マンション買取のメリット・デメリット|手取りと時間で損得を比べる

マンション買取のメリット・デメリット|手取りと時間で損得を比べる

「仲介だと時間がかかるので、うちで買い取りましょう」。査定を頼んだ会社からこう言われて、早くて楽そうだけれど、安く買われるのではないか、と手が止まる人は多いはずです。

先に答えを書きます。買取は「時間を買う売り方」です。契約した時点で売却日と金額が固まり、内覧も仲介手数料も売主の責任も軽くなる代わりに、価格は仲介より2〜3割ほど下がるのが目安です。損か得かは、その価格差を仲介手数料と「売れるまでの月数にかかる費用」で割り引いて、手取りと時間で比べると自分で判断できます。

この記事では、メリットとデメリットを一つずつ中身まで開き、金額で比べる式と、デメリットを小さくする進め方を順に見ていきます。買取の仕組みそのものと仲介との選び分けは、別の記事で扱っています。

マンションの買取とは?仲介との違いと向き不向き マンションの買取とは?仲介との違いと向き不向き

マンション買取のメリット

買取のメリットは「日程と金額が契約の時点で固まる」「売主の手間と責任が軽くなる」の2つにまとまります。まず仲介との違いを表で押さえます。

項目仲介買取
買主個人不動産会社
価格相場どおりを狙える相場より低い
売れるまでの期間数か月かかることが多い契約まで数日〜数週間が目安
内覧複数回会社の現地確認のみ
仲介手数料発生する発生しない
契約不適合責任一定期間負う免責の特約が一般的
融資利用の特約付くことが多い付かない

売却日と金額が契約時点で確定しローン特約の解除がない

買取の一番のメリットは、契約した時点で「いつ」「いくらで」売れるかが決まることです。仲介では、売り出してから買主が見つかるまでの期間が読みにくく、値下げして初めて決まる例も多くあります。

もう一つ、見落とされがちな点があります。個人の買主は住宅ローンを組むので、売買契約には「融資が通らなければ契約を白紙に戻す」という融資利用の特約(住宅ローン特約)が付くのが通常です。契約したのに融資が下りず、振り出しに戻る事態も起こりえます。

買取の買主は不動産会社で、購入資金は自己資金や事業用の融資です。制度として禁じられているわけではなく、取引の形として融資利用の特約が付かないのが通常で、契約後に白紙へ戻る心配は小さくなります。住み替えで新居の契約日が決まっている人ほど、この「契約が固まる」価値は大きくなります。決済までの期間は会社によりますが、契約から数週間以内を目安に組める例が多いです(公的な統計はなく、会社ごとの目安です)。

内覧・広告・レインズ登録がなく周囲に知られずに売れる

仲介では、不動産会社が物件を「レインズ」と呼ばれる指定流通機構に登録し、ポータルサイトやチラシで広告します。宅地建物取引業法34条の2第5項は、専任媒介契約を締結した会社に、国土交通省令で定める期間内に目的物件を指定流通機構へ登録するよう義務づけています。買主候補が見つかるたびに内覧があり、部屋を片づけて在宅する手間が続きます。

買取は、会社が自ら買主になる売買なので、媒介契約にあたらない形です。そのため34条の2第5項の登録義務の対象から外れ、レインズへの登録も広告も省かれます。現地確認は会社の担当者が1回来る程度で終わります。

売り出し中であることが近所や職場に伝わる経路も閉じるので、離婚や転職など事情を知られたくない人にも向きます。小さな子どもがいて片づけが難しい、遠方に住んでいて内覧に立ち会いにくい、といった事情がある人にとっては、内覧がないこと自体が金額に換算できる価値になります。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第5項)

仲介手数料が発生せず価格差の一部を埋められる

仲介で売ると、不動産会社に仲介手数料を払います。宅地建物取引業法46条1項は、媒介に関して受けることのできる報酬の額を国土交通大臣の定めるところによるとし、2項はその額をこえて報酬を受けることを禁じています。その告示(昭和45年建設省告示第1552号・最終改正 令和6年6月21日国土交通省告示第949号)は、売買の媒介の報酬を代金額の区分ごとに積み上げる形で定めています。

  • 200万円以下の部分: 5.5%
  • 200万円を超え400万円以下の部分: 4.4%
  • 400万円を超える部分: 3.3%
  • いずれも消費税等相当額を含んだ上限で、依頼者の一方から受けられる額

3,000万円で売れた場合は、200万円×5.5%=11万円、200万円×4.4%=8万8,000円、2,600万円×3.3%=85万8,000円で、合計105万6,000円が上限です。よく見る「価格×3%+6万円に消費税」という式は、この区分の積み上げを400万円超の物件について言い換えたものです。

買取は会社が自ら買う売買にあたるため、この報酬の枠の外にあり、仲介手数料はゼロです。つまり、3,000万円の物件なら、仲介の見込み価格と買取価格の差が105万円程度までであれば手取りはほぼ並ぶ、という計算になります。

「買取仲介」には手数料がかかることがある

仲介会社が買取業者を紹介する形では、媒介にあたるため仲介手数料が発生する場合があります。買取を勧められたら「御社が直接買うのか、他社を紹介するのか」「手数料はかかるのか」を先に確かめます。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第46条第1項・第2項) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号 第二)

契約不適合責任を免責にでき残置物もそのまま引き渡せる

売った後に雨漏りや設備の故障が見つかると、売主は「契約不適合責任」として修補や代金の減額などを求められることがあります。民法566条は、種類または品質に関する不適合について、買主が不適合を知った時から1年以内にその旨を売主へ通知しなかったときは、追完の請求や代金の減額の請求などをすることができない旨を定めています。個人間の仲介では、この期間を契約で縮め、引渡しから一定期間(3か月程度とする契約が多い)に限る形が広く使われています。

買取では、買主が不動産会社なので、売主の契約不適合責任を免責にする特約が一般的です。その裏側には理由があります。宅地建物取引業法40条第1項は、会社が自ら売主となる売買について、こう定めています。

宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第五百六十六条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。

同条2項は、これに反する特約を無効とすると定めています。買い取った会社が個人へ再販するときは、自社が引渡しから2年以上の責任を負う側に回ります。会社はその費用を織り込んだうえで買うので、売主の責任を残す必要が薄くなる、という構図です。

もう一つの利点が残置物です。家具や家電を残したまま引き渡す条件を組める会社が多く、処分の費用と手間が浮きます。ただし免責は「特約」であり、知っていて告げなかった不具合は免責の外に置かれます。この点は後の章で扱います。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第40条) 出典: e-Gov法令検索「民法」(第566条)

マンション買取のデメリット

買取のデメリットは、価格が低いことと、その価格の決まり方が売主から見えにくいことに集約されます。この章では次の4つを見ます。

  • 買取価格は再販の原価から逆算され仲介相場より下がる
  • 買取価格は査定額と違い会社ごとの幅が大きい
  • 現地確認や管理規約の確認後に減額提示が入ることがある
  • 仲介を兼ねる会社が買取を勧めるときは利益相反がある

買取価格は再販の原価から逆算され仲介相場より2〜3割下がる

買取業者は、買った物件をリフォームして個人に再び売ります。再販価格から、リフォーム費用、販売にかかる広告費や人件費、再販後2年以上の契約不適合責任に備える費用、売れ残るリスク、そして会社の利益を引いた残りが買取価格です。つまり買取価格は「相場」ではなく「再販の計画から逆算した額」です。

その結果、買取価格は仲介で売れる価格より2〜3割低くなるのが目安と言われます。公的な統計はなく、物件の状態や立地で大きく振れます。築浅で駅に近く、リフォームを抑えて再販できる物件ほど差は縮まり、大規模な修繕が要る物件ほど差は広がります。

会社が在庫を長く抱えにくい事情もあります。国土交通省の特例措置では、個人が宅地建物取引業者からリフォーム済みの既存住宅を取得したときの所有権移転登記の登録免許税が0.1%(一般住宅特例0.3%・本則2%)に軽減され、その要件の一つに「宅地建物取引業者が住宅を取得してから、リフォーム工事を行って再販売するまでの期間が2年以内であること」が置かれています(適用期限は令和9年3月31日)。会社は2年以内に売る前提で仕入れるので、すぐ再販できる物件ほど高い額が出やすくなります。

価格が下がる仕組みの内訳と、割合の目安の見方は、別の記事でそれぞれ扱っています。

出典: 国土交通省「買取再販で扱われる住宅の取得に係る特例措置」

買取価格は査定額と違い会社ごとの幅が大きい

仲介の査定額は「この価格なら売れそう」という市場の見込みなので、会社が違っても近い額に収まります。一方、買取価格は各社の「買付価格」です。その会社がどんなリフォームをして、いくらで、どのくらいの期間で売る計画かによって変わります。

同じ物件でも、リフォームを最小限にして早く回転させる会社と、フルリノベーションして高く売る会社では、出せる価格が違います。得意なエリアや間取り、在庫の状況によっても変わります。数百万円の幅が出る例もよくあります(公的な統計はなく、取引ごとの目安です)。

買取再販に取り組む会社は増えています。矢野経済研究所の民間調査によると、中古住宅の買取再販の成約戸数は2024年に52,800戸(前年比13.3%増)で、2025年は62,700戸と予測されています。売り手から見れば、同じ物件に手を挙げうる会社が複数いる状況です。

この幅は売主にとって不利な面と有利な面の両方があります。1社の提示だけで決めると低い方をつかむ危険があり、複数社に出させると高い方を選べます。デメリットを裏返せば、交渉の余地が大きいということです。

出典: 矢野経済研究所「中古住宅買取再販市場に関する調査(2025年)」(民間調査)

現地確認や管理規約の確認後に減額提示が入ることがある

買取価格は、最初は机上の情報で概算が出て、その後に現地確認、管理規約や長期修繕計画、修繕積立金の状況の確認を経て確定します。この過程で「想定より修繕が必要」「積立金が不足していて再販しにくい」といった理由で、当初の提示から減額されることがあります。

減額そのものは、会社がリスクを見直した結果で、取引としては起こりうる範囲です。問題になるのは、売主が当初の額で新居の資金計画を組んでしまった後に減額されることです。次は仮の数字で置いた例です。

机上の概算で2,600万円と聞き、その額で新居の手付金を払った。1週間後、現地確認と管理規約の確認を経て「修繕積立金の値上げが決まっているので2,450万円で」と減額の連絡が来た。新居の契約は動かせず、150万円低い額で進めるしかなくなった。

対策は、当初の提示額を「概算」と受け止め、確定額が出るまで新居の契約に踏み込まないこと、減額の場合は理由と再提示額を文書で受け取ることです。理由が示せない減額には応じず、他社の提示と比べます。

仲介を兼ねる会社が買取を勧めるときは利益相反がある

多くの不動産会社は仲介と買取の両方を扱います。同じ会社が「仲介だと時間がかかるので、うちで買い取りましょう」と勧めるとき、会社の側には買取の方が利益が大きい事情があることがあります。仲介の報酬は上限でも代金の3.3%+6万6,000円(税込)の水準にとどまりますが、買取なら再販の利益が会社に入るからです。

これは会社の善し悪しとは別で、立場が違えば勧める答えも変わるという構造の問題です。売主にできるのは、買取を検討する前に「仲介ならいくらで売れる見込みか」を査定書の形で受け取っておくことです。

仲介の査定額と買取価格の差が分かれば、次の章の計算で「どちらが手取りで有利か」を自分で判断できます。会社の提案を否定するのではなく、比べる材料をそろえるのが目的です。

メリットとデメリットを金額で比べる方法

メリットとデメリットを並べただけでは、自分の場合にどちらが有利かはまだ決まらない状態です。価格差を、仲介手数料と「売れるまでの期間にかかる費用」で割り引いて、手取りと時間で比べます。次の表に自分の数字を入れます。

項目仲介買取
見込み成約価格円円
仲介手数料(税込)円0円
売れるまでの維持費(月額×月数)円0円
手取り(価格−手数料−維持費)円円

仲介手数料と売れるまでの維持費を価格差から引いて手取りで比べる

比べるときの基準は「価格」ではなく「手取り」です。仲介の手取りは、成約価格から仲介手数料を引き、さらに売れるまでの間にかかる住宅ローンの利息、管理費、修繕積立金、固定資産税、新居に先に移っている場合は二重の住居費を引いた額です。買取の手取りは、買取価格そのものです。

仮の数字(モデルケース)で置きます。

  • 仲介の見込み成約価格: 3,000万円
  • 仲介手数料(税込): 105万6,000円
  • 売れるまでの維持費: 月8万円×5か月=40万円
  • 仲介の手取り: 3,000万円−105万6,000円−40万円=2,854万4,000円
  • 買取価格(手取り): 2,400万円
  • 差: 2,854万4,000円−2,400万円=454万4,000円

ここで大事なのは、仲介の「見込み成約価格」を査定額のまま入れないことです。東京カンテイの調査では、首都圏の中古マンションの価格乖離率は2025年上期が−6.14%、下期が−6.22%でした。この乖離率は売出価格と取引価格の差の比率であり、査定額との差を表す数値とは別のものです。売り出してから値下げして決まる例が一定あることを示す数字なので、見込みは査定額より少し低めに置きます。

出典: 東京カンテイ「中古マンションの価格乖離率&売却期間(首都圏)」(2026年7月30日)

売れるまでの月数を置いて1か月早く売る値段に換算する

手取りの差が出たら、それを「売れるまでの月数」で割ります。先のモデルケースなら、454万4,000円÷5か月=90万8,800円。買取を選ぶことは、1か月早く売るために約91万円を払うのと同じ意味になります。

月数の見込みは、仲介会社の査定書にある想定販売期間や、同じマンションの過去の成約までの日数を参考にします。東京カンテイの同じ調査では、首都圏の中古マンションの売出から成約までの期間は2025年上期が4.74ヵ月、下期が4.48ヵ月でした。売却期間が1ヵ月以内で決まったケースの価格乖離率は−2.32%、専任媒介契約の有効期間にあたる3ヵ月以内の平均は−3.57%で、3ヵ月以内に成約した累計シェアは50.8%です。早く決まるほど値下げが小さくなる関係が読み取れます。

この数字を見て「高い」と感じるなら仲介、「新居の契約が迫っていて、5か月は長すぎる」と感じるなら買取、という判断ができます。逆に、維持費が大きい人ほど買取の不利は小さくなります。新居のローンがすでに始まっていて二重払いになっている、遠方で管理に通う費用がかかる、といった場合は、月額を正しく入れると差が縮みます。

出典: 東京カンテイ「中古マンションの価格乖離率&売却期間(首都圏)」(2026年7月30日)

3,000万円特別控除などの税は買取でも仲介でも変わらない

税金の面では、買取と仲介は同じ土俵です。自宅を売ったときの譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特別控除は、買主が不動産会社であっても、要件を満たせば使えます。

ただし国税庁の案内は、「特別の関係がある人」への売却をこの特例の対象から外しています。親子や夫婦のほか、生計を一にする親族、売った後その家屋で同居する親族、内縁関係にある人、そして「特殊な関係のある法人」も含まれます。法人が一律に除外される仕組みではなく、売主と資本関係や親族関係のない不動産会社へ売る通常の買取であれば、この除外には当たらない形です。同族会社など関係のある法人が買主になる場合は、事前に税務署へ確かめます。

所有期間が10年を超える場合の軽減税率や、買換えの特例も、買主が誰かによって適用の可否が決まる仕組みではなく、それぞれの要件で判断します。売却で損が出る場合の損益通算も同じです。つまり税は比較の項目から外してよく、比べるのは「手取り」と「時間」の2つです。ただし控除を使うには確定申告が必要で、要件の確認は税務署か税理士に行います。

出典: 国税庁「タックスアンサー No.3302 マイホームを売ったときの特例」

デメリットを小さくする進め方

買取のデメリットは、価格の物差しを先に持ち、条件を書面に落とすことで小さくできます。次の4つを順に進めます。

  • 仲介の査定書を先にもらい買取価格の物差しにする
  • 複数の買取業者に同じ条件で価格を出させる
  • 告知書を正直に書いて契約不適合責任の免責を守る
  • 引渡し日と残置物の扱いを契約書に書く

仲介の査定書を先にもらい買取価格の物差しにする

買取価格が高いか安いかは、仲介で売れる価格が分かって初めて判断できます。まず仲介の査定を2〜3社に頼み、査定書を受け取ります。宅地建物取引業法34条の2第2項は、会社が売買すべき価額または評価額について意見を述べるときに、その根拠を明らかにしなければならないと定めています。これは媒介の場面の義務なので、買取価格の提示そのものに直接かかるものではありませんが、成約事例の添えられた査定書を求める足場になります。

査定額の中央あたりから数%引いた額を「仲介の見込み成約価格」として、前の章の表に入れます。これが買取価格を測る物差しです。

このとき、査定を頼んだ会社に「買取ならいくらか」も聞いておくと、同じ会社の仲介と買取の差が見えます。差が小さければ買取が有力になり、差が大きければ仲介を軸に考えます。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第2項)

複数の買取業者に同じ条件で価格を出させる

買取価格は会社ごとの幅が大きいので、必ず複数社に出させます。このとき、条件をそろえることが大切です。登記事項証明書、管理規約、長期修繕計画、修繕積立金の残高、リフォーム歴、設備の状況を同じ資料として渡し、引渡し希望日と残置物の扱いも同じ条件で伝えます。

条件がそろっていないと、「高いが引渡しが早い」「安いが残置物込み」のように比べにくい提示が並びます。同じ条件で出た価格を並べて、最も高い提示を軸に、2番目の会社に再提示を求める交渉もできます。

買取を専門にする会社、仲介を主にする会社、リノベーション再販が得意な会社など、種類の違う会社を混ぜると幅が出やすくなります。会社の見分け方は別の記事で扱っています。

マンション買取業者の選び方|失敗しない見極め方と注意点 マンション買取業者の選び方|失敗しない見極め方と注意点

告知書を正直に書いて契約不適合責任の免責を守る

買取で契約不適合責任を免責にする特約を結んでも、責任の一部は売主に残ります。民法572条は次のように定めています。

売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。

雨漏りの履歴、設備の故障、近隣とのトラブル、過去の事故などを知っていながら告知書に書かずにおけば、免責の特約があっても責任を問われることがあります。

つまり、告知書を正直に書くことが免責を守る一番の方法です。書いたことで減額される可能性はありますが、隠して後から発覚したときの損失の方が大きくなります。

不動産会社は再販の前に自社で調査とリフォームを行うので、多少の不具合は織り込み済みです。分かっていることは全部書き、その上で免責の特約を確認します。

出典: e-Gov法令検索「民法」(第572条)

引渡し日と残置物の扱いを契約書に書く

買取の強みは条件を売主の都合で組めることですが、口頭の約束のままでは弱いです。引渡し日、決済日、引渡しまで住み続ける場合の条件、残置物の範囲、エアコンや照明などの設備の扱い、鍵の本数まで契約書に書きます。

住み替えでは、新居の引渡し後に旧居を引き渡す「引渡し猶予」の交渉が特に役立ちます。買主が事業者なので、個人の買主より日程の融通が利きやすい場面が多いです。

減額の条件も書いておきます。「現地確認後に減額する場合は理由を文書で示し、売主は解約できる」といった条項があれば、後出しの減額を防げます。まず仲介で売り、期限までに売れなければ買い取る「買取保証」という中間策もあり、別の記事で扱っています。

買取保証とは?メリット・デメリットと損しない使い方 買取保証とは?メリット・デメリットと損しない使い方

まとめ:買取は時間を買う売り方で、損得は手取りと月数で比べられる

いちばん重いのは、買取と仲介の損得が「価格」ではなく「手取りと時間」で決まるという点です。仲介で売れば報酬告示の上限にあたる仲介手数料がかかり、3,000万円なら105万6,000円です。さらに売れるまでの管理費・修繕積立金・ローン利息が月々積み上がります。買取価格との差からこの2つを引き、残った差額を売れるまでの月数で割れば、「1か月早く売るために払う金額」が出ます。この数字が自分にとって高いか安いかで、答えは人ごとに変わります。

次の一歩は、買取の話を進める前に、仲介の査定書を2〜3社から受け取っておくことです。宅地建物取引業法34条の2第2項が価額について意見を述べるときの根拠の明示を求めているので、成約事例の添えられた査定書を求められます。ここを飛ばすと、物差しを持たないまま1社の買付価格だけを見て決めることになり、会社ごとに数百万円の幅が出る世界で低い方をつかむ危険が残ります。

そのうえで確かめたいのが、免責の特約と告知書の中身です。民法572条は「知りながら告げなかった事実」について責任を免れることができないとしているため、告知書を正直に書くことが免責を守る手立てになります。引渡し日、残置物、減額の条件まで契約書に書いておけば、買取の強みをそのまま受け取れます。住み替えのトビラでは、マンション買取のメリットとデメリットの比べ方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。