務省「全国家計構造調査」の家計資産 | 住宅・宅地資産として含む | 持ち家を含めた純資産 |
| 総務省「家計調査(貯蓄・負債編)」の貯蓄と負債 | 対象外 | 預貯金などの貯蓄額と、借入の額 |
家計調査(貯蓄・負債編)は、二人以上の世帯の貯蓄と負債を集計しています。貯蓄には預貯金のほか、生命保険の払込総額や有価証券も入るので、自分の貯蓄額も同じ範囲で数えると比べやすくなります。
全国家計構造調査の住宅・宅地資産は、統計局が決めた評価方法で推計した額です。成約価格から出した自分の時価とは出し方が違うので、持ち家を含めて比べた結果は、目安として受け取るとよいでしょう。
出典: 総務省統計局「統計データFAQ 19D-Q01 1世帯当たりの家計資産額」/総務省統計局「統計データFAQ 19B-Q01 1世帯当たりの貯蓄額と負債額」
老後資金を見積もるなら純金融資産を見る
老後資金は、純金融資産で見積もると、実際に取り崩せる額で計画を立てられます。
預貯金などの金融資産はすぐ生活費に回せますが、家は売ってはじめて現金になるからです。持ち家を含めた純資産で見積もると、売ってはじめて手に入る額まで、生活費に数えてしまいます。
一方で、ローンを返し終えた持ち家に住み続けると、老後の住居費は管理費・修繕積立金と固定資産税などで済みます。家賃を払う場合より、生活費の見積もりを小さくできます。
老後資金の不足額は、次の順で計算すると分かります。
- 住居費を、管理費・修繕積立金・固定資産税で計算する
- 住居費を含めた生活費から、年金の額を引く
- 残った額を、純金融資産でまかなえるかを確かめる
修繕積立金は、築年数が進むと値上がりすることがあります。管理組合の長期修繕計画で、今後の額も見ておくと安心です。
純金融資産だけでは不足するときは、持ち家の売却やリバースモーゲージで、家を現金にする方法が選択肢に入ります。
資産の推移を追うなら持ち家を含めた純資産を見る
家計の財産が増えているかは、持ち家を含めた純資産を、毎年同じ式で計算すると分かります。
純資産には、預貯金の増減とローンの返済に加えて、マンションの値動きも表れるからです。純金融資産の計算では、この値動きが外れています。
Aさんの世帯の1年後を、次の条件で計算してみます。
- 住宅ローンの元金を100万円返した
- 預貯金が50万円増えた
- マンションの時価が4,500万円から4,400万円に下がった
- 自動車ローンの残高は100万円のまま
| 指標 | 今年 | 1年後 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 純金融資産 | −2,500万円 | −2,350万円 | +150万円 |
| 純資産 | 2,000万円 | 2,050万円 | +50万円 |
純金融資産だけを見ると150万円増えていますが、値下がりを入れた純資産の増加は50万円です。返済と貯蓄で増えた150万円のうち100万円を、マンションの値下がりが打ち消しています。
Aさんの世帯は、純資産2,000万円に対して、持ち家の時価が4,500万円あります。財産の多くを1つのマンションが占めるので、相場が1割動くと、純資産は450万円増えたり減ったりします。
住み替えの予算を立てるなら金融資産に売却後の手取りを足す
住み替えの予算の元手は、預貯金や投資などの金融資産に、今のマンションを売った後の手取りを足した額です。
手取りを純金融資産に足すと、手取りの計算で引いた住宅ローンを、二重に差し引くことになります。一方、自動車ローンのように売った後も残る借入は、元手から差し引く必要があります。
Aさんの世帯なら、元手は次のとおりです。
金融資産800万円−自動車ローン100万円+手取り約1,142万円=約1,842万円
売却価格4,500万円からローン残高を引いた1,300万円で考えると、売却費用の約158万円の分だけ、予算を大きく見積もってしまいます。
元手を全部頭金に入れると、諸費用や入居後の急な出費に回すお金まで、頭金に使ってしまいます。先に購入の諸費用と引越し代、生活費の数か月分を取り分け、残りを頭金に回しましょう。
まとめ:持ち家は時価で含め、使えるお金は売った後の手取りで見る
純資産の計算では、持ち家を成約価格から出した時価で入れ、住宅ローンの残高を引きます。ただ、その額は売ってはじめて現金になり、売るときには費用も引かれます。
まずは、不動産情報ライブラリで近い条件の成約価格を調べ、自分のマンションの時価を出しておきましょう。査定額のまま計算すると、純資産も住み替えの予算も大きく見積もってしまいます。
住み替えを考えているなら、住み替え先の諸費用も先に確かめておくと安心です。住み替えのトビラでは、持ち家を含めた純資産の計算と住み替えの予算も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
住み替えのトビラ 