借地権付きの分譲マンションに住んでいて、住み替え(買い替え)を考え始めた方に向けた記事です。「借地権のマンションって、売れるのか」「所有権より、どれくらい安くなるのか」「地主の承諾とか承諾料って、誰がいくら払うのか」。買うときに「借地権だから安い」と聞いた覚えはあっても、売るときにどうなるかは聞いていない方が多いと思います。
借地権付きマンションも売却できます。ただし、価格や売りやすさは権利の種類、残りの契約期間、地代、立地などで変わります。「借地権だから一律に2割安い」と決めず、まず自宅の条件を反映した査定を取ることが大切です。
この記事では、借地権付きマンションが売れにくいと言われる理由、売却価格の決まり方、売却前に借地契約で確かめる条件、そして高く売る方法を順に説明します。
借地権付きマンションが売れにくいと言われる理由
買主が判断するときに気にするのは、主に次の条件です。事前に説明できると、条件が分からないために検討をやめる買主を減らせます。
| 確認されること | 用意する情報 |
|---|---|
| 住宅ローン | 取扱金融機関と必要書類。融資の可否は今回の審査で決まる |
| 継続的な負担 | 地代・更新料・改定条件 |
| 残存期間 | 満了日と更新の有無 |
| 譲渡の費用 | 承諾の要否・名義書換料・負担者 |
| 取引の進め方 | 同じ棟などの売買を扱った会社の説明 |
住宅ローンを扱わない金融機関があるため
借地の取扱いは金融機関で異なります。最初の銀行が対象外としても、ほかの金融機関まで利用できないとは限りません。
フラット35も、借地の種類や担保などの条件を満たせば利用できる場合があります。不動産会社には、同じマンションでの融資実績と、現在相談できる窓口を確認してもらいましょう。過去の実績は、今回の買主の融資承認を保証するものではありません。
地代と更新料が買主の毎月の負担に見えるため
借地権付きマンションでは、土地を借りている対価として地代を毎月払います。数年から数十年ごとに更新料がかかる契約もあります。所有権のマンションなら、土地にかかるのは固定資産税と都市計画税です。
買主から見ると、管理費・修繕積立金に加えて地代が乗るので、「毎月の負担が重い」と映ります。更新料の存在を知ると、さらに慎重になります。
地代だけでなく、更新料なども含めた年間負担を示しましょう。所有権物件の土地分の税金と比べる場合は、実際に確認できる税額を使います。比較する物件や税の軽減条件が違うと、単純には比べられません。
定期借地権は残存期間が短いほど買い手が減るため
普通借地権と、旧借地法が適用される借地権には更新の仕組みがあります。一方、一般定期借地権には更新がなく、満了時に土地を返す契約が基本です。
残存期間は、買主が住める期間やローンの条件に関わります。フラット35では、定期借地権などの借入期間は通常の上限と借地の残存期間の短い方が上限です。他の金融機関には独自の条件があり、「残り30年なら必ず30年借りられる」とは限りません。
出典: 国土交通省「定期借地権の解説」
譲渡承諾料が売買の費用に上乗せされるため
借地権が賃借権なら、譲渡には原則として地主の承諾が必要です。地上権なら原則として承諾なしに譲渡できますが、契約上の届出などは別に確認します。
分譲時に包括的な承諾や定額の名義書換料を定めた契約もあります。承諾料は法律で一律に決まっていません。「売買価格の10%」などを自動的に当てはめず、自分の契約と窓口で金額・負担者を確かめましょう。
借地権の条件を買主に説明できる会社が必要なため
借地権の売買経験は担当者によって違います。価格だけでなく、承諾の進め方やローンの確認先まで説明できるかが、会社選びのポイントです。同じ棟や同じ地主の物件を扱った経験があれば、今回使える情報を具体的に聞けます。
借地権付きマンションの売却価格の決まり方
価格は、立地・広さ・階数・室内状態などに、借地の期間や地代、承諾条件を加えて判断します。借地権という理由だけで、一律の値引き率を当てはめるものではありません。
所有権との割合より、同じ条件の成約事例を見る
査定では「いくらか」だけでなく、どの事例をどう調整した価格なのかを聞きます。当サイトでは、次の項目をそろえて比べることを勧めます。
| 査定で聞くこと | 確かめたい違い |
|---|---|
| 同じ棟の成約はいつ、いくらか | 売出価格ではなく成約価格か。時期は近いか |
| 比較物件と自宅の差は何か | 面積・階数・向き・室内状態 |
| 借地条件をどう反映したか | 残存期間・地代・承諾料・解体費用 |
| 所有権物件も参考にした理由は何か | 立地や築年数だけでなく費用条件を調整したか |
「借地権だから安い」で納得せず、自宅がいくらで売れそうかを確かめましょう。 同じ条件を伝えて複数社の根拠を比べれば、低い査定にも高い査定にも理由を求められます。
普通借地権・旧法借地権は更新条件も確認する
借地借家法は1992年8月に施行されました。それ以前からの借地には、更新などについて旧借地法が適用される場合があります。普通借地権の当初の存続期間は原則30年以上です。
更新を拒むには正当事由などの要件がありますが、半永久的な居住や価格が保証されるわけではありません。契約の経緯、建物の状態、地代や更新料も査定に伝えます。
出典: e-Gov法令検索「借地借家法」(第3条 借地権の存続期間、附則第6条 借地契約の更新に関する経過措置) 出典: 国土交通省「定期借地権の解説」
定期借地権は満了日と返還条件が価格に関わる
一般定期借地権は50年以上の期間を定め、更新や建物の再築による延長などをしない特約を結ぶものです。売却時には、買主が使える残りの期間と、満了時の解体・返還条件が判断材料になります。
残りが短くなるほど利用期間や融資の選択肢に影響しますが、「残り何年で何割下がる」という共通の式はありません。満了日と費用負担を示して、今の条件で査定してもらいましょう。
出典: e-Gov法令検索「借地借家法」(第22条 定期借地権)
地代の水準と改定条件が価格を上下させる
仮に地代が月1万円と月3万円なら、年間の支払いは24万円違います。ただし、この差がそのまま売却価格の差になるわけではありません。更新料や改定条項も含めて、継続的な負担を確認します。
過去の改定履歴があれば、資料に基づいて伝えます。「これまで上がっていない」ことは、将来も変わらない保証ではありません。
土地分の税金と地代は、確認できる実額で比べる
土地の固定資産税・都市計画税の納税義務者は原則として土地の所有者です。借地の買主が土地分の税金を直接払わない点は説明できますが、その代わりに地代などを負担します。
所有権物件との比較では、地代・更新料・建物分の税金と、比較物件の土地・建物分の税金を整理します。税額が不明なまま「年間○万円得」とは示さず、不動産会社に比較条件を確認しましょう。
借地権割合は相続税評価の目安で売値には使わない
借地権について調べると「借地権割合」という言葉が出てきます。国税庁の路線価図では、地域ごとにAからGの記号で示され、Aが90%、Bが80%、Cが70%、Dが60%、Eが50%、Fが40%、Gが30%と決められています。
この割合は、相続税や贈与税で借地権を評価するための割合です。借地権の価額は、その宅地の自用地としての価額に借地権割合を掛けて求めます。戸建ての借地権を売買するときの目安にも使われますが、分譲マンションの売却価格はこの割合で決まりません。マンションの価格は、同じ棟や近くの成約事例で決まります。
路線価図の借地権割合が60%でも、マンションの売値が所有権物件の6割になるわけではありません。税の評価と売却査定を分けて考えましょう。
出典: 国税庁「No.4611 借地権の評価」 出典: 国税庁「路線価図の説明」
売却前に借地契約で確かめる条件
書類は査定と並行して確認できます。すべてそろうまで相談を待つ必要はありません。不明な項目は不明と伝え、価格が変わる条件を確認してもらいましょう。
| 書類 | 見る箇所 | 手元にない・読めない場合 |
|---|---|---|
| 土地賃貸借契約書など | 権利の種類、原契約・更新、満了日、地代、譲渡条項 | 管理会社・管理組合・分譲会社へ写しや保管先を確認 |
| 重要事項説明書 | 借地条件、名義書換料の説明 | 購入時の仲介会社などに確認 |
| 管理規約・会計資料 | 届出、地代徴収、解体準備金 | 管理会社・管理組合へ確認 |
| 登記事項証明書 | 敷地権が地上権か賃借権か、登記された条件 | 不動産会社や司法書士と契約書を照合 |
借地の種類は原契約と更新の経緯まで確かめる
現在手元にある契約書の日付だけで、旧法・普通・定期を判定しないようにします。更新や売買で書類が作り直されている場合があるためです。原契約の締結時期と承継の経緯を確認します。
賃借権の登記には、存続期間などの定めが記録される場合があります。登記だけで全条件が分かるとは限らないため、契約書と照合します。
出典: e-Gov法令検索「不動産登記法」(第81条 賃借権の登記等の登記事項)
譲渡承諾の要否と承諾料の定めを契約書で確かめる
分譲マンションの借地契約では、地主が分譲時に「区分所有者が第三者に譲渡することを包括的に承諾する」と定めている例や、名義書換料を「1件あたり○万円」と定額で定めている例があります。地主が公的機関や大きな法人の場合、手続きが定型化されていることも多いです。
一方で、個別に承諾を取り、借地権価格の何%という承諾料を払う契約もあります。どちらかは、契約書と管理規約に書かれています。
地主が承諾しないときの受け皿も、法律に用意されています。借地上の建物を第三者に譲る場合に、譲渡しても地主に不利となるおそれがないのに承諾が得られないときは、裁判所が地主の承諾に代わる許可を与えられると借地借家法19条に定められています。まずは「承諾料は10%」という一般論を鵜呑みにせず、自分の契約の条文を読みます。承諾の取り方と、承諾料が高いときの交渉、地主が承諾しないときの手順は、別の記事で詳しく説明しています。
出典: e-Gov法令検索「借地借家法」(第19条 土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
地代や更新料の未払いは、金額と精算方法を確認する
滞納がある場合は、未払い額と遅延損害金の有無を確認します。売却代金から精算できるか、承諾の前に支払いが必要かを窓口に聞き、資金計画へ入れましょう。査定の段階から伝えておくと、あとで手取りが減る見落としを防げます。
買主のローンに必要な地主の書類を確認する
地上権は抵当権の対象にできますが、賃借権そのものには抵当権を設定できません。建物への融資に際して地主の書面が必要か、土地にも担保設定を求めるかは金融機関などの条件によります。
フラット35は、敷地への第1順位の抵当権設定を原則としつつ、地主の承諾が得られない場合でも利用できる場合があると案内しています。これは譲渡承諾を省略できるという意味ではありません。必要な様式を金融機関に確認してもらいましょう。
出典: 住宅金融支援機構「敷地が借地の場合でも融資の対象になりますか。」
定期借地権は解体準備金と契約終了時の扱いを確かめる
定期借地権のマンションでは、契約終了時に建物を解体して更地で返す費用を、区分所有者が積み立てています。「解体準備金」「建物取壊し準備金」といった名前で、管理費・修繕積立金とは別に集めている例が多くあります。
買主は「終了時にいくら負担が要るのか」を必ず聞きます。準備金の積立額と、終了時の扱い(解体して返すのか、建物を地主に譲る特約があるのか)を管理規約と契約書で確かめます。
準備金が計画どおり積み上がっていれば、買主の不安は減ります。積立が遅れていると、価格に響きます。売り出す前に管理組合の会計資料で確かめておきます。
借地権付きマンションを高く売る方法
高く売るために、借地の条件が不明なまま値付けされるのを避けましょう。査定の根拠、買主への費用説明、承諾の段取りを具体的に確認します。
借地権の売買に慣れた不動産会社を査定の質問で見分ける
会社の経験は、査定のときに3つの質問をすると分かります。
回答では、実際の取扱事例と、今回まだ確認が必要な点を分けて説明できるかを見ます。件数や会社の規模だけで決めず、複数社の査定額と説明を比べましょう。
買主が使える金融機関を先に調べて販売資料に載せる
不動産会社に、同じ物件での融資実績と現在の取扱条件を調べてもらいます。販売資料に実績を載せる場合も、買主・物件の審査が必要なことを添えます。「融資実績あり」と「誰でもローンを組める」は別です。
地代と承諾料を含めた総額で買主に示す
買主は、月々いくらかで判断します。物件価格に加えて、地代・管理費・修繕積立金・承諾料を含めた総額を、資料で示します。
購入時の費用と、毎月・毎年の費用は分けて示します。所有権物件の税金と比較する場合は、確認できた実額と比較条件を添えましょう。
承諾料が定額や不要の契約なら、それも明記します。買主が知りたいのは「総額でいくらか」と「あとから増える費用があるか」の2つです。先に答えを出しておく資料が、価格を守ります。
承諾が得られない場合の契約条件を決める
承諾前に売買契約を結ぶなら、停止条件や解除条項を不動産会社・必要に応じ弁護士と確認します。「承諾を条件とする」の1行だけで、あらゆる違約責任を防げるわけではありません。
- いつまでに、誰が承諾を取得するか
- 承諾が得られない場合の契約終了と受領金の返還
- 承諾料・申請費用の負担と、想定を超えた場合の扱い
回答予定日は申請窓口に確認し、買主のローン審査と合わせて決済日を組みます。
承諾料の負担を価格に織り込むか別建てにするか決める
承諾料は、慣習では売主が負担する例が多いです。法律で決まった負担者はいないので、契約で買主負担や折半にすることもできます。
売り出す前に、承諾料を物件価格に織り込むか、別建てで買主に負担してもらうかを決めます。
費用を価格に含める場合も別にする場合も、買主の支払総額と売主の手取りが分かる表示にします。同じ棟の成約事例も、承諾料を誰が負担した条件なのか確認しましょう。
期限があるなら仲介と買取を並行して比べる
仲介の査定は「買主を探して売れると見込む額」、買取の提示は「その会社が買う条件」です。価格だけでなく、承諾料を引いた手取りと決済日を比べます。買取でも必要な地主承諾は省略できません。
売れないと決める前に、今の価格を知る。 契約書が不ぞろいでも、分かる条件を伝えて査定相談を始められます。
まとめ:借地権付きマンションは契約条件を伝えて査定を比べる
借地権付きマンションも売却できます。住宅ローン、地代と更新料、残存期間、承諾の条件が、価格や売りやすさに関わります。所有権との一律の割合で決めず、同じ棟などの成約事例をもとに査定の根拠を確認しましょう。
土地賃貸借契約書・重要事項説明書・管理規約があれば、借地の種類、満了日、承諾料の定めを確認します。そろっていなくても査定は相談できます。不明な条件を一緒に調べ、費用を差し引いた受取額を確かめましょう。
契約書の内容が分かったら、次に確かめるのは、任せる会社がその条件をどう扱うかです。「承諾料の扱いは、どうしますか」「この物件で使える金融機関は、どこですか」「同じ棟か同じ地主の成約事例は、ありますか」の3つを査定で聞き、返ってくる答えの具体さで選びます。住み替えのトビラでは、借地権付きマンションの売却で売主が先に外せる買主側の壁も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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