マンションが売れないときどうする?対策を決める順番と統計の目安

マンションが売れないときどうする?対策を決める順番と統計の目安

売り出して2か月。問い合わせは数件、内覧は1回。担当者からは「もう少し様子を見ましょう」と言われ、それが正しいのか、値下げすべきなのか、会社を変えるべきなのか、判断の材料がないまま日だけが過ぎていく。

先に答えを書きます。対策は「止まっている段階」で最初の一手が決まり、待つ期間には「3か月で半数が成約する」という統計の目安があります。値下げは早めに小さく行うほど下げ幅が小さく済むことも、同じ統計で示せます。

そして売主には、売り出し価格の根拠や業務報告の中身を不動産会社に求める立場があります。この記事では、対策を決める順番、価格・見せ方・会社の3つの対策、そして期限までに売れないときの出口を順に見ていきます。

売れないマンションの対策を決める順番

マンションが売れないとき、対策の種類そのものは多くの人が知っています。値下げ、写真の差し替え、会社の変更、買取。迷うのは「自分の場合はどれを先にやるか」です。

止まっている段階最初に打つ対策
問い合わせがほとんど来ない価格
内覧はあるのに申込が出ない見せ方と管理の情報
内覧が来ず、報告も少ない不動産会社の売り方

この章では、対策を決める順番を4つの物差しで整理します。止まっている段階、統計上の期間、待つ費用、そして1つずつ試す進め方です。

止まっている段階で最初に打つ対策が決まる

売却は、問い合わせ(反響)、内覧、購入申込の3段階を通ります。どの段階で止まっているかで、最初に打つ対策が変わります。

問い合わせがほとんど来ないなら、買主の検索結果で選ばれていない状態です。原因の中心は価格にあります。内覧はあるのに申込が出ないなら、買主は価格で興味を持ち、現地で見送っています。原因は見せ方か、管理への不安です。内覧が来ず、担当者からの報告も少ないなら、売り方そのものが止まっている可能性があります。

最初の対策は、この止まった段階に合わせて1つ選びます。反響がないのに写真を差し替えても、検索結果に出てこなければ見る人がいないままです。反対に、内覧が入っているのに値下げをすると、下げずに売れたはずの価格を手放すことになります。

止まっている段階から原因を細かく特定する方法は、別の記事で扱っています。

不動産が売れない理由と対処|止まる場所で原因を切り分ける 不動産が売れない理由と対処|止まる場所で原因を切り分ける

3か月以内に半数が成約する統計を待つ期間の目安にする

「もう少し様子を見ましょう」と言われたとき、その「もう少し」には目安があります。

東京カンテイが2026年7月30日に公表した首都圏の中古マンションの調査では、2025年に成約した事例のうち、売り出しから1か月以内に成約した事例のシェアが22.7%、3か月以内の累計が50.8%、6か月以内の累計が73.8%でした。売り出しから成約までの期間は、2025年下期で平均4.48か月です。東日本不動産流通機構(レインズ)の2025年の集計でも、中古マンションの登録から成約に至る日数は82.5日でした。

つまり、3か月で半数が売れ、6か月で4分の3が売れています。売り出して3か月以内なら、反応を見ながら待つ判断に根拠があります。3か月を過ぎて反響が増えていないなら、「様子を見る」は対策の先送りです。何かを変える時期に入っています。

出典: 東京カンテイ 中古マンションの価格乖離率&売却期間(首都圏) 出典: 東日本不動産流通機構 首都圏不動産流通市場の動向(2025年)

待つ費用を月額で数えて対策の締切を決める

待つ間にも費用は出ていきます。値下げの損と比べるために、月額で数えます。

  • 管理費と修繕積立金
  • 固定資産税と都市計画税(年額を12で割る)
  • 住み替え先に移っている場合は、住宅ローンや家賃との二重の住居費
  • 空室なら光熱費の基本料金と、通いの手間

自分のマンションの明細と納税通知書から足すと、月額が出ます。この月額に「あと何か月待てるか」を掛けると、待つ費用の上限が出ます。

待つ費用=毎月出ていく費用×待つ月数。仮に月額が10万円だとすると、3か月待つ費用は30万円になる。値下げを30万円以内に抑えて3か月早く売れるなら、値下げのほうが手元に残る金額は大きくなる。10万円は仮の数字なので、自分の管理費・修繕積立金・税の月割り・二重の住居費を足した実額に置き換えて計算する。

住み替えの引き渡し期限がある人は、この計算に期限を重ねて、対策の締切を先に決めておきます。締切があると、担当者の提案に流されずに済みます。

対策は1つずつ変えて反応を見る

売れないと焦って、値下げと写真の差し替えと会社の変更を同時に行う人がいます。同時に変えると、どれが効果を出したか分からず、次に売れないときにまた迷います。

対策は1つずつ変え、2〜4週間ほど反応を見ます。ポータルサイトの閲覧数や問い合わせ数は担当者が把握しているので、変更前と変更後の数字を報告してもらいます。

順番の目安は、費用がかからない対策から先です。掲載写真と紹介文の見直し、管理書類の準備、業務報告の確認は費用ゼロで済みます。値下げは手元に残る金額が減るので、費用ゼロの対策で反応が変わらないときに行います。会社の変更は媒介契約の期間に縛られるので、満了の時期から逆算します。

価格を見直す対策

問い合わせが少ないときの中心の対策は価格です。ただし「下げる」と決める前に、売り出し価格の根拠を確かめ、下げるなら早めに小さく行うのが、統計の上で損が少ない進め方です。

  • 売り出し価格の根拠を成約事例で確かめる
  • 値下げは早めに小さく行う
  • 検索の価格帯の境目を意識して下げる
  • 在庫が増えている局面での価格の順位を確かめる

売り出し価格の根拠を成約事例で確かめる

売り出し価格は、査定額をもとに売主が決めます。査定額が高すぎたなら、そもそも成約の見込みと離れた価格で出発しています。

宅地建物取引業法34条の2第2項は、不動産会社が売買すべき価額または評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと定めています。標準媒介契約約款の専任媒介契約約款も、第4条第2項第一号で、媒介価額の決定に際して価額に関する意見を述べるときは根拠を示して説明する、としています。査定書に載っている比較事例が、同じマンションや近隣の「成約」事例か、それとも「売り出し中」の価格かを確かめます。売り出し中の価格は、まだ売れていない価格です。

担当者に「直近半年の成約事例で、うちと条件が近いものを3件見せてほしい」と頼めます。値下げの提案を受けたときも、同じ約款の第5条が会社側に根拠を求めています。

媒介価額が地価や物価の変動その他事情の変更によって不適当と認められるに至ったときは、乙は、甲に対して、媒介価額の変更について根拠を示して助言します。

乙が不動産会社、甲が売主です。成約事例と自分の価格のずれが分かれば、下げるかどうか、下げるならいくらかを自分で判断できます。

出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法 出典: 国土交通省 標準媒介契約約款

値下げは早めに小さく行うほど下げ幅が小さく済む

「値下げしたくないから、もう少し待つ」という判断は、統計の上では逆に働きます。

東京カンテイの2025年首都圏の調査では、売り出しから成約までの期間ごとに、最初の売出価格からどれだけ下がって成約したか(価格乖離率)が示されています。価格乖離率は(取引価格−売出価格)÷売出価格で計算され、売り出しから成約までが12か月以内の組み合わせだけを対象にした数値です。

売り出しから成約までの期間価格乖離率
1か月以内−2.32%
3か月以内の平均−3.57%
6か月で成約−8.24%
8か月で成約−10.81%
10か月で成約−13.72%

「3か月以内の平均」は、専属専任媒介契約・専任媒介契約の有効期間である3か月の間に成約した事例をまとめた平均です。1か月以内に成約した事例のうち49.6%は、売出価格から値下げせずに成約しています。一方、8か月以上かかった事例は、どの月も−10%を超えました。10か月では、「−20%超」の値下げで成約した事例が全体の4分の1以上を占めています。長く売れ残った物件は、買主から「何かある」と見られ、値引き交渉も強くなります。

下げるなら、売り出しから3か月以内に、成約事例に届く幅を1回で下げるほうが、結果として手元に残る金額は大きくなりやすいといえます。値下げ幅の決め方とタイミングは、別の記事で扱っています。

出典: 東京カンテイ 中古マンションの価格乖離率&売却期間(首都圏)

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検索の価格帯の境目を意識して下げる

値下げの幅を決めるとき、金額そのものより「買主の検索結果に入るか」で考えます。

ポータルサイトで買主は、価格の上限を区切って検索します。たとえば「5,000万円以下」で探す人の画面に、5,080万円の物件は表示の外に置かれます。この境目を超えて下げると、見る人の集団が入れ替わります。反対に、5,180万円を5,080万円に下げても、同じ集団の中で順位が少し動くだけです。ここに挙げた金額は説明のための例なので、自分の物件の価格帯に読み替えます。

自分の物件の価格が、どの境目のすぐ上にあるかを確かめます。境目の少し下(4,980万円など)に置くと、その価格帯の上限付近で「条件の割に安い」と見えやすくなります。

小刻みに何度も下げると、閲覧している人に「まだ下がる」と読まれます。境目を1つ越える幅で1回下げるほうが、反応が出やすくなります。

在庫が増えている局面では価格の順位で埋もれる

「相場が上がっているから待てば売れる」という考えは、市況によって当てはまる時期と外れる時期があります。

東日本不動産流通機構の月例速報(2026年8月度・9月10日公表)によると、首都圏の中古マンションは、成約件数が3,180件で前年同月比−10.5%、在庫件数は48,235件で+8.2%でした。売れる数が減り、売りに出ている数が増えています。

在庫が増えると、買主は同じ価格帯で多くの物件を比べます。条件が近い物件の中で価格が上から数えて何番目かが、問い合わせの数を左右します。自分の物件と同じ駅・同じ築年帯・同じ広さの売り出し物件を、ポータルサイトで価格順に並べて確かめます。

同じ月の在庫の㎡単価は119.36万円、成約の㎡単価は81.60万円でした。売り出されている価格の水準が、成約している価格の水準より高いことになります。ただし在庫と成約は対象となる物件の構成が違うため、この差をそのまま値引き幅として読むのは避けます。成約価格の水準に近い価格で出すだけで、同じ条件の中での順位が上がります。

出典: 東日本不動産流通機構 月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年8月度

見せ方と情報の出し方を変える対策

内覧はあるのに申込が出ない、または問い合わせはあるのに内覧に進まないときは、見せ方と情報の出し方を変えます。費用がほとんどかからない対策から順に並べます。

  • 掲載写真と紹介文の見直し(費用ゼロ)
  • 管理と修繕の書類の準備(費用ゼロ)
  • 内覧の受け方の変更(費用ゼロ)
  • 清掃と小修繕(数万円〜十数万円)

掲載写真と紹介文を買主の目で見直す

自分の物件の掲載を、買主と同じ手順で見ます。ポータルサイトで自分の駅・価格帯で検索し、競合物件と並べて開きます。

見る点は4つです。写真の枚数と明るさ、間取り図の見やすさ、紹介文の具体性、そして最初に出てくる1枚目の写真です。1枚目が外観の暗い写真なら、リビングの明るい写真に差し替えるだけで閲覧数が変わります。

紹介文は「駅徒歩8分」「南向き」のような条件の羅列より、「リビングの窓から公園の緑が見える」「小学校まで信号1つ」のように、その部屋で暮らす場面が浮かぶ1文を加えます。担当者に写真の撮り直しと紹介文の修正を頼むのは、媒介契約の範囲内の作業です。費用の追加なしで頼めます。

管理と修繕の書類を先に出して不安を消す

内覧のあとに申込が出ない理由の1つに、管理への不安があります。買主は「修繕積立金は足りているか」「大きな修繕の予定はあるか」を気にしますが、内覧の場では聞きにくく、答えも得にくいままです。

先に書類を用意して、内覧前に担当者経由で渡せるようにします。

  • 長期修繕計画
  • 直近の総会議事録
  • 修繕履歴
  • 管理規約
  • 修繕積立金の残高が分かる資料

管理会社に頼めば、区分所有者として取り寄せられます。これらの書類が最初からあると、買主は不安を確かめる手間が省け、他の物件より一歩進んだ状態で検討できます。管理状態が良いマンションほど、書類を出すことが強みになります。

内覧の受け方を変えて申込につなげる

内覧は、買主が部屋を見る時間であると同時に、売主を見る時間でもあります。

内覧の受け方で変えられる点は、日程、部屋の状態、対応の3つです。日程は買主の希望に合わせ、土日の午前中など明るい時間帯を空けます。部屋は、生活感を減らし、窓を開けて換気し、照明を全部つけます。対応は、聞かれたことに答え、それ以外は担当者に任せます。

見送られた場合は、担当者を通じて理由を聞きます。「価格」「間取り」「管理」「日当たり」のどれだったかが分かれば、次の内覧までに直せる点が絞れます。内覧の準備と当日の対応は、別の記事で詳しく扱っています。

不動産売却の内覧対策|準備から当日対応・値引きまで 不動産売却の内覧対策|準備から当日対応・値引きまで

リフォームより清掃と修繕の範囲に留める

売れないと「リフォームすれば売れるのでは」と考えがちですが、リフォーム費用を売却価格に上乗せして回収できる例は少なく、買主は自分の好みで直したい人が多数です。

対策の範囲は、清掃と小さな修繕までに留めます。水回りのハウスクリーニング、壁紙の破れや床の傷の補修、壊れた設備の交換です。数万円から十数万円で、内覧の印象が変わります。

家具を配置して暮らしの場面を見せるホームステージングも、空室なら選択肢です。買主が「ここでどう暮らすか」を想像しやすくなります。費用は業者と期間で幅があるので、担当者に相談して見積もりを取ります。

不動産会社の売り方を確かめて変える対策

内覧が来ず、担当者からの報告も少ないときは、売り方そのものを確かめます。売主には、報告を受ける権利と、登録状況を確かめる手段があります。会社を変えるのは、確かめて改善を求めた後の選択肢です。

業務報告に行った措置と引き合いが書かれているか確かめる

宅地建物取引業法34条の2第9項は、専任媒介契約では2週間に1回以上、専属専任媒介契約では1週間に1回以上、業務の処理状況を依頼者に報告しなければならないと定めています。標準媒介契約約款の専任媒介契約約款も、第4条第1項第二号で、契約書に記載する方法と頻度で業務の処理状況を報告する義務を置いています。一般媒介契約はこの9項の対象の外ですが、同条8項の「申込みがあったときは遅滞なく報告する」義務は媒介契約の種類を問わず及びます。報告の頻度は契約書で定めることもできます。

確かめるのは報告の中身です。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は、業務処理状況の報告について次のように書いています。

報告すべき事項は、宅地建物取引業者が契約の相手方を探索するために行った措置(指定流通機構への依頼物件の登録、広告等)、引き合いの状況等とする。

「反響はありませんでした」だけの報告は、行った措置の部分が抜けています。

  • どの媒体に掲載したか
  • 閲覧数と問い合わせ数はいくつか
  • 内覧の申込はあったか
  • 見送りの理由は何か

これらを報告に書いてもらうよう頼めます。数字が分かれば、次の対策の効果も測れます。

出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法 出典: 国土交通省 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方

レインズの登録状況を売主自身で確かめる

宅地建物取引業法34条の2第5項は、専任媒介契約を結んだ不動産会社に、物件を指定流通機構(レインズ)へ登録する義務を課しています。期間は施行規則15条の10で、専任媒介契約は契約の日から7日、専属専任媒介契約は5日と決まっていて、会社の休業日数を除いて数えます。登録すると、他の不動産会社も買主に紹介できるようになります。

登録した会社は、同条6項により、登録を証する書面(登録証明書)を遅滞なく売主へ引き渡します。国土交通省と4つの不動産流通機構が出した売主向けの案内では、2025年1月から、登録証明書の二次元コードを読み取ることで売主専用の画面に入れるようになったと説明されています。その画面では、取引状況が「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」のどれになっているかを売主が確かめられます。

解釈・運用の考え方の34条の2関係9(1)は、登録内容が事実と異なるときは65条1項の指示処分の対象になる旨も書いています。自分で確かめて「公開中」以外になっていれば、他社からの紹介が止まっている可能性があります。登録証明書を受け取っていない場合は、担当者に交付を求めます。確かめる手順と、囲い込みの見抜き方は、別の記事で扱っています。

出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法 出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法施行規則 出典: 国土交通省・4不動産流通機構 レインズの「ステータス管理機能」を活用しましょう!

改善を文書で求めてから会社を変えるか決める

売り方に問題が見えたとき、いきなり会社を変える前に、改善を文書で求める段階を挟みます。会社を変えると、掲載の期間がリセットされ、新しい会社が動き出すまでに時間がかかります。

求める内容は具体的に書きます。掲載媒体の追加、写真の撮り直し、紹介文の修正、報告の頻度と項目、担当者の交代。メールで送れば、記録が残ります。

「反響なし」の報告が3回続いたので、掲載媒体の追加と写真の撮り直しをメールで頼んだ。2週間後、写真が差し替わり、閲覧数が2倍になった。会社を変えずに済み、契約の期間もそのまま使えた。

2〜4週間で改善が見られなければ、会社を変える判断に根拠ができます。担当者個人に問題がある場合は、会社の上司に担当交代を頼むと、会社を変えずに済むことがあります。

3か月の満了で乗り換えるか一般媒介に変える

宅地建物取引業法34条の2第3項は、専任媒介契約の有効期間は3月を超えることができないと定め、これより長い期間を定めたときはその期間を3月とするとしています。同条4項は、更新は依頼者の申出によりできるとしています。標準媒介契約約款も、第7条で有効期間を3ヶ月を超えない範囲とし、第15条第2項で、更新しようとするときは満了に際して売主から会社へ文書等で申し出るものとしています。つまり、売主が何もしなければ契約は満了で終わります。満了時の乗り換えは、違約金の対象の外です。

乗り換えるほかに、一般媒介契約に変えて複数の会社に頼む選択肢もあります。専任で1社に任せて動きが鈍かった場合、一般で2〜3社に頼むと、それぞれの会社の買主層に届きます。

期間の途中で解除する場合は、約款の第14条により、会社の責めに帰すことができない事由による解除だと、契約の履行のために要した費用の償還を請求されることがあります(その額は約定報酬額が上限です)。満了を待てるなら、満了で切り替えるほうが費用の心配が消えます。乗り換え先の選び方と手順、専任で売れないときの確かめ方は、別の記事で扱っています。

出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法 出典: 国土交通省 標準媒介契約約款

期限までに売れないときの出口

住み替えの引き渡しやローンの都合で期限がある人は、期限までに売れないときの出口を先に決めておきます。出口が決まっていれば、値下げ交渉で焦らずに済みます。

出口先に確かめる条件
買取・売却保証いくらで引き取るか(書面)
賃貸に出す住宅ローンの金融機関の承諾
買い替え特約・つなぎ融資住み替え先の売主と金融機関の条件
売り止めて出し直す価格か見せ方を変えるか、時期

買取と売却保証はいくらで引き取るかを先に取る

不動産会社が直接買い取る「買取」は、数週間で現金化できる出口です。目安として市場価格の7〜8割といわれますが、この割合は公的な統計ではなく業界で語られる相場感で、しかもここでいう「市場価格」は成約の見込み価格です。自分の売り出し価格とは別物なので、売り出し価格が高めなら、買取価格はその7割よりさらに下に見えます。

買取価格は会社ごとに差が出るので、2〜3社に買取の査定を頼み、金額を並べます。仲介で売る場合との差額が、期限を守るために払う費用です。

「売却保証(買取保証)」は、一定期間は仲介で売り、売れなければあらかじめ決めた価格で会社が買い取る仕組みです。保証価格は買取価格と同程度か低めで、仲介手数料や条件がつくことがあります。保証価格と条件を書面で先に確かめます。買取と仲介の比べ方、買取保証の仕組みは、別の記事で扱っています。

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賃貸に出す前に住宅ローンの承諾を確かめる

「売れないなら貸す」という出口には、先に確かめる前提があります。住宅ローンの返済中なら、金融機関の承諾です。

住宅ローンは、借りた本人が住むための資金として貸し出されます。住宅金融支援機構は、財形住宅融資の案内で、無断で融資住宅を人に貸したり融資住宅に住まなくなったりすると機構との契約に違反することになり、融資金の全額を一括して返すことになる、と説明しています。転勤や転職、長期療養などで家族全員が一時的に住めない場合は、管理人を選任する「留守管理」の承認を受けて返済を続ける道があり、承認される期間は3年以内です。民間金融機関の住宅ローンは、届出や承諾の要否と違反したときの扱いが、それぞれの金銭消費貸借契約の条項によって決まります。まず自分の契約書を読み、借入先に確かめます。

また、貸すと入居者がいる間は自分で住む前提の売り方ができなくなります。入居者つきの投資物件として売る形になり、価格は下がりやすくなります。家賃収入で維持費をまかなえるか、いつ売り直すかを、金融機関への確認と合わせて考えます。

出典: 住宅金融支援機構 (財形住宅融資のみ)転勤などで一時的に住めなくなったとき

転勤の持ち家、売却と賃貸どっち?5軸の比較と収支で判断 転勤の持ち家、売却と賃貸どっち?5軸の比較と収支で判断

住み替えの期限は買い替え特約とつなぎ融資で守る

住み替え先を先に契約している場合、売れない期限のリスクを減らす仕組みが2つあります。

1つは買い替え特約です。住み替え先の売買契約に「期日までに今のマンションが売れなければ契約を白紙にできる」と入れておく特約で、手付金が戻ります。売主(新築なら分譲会社)が受け入れるかは交渉次第で、中古の個人売主には断られることもあります。

もう1つはつなぎ融資と住み替えローンです。つなぎ融資は、今のマンションが売れるまでの間、住み替え先の代金を一時的に借りる仕組みです。住み替えローンは、売却後に残るローンを新しいローンにまとめます。どちらも金利や期間の条件があるので、住み替え先の契約前に金融機関に相談しておきます。

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いったん売り止めて繁忙期に出し直す

期限に余裕があるなら、売り出しをいったん止め、時期を変えて出し直す選択肢があります。

長く掲載されている物件は、閲覧している買主に「売れ残り」と見られます。掲載を止めて数か月置き、価格か見せ方を変えて出し直すと、新着として見られます。同じ価格・同じ写真で出し直しても、結果は同じままです。

出し直す時期は、買主が動く時期に合わせます。進学や転勤で4月までに入居したい人が動くため、例年、年度替わり前の時期は物件を探す人が増えます。自分の地域で月ごとの成約件数がどう動いているかは、担当者にレインズの集計で示してもらえます。売り止めの期間と出し直す月を、その数字を見てから決めます。

まとめ:対策は止まっている段階で決まり、3か月が動き出す境目になる

いちばん重いのは、待つ期間に統計の目安があるという点です。東京カンテイの調査では、首都圏の中古マンションは売り出しから3か月以内に50.8%、6か月以内に73.8%が成約しています。同じ調査で、3か月以内に成約した事例の価格乖離率は平均−3.57%だったのに対し、8か月では−10.81%、10か月では−13.72%まで広がりました。値下げを先延ばしにして待つほど、最後に必要になる下げ幅は大きくなります。

次の一歩は、自分の売却が問い合わせ・内覧・購入申込のどこで止まっているかを見分け、その段階に合う対策を1つだけ選ぶことです。問い合わせが来ないなら価格、内覧はあるのに申込が出ないなら見せ方と管理の情報、内覧も報告も来ないなら不動産会社の売り方。ここを飛ばして複数の対策を同時に打つと、次に売れないときに何を変えればよいかが分からないまま、また同じ場所で止まります。

そのうえで、担当者に求めてよいことを確かめます。売り出し価格と値下げ提案の根拠(34条の2第2項・標準媒介契約約款第5条)、業務報告に書かれるべき「行った措置」と「引き合いの状況」、レインズの登録証明書で見られる取引状況。ここまで確かめて動きが変わらなければ、3か月の満了が乗り換えの分かれ目になります。住み替えのトビラでは、マンションが売れないときの対策を決める順番も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。