不動産会社の担当者の選び方|営業マンを制度と質問で見極める

不動産会社の担当者の選び方|営業マンを制度と質問で見極める

「不動産会社は看板より担当者で選べ」。よく聞く言葉ですが、では担当者の何を見ればよいのでしょうか。人柄や相性だけで選ぶと、感じのよい担当者の高い査定額に乗って3か月を失う、という形の失敗が起こります。

先に答えを書きます。担当者は、主観ではなく「制度で確かめられる項目」と「答えの型が決まっている質問」で見極めます。宅地建物取引士証には提示の義務があり、従業者名簿には閲覧の制度があり、査定額に意見を述べたなら根拠を明らかにするのは会社の法律上の義務です。良い担当者は数字・事例・期限で答え、そうでない担当者は形容詞と一般論で答えます。

この記事では、担当者で結果が変わる理由、制度で確かめられる4つの項目、見極めの質問と良い答えの型、避けたい担当者のサイン、合わないときの変え方の順に整理します。

担当者で売却の結果が変わる理由

「不動産会社は看板より担当者で選べ」とよく言われます。これは感覚の話ではなく、売却で重要な判断の多くが担当者個人の裁量に委ねられているためです。まず、どの判断が担当者の手の中にあるのかを見ます。

査定額と売り出し価格は担当者の裁量で決まる

同じ会社に頼んでも、担当者が違えば査定額は変わります。査定は、レインズなどの成約事例の中からどの事例を選び、階数や向き、築年数の差をどう補正するかで決まります。この選び方と補正の幅が、担当者の裁量です。

国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は、査定額の根拠についてこう書いています。

意見の根拠としては、価格査定マニュアル(公益財団法人不動産流通推進センターが作成した価格査定マニュアル又はこれに準じた価格査定マニュアル)や、同種の取引事例等他に合理的な説明がつくものであることとする。

裏返せば、どのマニュアルを使い、どの取引事例を「同種」と見るかは会社と担当者に委ねられています。同じマンションの似た住戸を出しても、査定額には会社ごとに幅が出ます。

売り出し価格も、査定額をもとに担当者と決めます。高すぎれば内覧が入りにくく、安すぎれば手取りが減ります。値下げの時期と幅も、担当者の助言で動きます。標準媒介契約約款5条1項は、媒介価額が事情の変更によって不適当と認められるに至ったときは、会社が売主に対して「根拠を示して助言します」と定めています。値下げの提案にも根拠を求めてよい、という建て付けです。この最初の価格の判断が、売却期間と最終的な手取りを大きく左右します。

出典: 国土交通省 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 出典: 国土交通省 標準媒介契約約款

買主との交渉と他社への紹介は担当者の手の中にある

売り出した後の動きも、担当者次第です。買主からの値引き要望をどう売主に伝えるか、他社から「この物件を紹介したい」と問い合わせが来たときにどう応対するか、内覧の日程をどう組むか。いずれも売主の目の届かないところで担当者が判断します。

他社からの問い合わせを断って自社の顧客で決めようとする運用(囲い込み)が起きるかどうかも、会社の方針と担当者の判断で決まります。専任媒介の有効期間は3か月を超えられないと定められているので(宅地建物取引業法34条の2第3項)、専任で結べば最長3か月をその担当者と組むことになります。

つまり、会社の看板が担保するのは広告の量や顧客の数までで、日々の判断は人に委ねられています。担当者を見極めることは、売却の結果を左右する判断を誰に任せるかを決めることと同じです。

出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法

見極めるタイミングは査定の訪問と契約前と報告時の3回

担当者を見るタイミングは3回あります。1回目は査定の訪問時です。物件を見て査定額と根拠を説明する場面で、知識と誠実さが出ます。2回目は媒介契約を結ぶ前です。販売計画と報告の約束を確かめます。3回目は売り出し後の業務報告です。約束どおりの報告が来るかで、実行力が分かります。

感じのよい担当者が出した、他社より300万円高い査定額で専任契約を結んだ。3か月で内覧は2組、値下げを2回して、最初に低かった他社の査定額で決まった。金額と件数は例示ですが、人柄や相性だけで判断すると、こうした形の失敗が起こりやすくなります。

この記事では、主観に頼らず、法律で確かめられる項目と、答えの型が決まっている質問で担当者を見極める方法を整理します。会社の規模や免許番号の見方は別記事で整理しています。

不動産会社の選び方|査定額に頼らず信頼できる会社を見極める判断基準 マンション売却の不動産会社の選び方|査定額でなく実績で見極める判断基準

担当者について制度で確かめられる項目

担当者について、名刺の肩書きや口頭の説明ではなく、証明書や名簿で確かめられることがあります。宅地建物取引業法が用意している項目は、次の4つです。

  • 宅地建物取引士証の提示(22条の4)
  • 従業者証明書の提示(48条2項)と従業者名簿の閲覧(48条4項)
  • 事務所に置かれる専任の宅地建物取引士の割合(31条の3)
  • 重要事項説明を行う人と書面に記名する人(35条・37条)

宅地建物取引士証の提示を請求できる

宅地建物取引士(宅建士)は、不動産取引の国家資格です。宅建業法22条の4は、提示の義務をこう定めています。

宅地建物取引士は、取引の関係者から請求があつたときは、宅地建物取引士証を提示しなければならない。

ここで注意したいのが「取引の関係者」の範囲です。この語が誰を指すかを定めた規定は、法にも施行規則にも置かれておらず、国土交通省の解釈・運用の考え方にも定義が見当たらない形です。媒介契約を結んだ売主は、その媒介に係る売買の当事者なので取引の関係者にあたります。査定だけを受けている段階の売主が含まれるかは、条文の文言からは幅があります。査定の訪問で見せてほしいときは、権利として押すより「宅建士の資格はお持ちですか」と聞いて、任意で見せてもらう形が現実的です。

証には氏名と登録番号、有効期限が載っています。なお、重要事項説明を行うときは、請求がなくても宅建士証を提示する義務があります(35条4項)。契約の場で提示されなければ、その場で聞けます。

資格の有無と担当者の良し悪しは別の話です。ただ、資格は法律と契約の基礎知識を持つ目安になり、後述する重要事項説明を自分で行える担当者かどうかの分かれ目になります。

出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法

従業者証明書と従業者名簿で在籍と職務を確かめられる

不動産会社は、従業者に従業者証明書を携帯させなければ、その者を業務に従事させられません(48条1項)。従業者は、取引の関係者の請求があったときはこの証明書を提示する義務があります(48条2項)。解釈・運用の考え方によれば、携帯させるべき者の範囲には代表者(いわゆる社長)が含まれ、非常勤の役員や、一時的に事務の補助をする者も加わります。

さらに、会社は事務所ごとに従業者名簿を備える義務があり(48条3項)、取引の関係者から請求があったときは閲覧に供する義務があります(48条4項)。名簿に載る事項は、施行規則17条の2第1項が定めています。

一 主たる職務内容 二 宅地建物取引士であるか否かの別 三 当該事務所の従業者となつた年月日 四 当該事務所の従業者でなくなつたときは、その年月日

つまり、名簿で直接に読めるのは「その事務所の従業者となった年月日」です。「在籍年数」は、この年月日から今日までを数えた読み替えになります。「主たる職務内容」の欄は、解釈・運用の考え方で、役員なら役職名、それ以外は総務・人事・経理・財務・企画・設計・広報・営業等に区分して記入するとされています。名簿は最終の記載をした日から10年保存する決まりで(規則17条の2第4項)、電子で備えている会社では画面に表示する方法で閲覧させる形になります。

閲覧を頼む場面はまれですが、「経験豊富です」という言葉を年月日で確かめられる制度が用意されている、と知っておくと、担当者の説明の受け止め方が変わります。ここでも要件は「取引の関係者からの請求」なので、媒介契約を結んだ後のほうが頼みやすい形です。

出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法 出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法施行規則 出典: 国土交通省 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方

専任の宅建士は事務所の従業者5人に1人以上いればよい

不動産会社は、事務所ごとに、国土交通省令で定める数の成年者である専任の宅建士を置く義務があります(31条の3第1項)。その数を定める施行規則15条の5の3は、事務所で業務に従事する者の数に対する専任の宅建士の数の割合が「五分の一以上となる数」としています。逆に言えば、営業担当の全員が宅建士である必要はない、という制度です。

法人の役員が宅建士のときは、その人が自ら主として業務に従事する事務所については専任の宅建士とみなされます(31条の3第2項)。この割合に足りない状態になったときは、2週間以内に適合させる措置を執る義務があります(同3項)。

このため、大手でも地元の会社でも、査定に来る担当者が宅建士かどうかは会社ごと、人ごとに違います。資格のない担当者が悪いわけではなく、営業の経験と資格は別のものです。ただ、法律や契約の質問に対する答えの確かさは、資格の有無で差が出やすい面があります。

「宅建士ですか」と聞くのは、ごく普通の確認です。会社側にとっても、資格者を配置する基準が法律で決まっているので、聞かれることに慣れています。

出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法 出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法施行規則

重要事項説明は宅建士にしかできない

売買契約が成立するまでの間に行う重要事項説明は、会社が「宅地建物取引士をして」書面を交付して説明をさせる、と定められています(35条1項)。その35条書面に記名するのも宅建士です(35条5項)。契約後に交付する契約書、いわゆる37条書面への記名も宅建士が行います(37条3項)。担当者が宅建士でない場合、契約の場では別の宅建士が説明します。

媒介契約書に記名押印するのは会社

売り出しの前に交わす媒介契約書は、扱いが違います。34条の2第1項は「宅地建物取引業者は…書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない」と定めていて、記名押印の主体は会社です。宅建士の記名を求めているのは、重要事項説明の35条書面と契約の37条書面のほうになります。

これ自体は制度どおりの運用です。ただ、売主から見ると、売り出しから契約まで同じ人に一貫して見てもらえるかどうかの違いになります。

契約時に初めて会う宅建士が、物件の事情や交渉の経緯を把握しているかは会社の引き継ぎ次第です。担当者が宅建士なら、この引き継ぎのリスクが減ります。契約前に「重要事項説明はどなたが行いますか」と聞いておくと、当日の段取りが分かります。

出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法

良い担当者を見極める質問

制度で確かめられるのは資格と在籍までです。力量と誠実さは、質問への答え方で見ます。良い担当者は「数字・事例・期限」で答え、そうでない担当者は「形容詞と一般論」で答えます。

質問良い答え避けたい答え
査定額の根拠になった成約事例は同じマンションや近隣の事例を挙げ、補正の理由を説明する「相場的にはこのくらい」
この物件の弱点は具体的に挙げ、買主への説明の仕方まで話す「特にないです」
誰に・どこで・いつまでに売るかターゲット・媒体・レインズ登録日・値下げ判断の時期を示す「幅広く広告します」
業務報告には何を書くか他社からの問い合わせ件数と応対、内覧の内訳「反応があればお伝えします」

査定額の根拠になった成約事例を見せてもらう

宅建業法34条の2第2項は、根拠の明示をこう定めています。

宅地建物取引業者は、前項第二号の価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。

主語は「宅地建物取引業者」、つまり会社です。義務が生じる場面も「価額又は評価額について意見を述べるとき」に限られていて、査定額を示した時点でこの場面に入ります。根拠を聞くのは売主の当然の問いで、答えが出てこないこと自体が判定材料になります。解釈・運用の考え方は、根拠について依頼者の納得を得ることまでは要しないものの合理的でなければならないこと、明示は口頭でも書面でもよいこと、そして法律上の義務なので査定に要した費用を依頼者に請求できないことを示しています。

聞き方は「この査定額の根拠になった成約事例を見せてください」です。良い担当者は、レインズの成約事例の中から、同じマンションか近隣の似た物件を示し、階数・向き・築年数・室内の状態でどう補正したかを説明します。件数を指定するなら3件ほどが目安で、これは制度で決まった数というより、こちらが区切る線です。

事例を見せてもらうときの前提

解釈・運用の考え方は、取引事例を顧客に提示する行為について、34条の2第2項の義務を果たすため必要な限度で法45条・75条の3の守秘義務に「正当な理由」があると整理しています。同時に、収集する情報は成約価額・成約の時期・物件に関する情報に限り取引の当事者の氏名等は収集しないこと、依頼者にその取引事例をみだりに口外しないよう要請すること、売り急ぎ・買い急ぎなど特殊な事情のある事例は収集の対象としないことも定めています。事例に売主や買主の名前が載っていないのは、この決まりに沿った形です。

「相場的にはこのくらいです」「当社の実績からです」で終わる答えは、根拠の説明として足りていない状態です。他社より高い査定額が出たときほど、この質問が重くなります。根拠が薄い高い査定額は、専任契約を取るための価格になっていることがあります。

出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法 出典: 国土交通省 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方

この物件の弱点と売れにくい理由を聞く

「この物件の弱点はどこですか」と聞きます。良い担当者は、北向き、駅からの距離、管理費の水準、築年数、リフォームの要否など、買主が気にする点を具体的に挙げ、それを買主にどう説明するかまで話します。

弱点を言える担当者は、買主にも同じ説明をします。買主は隠された弱点を内覧で見つけると不信感を持ちますが、先に説明されていれば納得して検討を続けます。弱点を先に言うことは、売却を有利にする技術です。

「特に弱点はないですよ」と言う担当者は、売主の気分をよくすることを優先しています。それは売り出し後の「反応が薄い理由」を説明できない状態につながります。弱点を聞き、対策(価格・修繕・説明の仕方)を一緒に考えられる担当者を選びます。

誰にどこでいつまでに売るかの販売計画を聞く

販売計画は、3つの点で具体かどうかを見ます。「誰に」は、この物件を買う人の像です。単身者か、子育て世帯か、投資家か。「どこで」は、レインズへの登録日、掲載するポータルサイト、自社の顧客への紹介、チラシの範囲です。「いつまでに」は、売却の目標期間と、反応が乏しければいつ・いくら値下げを判断するかです。

レインズへの登録は、標準媒介契約約款4条1項四号が会社の義務として定めていて、登録したときは登録証明書を売主に交付する義務も同項五号にあります。良い担当者は、この期日を踏まえて「レインズには契約の翌営業日に登録し、初回の2週間で内覧が2組以下なら価格を見直しましょう」のように、期限と数字で話します。ここでの2週間や2組は、担当者が示す目安の例であって、法律が決めた数とは別です。

「幅広く広告します」「がんばります」という答えは、計画の中身が空のままです。あわせて「今、何件の売り物件を担当していますか」と聞きます。担当件数が多すぎると、1件あたりの動きが薄くなります。

出典: 国土交通省 標準媒介契約約款

業務報告に何を書くかと値下げの判断基準を聞く

専任媒介では2週間に1回以上、専属専任媒介では1週間に1回以上、会社が売主に業務の処理状況を報告する義務があります(34条の2第9項)。売買の申込みがあったときは、専任か一般かを問わず、遅滞なくその旨を報告する義務もあります(同8項)。これらに反する特約は無効です(同10項)。ただし、報告に何を書くかは法律の外側で、会社と担当者の運用に委ねられています。ここが担当者の差になります。

契約前に「報告には、他社からの問い合わせ件数とその応対、内覧の申込み数と内訳(自社の顧客か他社の顧客か)、その結果を書いてもらえますか」と頼みます。良い担当者はこの要望に応じます。渋る担当者には、報告を曖昧にしておきたい事情がある場合があります。

値下げの判断基準も先に聞きます。標準媒介契約約款5条は、媒介価額が事情の変更で不適当と認められるに至ったときは会社が根拠を示して助言すると定め、価額の引上げには会社の承諾が要り、承諾を拒むときは会社がその根拠を示すとしています。つまり、価格の変更をめぐるやり取りは、双方が根拠を出し合う形で設計されています。「どういう状態になったら値下げを提案しますか」に対し、「内覧が月に○組以下」「問い合わせが○件以下が○週間続いたら」と数字で答えられれば、売り出し後の提案に根拠があるかを売主が判断できます。

出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法 出典: 国土交通省 標準媒介契約約款

避けたい担当者のサイン

避けたい担当者のサインは2種類に分かれます。1つは法律に触れる可能性のある言動で、これは1つでも出たら避けます。もう1つは力量不足を示す言動で、複数重なれば避けます。

種類サイン対応
法律に触れる可能性将来の値上がりを断定する、威迫、断った後の勧誘継続、迷惑を覚えさせるような時間の電話や訪問1つでも避ける
力量不足根拠のない高い査定額、専任や即決を急かす、質問に数字で答えない、報告が抽象的、連絡が遅い複数重なれば避ける

他社より突出して高い査定額に根拠がない

複数社に査定を頼むと、1社だけ高い額が出ることがあります。高い査定額そのものは歓迎してよいものですが、根拠を聞いて成約事例を示せないなら、専任契約を取るための価格になっている可能性があります。

高い価格で売り出せば内覧が入りにくくなり、しばらくして「反応が薄いので値下げしましょう」となります。時期は物件と季節によって幅があり、1〜2か月後というのは一例です。結果として、最初から相場に沿った価格で出した場合より時間がかかり、値下げの回数が増えて「売れ残り」の印象が付きます。

見分け方は前章の質問です。査定額の根拠になった成約事例を見せてもらい、他社の事例と比べます。査定額の差が事例の選び方で説明できるなら納得できます。説明が出てこなければ、その額は営業上の数字です。査定額の妥当性を確かめる方法は、別記事でも整理しています。

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専任媒介や即決を急かす

「専任媒介でないと広告費をかけにくいんです」「今日決めていただければ、この査定額で進めます」という言葉は、急かしのサインです。専任媒介は会社にとって最長3か月の独占を意味するので、急いで結ばせたい動機があります。

媒介契約の種類を選ぶのは売主です。国土交通省の解釈・運用の考え方は、会社は媒介契約を締結する際に専属専任媒介契約・専任媒介契約・一般媒介契約の相違点を十分に説明し、依頼者の意思を十分確認した上で契約を締結するものとし、その選択は依頼者に委ねられていると書いています。選択を急がせる担当者は、この前提を軽く見ています。

なお、正当な理由なく、契約を締結するかどうかを判断するために必要な時間を与えることを拒む行為は、施行規則16条の11第1号ロが禁じる行為です。解釈・運用の考え方は、「契約の締結をするかどうかしばらく考えさせてほしい」と申し出た相手に、事実を歪めて「明日では契約締結はできなくなるので、今日しか待てない」と告げる場面を例に挙げています。対応は簡単で、「他社の査定も聞いてから決めます」と伝え、反応を見ます。それでも急かすなら、その担当者は売主の判断より自分の契約を優先しています。逆に「ぜひ比べてください」と言える担当者は、自分の提案に自信があります。

出典: 国土交通省 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法施行規則

必ず売れるなどの断定や夜間の電話がある

宅建業法47条の2第1項は、契約の締結の勧誘に際して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、利益が生ずると言い切って誤解させるような断定的判断を提供する行為を禁じています。解釈・運用の考え方が挙げる例は、2〜3年後には物件価格が必ず上がると告げる、この物件を買えば一定期間は必ず収入が得られて損はしないと告げる、といった将来利益の断定で、故意であることは要しないとされています。「絶対に値上がりします」はこの例示に近い言い方です。「必ず売れます」は、売れるかどうかと利益が生ずるかどうかが同じではないため、条文の文言との距離に幅がありますが、断定的判断の提供にあたる可能性のある言い方として受け止めておくのが安全です。

同条2項は、契約を締結させるため、または申込みの撤回や解除を妨げるために相手方等を威迫する行為を禁じています。解釈・運用の考え方は、威迫を「恐怖心を生じさせるまでは要しないが、相手方に不安の念を抱かせる行為」と説明し、「なぜ会わないのか」「契約しないと帰さない」と声を荒げて面会を強要したり、拘束したりする行為を例に挙げています。さらに同条3項を受けた施行規則16条の11第1号は、次の行為を禁じています。

ニ 宅地建物取引業者の相手方等が当該契約を締結しない旨の意思(当該勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、当該勧誘を継続すること。 ホ 迷惑を覚えさせるような時間に電話し、又は訪問すること。

ホの条文に時刻の線引きは置かれておらず、迷惑を覚えるかどうかで判断する形です。深夜や長時間の勧誘で私生活または業務の平穏を害し困惑させる行為も、同号ヘで禁じられています。これらの規定が守る相手は「宅地建物取引業者の相手方等」で、その定義は35条1項にあり、会社が行う媒介に係る売買の各当事者が含まれます。媒介契約を結んだ売主はここに入り、査定だけを受けている段階の売主が含まれるかは文言に幅があります。

これらは担当者個人の資質というより、法律が線を引いている行為です。1つでも出たら、その担当者に任せるのは避けます。売り出し後にこうした言動があれば、免許行政庁に相談できます。事務所が1つの都道府県にだけある会社は都道府県知事免許、2つ以上の都道府県にある会社は国土交通大臣免許で(3条1項)、知事免許なら都道府県の宅地建物取引業を担当する課、大臣免許なら地方整備局が窓口です。大臣の権限の一部は、これらの局長へ委任されています(78条の2)。大臣免許の会社でも、その都道府県の区域内の業務については所在地の知事が指示処分を出せます(65条3項)。契約前の段階なら、別の担当者か別の会社を選べば済みます。

出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法 出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法施行規則 出典: 国土交通省 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方

質問に数字と事例で答えない

前章の質問に対して、「相場的には」「幅広く」「がんばります」「特にないです」と答える担当者は、力量が足りないか、答えたくない理由があるかのどちらかです。

1つの答えだけで判断せず、4つの質問(査定根拠・弱点・販売計画・報告の中身)のうち2つ以上で数字と事例が出てこなければ、避けたほうがよいと考えます。

連絡の遅さや約束の不履行も同じです。査定の訪問の約束時間、資料を送る期日、質問への返答。契約前からこれが守られない状態なら、売り出し後の報告も同じ扱いになります。逆に、この段階で丁寧な担当者は、売り出し後も同じように動きます。契約前の小さな約束が、その後の3か月を予告します。

担当者が合わないときの変え方

売り出した後に担当者が合わないと分かった場合、手段は3段階あります。軽い順に使い、感情ではなく事実で伝えるのが、関係を壊さずに変えるコツです。

  • 会社は変えずに、店長へ担当者の変更を依頼する
  • 契約の満了で更新せず、会社を変える
  • 会社側の義務の不履行があれば、標準媒介契約約款で途中解除する

店長に担当者の変更を事実で依頼する

最も軽い手段は、会社を変えずに担当者だけを変えることです。店舗の責任者(店長・営業責任者)に連絡し、担当者の変更を依頼します。

伝え方は事実に絞ります。標準媒介契約約款4条1項は、業務の処理状況を契約書に記載した方法と頻度で報告すること、申込みがあったときは遅滞なく報告すること、レインズに登録して登録証明書を交付することを会社の義務として並べています。ここに紐づけて、「業務報告が契約書に書かれた頻度で来ていない(最後の報告日を添える)」「他社からの問い合わせ件数を聞いたが未回答のまま」「内覧の連絡が前日の夜だった」のように、日付と内容で伝えます。「感じが悪い」「相性が悪い」という言い方は、会社側が動きにくくなります。

多くの会社は、事実に基づく依頼なら担当者を変えます。会社にとっても、売主が離れて他社に移るより、担当を変えて契約を続けるほうが利益になるからです。この段階で改善すれば、契約も価格もそのまま続けられます。

出典: 国土交通省 標準媒介契約約款

専任媒介は満了で更新せず会社を変える

担当者を変えても改善しない、または会社の方針そのものが合わない場合は、媒介契約の切れ目で会社を変えます。専任媒介契約の有効期間は3か月を超えられず、更新するときも更新の時から3か月までと定められています(34条の2第3項・4項)。標準媒介契約約款15条は、更新は甲乙の合意に基づくものとし、更新をしようとするときは有効期間の満了に際して売主から会社へ文書等で申し出るものと定めています。売主が何も申し出なければ、契約は満了で終わる建て付けです。

満了で終える場合の費用も、約款で条件が決まっています。違約金(12条)は、有効期間内に他の不動産会社へ依頼して売買契約を成立させたときの定めです。費用償還(14条)は、売主が自ら発見した相手方と契約したときか、会社の責めに帰すことができない事由で契約が解除されたときが条件で、その額は約定報酬額の範囲にとどまります。満了はどちらの要件からも外れます。ただし、売主が特別に依頼した広告の料金と遠隔地への出張旅費は売主の負担で(10条)、有効期間内または満了後2年以内に、その会社の紹介で知った相手方とその会社を外して契約を結んだ場合は、寄与の割合に応じた相当額の報酬を請求されます(11条)。

次の会社では、契約前に3章の質問をして担当者を見極めます。売り出し価格や写真は前の会社から引き継がず、新しい担当者と見直します。一般媒介なら、契約を続けたまま他社を足すこともできます。契約の種類の違いは別記事で整理しています。

出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法 出典: 国土交通省 標準媒介契約約款

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登録や報告の不履行があれば途中でも解除できる

満了まで待てない場合は、途中解除を検討します。国土交通省が定めた標準媒介契約約款には、解除の道が2つ書かれています。手順が違うので、分けて押さえます。

条項使える場面手順
16条会社が約款に定める義務(レインズへの登録、業務の報告など)の本旨に従った履行をしないとき相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときに解除できる
17条会社が信義を旨とし誠実に遂行する義務に違反したとき/重要な事項について故意もしくは重過失により事実を告げず、または不実のことを告げたとき/宅地建物取引業に関して不正または著しく不当な行為をしたとき催告を経ずに解除できる

解除の前に確認するのは、契約書が標準媒介契約約款に基づいているか(契約書の右上に、基づく契約であるか否かの表示があります)と、どの義務が果たされていないかです。登録証明書が交付されていない、登録日が契約書に書かれた期間を過ぎている、報告が来ていない、といった事実を、書類の日付で示します。

費用の扱いも約款で決まっています。費用償還を請求できるのは、売主が自ら発見した相手方と契約を結んだときか、「乙の責めに帰すことができない事由」によって契約が解除されたときで、その額は約定報酬額の範囲にとどまります(14条)。会社側の義務違反を理由とする解除は、この「責めに帰すことができない事由」の外にあります。裏返すと、会社の義務違反がないまま売主の都合で途中解除した場合は、それまでの広告費などを約定報酬額の範囲で請求され得ます。解除の理由は、義務違反の事実に絞って書面で伝えます。担当者選びをやり直す最後の手段として、この条項があることを知っておきます。

出典: 国土交通省 標準媒介契約約款 出典: 国土交通省 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方

まとめ:担当者は、制度で確かめ、答え方で見極める

いちばん重いのは、査定額に意見を述べたなら、その根拠を明らかにするのが会社の法律上の義務だという点です(宅地建物取引業法34条の2第2項)。根拠は価格査定マニュアルか同種の取引事例など、合理的な説明がつくものとされ、口頭でも足ります。だからこそ「この査定額の根拠になった成約事例を見せてください」は、遠慮の要らない問いで、答え方がそのまま担当者の力量と誠実さを映します。

次の一歩は、査定の訪問の場で、査定根拠・物件の弱点・販売計画・業務報告の中身の4つを、同じ順で各社に聞くことです。この4つを飛ばして人柄と査定額だけで決めると、専任媒介なら最長3か月をその判断に預けたまま、値下げの提案が来たときに比べる材料を持たない側へ回ります。

契約を結んだ後は、宅建士証の提示、従業者名簿の閲覧、業務報告の頻度という制度の側からも担当者を確かめる番です。住み替えのトビラでは、不動産会社の担当者の見極め方と変え方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。