査定に来た会社から「専任媒介でお願いします」と言われた。メリットは聞いたが、ネットには「専任はやめた方がいい」「囲い込まれる」とも書いてある。どちらが本当なのか、ここで迷う人は多いはずです。
先に答えを書きます。専任媒介のメリットの大半は、会社の善意ではなく法律が会社に課す義務(7日以内のレインズ登録・登録証明書・2週間に1回の報告)です。デメリットの筆頭だった囲い込みには2025年1月から制度の歯止めがかかり、売主が自分の画面で確認できるようになりました。一方で、違約金・費用償還・直接取引・売却保証の裏側といった条項は、知らずに結ぶと損をします。
この記事では、メリットとデメリットをそれぞれ根拠ごとに見たうえで、専任をやめた方がいい4つの条件と選んでよい条件、そして専任にするなら契約の段階で決めておく5つの事項を順に見ていきます。
専任媒介のメリット
専任媒介契約は、マンションの売却を1社の不動産会社だけに頼む契約です。自分で見つけた買主と契約する道は残り、契約期間は3か月が上限です。3種類の媒介契約の違いは別の記事で扱っているので、ここでは専任媒介を結ぶと売主に何が得になるかを、法律の義務と会社の運用に分けて見ていきます。
- レインズ登録と2週間に1回の報告が法律の義務になる
- 登録証明書と売主専用画面で取引状況を自分で確認できる
- 1社が販売計画を持つので窓口と判断が1本になる
- 手数料と広告の協議を交換条件に置ける
- 自己発見取引の道が残る
レインズ登録と2週間に1回の報告が法律の義務になる
専任媒介のメリットの多くは、「会社が頑張ってくれる」という期待ではなく、宅地建物取引業法が会社に課す義務です。
専任媒介を結んだ会社は、契約の日から7日以内に物件をレインズへ登録する義務を負います。7日という期間は法34条の2第5項の「国土交通省令で定める期間」で、宅地建物取引業法施行規則15条の10が専任媒介契約は7日、専属専任媒介契約は5日と定め、同条2項で休業日数を算入しない扱いを置いています。契約を締結した当日そのものも、民法の初日不算入の原則により登録期間に含まれない扱いです。レインズは不動産会社だけが使う物件情報のネットワークで、登録されれば全国の会社が買主に紹介できます。登録をした会社には、登録を証する書面(登録証明書)を遅滞なく売主に引き渡す義務もあります(同条6項)。
さらに、2週間に1回以上、販売活動の処理状況を売主に報告する義務があります(同条9項。専属専任媒介契約は1週間に1回以上)。報告の中身は、買主を探すために行った措置(レインズへの登録、広告など)と引き合いの状況です。購入の申込みが入ったときは、これとは別に遅滞なく報告する義務があり(同条8項)、運用指針は、購入申込書などの書面で購入の意思が示された申込みがあったときは遅滞なく報告し、依頼者の希望条件を満たさない申込みの場合等であっても、その都度報告する必要があるとしています。
これらの義務は、契約書の特約で外せない作りです。法34条の2第10項が、3項から6項までと8項・9項の規定に反する特約を無効と定めています。一般媒介はレインズ登録と定期報告の義務の外にあり、専任を選ぶ最大のメリットは、会社の善意ではなく法律で「情報を出す」「進捗を伝える」が約束される点にあります。
出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第5項・第6項・第8項〜第10項) 出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(第15条の10) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)①イ・ロ・ハ)
登録証明書と売主専用画面で取引状況を自分で確認できる
専任媒介の売主だけが使える仕組みがあります。レインズの「売主専用画面」です。
レインズには平成28年から、物件の売主や他の宅建業者が取引の申込み状況を確認できる「ステータス管理機能」があります。国土交通省は令和6年6月に宅地建物取引業法施行規則を改正し、令和7年(2025年)1月1日から、宅建業者に対してレインズへの物件の取引状況の登録を義務づけました。登録事項に「当該宅地又は建物の取引の申込みの受付に関する状況」を加えた施行規則15条の11第2号が、その条文上の位置です。登録される取引状況は「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」の3種類です。
売主の側のアクセスも2025年に変わりました。会社から交付される登録証明書に、2025年1月4日から二次元コードが記載されるようになり、これを読み取ると確認用のIDとパスワードで売主専用画面に入り、自分の物件がどの状態かを確認できます。運用指針も、依頼者は登録証明書の交付を受けて登録されたことを確認するとともに、ステータス管理機能を通じて最新の登録内容を確認すること、と周知の対象に挙げています。会社の側には、登録証明書を交付する際にこの機能で最新の登録内容を確認できることを分かりやすく説明することが望ましいとされているので、説明がないまま証明書を受け取ったときは、その場で使い方を聞けます。
この仕組みは、専任媒介と専属専任媒介の売主向けです。一般媒介はレインズへの登録義務の外にあるため、登録証明書も売主専用画面も前提から外れます。「専任だと囲い込まれる」という不安は根強いですが、2025年以降は、囲い込みの代表的な形である「他社には紹介停止中と見せかける」行為を、売主自身が画面で見つけられます。専任を選ぶなら、この画面を使うことがメリットを実際の安心に変えます。
出典: 国土交通省「レインズの機能強化について、物件の売主向けのリーフレットを作成しました」(令和6年12月24日) 出典: 国土交通省・4不動産流通機構「レインズの『ステータス管理機能』を活用しましょう」 出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(第15条の11第2号) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 1(4)・9(1))
1社が販売計画を持つので窓口と判断が1本になる
専任媒介では、売却の窓口が1社に絞られます。内見の日程調整、価格の見直し、買主の反応、値引き交渉の相談が、1人の担当者から届きます。
複数の会社に頼む一般媒介では、A社は値下げを勧め、B社は据え置きを勧め、C社からは連絡が途絶える、という状態が起きる。専任なら販売の計画を1社が持ち、反応を見ながら次の手を打てる。
働きながら売却を進める人、遠方の実家を売る人、小さな子どもがいる家庭では、この「窓口1本」の価値が大きくなりやすいです。住み替えで購入側も同じ会社に頼む場合は、売却と購入の進行を1社で合わせやすくなります。
営業資料に「専任媒介の成約率は一般媒介の約3倍」という数字が載ることがあります。もとの数字は不動産流通推進センターの集計で、2025年の成約報告率(成約報告件数÷新規登録件数)は専属専任媒介27.3%・専任媒介26.5%・一般媒介9.4%です。数字は一次情報にありますが、何を分母に置いた指標かで差の見え方が変わるため、読み方は別の記事で扱っています。
出典: 公益財団法人不動産流通推進センター「指定流通機構の活用状況について(2025年分)」
手数料と広告の協議を交換条件に置ける
不動産会社が専任媒介を勧めるのは、手数料が自社に入る見込みが固まるからです。つまり専任は「会社が欲しがる契約」です。売主にとっては、結ぶ前に条件を協議する余地があることを意味します。
一つ目は仲介手数料です。報酬の上限は告示(昭和45年建設省告示第1552号)第一が定めており、売買価格を200万円以下の部分に5%、200万円を超え400万円以下の部分に4%、400万円を超える部分に3%を掛け、合計した金額以内とする作りです。400万円を超える売買では、この合計額が「価格の3%+6万円(税別)」の速算式と同じ額になります。ただし運用指針は、この限度額について次のように書いています。
媒介業務に対する報酬の額は、告示(昭和四十五年建設省告示千五百五十二号)で定める限度額の範囲内でなければならないが、この場合、報酬の限度額を当然に請求できるものではなく、具体的な報酬額については、宅地建物取引業者が行おうとする媒介業務の内容等を考慮して、依頼者と協議して決める事項であること。
標準の専任媒介契約約款も、報酬の額は告示に定める限度額の範囲内で甲乙協議の上定めると置き(第8条2項)、契約書の「約定報酬額」の欄は金額を記入する作りです。
二つ目は広告と販売活動の中身です。運用指針は、専任媒介の依頼を受けた会社について次のように定めています。
専属専任媒介契約及び専任媒介契約の依頼を受けた場合には、成約へ向けて積極的に努力するに当たって、具体的に行う措置(指定流通機構への登録のほか、広告、他の宅地建物取引業者との連携等)を依頼者に明示することとする。
掲載するポータルサイト、チラシの配布範囲、オープンルームの回数を契約書か別紙に書いてもらう根拠がここにあります。
三つ目は報告の形式と頻度です。標準の専任媒介契約書は、報告の方法を「文書又は電子メールのうちいずれかの方法を選択して記入すること」、頻度を「2週間に1回以上の範囲内で具体的な頻度を記入すること」と備考で指示しています。レインズ登録の期限の欄も「7日以内の範囲内で具体的な期間を記入すること」です。つまり、報告をメールで週1回、登録を3日以内、といった形で欄の中を詰められます。記入された条件は契約の内容になるため、3か月後に続けるかどうかを判断する材料も残ります。
出典: 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号 第一) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 1(3)・6(3)①) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約書・専任媒介契約約款第4条・第8条)
自己発見取引の道が残る
専任媒介と専属専任媒介の違いは、自分で見つけた買主と契約できるかどうかです。標準の専任媒介契約書は冒頭で3つの契約型式を並べ、専任媒介契約型式について「依頼者は、自ら発見した相手方と売買又は交換の契約を締結することができます」と書いています。専属専任媒介契約型式では、この1行が締結できないという形に置き換わります。
親族が買い取る、同じマンションの住人が買いたいと言っている、職場の同僚が興味を持っている。こうした可能性が少しでもあるなら、専任媒介の方が動きやすい契約です。
ただし、専任媒介で自己発見取引をしたときは、会社がそれまでに使った費用の償還を請求される条項があります(専任媒介契約約款第14条)。また、会社の紹介で知った買主と会社を外して契約することは、自己発見取引とは別の扱いになります(同第11条)。この2点はデメリットの章で条文ごとに見ます。「自己発見取引ができる」は、無条件ではなく「条項を知っていれば使える道」と理解しておきます。
出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約書・専任媒介契約約款第11条・第14条)
専任媒介のデメリット
専任媒介のデメリットを、根拠ごとに整理します。法律や約款で決まっているものと、会社の運用で起きるものを分けると、対策が見えます。
| デメリット | 根拠 |
|---|---|
| 売却の結果が1社の力量に左右される | 会社の運用(契約期間は法律で3か月が上限) |
| 囲い込みと両手仲介の動機が構造的に残る | 報酬の仕組み(2025年1月から制度の歯止め) |
| 期間中に他社へ頼むと違約金 | 専任媒介契約約款 第12条 |
| 自己発見取引でも費用償還・直接取引の条項 | 専任媒介契約約款 第14条・第11条 |
| 売却保証は会社の買取価格が出口になる | 各社のサービス条件 |
売却の結果が1社の力量に左右される
専任媒介では、依頼した1社の販売力、担当者の経験、顧客の数が、そのまま売却の結果に反映されます。一般媒介のように複数社の動きを比べて、良い方を残す形は取れない契約です。
会社の選び方を間違えると、3か月の契約期間はその会社と進むことになりやすいです。途中で別の会社に頼めば違約金の対象になり(専任媒介契約約款第12条)、契約の解除について約款が定める理由は、催告しても義務が履行されないとき(第16条)と、会社が信義誠実義務に違反したときや重要な事項について事実を告げなかったときなど背信的な行為があったとき(第17条)です。会社の責めに帰すことができない事由で解除したときは、履行に要した費用の償還(上限は約定報酬額)の対象になります(第14条)。
ただし、この「縛り」は3か月が上限です。法34条の2第3項は専任媒介契約の有効期間を3月を超えられないと定め、これより長い期間を定めたときは3月とします。更新は依頼者の申出によるもので(同条4項)、これらに反する特約は無効です(同条10項)。契約書に「自動更新」と書いてあっても効力を持たない扱いです。3か月ごとに、続けるか、一般媒介に切り替えるか、別の会社にするかを選び直せます。デメリットは「3か月間、1社に任せる」と幅を決めて受け止めます。売れないときの見直し方と途中解約の進め方は別の記事で扱います。
出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第3項・第4項・第10項) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第7条・第12条・第14条・第16条・第17条)
囲い込みと両手仲介の動機が構造的に残る
専任媒介で最も語られるデメリットが囲い込みです。国土交通省と4つの不動産流通機構が売主向けに出したチラシは、この行為を次のように定義しています。
「囲い込み」とは、一部の宅建業者が自社の利益のため、売主・買主双方の媒介を行うことを目的として、故意に物件の取引状況を隠し、売主の意向に反して物件の紹介を行わないような行為を指します。
会社の動機は報酬の仕組みから生まれます。報酬告示第一は、媒介の報酬の限度額を「依頼者の一方につき、それぞれ」定める作りです。売主からの手数料だけなら400万円超の部分に3%を掛けた額(速算で価格の3%+6万円)が上限ですが、買主も自社で見つけて双方を媒介すれば、買主からも同じ限度額まで受領できます。1件の取引で受け取れる報酬が2倍になるため、他社に買主を連れてこられるより自社で探したい、という力が働きます。これは会社の怠慢ではなく、報酬の仕組みから生まれる動機です。
2025年1月からは、この動機に制度の歯止めがかかりました。取引状況のレインズ登録が義務になり、運用指針は、専属専任媒介契約・専任媒介契約に基づき登録した物件について取引の申込みの受付に関する状況等の登録内容が事実と異なるときは、法65条1項の指示処分の対象となるとしています。売主は売主専用画面で状況を確認できます。動機そのものは残りますが、見つける手段と処分の根拠が整いました。囲い込みの見抜き方は別の記事で扱います。
出典: 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号 第一) 出典: 国土交通省・4不動産流通機構「レインズの『ステータス管理機能』を活用しましょう」 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 9(1)) 出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第65条第1項)
期間中に他社へ頼むと違約金の対象になる
専任媒介の契約期間中に、他の不動産会社に重ねて売却を依頼し、その会社の仲介で売買が成立すると、依頼していた会社は違約金を請求できます。専任媒介契約約款第12条が定める違約金の額は「約定報酬額に相当する金額」で、消費税額と地方消費税額の合計額に相当する額を除いた額です。つまり、成約していれば払うはずだった仲介手数料の本体額が違約金になります。標準の専任媒介契約書では、この内容が「4 違約金等」の欄に置かれています。
運用指針は、この違約金の範囲を次のように限っています。
違約金は、成約した場合に当該依頼者に請求し得る約定報酬額に相当する額であり、他の顧客からも報酬を受領できる見込みがあったとしても、その分を含めて請求することはできない。
上限は約定報酬額で、これを超える違約金を請求する特約は、依頼者に不利な特約として標準媒介契約約款による契約の外になります(運用指針6(3)⑩)。約款第19条2項も、各条項の定めに反する特約で依頼者に不利なものを無効としています。
売主から見ると、「専任にしたが動きが悪いので、黙って別の会社にも頼む」は選べない形です。別の会社に頼みたくなったら、3か月の満了で更新しないか、会社に義務違反がある場合に解除の手続きを取るかになります。途中解約の進め方は別の記事で扱います。
出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約書・専任媒介契約約款第12条・第19条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)⑥・⑩)
自己発見取引でも費用償還と直接取引の条項が付く
専任媒介では自分で見つけた買主と契約できますが、約款には2つの条項が付いています。
一つ目は費用償還です。専任媒介契約の有効期間内に、売主が自分で見つけた相手方と契約を結んだとき、または会社の責めに帰すことができない事由によって契約が解除されたときは、会社は「専任媒介契約の履行のために要した費用」の償還を請求できます(第14条1項)。その額は約定報酬額を超えられません(同条2項)。運用指針は、費用を請求するに当たっては、現地調査や権利関係の調査の交通費・謄本代、販売活動の広告費・通信費などについて明細書を作成し、領収書等で金額を立証して請求するものとしています。自己発見取引をしようとするときは、事前に会社へ通知する義務もあります(第13条)。
二つ目は直接取引です。契約期間内または有効期間の満了後2年以内に、会社の紹介によって知った相手方と、会社を排除して売買契約を結んだときは、会社は契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を請求できます(第11条)。運用指針も、この報酬請求権が認められるものだと説明しています。
内見に来た人から「不動産会社を通さず直接契約すれば、お互い手数料が浮きますよ」と持ちかけられて応じる。紹介した会社から、寄与割合に応じた報酬の請求が届く。
「自己発見取引ができる」は、会社の紹介を経ていない買主に限り、かつ費用償還を了解したうえで、という条件つきの道です。
出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第11条・第13条・第14条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)③・⑦)
売却保証は会社の買取価格が出口になる
大手の仲介会社には、一定期間内に売れなければ会社が買い取る「売却保証」があります。この保証を専任媒介(または専属専任媒介)の条件にしている会社があり、専任を選ぶ理由として勧められることがあります。
たとえば東急リバブルの「リバブル売却保証システム」は、適用基準の「媒介契約」の欄を「専属専任・専任」とし、保証額を「当社査定価格90%以下かつ1億円以下」(首都圏エリアのみ1億5,000万円以下)、販売期間を「3ヶ月以上〜6ヶ月未満」としています。マンションは「昭和57年(1982年)1月以降の築年」「30㎡以上」が条件で、適用の可否と保証額は同社の査定によると注記されています。
安心な仕組みですが、裏返すと「売れなければ査定の90%以下で会社が買う」という出口の価格があらかじめ決まる形です。運用指針は、この種の買取の特約について、一定の期間中に売却ができなかったときに会社が媒介価額を下回る価額で買い取る旨の特約は、売主に安く売ることを義務付けず、売主の希望があれば会社が買い取るべきことを定めたのみであれば差し支えないとしています。裏返せば、売主の側に「その価格で売る義務」が生まれる書き方になっていないかが見るところです。保証を理由に専任を選ぶなら、保証額がいくらになるか、買取に応じるかどうかを売主が選べる形かを契約前に確かめます。なお、付帯サービスの扱いは会社で割れており、三井のリハウスの「360°サポート」は公式サイトで「媒介の種別は問いません。ただし、対象者・対象物件等の適用条件があります。」と書いています。
出典: 東急リバブル「リバブル売却保証システム」 出典: 三井のリハウス「360°サポート」 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)⑩)
専任媒介をやめた方がいい条件と選んでよい条件
ここまでのメリットとデメリットを踏まえて、専任媒介をやめた方がいい条件と、選んでよい条件を整理します。やめた方がいい条件は、物件の側と会社の側の両方にあります。
- 人気物件で複数社の競争を使いたいならやめる
- 会社や担当者をまだ比べていないならやめる
- 親族や知人に売る可能性があるなら専属専任はやめる
- 登録証明書や報告の約束を渋る会社ならやめる
- 問い合わせが読めない物件と窓口を絞りたい売主は選んでよい
人気物件で複数社の競争を使いたいならやめる
駅から近い、築浅、人気の学区、周辺の売り物件がわずか。こうしたマンションは、売り出せば問い合わせが入ることが会社の側にも読めます。成約の見込みが高い物件なら、一般媒介で複数の会社に頼んでも、各社は自社の顧客に紹介し、広告も出します。
この場面で専任にすると、複数社が自社顧客の中から買主を探す競争を捨てることになります。1社の顧客とレインズ経由の買主に絞られ、同時に比べる相手も消えます。
問い合わせが読める物件なら、最初の3か月を一般媒介で2〜3社に頼み、動きの良い1社と次の3か月で専任に切り替える進め方もあります。何社に頼むか、どう組み合わせるかは別の記事で扱っています。
会社や担当者をまだ比べていないならやめる
査定に来た1社目の担当者から「専任でお願いします」と言われ、そのまま契約する。これは、会社を比べる機会を自分で捨てる形です。
専任媒介は3か月間、1社に任せる契約です。その1社を選ぶ材料が査定額と担当者の印象だけでは薄すぎます。少なくとも、査定の根拠(どの成約事例を使ったか)、想定している買主の層、レインズ登録と報告の約束、広告の予定を複数社から聞いてから決めます。価額について意見を述べるときはその根拠を明らかにする義務が法34条の2第2項にあるため、根拠の説明を求めるのは売主の当然の求めです。
不動産会社は、媒介契約を締結する際に専属専任媒介契約・専任媒介契約・一般媒介契約の相違点を十分に説明し、依頼者の意思を十分確認したうえで契約することとされています。3種類のどれを選ぶかは依頼者に委ねられている、と運用指針(国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」)にも書かれています。注意したいのは締結日の考え方です。運用指針は「媒介契約締結の日」を、媒介の契約締結の意思の合致のあった日であって、書面の交付の日ではないとしています。「とりあえず専任で」と口頭で答えた日が締結日になりうるので、比べ終わるまで返事を保留します。
出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第2項) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 冒頭・1(2)・6(3)①ハ)
親族や知人に売る可能性があるなら専属専任はやめる
親族が買い取る、同じマンションの住人が買いたがっている、知人が興味を持っている。こうした可能性が少しでもあるなら、契約の種類で扱いが大きく変わります。
専属専任媒介では、有効期間内に自ら発見した相手方と契約することが禁じられ、違反すると約定報酬額に相当する金額の違約金の対象です(専属専任媒介契約約款第12条2項)。専任媒介なら契約はできますが、会社がそれまでに使った費用の償還(上限は約定報酬額)を請求されうる条項があります(専任媒介契約約款第14条)。一般媒介では自ら発見した相手方と契約でき、成約したときに依頼している各社へ遅滞なく通知する義務(一般媒介契約約款第15条1項)を果たす形で進みます。
つまり、知人に売る可能性があるなら専属専任は避け、専任にするなら費用償還の条項を了解したうえで結ぶ、という判断になります。3種類のどれを選ぶかは依頼者に委ねられた事項なので、会社から専属専任を勧められても、「専任でお願いします」と返せば済みます。
出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専属専任媒介契約約款第12条・専任媒介契約約款第14条・一般媒介契約約款第15条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 1(2))
登録証明書や報告の約束を渋る会社ならやめる
専任媒介のメリットは、会社が法律の義務を果たすことで初めて成立します。契約の席で、次の3つの約束を渋る会社は、義務の履行そのものに疑問が残ります。
一つ目は、レインズ登録後の登録証明書の交付です。登録をした会社が登録を証する書面を遅滞なく依頼者に引き渡す義務は法34条の2第6項にあるので、「お渡しします」と即答できるはずの項目です。二つ目は、報告を文書か電子メールで行うこと。標準の専任媒介契約書は、報告の方法をこの2つから選んで記入する作りになっています。三つ目は、広告の具体的な措置(媒体・期間)を契約書か別紙に書くこと。運用指針は、専任媒介の依頼を受けた会社に、成約へ向けて具体的に行う措置を依頼者に明示することを求めています。
この3つに曖昧な返事をする会社と専任を結ぶと、3か月間、進捗が見えないまま過ぎる可能性があります。売却保証を条件に専任を迫られる場合も、保証額を先に聞き、納得できるかどうかで専任にするかを決められます。
出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第6項) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約書 備考) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)①)
問い合わせが読めない物件と窓口を絞りたい売主は選んでよい
反対に、専任媒介を選んでよい条件も整理します。
物件の側では、問い合わせが読めないマンションです。駅から遠い、築年数が古い、間取りが珍しい、周辺に同じ間取りの売り物件が多い。こうした物件は価格の調整と内見の工夫が売れ行きを左右し、1社が計画を持って動く方が進みやすくなります。一般媒介にすると各社が様子見に入りやすくなります。
売主の側では、窓口を1本にしたい事情がある人です。働きながらの売却、遠方の実家、小さな子どもがいる家庭。売却と購入を同じ会社で進める住み替えも、1社の方が日程を合わせやすくなります。
そして、会社との間で交換条件(手数料・広告の明示・報告の文書化)を取れたときです。この条件が揃えば、専任のデメリットの大半は契約の仕方で抑えられます。その具体的な結び方を、次の章で見ます。
専任媒介のデメリットを抑える契約の仕方
専任媒介を選ぶと決めたら、デメリットを契約の段階で潰します。5つあります。
- 登録証明書を受け取り売主専用画面を定期的に見る
- 広告の具体的な措置と報告の形式を契約書に書いてもらう
- 手数料は上限ではなく協議して決める
- 3か月の満了で更新しない選択を最初から持つ
- 専属専任ではなく専任で止める
登録証明書を受け取り売主専用画面を定期的に見る
レインズに登録した会社は、登録証明書を売主に引き渡す義務があります。契約の席で「登録はいつになりますか」「登録証明書はどの方法で渡してもらえますか」と聞き、期限(7日以内・休業日数と契約当日は算入しない)を過ぎても届かなければ催促します。標準の契約書は登録の期限を「7日以内の範囲内で具体的な期間」で記入する作りなので、3日以内などと書いてもらう頼み方もできます。
登録証明書には、売主専用画面に入る二次元コードが載っており、確認用のIDとパスワードで画面に入ります。画面では、物件が「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」のどの状態かが分かります。
月に数回、この画面を見る習慣を持ちます。覚えがないのに「売主都合で一時紹介停止中」になっていれば、会社に問い合わせて是正を求めます。国土交通省のチラシも、売主が問い合わせることで誤った取引状況登録が是正され、買主側の宅建業者から物件への問い合わせが可能になる、という流れを図で示しています。取引の申込みの受付に関する状況等の登録内容が事実と異なるときは法65条1項の指示処分の対象なので、会社の側も是正に動きます。これが、専任の最大のデメリットである囲い込みへの、売主側の備えです。
出典: 国土交通省・4不動産流通機構「レインズの『ステータス管理機能』を活用しましょう」 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約書 備考・専任媒介契約約款第4条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 9(1))
広告の具体的な措置と報告の形式を契約書に書いてもらう
専任媒介では、会社は成約に向けて行う具体的な措置を売主に明示することとされています。口頭で「しっかり広告します」と言われても、3か月後に比べる材料が残らないまま終わります。
契約書か別紙に、掲載するポータルサイトの名前、掲載開始日、チラシの配布範囲と回数、オープンルームの予定を書いてもらいます。報告については、標準の契約書が方法を「文書又は電子メールのうちいずれかの方法を選択」、頻度を「2週間に1回以上の範囲内で具体的な頻度」を記入する作りにしているので、「電子メールで週1回」と欄を埋めてもらう形が取れます。報告すべき事項は、運用指針によれば、会社が契約の相手方を探索するために行った措置(レインズへの登録、広告等)と引き合いの状況等です。問い合わせ数・内見数・買主の反応を書いてもらう根拠になります。
運用指針は、標準媒介契約約款として定められた契約書に、相手方を探索するために行う具体的措置(指定流通機構への情報登録、広告等)に関する条項や、業務処理状況の依頼者への報告・連絡等に関する条項を追加しても、標準媒介契約約款に基づく契約として扱う範囲に入るとしています。追加した条項はアンダーライン等で明示する決まりです。会社にとっても手間の増えない範囲なので、頼めば応じる会社が多いはずです。
出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約書 備考・専任媒介契約約款第4条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 2(2)②ロ・6(3)①イ)
手数料は上限ではなく協議して決める
契約書の報酬欄には、告示の限度額(400万円を超える部分に3%を掛けた額。速算で価格の3%+6万円・税別)がそのまま印字されていることが多いです。運用指針は、この限度額を当然に請求できるものではなく、会社が行おうとする媒介業務の内容等を考慮して依頼者と協議して決める事項としています。約款第8条2項も、報酬の額を告示の限度額の範囲内で協議の上定めると置いています。
専任媒介は会社が欲しがる契約なので、「専任にする代わりに手数料を相談したい」と持ち出すのは、指針に沿った行動です。相談の結果は契約書の「約定報酬額」の欄に反映してもらいます。この欄は金額を記入する作りなので、口頭の約束は契約書の額に負けます。
なお、報酬は会社の媒介で売買契約が成立したときに請求できるもので(第8条1項)、売買契約が融資の不成立を解除条件として結ばれ、融資の不成立が確定した場合などは、受領した約定報酬の全額が遅滞なく返還される定めです(第9条2項)。専任にしたからといって、売れなくても報酬を払う仕組みとは別です。売主が払う可能性があるのは、他社に重ねて依頼して成約したときの違約金(第12条)、自己発見取引で成約したときや会社の責めに帰すことができない事由で解除したときの費用償還(第14条)、そして特別に依頼した広告の料金と遠隔地への出張旅費の実費(第10条)です。
出典: 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号 第一) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約書・専任媒介契約約款第8条〜第10条・第12条・第14条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 1(3)・6(3)②)
3か月の満了で更新しない選択を最初から持つ
専任媒介の有効期間は法律で3か月が上限で、これより長い期間を定めたときは3月とされます(法34条の2第3項)。更新は依頼者の申出によるもので(同条4項)、これらに反する特約は無効です(同条10項)。約款も、更新をしようとするときは有効期間の満了に際して依頼者から文書等で申し出るものとしています(第15条2項)。運用指針は、更新の申出は有効期間満了の都度行われるべきもので、あらかじめ更新することを約定するのは許されない扱いとし、依頼者の申出があっても会社が更新に同意しないときは契約は更新されない扱いだとしています。
つまり3か月ごとに、売主は申し出をしないという形で契約を終えられます。この仕組みを最初から使う前提で契約すると、「1社に縛られる」デメリットは3か月の幅に収まります。
契約の席で「3か月の結果を見て、続けるかどうか判断します」と伝えておく進め方もあります。会社にとっても、3か月で成果を出す理由になります。3か月たったときの判断材料は、報告の文書と売主専用画面の履歴です。売れなかったときに何を見直すか、更新しないときの伝え方は、別の記事で扱います。
出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第3項・第4項・第10項) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約約款第7条・第15条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)⑧)
専属専任ではなく専任で止める
専任媒介で足りる場面で、専属専任媒介を勧められることがあります。専属専任にすると、レインズ登録の期限が5日以内(施行規則15条の10)、報告が1週間に1回以上(法34条の2第9項)に早まりますが、自ら発見した相手方との契約が禁じられ、違反すると約定報酬額に相当する金額の違約金の対象です(専属専任媒介契約約款第12条2項)。
売主側の見返り(登録が2日早い・報告の回数が増える)と、自己発見取引の道を閉じる代償を比べると、専任で止める方が自由度は高くなります。3種類のどれを選ぶかは依頼者に委ねられた事項なので、専属専任を勧められたら「専任でお願いします」と返せる立場です。
契約書は、冒頭の「この契約は、次の3つの契約型式のうち、専任媒介契約型式です」の表示、右上の「この媒介契約は、国土交通省が定めた標準媒介契約約款に基づく契約です」の表示、そして特約欄を読みます。標準約款に基づく契約では、約款の各条項の定めに反する特約で依頼者に不利なものは無効です(第19条2項)。型式の表示が「専任媒介契約型式」になっているかを確認して署名します。
出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第9項) 出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(第15条の10) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約書・専任媒介契約約款第19条・専属専任媒介契約約款第12条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 1(2)・2(2)②)
まとめ:専任媒介の得は法律の義務から生まれ、損は約款の条項から来る
いちばん重いのは、専任媒介のメリットとデメリットが別々の文書から来ているという点です。メリット(7日以内のレインズ登録・登録証明書の交付・2週間に1回以上の報告)は宅地建物取引業法34条の2が会社に課す義務で、これに反する特約は無効です(同条10項)。一方、デメリットの中核(他社へ重ねて依頼したときの違約金・自己発見取引の費用償還・満了後2年までの直接取引)は標準媒介契約約款の条項で、契約書に署名した時点で適用されます。「会社が熱心かどうか」を見る前に、どちらの文書に書かれた話かで仕分けると、判断が早くなります。
次の一歩は、契約の席で契約書の記入欄を埋めてもらうことです。登録の期限は「7日以内の範囲内」、報告の頻度は「2週間に1回以上の範囲内」、報告の方法は「文書又は電子メール」から選ぶ作りになっているので、ここに具体的な数字と方法を入れてもらいます。報酬の欄も、限度額をそのまま写すのではなく協議した額を入れます。これを飛ばすと、3か月後に「広告はしたのか」「報告は来ていたのか」を比べる材料が残らないまま、更新するかどうかを印象だけで決めることになります。
そのうえで、登録証明書を受け取って売主専用画面を定期的に見る習慣を作り、専属専任を勧められたときは専任で止める判断を持っておきます。3種類のどれを選ぶかは依頼者に委ねられた事項で、3か月の満了ごとに選び直せます。住み替えのトビラでは、専任媒介のメリットとデメリット、やめた方がいい条件と契約での抑え方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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