相続税の額が預金を上回り、親から継いだマンションや家を売って納めようと考えている人もいるでしょう。
相続税は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に現金で納めるのが原則で、売るならこの期限のうちに代金を受け取る必要があります。
この記事では、売って納める方法を中心にした4つの払い方と、期限に遅れたときの不利益、使える税の特例、期限内に相場で売る流れとコツを紹介します。
相続税を払えないときに取れる4つの方法
相続税を現金で払いきれないときに取れる方法は、不動産を売る、お金を借りる、分割で納める(延納)、不動産で納める(物納)の4つです。
どれを選ぶかは、期限までに現金を用意できるかと、その不動産を手放してよいかで決まります。
| 方法 | 不動産 | 手続きの相手 | 主な負担 |
|---|---|---|---|
| 売って現金で納める | 手放す | 不動産会社・買主 | 売る費用・譲渡所得税 |
| 借りて納め、後から売る | 売れたら手放す | 金融機関 | 借入の利息 |
| 延納(分割で納める) | 持ち続けられる | 税務署(許可が必要) | 利子税 |
| 物納(不動産で納める) | 国に納める | 税務署(許可が必要) | 相続税の評価額で引き取られる |
不動産を売って現金で納める
期限までに売れる見込みがあるなら、相続した不動産を売って現金で納める方法から考えるとよいでしょう。
借入や延納と比べて利息や利子税の負担がゼロで、値段も相場に近い額で決まるためです。
条件は、相続税の納付期限までに売買の決済を終え、代金を受け取っていることです。
売る前には遺産分割と相続登記も済ませる必要があります。相続が始まったら、早めに準備を始めておくと安心です。
売る額を決める前に、死亡保険金や預貯金で不足分を減らせないかも確かめておきましょう。
死亡保険金は受取人のお金なので、遺産分割の前でも受け取れます。預貯金も、遺産分割の前に、1つの金融機関につき150万円を上限として払い戻せます。
例えば残高600万円の口座から払い戻す場合(仮の例です)
払い戻せる額は「亡くなった時の残高×3分の1×その相続人の法定相続分」で計算します。
法定相続分が2分の1の子なら、600万円×3分の1×2分の1で、100万円まで払い戻せます。
自分の場合は、口座ごとの残高と自分の法定相続分を式に入れると目安が出ます。実際に払い戻せる額は、口座のある金融機関で確かめられます。
出典: e-Gov法令検索「民法」第909条の2/全国銀行協会「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」
金融機関から借りて納め、後から売る
売却が期限に間に合わないときは、金融機関から借りて先に相続税を納め、売れたら代金で返す方法があります。
延納や物納は税務署の許可を待つ必要があります。借入なら、金融機関の審査が通りしだい納税資金を用意できます。
借りるときは、相続した不動産を担保にするのが一般的です。
担保にするには、その不動産を相続人の名義に変える相続登記を先に済ませる必要があります。
登記を進められるのは、遺産分割がまとまってからです。借入を考える場合も、相続人どうしの話し合いを急ぎましょう。
借りている間は利息がかかり、売れるまでが長引くほど負担は増えます。
金融機関へ相談するときは、売り出しの状況と、売却代金で返す予定を伝えておくと、返済の計画を立てやすくなります。
出典: 国税庁「No.4211 相続税の延納」/国税庁「No.4214 相続税の物納」
延納で分割して納める
延納は、税務署の許可を受けて、相続税を毎年分割で納める制度です。
遺産に占める不動産などの割合が75%以上なら、不動産などに当たる税額を最長20年に分けて納められます。
使うには、次の4つの条件をすべて満たす必要があります。
- 相続税額が10万円を超える
- 現金で一度に納めるのが難しい事情があり、難しい額の範囲で申請する
- 延納する税額と利子税に見合う担保を出す
- 申告期限までに延納申請書を出す
「現金で一度に納めるのが難しいか」は、税務署が手元の預貯金や収入から判断します。払える分は、延納の対象から外れます。
担保は、延納する税額が100万円以下で、延納の期間が3年以下なら免除されます。
分割している間は利子税がかかります。
不動産などの割合が75%以上の場合、不動産などに当たる税額の利子税は本来年3.6%で、令和8年は特例により年0.6%です。この割合は毎年変わります。
物納で不動産を納める
物納は、現金の代わりに相続した不動産などを国に納める制度で、延納でも払えないときに限って認められます。
国が引き取る価額は、相続税の計算に使った価額です。小規模宅地等の特例で評価を下げた土地なら、下げた後の価額で引き取られます。
つまり、相場が相続税の計算に使った価額より高い不動産なら、売って現金で納めるほうが手元に残るお金は多くなります。
物納に使える不動産にも条件があります。次のような不動産は、国が管理や処分に適さない財産として、物納の対象から外れます。
- 抵当権などの担保が付いた不動産
- 権利をめぐって争いのある不動産
- 隣との境界が未確定の土地
申請は、納期限までに物納申請書と必要な書類をそろえて税務署に出します。
相続税を納付期限までに払えないときの3つの不利益
相続税を期限までに納められないと、延滞税がかかり、ほかの相続人にも請求が及び、最後は財産を差し押さえられます。
どの不利益も、納期限から時間がたつほど重くなります。
| 納期限から | 起きること |
|---|---|
| 翌日 | 延滞税がかかり始める |
| 50日以内 | 税務署から督促状が出される |
| 督促状が出されて10日後 | 財産を差し押さえられる状態になる |
| 2か月後 | 延滞税の割合が上がる |
2か月を過ぎると税率が上がる延滞税
延滞税は、納期限の翌日から納めた日までの日数に応じてかかる税で、納期限から2か月を過ぎると割合が上がります。
令和8年の割合は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、その翌日からは年9.1%です。
令和7年までは年2.4%と年8.7%だったので、どちらも上がっています。割合は毎年見直されます。
つまり、2か月を過ぎてからの遅れは、それまでの3倍あまりの重さでかかってきます。
例えば相続税1,000万円を遅れて納めた場合(仮の例です)
延滞税は「相続税額×割合×遅れた日数÷365」で、2か月までの日数と、それより後の日数に分けて計算します。ここでは2か月を61日とし、令和8年の割合で計算しました。
2か月のうちに納めると、1,000万円×2.8%×61÷365で、およそ4.7万円です。
1年(365日)遅れると、2か月までの分およそ4.7万円に、1,000万円×9.1%×304÷365のおよそ75.8万円が加わり、合計はおよそ80万円になります。
自分の場合は、相続税額と遅れる日数を式に入れると目安が出ます。実際の額は、税務署や国税庁の延滞税の計算方法のページで確かめられます。
払えないと分かっていても、申告書は期限内に出しておきましょう。
申告書の提出まで遅れると、延滞税とは別に無申告加算税もかかります。
出典: 国税庁「No.9205 延滞税について」/国税庁「延滞税の計算方法」/e-Gov法令検索「国税通則法」第66条
ほかの相続人が滞納した相続税まで負う連帯納付義務
相続人のだれかが自分の相続税を滞納すると、ほかの相続人がその分を代わりに納めるよう求められます。これを連帯納付義務といいます。
自分の分を期限内に納めていても、きょうだいが滞納すれば税務署から通知が届きます。求められる額の上限は、その人が相続で受けた利益の額です。
そのため、納税資金の準備は相続人全員で話し合っておくと安心です。
不動産を売って納める場合は、売った代金から各人の相続税をいつ、誰が納めるかまで、遺産分割協議の時点で決めておきましょう。
この義務は、税務署からの通知が届く前に申告期限から5年が過ぎた場合や、滞納した相続人が延納の許可を受けた場合などに外れます。
督促状から10日を過ぎると始まる財産の差し押さえ
納期限を過ぎると督促状が届き、督促状が出された日から10日を過ぎても未納が残っていると、財産を差し押さえられます。
督促状は、納期限から50日以内に出されます。その後の差し押さえは、税務署の職員が行う義務のある手続きとして、法律で定められています。
差し押さえられた不動産は、最後は国の公売にかけられます。
公売では、売る時期も価格も国の手続きで決まります。自分で買主を探したり、値段を交渉したりする機会は失われます。
差し押さえの対象には、相続した財産のほか、相続人がもともと持っている自宅や預貯金も含まれます。
期限までの納付が難しいと分かったら、その時点で税務署に相談しましょう。
出典: e-Gov法令検索「国税通則法」第37条/e-Gov法令検索「国税徴収法」第47条
相続した不動産の譲渡所得税を軽くする2つの特例
相続した不動産を売って利益が出ると、相続税とは別に、所得税と住民税を合わせた譲渡所得税がかかります。
この税は、取得費加算の特例か、空き家の3,000万円特別控除を使うと軽くできます。
取得費加算の特例で払った相続税の一部を差し引く
取得費加算の特例を使うと、払った相続税のうち売った不動産に当たる額を、取得費に足せます。
取得費は、売った金額から差し引ける「買ったときの値段など」のことです。足した分だけ利益が減り、譲渡所得税も減ります。
この特例は、相続税がかかった人が、相続した不動産を申告期限の翌日から3年以内に売った場合に使えます。亡くなったことを知った日から数えると、期限の目安は3年10か月ほどです。
加算できる額は、次の式で計算します。
その人の相続税額 ×(売った不動産の相続税評価額 ÷ その人が相続した財産の価額の合計)
財産の価額の合計には、相続税の計算に加えた生前贈与の財産も含みます。
もとになる取得費は、亡くなった人が買ったときの金額を引き継ぎます。
売買契約書を失くしていると、取得費は売った金額の5%で計算され、税が重くなります。契約書は早めに探しておきましょう。
出典: 国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」/国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」
戸建ての実家に使える空き家の3,000万円特別控除
亡くなった親が一人で住んでいた戸建ての実家を売るなら、空き家の3,000万円特別控除で、利益から最大3,000万円を差し引けます。
主な条件は次のとおりです。
- 昭和56年5月31日以前に建てられた家
- 亡くなる直前まで、親が一人で住んでいた
- 売った金額が1億円以下
- 耐震基準を満たすよう改修するか、取り壊す
- 亡くなった日から3年を経過する日が属する年の12月31日まで、かつ令和9年12月31日までに売る
区分所有建物として登記された家は対象外です。相続した実家がマンションなら、使えるのは取得費加算の特例です。
改修や取り壊しは、売った後でも、売った年の翌年2月15日までに済めば認められます。
相続人が3人以上いると、1人あたりの控除は最大2,000万円です。この2点は、2024年1月1日以後の売却から適用されています。
親が老人ホームに入っていた場合も、一定の条件を満たせば対象になります。
使うには、売った家がある市区町村から「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受け、確定申告書に添える必要があります。
出典: 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
2つの特例から1つを選ぶときの比べ方
同じ不動産の売却に使えるのは、2つの特例のどちらか1つです。
両方の条件を満たす戸建てなら、利益から差し引ける額を比べ、大きいほうを選ぶと税が少なくなります。
相続した不動産の所有期間は、親が買った時から数えます。売った年の1月1日に5年を超えていれば、長期譲渡になります。
長期譲渡の税率は、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税(所得税額の2.1%)を合わせて20.315%です。
例えば特例を使う前の利益が4,000万円、取得費加算の額が1,500万円なら(仮の例です・長期譲渡)、次のとおりです。
| 空き家特例を選ぶ | 取得費加算を選ぶ | |
|---|---|---|
| 差し引ける額 | 3,000万円 | 1,500万円 |
| 税がかかる利益 | 1,000万円 | 2,500万円 |
| 譲渡所得税 | 約203万円 | 約508万円 |
表の計算の順序(仮の例です)
税がかかる利益は「特例を使う前の利益−差し引ける額」、譲渡所得税は「税がかかる利益×20.315%」で出します。
空き家特例なら(4,000万円−3,000万円)×20.315%で約203万円、取得費加算なら(4,000万円−1,500万円)×20.315%で約508万円です。
自分の場合は、売った金額から取得費と売るための費用を引いた額が「特例を使う前の利益」です。取得費加算の額は上の特例の式で出せます。実際の税額は、税理士や税務署で確かめられます。
この例では、空き家特例を選ぶほうが税は約305万円少なくなります。
取得費加算の額が3,000万円を超えるなら、取得費加算のほうが税は少なくなります。相続人が3人以上なら、境目は2,000万円です。
出典: 国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」/e-Gov法令検索「所得税法」第60条
取得費加算で税金が多く減る物件の選び方
複数の不動産を相続して一部だけを売るなら、取得費加算で差し引ける額を使い切れる物件を選ぶと、譲渡所得税が多く減ります。
加算できる額は、売った物件の相続税評価額が大きいほど増えます。ただし差し引けるのはその物件を売った利益の額までで、利益を超えた分は切り捨てられます。
例えば評価額が同じ2物件のどちらかを売る場合(仮の例です)
相続税評価額がどちらも4,000万円のA・Bの2物件があり、取得費加算の額はどちらも400万円とします。
差し引ける額は「取得費加算の額」と「その物件を売った利益」のうち、小さいほうです。
売った利益がAは3,000万円、Bは200万円なら、Aは400万円を全額差し引けます。Bで差し引けるのは200万円までで、残りの200万円は切り捨てられます。
自分の場合は、物件ごとに特例の式で加算できる額を出し、査定額から見込んだ利益と比べると目安が出ます。
つまり、利益が大きく出る物件を売るほど、取得費加算を無駄なく使えます。
売る物件を決めるときは、税金のほかに、必要な現金の額、売れやすさ、相続人が住み続けたいかも比べておきましょう。
どの組み合わせで税がいちばん少なくなるかは、税理士に試算してもらうと確かめられます。
出典: 国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
納付期限の10か月以内に相続した不動産を売る流れ
相続した不動産を期限内に売り切れるかは、遺産分割をどれだけ早くまとめられるかで決まります。
相続人の確定から相続税を納めるまでは、大きく4つの段階に分かれます。
相続人を確定し、不動産の査定を取る
最初の段階では、戸籍で相続人を確かめる作業と、不動産会社への査定の依頼を同時に進めておきましょう。
相続人を確かめるには、亡くなった人の生まれてから亡くなるまでの戸籍が必要です。
2024年3月からは、本籍地が遠くても、最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求できるようになりました。請求できるのは本人、配偶者、父母や祖父母、子や孫で、窓口へ出向く必要があります。
査定額が分かると、売れば相続税をまかなえるか、遺産分割で誰が何を受け取るかを、具体的な金額で話し合えます。
査定を頼む前に、相続人どうしで「売って納税資金にする」ことに合意しておくと、売り出しまでが速く進みます。
出典: 法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」
遺産分割協議で換価分割を決める
不動産を売って代金を分けるなら、遺産分割協議で換価分割にすると決めて、遺産分割協議書に書いておく必要があります。
換価分割とは、不動産を売り、費用を差し引いた代金を相続人で分ける方法です。協議書には、次の3つを書いておくと安心です。
- 不動産を売ること
- 代金を分ける割合
- 売る費用を誰が負担するか
代表の1人が売って代金を配るときは、とくに注意が必要です。協議書に換価分割の定めが欠けていると、ほかの相続人へお金を贈ったとみなされ、贈与税がかかるおそれがあります。
話し合いが長引く場合も、法律で決まった割合(法定相続分)で共有の登記をすれば、全員の同意で売れます。
遠方に住む相続人がいると、協議書への署名と実印、印鑑証明書をそろえるのに時間がかかります。郵送でやり取りする段取りを、早めに決めておくと安心です。
相続登記で相続人の名義に変える
相続した不動産を売るには、その前に、名義を亡くなった人から相続人へ変える相続登記を済ませる必要があります。
買主へ名義を移す登記は、登記上の名義人である売主が申請するためです。
相続登記は2024年4月から義務になり、相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に申請する決まりです。正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料の対象になります。
登記が終わる前でも、査定や不動産会社との媒介契約、売り出しの準備は進められます。
登記は決済の日までに済んでいればよいため、登記と売却の準備は並行させましょう。
登記の申請は司法書士に頼むのが一般的で、遺産分割協議書、戸籍、印鑑証明書などをそろえて渡します。
出典: e-Gov法令検索「不動産登記法」第76条の2・第164条
売り出して決済し、相続税を納める
売り出したら、決済の日が相続税の納付期限より前になるよう、売買契約の日程を組む必要があります。
首都圏の中古マンションは、レインズ(不動産会社どうしが物件情報を共有する仕組み)に登録してから成約するまで、2025年の平均で82.5日でした。中古戸建ては100.9日です。
成約の後も、買主の住宅ローンの審査などを経てから決済になります。この期間は物件や買主によって変わるため、不動産会社に見込みを聞いておきましょう。
申告期限より前に売る場合は、小規模宅地等の特例に注意が必要です。
親と同居していた相続人や、賃貸住まいなどの相続人(いわゆる家なき子)がこの特例を使うには、申告期限まで土地を持ち続けることが条件です。先に売ると、相続税が増える場合があります。
配偶者は、この条件の対象外です。
出典: 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」/国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
納付期限に追われても相場で売るためのコツ
納付期限が近づくと、値下げや買取に応じやすくなり、相場より安く売ってしまいがちです。
安売りを防ぐための準備は、どれも売り出す前に済ませられます。
査定額より成約事例で不動産会社を選ぶ
不動産会社は、査定額の高さより、近くで実際に売れた事例をもとに価格を説明できるかで選ぶと安心です。
正直なところ、査定額は「その値段で売れる」と約束する額とは違います。不動産会社が「この値段なら売れそう」と見込んだ額です。
一括査定で何社かに頼むと、契約を取りたい会社が高めの査定額を出すこともあります。高い額で売り出して値下げを重ねると、そのぶん期限までの時間を失います。
比べるときは、査定の根拠になった成約事例の所在地、広さ、築年数、売れた時期と価格を見せてもらいましょう。
国土交通省の不動産情報ライブラリでも、近くの取引価格を自分で調べられます。
期限があることを不動産会社に伝えておくと、決済までの日程を組んでもらいやすくなります。
相続人全員で最低価格と値下げの条件を決めておく
相続人の共有で売るなら、売り出す前に、最低価格と値下げの条件を全員で決めておくと安心です。
共有の不動産は、値下げや買主との価格交渉のたびに共有者全員の同意が必要です。連絡がつきにくい相続人がいると、返事を待つ間に買主を逃すこともあります。
全員で決めておきたいことは、次の4つです。
- 最低価格
- 値下げする時期
- 値下げする幅
- 窓口役と、その人が判断できる範囲
窓口を1人に決め、決めた条件の範囲なら窓口が判断してよいと書面で合意しておくと、交渉が速く進みます。
最低価格の目安は、売った代金から仲介手数料などの費用と譲渡所得税を引いても、相続税を納められる額です。
値付けが合っているかは、売り出した直後の問い合わせや内見の数で分かります。問い合わせが少ないまま時間が過ぎたら、決めておいた条件どおりに値下げすると、迷う時間を減らせます。
買取で下がる金額と借入の利息を比べる
仲介での売却が長引いて期限が迫ったら、買取へ切り替える前に、買取で下がる金額と、借入でつないだ場合の利息を比べておきましょう。
買取は不動産会社が直接買い取る方法で、早く現金にできる代わりに、価格は仲介で売れる相場より下がります。
買取価格を集計して公表している公的機関や業界団体はなく、業界の一般的な目安は仲介相場のおおむね6〜8割です。
例えば仲介で4,000万円で売れそうな場合(仮の例です)
その8割の3,200万円で買い取られると、4,000万円−3,200万円で、800万円下がります。
借入の利息は「借りる額×年利×借りる月数÷12」で計算できます。金融機関で聞いた金利を入れれば、800万円と並べて比べられます。
自分の場合は、仲介の相場を不動産会社の査定や不動産情報ライブラリで、買取の価格を買取業者の見積もりで確かめると、下がる金額が出せます。
売り出してから一定期間が過ぎても売れ残っていたら、不動産会社が買い取る「買取保証」付きの仲介もあります。
この場合も、価格が決まるのは買取に移った時点で、目安は買取と同じ水準です。
売り出す前に家財を片付け、書類をそろえる
売り出してから慌てないよう、家財の片付けと売却に使う書類の準備は、遺産分割の話し合いと並行して進めておきましょう。
親が長く住んだ家は家財が多く、片付けに時間がかかります。
引き渡しの前には家財を運び出す必要があり、家財が残っていると内見でも部屋の広さが伝わりにくくなります。
形見分けを相続人で先に済ませ、残りは複数の片付け業者から見積りを取って頼むとよいでしょう。
そろえておきたい書類は次のとおりです。
- 亡くなった人が買ったときの売買契約書と領収書
- 登記識別情報(権利証)
- 固定資産税の納税通知書
- マンションなら管理規約
- 戸建てなら測量図や境界の資料
このうち売買契約書は、取得費加算の特例や譲渡所得税の計算のもとになるため、最初に探しておきましょう。
まとめ:売って納めるなら、まず遺産分割を急ぐ
相続税を現金で払いきれないとき、期限内に不動産を相場で売って納める方法は、利息や利子税の負担がゼロで済みます。そのためには、売る前に必要な遺産分割と相続登記を、早く終えておくことが条件です。
次の一歩は、相続人全員で「売って納税資金にする」と決め、不動産会社に査定を頼むことです。この話し合いが遅れると売り出しも遅れ、期限を過ぎて延滞税がかかるか、期限に追われて相場より安く売ることにつながります。
査定額が出たら、売れば相続税をまかなえるかと、取得費加算などの特例で税がいくら減るかを、税理士と一緒に確かめておきましょう。住み替えのトビラでは、相続税を払うために相続した不動産を売るときの期限と税金も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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