ハザードマップで災害が不安になったら|マンションの住み替えは電気室の階で判断

ハザードマップの不安で住み替えるか判断する方法

ハザードマップで自宅のマンションに色が付いていて、「このまま住み続けて大丈夫だろうか」と不安になった方もいるでしょう。

マンションの危険の大きさは地図の色だけでは決まらず、電気室が何階にあるかで、災害のあとも家で暮らせるかが変わります。

この記事を読めば、立地と電気室の階から、今のマンションで住み替えを急ぐべきかを自分で判断できます。

マンションの災害リスクは「立地」と「建物」の順に確かめる

住み替えを急ぐべきかは、立地と建物の2つを順に確かめると決めやすくなります。

  1. 立地は、建物の工夫では防ぎにくい危険がある場所か
  2. 建物は、電気や水が止まっても、水が引くまで家族が家で暮らせるか

よくある状況ごとの目安を、次の表にまとめました。

今のマンションの状況おすすめ理由
土砂災害のレッドゾーン(特別警戒区域)か、川の激しい流れで家が壊れるおそれがある区域(家屋倒壊等氾濫想定区域)に入っている住み替えを優先して考える建物が壊れたり流されたりするおそれがあり、建物の工夫では防ぎにくい
電気室(建物全体に電気を配る部屋)や給水ポンプが水の届く高さより下にあり、管理組合の対策も進んでいない住み替えを優先して考える上の階に住んでいても停電と断水が起き、エレベーターも止まる
ハザードマップで浸水が3日を超えて続くとされ、お年寄りなど階段の上り下りが難しい家族がいる住み替えを優先して考える水が引くまで家で過ごすのも、外へ避難するのも難しい
自分の部屋と電気室が水の届く高さより上にあり、水が引くまでの備えもできる備えて住み続ける家の中で安全に過ごせる条件がそろっている
地図で色が付いていない、または浸水の深さが0.5m未満備えて住み続ける・場所の危険は小さい
・色がない場所でも水害は起きるので、備蓄と保険は見直しておく

どれに当てはまるか分からないときは、次の2つの節の順に、地図と建物を確かめてみてください。

ハザードマップでは、災害の種類・浸水の深さ・危険な区域を見る

自宅の危険度は、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」に住所を入れると調べられます。

地図は災害の種類ごとに分かれていて、住まいについて確かめたいのは次の5つです。

  • 洪水(川があふれて起きる浸水)
  • 内水(大雨を下水や側溝が流しきれずに起きる浸水)
  • 津波・高潮(高潮は、台風などで海面が上がり、海水が流れ込む災害)
  • 土砂災害(がけ崩れや土石流)
  • 地震の揺れやすさ・液状化(揺れで地面が泥のようにゆるむ現象)

5つを順に全部調べるより、自宅に関係しそうな災害から見ていく方が効率的です。川や海、がけに近いかを手がかりに選んでみましょう。

サイトの「重ねるハザードマップ」では、いくつかの災害を1枚の地図に重ねて見られます。「わがまちハザードマップ」では、市区町村が作った地図や避難所の場所を確かめられます。

浸水の深さは色分けされていて、目安は次のとおりです。

  • 0.5m未満は、床下まで
  • 0.5〜3mは、1階の床より上まで
  • 3〜5mは、2階の床より上まで
  • 5m以上は、2階より上まで

マンションの1階分の高さは、およそ3mです。想定される深さを3で割ると、何階まで水が来るかの見当がつきます。

たとえば深さ4mなら、4÷3は約1.3です。1階は水に沈み、2階の床の上まで水が来る目安になります。

土砂災害は、区域の種類で危険の大きさが変わります。

  • イエローゾーン(土砂災害警戒区域)は、土砂災害のおそれがある区域
  • レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)は、建物が壊れ、命に危険が及ぶおそれが高い区域

ハザードマップの多くは、1,000年に一度ほどの大雨を前提に作られています。1年のうちに起きる確率でいえば、0.1%ほどの大雨です。

つまり地図の色は、めったにない大雨が来たときの想定です。浸水の深さと区域まで確かめると、必要以上に怖がらずに済みます。

地震では、次の2つを確かめておきましょう。

  • 湾岸や埋め立て地など、液状化しやすい土地か
  • 建物が旧耐震基準か(1981年6月1日より前に建築確認を受けた建物)

建築確認とは、工事の前に、建物の計画が法律に合っているかを確かめてもらう手続きです。

旧耐震にあたるかは、完成した日ではなく、この手続きを受けた日で決まります。日付は、管理組合が保管している「確認済証」という書類で確かめられます。

出典: 国土交通省「ハザードマップポータルサイト」

上の階でも、電気室が水につかると家で暮らせなくなる

マンションで家にとどまれるかは、自分の部屋の階だけでなく、電気室や給水ポンプのある階でも決まります。

洪水のとき、家の中にとどまって身を守れるのは、次の3つがそろうときです。

  1. 家屋倒壊等氾濫想定区域の外にある
  2. 住んでいる部屋が、水の届く高さより上にある
  3. 水が引くまで暮らせるだけの、水や食料などの備えがある

これは洪水と高潮のときの考え方です。土砂災害と津波では、家にとどまらず、安全な場所へ移る避難が基本になります。

マンションで特に気をつけたいのは、3つ目の備えです。電気室や給水ポンプが地下や1階にあると、浸水したときに次のことが起きます。

  • 建物全体が停電する
  • ポンプが止まり、水が出なくなる
  • エレベーターが止まる

「上の階だから大丈夫」と思っていても、部屋は無事なまま、家で暮らせなくなるおそれがあります。

2019年の台風19号(令和元年東日本台風)では、地下の電気設備が水につかったマンションで、停電と断水が続きました。浸水しなかった上の階の住民も、水や電気を使えない暮らしを強いられました。

これを受けて、国土交通省と経済産業省は、建物の電気設備を浸水から守るためのガイドラインをまとめました。

電気室は、1階や地下にあることがよくあります。自分のマンションではどうか、管理会社か管理人に聞いてみましょう。管理組合が持っている建物の図面でも確かめられます。

浸水が何日続くかは、市区町村のハザードマップに「浸水継続時間」(水が引くまでの時間)として載っていることがあります。

地図で見つからないときは、家屋倒壊等氾濫想定区域とあわせて、市区町村の防災担当に問い合わせると確かめられます。

出典: 大阪府「ハザードマップの見方」

出典: 国土交通省「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」の策定について

電気室や玄関が被害を受けると、上の階の人も修理費を負担する

マンションの電気室や玄関が水につかると、その修理費は、浸水しなかった上の階の人も含めた所有者全員で負担します。

電気室や玄関のように、住む人みんなで使う部分を「共用部分」といいます。

共用部分の費用は、各所有者が部屋の広さの割合に応じて出し合うと、区分所有法という法律の第19条で決まっています。マンションの決まり(管理規約)に別の定めがあれば、そちらに従います。

修理には、まず管理組合が入っている火災保険の保険金と、修繕積立金(将来の修理に備えて毎月積み立てているお金)が使われます。足りなければ、所有者から一時金を集める案が総会で話し合われます。

つまり、部屋が水につからなくても、お金の面では負担を背負うことになります。

管理組合の保険に水害の補償が付いているか、修繕積立金に余裕があるかは、総会の資料か管理会社への問い合わせで確かめられます。

どちらも手薄なマンションでは、住み続けたときにかかるお金の見通しが立てにくくなります。

住み続けるなら、自分でできる備えと管理組合で進める備えを分けて考える

住み続けると決めたら、備えを「自分の部屋でできること」と「管理組合で進めること」に分けて考えましょう。

2つは、効き目も、実現までにかかる時間もかなり違います。

自分の部屋では、備蓄と火災保険を見直す

自分でできる備えの中心は、停電や断水が続いても水が引くまで家で暮らすための備蓄と、火災保険の見直しです。

水・食料・携帯トイレ・電池や充電器は、浸水継続時間に合わせた量を用意しておきましょう。

家庭の備蓄は3日分がよく目安にされます。浸水が3日を超えて続く想定なら、その日数分まで増やしておくと、水が引くまで家で過ごせます。

それだけの日数を家で過ごすのが難しい家族がいるときは、最初の表のとおり、住み替えを優先して考えた方がよいでしょう。

上の階に住んでいるなら、エレベーターが止まると、水や食料を階段で運ぶことになります。必要な量を、ふだんから部屋に置いておくと安心です。

低い階に住んでいるなら、家具や家電を高い所に置いておくと、床の上まで水が来たときの被害を減らせます。

自分で入っている火災保険も、見直しどきです。水害の補償(水災補償)は2024年10月から、保険料の基準が市区町村ごとに5段階に分かれました。

水害の危険が高い地域ほど、保険料も高くなる仕組みです。

水が部屋まで届く心配のない上の階なら、水災補償を外して保険料を抑える選び方もあります。低い階なら、補償を残しておくと、家具や家電の被害に備えられます。

管理組合で進める備えは、効き目が大きいが時間がかかる

止水板や電気室の浸水対策、耐震工事は効き目の大きい備えですが、決まるまでに時間がかかります。

止水板は、出入口に立てて水が入るのを防ぐ板です。こうした工事は共用部分の工事なので、管理組合が総会で決めてから進めることになります。

備え減らせる危険残る課題
止水板など、出入口や地下への浸水対策建物の中や電気室に水が入ること深い浸水や、場所そのものの危険は残る
電気室の移設や浸水対策建物全体の停電・断水・エレベーター停止費用が大きく、話がまとまるまで時間がかかる
耐震診断・耐震工事(旧耐震の建物)地震の揺れで建物が傷むこと地面の液状化は防げない

管理組合の工事は、理事会(所有者の代表が話し合う場)で検討し、総会で決めてから、修繕積立金を使う手続きに進みます。決まるまでに1年以上かかることもあります。

理事会に浸水対策を持ちかけても話が進まないなら、それ自体が住み替えを考える理由になります。弱点を直せないマンションでは、住んでいる間の不安が続き、売るときにも買う人から弱点として見られるためです。

リフォームして住み続ける場合と、売って住み替える場合の比べ方は、マンションはリフォームか住み替えかで紹介しています。

災害リスクのある今のマンションは売れるのか

ハザードマップで色が付いていても、マンションは売れます。

価格を左右するのは、区域に入っていることよりも、過去に実際に浸水したことと、管理組合の対策です。

価格に響くのは、区域に入っているかより、実際に浸水したか

浸水が想定される区域でも、中古マンションはふつうに売り買いされています。

こうした区域は、都市部の駅の近くにも広く重なっています。マンションの値段は、駅からの近さやまわりの便利さで決まる部分が大きいからです。

買う人も、上の階の部屋や対策が進んだ建物なら、受け入れられるリスクと考えて買うことがよくあります。

一方、建物や電気室が実際に浸水したことがあると、買う人の不安は大きくなります。値下げを求められたり、売れるまでに時間がかかったりしやすくなります。

管理組合の次のような記録は、買う人を安心させる材料になります。

  • 止水板を付けた
  • 電気室を上の階へ移した
  • 総会で浸水対策を決めた

議事録や工事の記録をそろえておくと、買う人の質問にも答えやすくなります。

自分のマンションの相場は、同じマンションや近くの似た物件が実際にいくらで売れたかを調べると、近い値をつかめます。実際に売れた価格(成約価格)は、次の2つのサイトで無料で調べられます。

  • レインズ・マーケット・インフォメーション
  • 国土交通省の不動産情報ライブラリ

そのうえで、複数の不動産会社に査定(売れそうな価格の見積もり)を頼んでみましょう。おおよその価格帯が分かります。

査定を頼む会社の探し方は、マンションの一括査定サービスの選び方で紹介しています。

出典: 東日本不動産流通機構「レインズ・マーケット・インフォメーション」

出典: 国土交通省「不動産情報ライブラリ」

売るときは、不動産会社の説明と売主の告知書で災害リスクを伝える

マンションを売るとき、災害リスクを買う人に伝える方法は2つあります。

  1. 不動産会社が行う「重要事項説明」(契約の前に、物件の大事な情報を買う人に説明すること)
  2. 売主が自分で書く「告知書」

重要事項説明では、2020年8月28日から、水害ハザードマップで物件の場所を示すことが義務になりました。示すのは、宅地建物取引士(不動産取引の国家資格を持つ人)です。

対象は、洪水・内水・高潮のハザードマップです。土砂災害と津波については、警戒区域に入っているかを、これとは別に説明します。

また不動産会社は、区域に入っていないからといって、買う人が「水害の心配はない」と思い込まないよう気をつけて説明することも求められています。

告知書(物件状況等報告書)は、過去の浸水や雨漏りなど、売主が知っていることを書いて買う人に伝える書類です。

知っている浸水を書かずに売ると、引き渡しの後に「契約不適合責任」を問われるおそれがあります。

契約不適合責任とは、契約の内容と違う物件を渡した売主が負う責任です(民法第562条など)。買う人から、修理や値下げを求められることがあります。

マンションでは、自分の部屋だけでなく、電気室や地下駐車場など共用部分の浸水も、伝えるべき事実になることがあります。

一度被害を受けると、その事実も買う人に伝えることになります。住み替えをすでに決めているなら、被害を受ける前に動いた方が、売る時期や値段を落ち着いて決めやすくなります。

反対に、備えて住み続けられる条件がそろっているなら、売却は急がずに考えられます。

何をどこまで伝えるかは、物件ごとの事情で変わります。売却を進める段階で、不動産会社の宅地建物取引士に確かめておきましょう。

出典: 国土交通省「不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化」

住み替え先は、立地を先に、建物をその次に確かめる

次の住まいを選ぶときは、後から変えられない立地の危険を、物件の見学の前に確かめておきましょう。

そのあとで建物の設備や管理を比べると、住んでからの後悔を減らせます。

見学の前に、候補の住所でハザードマップを確かめる

気になる物件が見つかったら、見学(内見)や申し込みの前に、その住所でハザードマップを確かめてみてください。

見るのは、災害の種類・浸水の深さ・危険な区域の3つです。

不動産会社からハザードマップの説明を受けるのは、契約の直前です。「ここに住みたい」と気持ちが固まってから、その物件をあきらめるのはつらいでしょう。

立地は買った後に変えられないので、早めに候補をしぼっておくと安心です。

同じ町の中でも、川沿いの低い土地と、一段高い土地では浸水の深さが変わります。「このあたりは大丈夫」と町全体でひとくくりにせず、物件の場所そのものを確かめましょう。

駅に近い平らな土地は、浸水が想定される区域に入りやすい傾向があります。安全を優先すると、駅から遠い高台の物件が中心になりがちです。

ただ、駅の近くでも、次の3つがそろえば候補に残せます。

  • 家屋倒壊等氾濫想定区域の外にある
  • 電気室と住む予定の階が、水の届く高さより上にある
  • 浸水が長く続かない想定になっている

駅に近い物件と遠い物件のどちらが得かを、暮らしやすさや将来の売りやすさから比べたい方は、住み替えは駅近と駅遠のどちらがよいかも参考にしてみてください。

建物は、電気室の階・住む階・管理組合の備えで比べる

同じ場所に建つマンションでも、電気室の階・住む階・管理組合の備えによって、災害のあとも家で暮らせるかが変わります。

候補をしぼったら、建物ごとに次の3つを比べてみましょう。

  • 電気室や給水ポンプがある階
  • 住む予定の階
  • 管理組合の浸水対策

中古マンションなら、不動産会社を通して管理会社に、電気室の場所や過去の浸水、止水板などの対策を聞けます。

新築マンションなら、販売担当者に、電気室や非常用発電機(停電のときに電気を送る機械)の場所を聞いておきましょう。

あわせて、次の2つも確かめておくと安心です。

  • 1981年6月1日以降に建築確認を受けた、新耐震基準の建物か
  • 管理組合に、防災用の備蓄や、住む人の無事を確かめる仕組みがあるか

住み替え全体の流れや、売るのと買うのをどちらを先にするか、お金の準備については、マンションからの住み替えの流れで紹介しています。

まとめ:地図の色だけでなく、電気室の階と家で暮らせるかで判断する

マンションの災害リスクは、地図の色に加えて、次の3つで判断しましょう。

  • 土砂災害のレッドゾーンや、家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていないか
  • 電気室と自分の部屋が、水の届く高さより上にあるか
  • 水が引くまで、家で暮らし続けられるか

まずは市区町村のハザードマップで、浸水の深さ・浸水継続時間・家屋倒壊等氾濫想定区域を確かめてみてください。

次に、管理会社に電気室と給水ポンプが何階にあるかを聞いてみましょう。上の階だから安全と思い込まず、建物の設備まで確かめることが大切です。

住み替えのトビラでは、災害リスクの確かめ方や住み替えの進め方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。