自分のマンションをリースバックに出したら、いくらで買われるのか。事業者に相談する前に、自分側の物差しがほしいところです。
その物差しになるのは、通常売却の査定額です。リースバックは家賃や住める期間も含む契約なので、価格だけでなく条件をそろえて比べます。
この記事では、マンションのリースバックの買取価格の相場、市場価格より安くなる理由、価格を左右する条件、市場価格を先に知る方法、提示額を見極めて有利にするコツを順に説明します。
マンションのリースバックの買取価格の相場
国土交通省の事業者調査では、買取価格を周辺相場の6〜7割とする回答が最多でした。ただし、マンションの成約価格を集計した統計ではありません。自宅に一律の割合を掛けるより、通常売却とリースバックの査定を比べるほうが具体的です。
リースバックの仕組みそのものと基本のメリット・デメリットは、別の記事でまとめています。
事業者調査では「周辺相場の6〜7割」が最多
国土交通省が2024年12月から2025年1月にかけて、業界団体に加入する宅地建物取引業者586社を対象に行った実態調査で、リースバックの買取を行う事業者27社に「買取価格は周辺相場の何割か」を尋ねています。
| 買取価格の周辺相場に対する割合 | 回答した事業者 |
|---|---|
| 4〜5割 | 7% |
| 6〜7割 | 52% |
| 8〜9割 | 22% |
| 10割(市場相場とほぼ同等) | 11% |
| その他 | 7% |
回答割合は四捨五入のため合計99%です。これは住宅全般についての事業者の回答で、取引件数の52%が6〜7割だった、という意味ではありません。自宅の提示額が何割になるかは個別の査定で確かめます。
出典:国土交通省「不動産取引に係る新たなサービス形態について」2025年2月、28ページ
家賃と利回りから価格を考える方法もある
値付けの一つに、年間家賃を期待利回りで割る方法があります。以下は仕組みを知るための仮定です。6〜10%を業界共通の相場とするものではなく、経費・将来の売却価格なども省いています。
買取価格の式(事業者側の計算・想定家賃と利回りは仮に置いた値です)
買取価格 = 想定家賃 × 12か月 ÷ 期待利回り
想定家賃を月13万円と置くと、年間の家賃は156万円
・利回り6% → 156万円 ÷ 0.06 = 2,600万円
・利回り8% → 156万円 ÷ 0.08 = 1,950万円
・利回り10% → 156万円 ÷ 0.10 = 1,560万円
自分の部屋で試すときは、13万円の欄に「同じ棟・同じ広さの部屋が賃貸でいくらで募集されているか」を入れます
同じ家賃でも、設定する利回りが変われば計算上の価格が変わります。ただし、事業者がこの式だけで査定しているとは限りません。提示額の根拠を聞くための補助に使います。
市場価格に6〜7割を掛けた場合の計算例
次の表は、通常売却の想定額に0.6〜0.7を掛けた計算例です。査定額の予測や最低保証ではありません。
| 市場価格 | 買取価格の目安(6〜7割) |
|---|---|
| 2,000万円 | 1,200万〜1,400万円 |
| 3,000万円 | 1,800万〜2,100万円 |
| 4,000万円 | 2,400万〜2,800万円 |
| 5,000万円 | 3,000万〜3,500万円 |
手取りで比べる際は費用も引きます。たとえば3,000万円の通常売却で仲介手数料が上限の105万6,000円なら、その手数料だけを引いた残りは2,894万4,000円です。実際にはローン返済・登記費用・税金なども確認します。リースバックは直接買取なら仲介手数料はかかりませんが、仲介会社が入る場合は別です。
出典: 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号)
買取価格と家賃をセットで比べる
同じ利回りで計算するプランなら、買取価格を上げると家賃も上がります。ただし、各社で条件が異なるため「高い買取価格=必ず高い家賃」とは限りません。買戻しを希望する場合は、その可否・期限・金額も見積もりで確認します。
この記事では、買取価格を「家賃と一緒に見るもの」として扱います。
リースバックの買取価格が市場価格より安い理由
事業者は、家賃収入や将来の売却代金から、購入費用・税金・修繕費などを回収する必要があります。その見込みや契約条件が、提示額に影響します。
事業者は家賃と転売で回収するため
事業者はマンションを買ったあと、あなたが住んでいる間はその部屋を貸す形に限られます。回収の道は2つです。ひとつは毎月の家賃。もうひとつは、いずれ売ること。売り方は「賃貸中の区分マンション(オーナーチェンジ物件)として投資家に売る」か「退去後に居住用として売る」かのどちらかです。
家賃と将来の売却代金が収入になり、購入代金や保有中の経費が支出になります。通常の買取とリースバックのどちらが高いかは、物件と契約条件によります。
空室や修繕の負担を事業者が背負うため
所有者になる事業者には税金や管理費・修繕積立金などの負担があります。修理費を誰が払うかなど、利用者との負担分けは賃貸借契約でも確認します。
説明用に家賃を月13万円、管理費・修繕積立金を月3万円と置くと、年156万円の家賃収入からこの費用だけで年36万円が出ます。ただし、積立額が安ければ有利とは限りません。積立不足や将来の一時金も評価に関わります。
出典: 国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」(2022年6月)
住める期間や買戻し条件も価格に関わる
定期借家か普通借家か、いつ退去する予定かで、事業者の保有・売却計画は変わります。買戻しの約束があっても、第三者への売却が一律に禁止されるわけではありません。契約内容を確認します。
短期の契約なら条件が変わるか、買戻しの有無で見積もりが変わるかを聞けます。価格のために必要な居住期間まで短くするのは避け、自分が守れる条件で比較しましょう。
マンションの買取価格を左右する条件
立地や管理状況に加え、希望する家賃・期間でも提示条件が変わります。
| 確認する条件 | 査定で伝えること |
|---|---|
| 立地・間取り | 駅距離、広さ、近隣の賃貸需要 |
| 築年数・耐震性 | 建築確認の時期、耐震診断や改修の有無 |
| 管理・修繕 | 月額負担、長期修繕計画、一時金の予定 |
| 契約条件 | 希望家賃、住みたい期間、買戻しの希望 |
立地と賃貸需要
事業者は周辺の家賃や借り手の見込みも見ます。駅徒歩5分なら何割で売れる、といった共通の基準はありません。同じ棟や近隣の事例を根拠に、どこを評価したか聞きましょう。
築年数と耐震基準で融資の付きやすさが変わる
築年数だけで買取割合は決まりません。耐震性や管理状態、将来の販売先も査定に関わります。新耐震基準の施行は1981年6月1日ですが、竣工年だけでは適用基準を断定できません。
建築確認の時期は、確認済証や建築確認台帳記載事項証明書などで確かめます。登記事項証明書の新築年月日とは別です。耐震診断・改修の資料があれば、その情報も伝えます。
管理費・修繕積立金の額が純利回りを削る
管理費・修繕積立金は、保有中の収支に関わります。たとえば月3万円と月1.5万円では、年間負担に18万円の差があります。ただし、この差だけで買取価格が何万円変わるとは決まりません。積立残高や今後の修繕予定も合わせて見られます。
修繕積立金の値上げ予定、大規模修繕の一時金の計画、管理費の滞納率も見られます。長期修繕計画と直近の総会の議事録を先に用意しておくと、事業者にとって先が読めるようになり、価格に反映されやすくなります。
専有面積と間取りで賃貸需要の読みやすさが変わる
広さや間取りの評価は、その地域で誰が借りるかによって変わります。広い部屋なら必ず高く評価される、コンパクトなら必ず有利、と一律にはいえません。近隣の賃料や募集状況をどう査定に反映したか聞きます。
契約の種類と期間で事業者の出口が変わる
希望家賃・住む期間・買戻しの希望をそろえて、複数社から条件を出してもらいます。変更できる条件があれば、別案も見積もってもらいましょう。
高い買取額でも家賃の支払いが続けば差は縮まります。逆に、短期間だけ住むなら、家賃の差より売却額の差が大きく効く場合があります。以下の総額比較で確かめます。
自分のマンションの市場価格を先に知る方法
通常売却の査定を頼むと、リースバックの提示額と比べる基準ができます。公開データやAIの推定は補助に使えますが、すべて調べ終えてから申し込む必要はありません。
不動産情報ライブラリで同じ地区の成約価格を見る
国土交通省が運営する「不動産情報ライブラリ」では、実際に取引された価格(取引価格・成約価格の情報)を、地区・築年・面積・取引時期で絞って見られます。無料で、登録も不要です。
自分のマンションと同じ町丁目、近い築年、近い面積の取引を探すと、㎡単価の幅が見えてきます。たとえば同じ地区の築20〜25年・70㎡台の取引が㎡40万〜45万円なら、70㎡の部屋は2,800万〜3,150万円が市場価格の目安です(70㎡×40万円と70㎡×45万円)。
物件名は伏せられていますが、地区と条件で絞れば十分に使えます。まずここで「自分の地区の相場感」を掴んでおくと、次の手段で得た価格が妥当かどうかも判断できます。相場を調べる手段の全体像は、別の記事でまとめています。
レインズマーケットインフォメーションで直近の成約事例を絞る
不動産流通機構が運営する「レインズマーケットインフォメーション」では、不動産会社が登録した直近の成約価格を、駅・沿線・築年・面積で絞って見られます。こちらも無料です。
公開情報は物件名などが伏せられ、対象期間や公開条件も異なります。自分の部屋そのものの成約価格とは限りません。近い条件の価格帯をつかむために使います。
匿名のAI査定で棟の価格帯を掴む
公開データで絞り込めるのは「同じ地区」までが限度です。「自分の棟」の価格帯を掴むには、マンション名で検索できる匿名のAI査定が使えます。名前も連絡先も入れずに、棟ごとの推定価格や過去の売り出し価格が見られるサービスがあります。
AIの推定は室内の状態などを十分に反映しない場合があります。通常売却の査定と照らし合わせる補助にします。
仲介会社の机上査定で通常売却の査定書をもらう
仲介会社には「通常売却とリースバックを比較中」と伝え、通常売却の査定額と根拠を聞きます。連絡方法や訪問の希望も伝えられますが、メールの希望を書くだけで電話がなくなる保証はありません。
今の家はいくらで売れるか。それを知ると、住み続けるために払う差額が見えます。
国民生活センターも、周辺相場より安い売却価格や強引な勧誘に注意を促しています。査定額と支払い条件を比べ、契約は納得してから決めましょう。
強引な勧誘のトラブル事例と、契約前に確かめる項目は、別の記事でまとめています。
出典: 独立行政法人国民生活センター「強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!」(2025年5月21日)
提示された買取価格を見極めて有利にするコツ
提示額を通常売却の査定額と比べ、根拠を聞き、家賃を含む負担で判断します。
市場価格に対する割合で提示額を読む
提示額を見たら、まず「市場価格の何割か」に直します。提示額÷市場価格です。3,000万円の部屋に2,100万円の提示なら7割、2,550万円なら8.5割です。
割合が高くても低くても、価格の根拠と家賃・諸費用を確認します。通常売却の査定も成約を保証する数字ではないため、販売期間や値下げの見込みも聞きましょう。
査定根拠を聞く
- 通常売却と比べて価格が変わる理由
- 想定家賃と、その根拠になる周辺事例
- 費用や契約条件が価格に与えた影響
利回りを使う査定なら、その計算方法も聞きます。単純な式で再現できないから粗い査定、と決めつけず、比較に必要な説明が得られるかを見ます。
家賃と合わせて住む期間の総額で比べる
次は当サイトで条件を仮に置いた比較です。「買取価格−家賃×月数」で、家賃だけを差し引いた残額を比べます。表の「手取り」はローン返済・税金・初期費用などを引く前の簡易計算です。
| A社 | B社 | |
|---|---|---|
| 買取価格 | 2,100万円 | 1,900万円 |
| 家賃 | 月14万円 | 月11万円 |
| 12か月住む場合の手取り | 1,932万円 | 1,768万円 |
| 60か月住む場合の手取り | 1,260万円 | 1,240万円 |
A社もB社も仮に置いた提示です。12か月の欄は2,100万円−14万円×12=1,932万円、1,900万円−11万円×12=1,768万円。60か月の欄は2,100万円−14万円×60=1,260万円、1,900万円−11万円×60=1,240万円で計算しています。
住み替えで1年なら、買取価格の高いA社が164万円有利です。5年住むなら差は20万円まで縮まります。買取価格の差200万円を家賃の差月3万円で割ると約67か月なので、6年目にはB社が逆転します。仮の数字ですが、住む期間で答えが変わる、という構造は共通です。
複数社に同じ契約条件で出させる
事業者ごとに期待利回りも対象も違うので、3社以上に提示を出させます。コツは条件をそろえることです。「定期借家で期間は1年」「家賃は月12万円まで」「買戻し特約は不要」と、こちらから同じ条件を示して、買取価格をいくら出せるかを聞きます。
家賃と期間をそろえると比較しやすくなります。さらに初期費用・修理負担・再契約条件も合わせて確認します。
「他社にも同じ条件で聞いています」と伝えて大丈夫です。比較されることを嫌がる事業者より、比較に耐える提示を出す事業者を選ぶほうが、あとの安心につながります。
変更できる条件の別案を聞く
- 退去時期が決まっている場合は、その日程を伝える
- 買戻しを希望しない場合は、その条件の見積もりを聞く
- 希望家賃を変えた場合は、売却額と総支払額を比べる
- 管理・修繕資料で確認できることは正確に伝える
価格が上がるとは限りませんが、自分に合う契約を選ぶ材料になります。短期の居住なら、通常売却で引渡し時期を調整できるかも相談すると比較が広がります。
まとめ:通常売却の査定額と、家賃を含む条件で比べる
国土交通省の事業者調査では、買取価格を周辺相場の6〜7割とする回答が最多でした。ただし、自分のマンションに当てはまる割合を示す統計ではありません。
次の一歩は、今の家の通常売却の査定です。リースバックの提示額と比べ、家賃・費用・住める期間まで確認すれば、「住み続けるためにどれだけ負担するか」を判断できます。
住み替えのトビラ 
