マンションを売りたいけれど、知らない人を家に上げるのは避けたい。片付ける余裕も、毎回立ち会う時間もぎりぎり。売却の記事を読むと「内覧は大事」と書いてあって、それが最初の壁になっている人は多いはずです。
先に答えを書きます。内覧なしでもマンションは売れます。ただし、買主が「住む人」から「買取業者と投資家」に切り替わり、価格はそのぶん下がります。そして買取を選んでも、業者の現地確認は1回あります。内覧を避けたい理由が「立会い」や「日程」なら、価格を下げずに済む道が先にあります。
この記事では、内覧なしで売れる仕組み、5つの方法、内覧したくない理由別の選び方、内覧を省いたときに起きる不利、そして損を減らすコツを順に見ていきます。
内覧なしでマンションを売却できる仕組み
内覧を受けずにマンションを売ることはできます。ただし、誰が買主になるかが変わり、買取でも業者が室内を1回は確かめます。まずこの仕組みを押さえます。
- 内覧は法律で決められた手続きではない
- 室内を見ずに買うのは買取業者と投資家に限られる
- 買取でも業者の現地確認は1回ある
内覧は法律で決められた手続きではない
不動産の売買で、法律が当事者に求めている手続きは2つです。1つは、売買の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士が書面を交付して行う重要事項の説明(宅地建物取引業法35条)。もう1つは、契約が成立したときに交付する書面(同37条)です。どちらも書面と説明の手続きで、買主が室内を見ることは、この2つの外にあります。
内覧は、買主が納得して申し込むために業界で定着した慣行です。売主の義務や買主の権利として法が定めた手続きとは、別の位置にあります。したがって、売主が「内覧はお断りします」と決めても、売買の手続きそのものは進められます。媒介契約を結ぶときに、内覧を受けない方針を伝えれば、不動産会社はその条件で販売活動を組みます。
問題は、法律ではなく買主の行動です。数千万円の買い物を室内を見ずに決める人は限られます。内覧を省くと、手続きは変わらないまま、買ってくれる相手の幅が狭くなる。この点が、内覧なし売却のすべての出発点です。
出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第35条第1項・第37条第1項)
室内を見ずに買うのは買取業者と投資家に限られる
自分で住むためにマンションを買う人は、ほぼ全員が室内を見てから申し込みます。住宅ローンを組み、家族で長く住む家です。日当たり、におい、上下階の音、水回りの状態は写真で判断しきれず、見てから決めるのが当然の買い物です。
一方で、室内を見ずに買う相手が2種類います。1つは買取業者です。買い取ったあとにリフォームして再び売るので、室内の傷みはリフォーム費用として価格に織り込みます。もう1つは投資家です。賃貸に出して家賃を得る目的なので、判断の軸は室内の印象より、家賃相場と管理状態と利回りにあります。
つまり内覧なしの売却とは、買主を「住む人」から「業者と投資家」に切り替える売却です。相場で買ってくれるのは住む人なので、買主が切り替わると価格の考え方も変わります。この関係を知らずに内覧なしを選ぶと、「相場より安い」と後から驚くことになります。
買取でも業者の現地確認は1回ある
「買取なら内覧はゼロ」と説明されることがありますが、正確には「業者の確認が1回」です。買取業者は、室内の状態を見てから買取価格を確定させます。図面と築年数から出す机上の金額はあくまで目安で、担当者が室内を確かめてから最終の金額を出します。
ただし、この現地確認は一般の内覧とは性質が違います。相手は不動産のプロ1名で、所要は30分から1時間ほど。売主が立ち会わず、鍵を預けて管理人に案内してもらう形も取れます。片付けや掃除は省いてよく、傷や汚れはそのまま見せる方が、後で金額が下がる余地を減らせます。
内覧なし売却で実際に起きるのは、「他人が何組も来る内覧」が「業者が1回来る現地確認」に置き換わることです。回数はゼロより1回、その代わり負担の中身は大きく変わります。
内覧なしでマンションを売却する方法
内覧なしで売る方法は5つあります。どれも「内覧の相手を業者にする」「立会いをなくす」「実地の内覧をなくす」「住みながらをやめる」のいずれかです。
| 方法 | 内覧の相手 | 売主の立会い | 価格の傾向 |
|---|---|---|---|
| 買取業者に売る | 業者の担当者1回 | 省ける | 相場より低い |
| 鍵を預けて売主不在で内覧 | 一般の買主 | なし | 相場どおり |
| 内覧不可の条件で仲介 | 投資家・業者(書類で判断) | なし | 相場より低い |
| 引っ越してから空室で売る | 一般の買主(会社が案内) | なし | 相場どおり |
| 賃貸中のままオーナーチェンジ | 投資家(内覧なしが通常) | なし | 利回りで決まる |
買取業者に売る
不動産会社が自ら買主になる方法です。仲介のように買主を探す期間がなく、業者の現地確認と金額の合意が済めば、契約から決済まで数週間で終わります。広告も看板も出ず、ポータルサイトにも載らないので、売却していること自体を周囲に知られずに済みます。
内覧の負担は、業者の担当者による現地確認1回だけです。残置物が残っていても、壁紙が傷んでいても、そのままの状態で引き取る業者が多く、片付けや修繕をしなくて済みます。
代わりに、買取価格は仲介で売る場合より低くなります。業者はリフォーム費用と再販の利益を差し引いて金額を出すためです。買取の流れや業者の選び方は別の記事で扱っているので、本記事では「内覧を避けたい」観点での使い方に絞ります。
鍵を預けて売主不在で内覧してもらう
内覧が嫌な理由が「毎回立ち会うのが負担」「日程の調整が難しい」なら、内覧そのものは残し、立会いだけをなくす方法があります。不動産会社に鍵を預け、内覧の案内を会社に任せる形です。売主は外出したままでよく、内覧の予定を聞くだけで済みます。
居住中でも、外出している時間帯に案内してもらう形で成立します。ただし、居住中で鍵を預ける場合は、貴重品の管理と、案内する担当者を固定してもらうことを先に決めておきます。
この方法の利点は、買主が一般の「住む人」のまま変わらないことです。価格を下げずに、内覧の負担だけを減らせます。内覧を避けたい理由が立会いや日程にあるなら、買取まで下げる前にこの方法を試す順番が損をしにくい順番です。
内覧不可の条件で仲介に出す
仲介で売り出しながら、「内覧はお断りします」と条件を付ける方法です。買主は図面、写真、動画、物件状況等報告書、管理規約や修繕計画といった書類だけで判断します。
この条件で申し込むのは、実質的に投資家か業者です。住む目的の買主はまず離れていきます。したがって価格は買取に近づき、売れるまでの期間も読みにくくなります。
近年よく紹介される360度動画やオンライン内見は、この方法の補助です。動画があれば書類だけより判断しやすくなりますが、動画を見て「では買います」となる住む目的の買主はごく少数で、動画は実地の内覧の前に冷やかしを減らす道具として機能します。内覧不可で仲介に出すなら、「買主は投資家と業者になる」と最初から割り切って価格を設定します。
引っ越してから空室で売る
住み替え先が先に決まる人なら、引っ越してから空室の状態で売る方法があります。空室なら鍵を会社に預けるだけで、内覧の案内はすべて会社が行い、売主は一度も関わらずに済みます。自分の生活空間に他人が入る抵抗も、片付けの負担も消えます。
買主は一般の住む人のままなので、価格は相場どおりを狙えます。空室は家具がないぶん広く見え、傷や汚れも隠さず見せる形になるので、買主の側も安心して判断できます。
負担は、引っ越し後も売れるまでの間、住宅ローンと管理費と修繕積立金を払い続けることです。新居の費用と二重になる期間がどれくらい続くかを見込んで決めます。住み替えの順番(売り先行か買い先行か)は別の記事で扱っています。
賃貸中のままオーナーチェンジで売る
すでに賃貸に出しているマンションなら、入居者がいる状態のまま売る「オーナーチェンジ」があります。室内は入居者が生活している空間なので、見せるには入居者の同意が要ります。そのため、この売却は最初から内覧なしが通常です。買主は投資家で、判断材料は家賃、契約内容、管理状態、利回りです。
自分が住んでいるマンションでこの方法を取るには、いったん賃貸に出してから売ることになり、時間も手間もかかります。したがって現実的なのは、すでに賃貸中の場合に限られます。
価格は「家賃÷期待利回り」で決まる収益物件の考え方になり、住む人に売る相場とは別の水準です。家賃が相場より低い契約のままだと売値も下がるので、売る前に賃料の見直しができるかを確かめます。
内覧したくない理由別の売却方法の選び方
内覧を避けたい理由によって、選ぶべき方法と、下げることになる価格の幅が違います。理由をはっきりさせると、価格を下げずに済む道が見えます。
| 内覧を避けたい理由 | 選ぶ方法 | 価格への影響 |
|---|---|---|
| 立ち会う時間がない・日程が合わない | 鍵を預けて売主不在で仲介 | ほぼなし |
| 片付けや掃除が無理 | 買取で現状のまま | 相場より低い |
| 他人を家に入れたくない | 買取、または空室にしてから仲介 | 買取は低い・空室は影響小 |
| 近所や相手に知られたくない | 広告なしの買取 | 相場より低い |
立ち会う時間がないなら鍵を預けて仲介で売る
たとえば、こんな進み方です。平日は仕事、土日は子どもの習い事の送迎。内覧のたびに家を片付けて在宅する負担に耐えかね、買取に切り替えようとしたが、不動産会社に鍵を預けて「土曜の午前だけ案内可」とした結果、3週間で住む目的の買主から申込みが入った。
この3週間は例示なので、自分の地域と物件の動きに置き換えて読みます。仕事で土日も動けない、遠方に住んでいて毎回通えない、小さい子どもがいて在宅対応が難しい。こうした理由なら、なくすのは内覧そのものより立会いで足ります。
不動産会社に鍵を預け、案内を任せます。居住中なら、案内できる曜日と時間帯を「土日の午前だけ」「平日の18時以降だけ」のように指定し、その枠だけ外出します。内覧の申込みが入ったら会社から連絡が来て、都合が悪い日は断ることもできます。
この方法なら買主は住む人のままで、価格はそのまま維持できます。内覧を避けたい理由が「時間」なら、買取に切り替えると数百万円単位で損をする可能性があります。まず立会いなしの仲介を試し、それでも負担が重ければ次の方法を考える順番が、手取りを守る順番です。
片付けや掃除が無理なら買取で現状のまま売る
物が多くて片付けが追いつかない、長く住んで汚れが目立つ、体調や年齢の事情で作業が難しい。この場合、内覧を受けるには片付けが前提になるので、内覧そのものが現実から遠のきます。
買取なら、業者の担当者が現状のまま室内を確かめ、残置物の処分や清掃を含めた金額を出します。片付けの費用と手間を金額に織り込む形なので、売主の作業はゼロで済みます。「現状有姿」や「残置物そのまま」で買い取る業者を選ぶと、引っ越しの荷物まで置いていける場合もあります。
注意したいのは、現状のまま売ることと、状態を告げないことは別だという点です。知っている不具合(雨漏り、給湯器の故障、過去の水漏れなど)は買取業者にも伝えます。伝えずに売ると、あとから責任を問われる余地が残ります。
他人を家に入れたくないなら買取か空室にしてから売る
知らない人が家の中を見て回ることへの抵抗、防犯上の不安、家族の事情で家の中を見せづらい。こうした理由では、売主不在にしても他人が入る事実は残るので、別の道が要ります。
取れる道は2つです。1つは買取で、家に入るのは業者の担当者1回だけになります。もう1つは、住み替え先に引っ越してから空室で売る方法です。空室になれば、他人が入っても自分の生活空間ではなくなり、抵抗はほぼ消えます。
価格の面では、空室で仲介に出す方が有利です。買主が住む人のままなので相場どおりを狙えます。引っ越しを先にできる事情があるなら空室化を、先に引っ越すのが難しいなら買取を選ぶ、という分け方になります。
近所や相手に知られたくないなら広告なしの買取で売る
離婚で家を処分する、相続した実家を売る、近所には売却を伏せたい。こうした事情では、内覧よりも「売り出しが目に見えること」が問題です。仲介で売り出すと、ポータルサイトへの掲載、チラシ、現地の看板、複数組の内覧で、周囲に売却が伝わります。
買取なら、広告も看板もポータル掲載もなしで進みます。買取は不動産会社が自ら買主になる取引なので、専任媒介契約を結んだ会社に課される指定流通機構(レインズ)への登録義務(宅地建物取引業法34条の2第5項)の対象からも外れます。家に来るのは業者の担当者1回で、近所の目にも触れにくい形です。
離婚で相手と顔を合わせずに済ませたい場合も、買取なら契約と決済の日程が少なく、代理人や司法書士を通す形で進めやすくなります。価格は相場より低くなりますが、「知られずに」「会わずに」を優先するなら、買取が事情に合う方法です。
出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第5項)
内覧なしで売却するデメリット
内覧を省くと楽になるのは立会いだけです。価格、買主の幅、契約後の争い、書類の手間の4つで不利になります。
- 買主が業者と投資家に限られて価格が下がる
- 買取の提示額は現地確認の後に下がることがある
- 内覧を省いたぶん契約後の不具合の争いが起きやすい
- 写真や告知書での説明の手間は減らない
買主が業者と投資家に限られて価格が下がる
内覧なしで買う相手は業者と投資家です。業者はリフォーム費用と再販の利益を引いて金額を出し、投資家は家賃から逆算して金額を出します。どちらも「住みたいから多少高くても買う」とは別の判断軸で動きます。
一般的に、買取価格は仲介で売れる価格の7〜8割が目安と言われます。3,000万円で売れるマンションなら、この目安から計算して2,100万〜2,400万円ほどという幅になります。この差額が、内覧を受けないことの対価です。
内覧不可の条件で仲介に出した場合も、申し込むのが投資家と業者なので、結果として買取に近い金額の申込みが中心になります。仲介手数料を払ったうえで買取と同じ水準になるなら、最初から買取の方が手取りが多いこともあります。内覧なしを選ぶときは、「いくら下がるか」を先に見積もってから決めます。買取と仲介の比べ方は別の記事で扱っています。
買取の提示額は現地確認の後に下がることがある
買取業者に問い合わせると、まず図面と築年数と所在地から机上の金額が出ます。この金額は「室内を見る前」の目安で、現地確認のあとに下がることがあります。壁紙の傷み、水回りの劣化、残置物の量、給湯器やエアコンの古さがリフォーム費用として差し引かれるためです。
たとえば、こんな比べ方になります。机上で2,600万円と提示した業者が、現地確認の後に「壁紙の張り替えと給湯器の交換が要る」として2,350万円に下げた。別の業者は机上で2,450万円、現地確認後も2,400万円。最初の提示額の高さと、最後の金額の高さは別物だった。
ここに出した金額はすべて例示で、自分が受け取った提示額に置き換えて読みます。最初の提示額が高い業者ほど、現地確認後の下げ幅が大きい傾向があります。問い合わせの段階で他社より高い金額を見せて、現地確認で「思ったより傷んでいる」と下げる進め方です。
対策は2つです。複数の業者に現地確認まで受けてもらい、確認後の金額で比べること。そして、知っている不具合は最初から伝え、「これを含めていくらか」と聞くことです。隠さず伝えた方が、確認後の下げ幅は小さくなります。
内覧を省いたぶん契約後の不具合の争いが起きやすい
売主は、引き渡した物件が契約の内容に適合しない場合、買主から修理や不足分の引渡し(追完)、代金の減額、損害賠償や契約の解除を求められる責任(契約不適合責任)を負います(民法562条〜564条)。民法566条は、買主がその不適合を知った時から1年以内に売主へ通知した場合に、これらを請求できる形を定めています。
内覧を受けていれば、「買主は室内を見て納得して買った」という事実が残ります。内覧なしだと、この事実が抜け落ちます。引渡し後に見つかった傷や不具合について、「見ていれば分かったはずのこと」と「隠れていたこと」の線引きが難しくなり、争いになりやすい構造です。
買取では、業者がリフォームを前提に買うため、契約不適合責任を免除する特約を付ける例が多くあります。ただし、免除の特約があっても、売主が知りながら告げなかった事実については責任が残ります。民法572条はこう定めています。
売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。
内覧不可で一般の投資家に売る場合は、この特約が付くかを契約前に確かめます。そして特約の有無にかかわらず、知っている不具合を漏れなく書面で告げることが、自分を守る手段になります。
出典: e-Gov法令検索「民法」(第562条・第563条・第564条・第566条・第572条)
写真や告知書での説明の手間は減らない
内覧を省くと、買主が判断する材料は書類と写真だけになります。つまり、内覧で伝えていたことを、すべて書面で伝える必要が生じます。楽になるのは立会いの時間で、開示の手間はむしろ増えます。
必要になるのは、物件状況等報告書(告知書)、付帯設備表、室内の写真、管理規約、長期修繕計画、直近の総会議事録、修繕積立金の残高などです。買取業者はこれらを自分で集める場合もありますが、投資家に売るときは売主側で揃えます。
写真は「良く見せる」より「正確に見せる」が目的です。傷や汚れを写した写真も載せる方が、あとで「話が違う」と言われる余地が減ります。書類を先に揃えておくと、買主の判断が早まり、売却期間の面でも有利になります。
内覧なしで売却するときの損を減らすコツ
内覧を省く代わりに、「比較」「書面」「条件付き1回」の3つで価格と争いを守ります。
- 買取は複数社の現地確認を同じ日にまとめて比較する
- 仲介の査定額も取って買取との差を知ってから決める
- 内覧は申込み後の1回だけと条件を付ける
- 告知書と設備表に不具合まで書く
- 管理規約と修繕計画を先に揃えて書類で判断してもらう
買取は複数社の現地確認を同じ日にまとめて比較する
買取価格は業者によって数百万円の差が出ます。リフォームの得意分野、再販の販路、抱えている在庫の量が違うためです。1社の金額だけで決めると、その差額を丸ごと失います。
内覧を避けたい人にとって、複数社の現地確認は負担に感じられます。そこで、同じ日の連続した時間帯に各社の確認をまとめます。10時にA社、11時にB社、13時にC社という形です。立会いは1日で済み、鍵を管理人に預けて立ち会わない形も取れます。
現地確認の前に、知っている不具合を各社に同じ内容で伝えておきます。同じ条件で見てもらえば、確認後の金額を横並びで比べられます。最初の机上の金額ではなく、現地確認後の金額で比べることが、買取で損をしないいちばんの手段です。
仲介の査定額も取って買取との差を知ってから決める
買取を選ぶ前に、仲介で売った場合の査定額を1社でよいので取っておきます。買取の金額だけを見ていると、それが高いのか安いのか判断がつきにくいままです。仲介の査定額との差が300万円なのか800万円なのかで、内覧を避ける対価の重さがまるで違います。
仲介の査定は、机上査定なら室内を見せずに出せます。訪問査定でも、担当者が1回来るだけです。差額を知ったうえで、「この差額なら内覧を受けてでも仲介で売る」「この差額なら買取でよい」と自分で決められます。
差額が大きいときは、内覧の負担を減らす方法(立会いなし、空室化)と組み合わせて仲介で売る道を検討します。内覧を受ける側の準備は別の記事で扱っています。
内覧なしは、比べたうえで選ぶ方法です。最初からの決め打ちは避けます。
内覧は申込み後の1回だけと条件を付ける
内覧不可で仲介に出すと買主は投資家と業者に限られますが、その中間の条件があります。「購入の申込みをした人に限って、契約前に1回だけ内覧を受ける」という条件です。
冷やかしや「とりあえず見てみたい」という内覧がゼロになり、本気で買う意思を示した人だけが1回来ます。買主の側も、申込みの前に書類と写真で十分に検討したうえで、最後の確認として室内を見ます。住む目的の買主も申し込める条件なので、価格を相場に近づけられます。
この条件は、媒介契約を結ぶときに不動産会社へ伝えます。募集の図面に「内覧は購入申込み後」と明記してもらえば、買主の側も納得のうえで検討します。内覧を完全に断る前に、この条件で買主の反応を見る順番が損をしにくい進め方です。
告知書と設備表に不具合まで書く
内覧なしの売却では、物件状況等報告書(告知書)と付帯設備表が、内覧の代わりを務めます。告知書は、主要な不動産関係団体が様式を提供している書面です。国土交通省のガイドラインも、媒介を行う不動産会社が売主に対してこの書面への記載を求めることを、調査の方法として挙げています。項目は様式によって違いますが、雨漏り、水漏れ、シロアリの害、給排水管の故障、火災の履歴、騒音やにおい、近隣とのトラブルなど、売主が知っている状態を書く欄が並びます。付帯設備表には、給湯器やエアコンなどの設備の有無と故障の有無を書きます。
ここで大切なのは、「書いた不具合は契約の内容になる」という点です。書面で告げた不具合は、買主が知ったうえで買ったことになり、あとから責任を問われる対象から外れます。逆に、知っていたのに書かなかった不具合は責任が残ります。免除の特約を付けた買取でも、知りながら告げなかった事実については責任が残る形です(民法572条)。同じガイドラインは、事案を故意に告げなかった場合などに売主が民事上の責任を問われる可能性がある旨を、会社があらかじめ売主へ伝えることが望ましいとし、告知書等が後日の証拠資料になり得るとしています。
内覧を省く売主ほど、告知書と設備表を詳しく書くことが自分を守る手段になります。「細かく書くと売れにくくなる」と心配する人もいますが、内覧なしで買う相手は業者と投資家で、不具合を前提に金額を出す相手です。隠すより書く方が、金額も争いも安定します。
出典: 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」 出典: e-Gov法令検索「民法」(第572条)
管理規約と修繕計画を先に揃えて書類で判断してもらう
内覧なしで買う投資家や業者は、室内の印象ではなく書類で判断します。管理規約、長期修繕計画、直近の総会議事録、修繕積立金と管理費の月額、積立金の残高、大規模修繕の履歴と予定。これらが揃っているほど、買主の判断は早く、申込みも早くなります。
これらの書類は管理会社に依頼すれば発行してもらえます(有料の場合があります)。売り出しの前に揃えておき、不動産会社に渡しておけば、問い合わせのたびに取り寄せる時間が省けます。
写真についても、写す範囲は売主が決められます。私物や表札、窓の外の風景で住所が分かる写真は外し、室内の広さと状態が伝わる写真に絞ります。内覧を省く売主にとって、書類と写真は「見せる代わりの説明」であり、ここに手をかけるほど、価格と期間の不利を小さくできます。
まとめ:内覧なしでも売れるが、買主が業者と投資家に替わり価格が下がる
いちばん重いのは、内覧を省くと買ってくれる相手が入れ替わるという点です。法律が売買の当事者に求める手続きは、契約が成立するまでの重要事項の説明(宅地建物取引業法35条)と、契約が成立したときの書面の交付(同37条)の2つで、買主が室内を見ることはその外にあります。だから内覧を断っても手続きは進みます。ただし、室内を見ずに数千万円を出すのは買取業者と投資家で、この2者はリフォーム費用と再販の利益、あるいは家賃からの逆算で金額を決めます。買主が「住む人」から替わったぶん、価格が下がる仕組みです。
次の一歩は、内覧を避けたい理由を1つの言葉にすることです。理由が「立ち会う時間の確保が難しい」「日程が合いにくい」なら、鍵を不動産会社に預けて売主不在で内覧してもらう道が先にあり、買主は住む人のままなので価格を維持できます。ここを飛ばして「内覧が嫌だから買取」と決めると、時間の都合という理由のために、数百万円単位の差額を払うことになります。買取を選ぶ場合も、仲介の査定額を1社取って差額を知ってから決めます。
そのうえで確かめたいのは、内覧を省いた自分が買主へ渡す書面です。告知書(物件状況等報告書)と付帯設備表に、知っている不具合まで書くこと。免除の特約を付けても、知りながら告げなかった事実の責任は残ること(民法572条)。買主が不適合を知った時から1年以内に通知すれば請求できること(同566条)。この3つを頭に入れてから、複数の買取業者に現地確認を受けます。住み替えのトビラでは、内覧なしでマンションを売る方法と損を減らすコツも含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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