マンションを売って税金がゼロになったのに、翌年届いた国民健康保険料(国保料)の通知を見て驚く人もいます。
年金だけで暮らす世帯では、売った利益が保険料の割引の判定に数えられ、保険料が上がることがあるためです。
マンションを売って住み替える人に向けて、売った翌年の保険料を、年金で暮らす夫婦の例で計算しながら説明します。
売った翌年の国保料は3通り|ほぼ同じ人・数万円増える人・上限まで上がる人
マンションを売った翌年の国保料は、売った利益の大きさと、今受けている保険料の割引によって、3通りに分かれます。
例にする夫婦は、次のとおりです。金額はすべて説明のための仮の設定で、保険料は横浜市の2026年度(令和8年度)の料率で計算しました。
多くの人の保険料は売る前とほぼ同じ。上がるのは軽減を受けている世帯と、控除を使えない人
マンションを売っても、多くの人の国保料は、翌年度も売る前とほぼ同じです。
| タイプ | 当てはまる人 | 翌年度の保険料の変化 |
|---|---|---|
| ほぼ同じ | ・控除で利益がゼロになり、今は割引なしの保険料を払っている ・売って損が出た | 売る前とほぼ同じ |
| 数万円増える | 控除で利益がゼロになり、今は軽減(保険料の割引)を受けている | モデル世帯では年3.4万円→11.2万円 |
| 大きく上がる | ・控除を使えない ・利益が控除の枠を超えた | モデル世帯では年3.4万円→96万円(上限) |
※国保料の上限は、40〜64歳の人がいる世帯で年113万円です。65〜74歳だけの世帯は介護分がかからないため、上限は年96万円になります。
自宅を売った人は、「3,000万円特別控除」を使うと、売った利益から最大3,000万円を差し引けます。
この控除で利益がゼロになり、今は割引なしの保険料を払っている人は、翌年度の保険料も売る前とほぼ同じです。売って損が出た人も同じです。
保険料が数万円増えるのは、年金だけで暮らし、今、保険料の割引(軽減)を受けている世帯です。モデル世帯もこれに当たります。
保険料が大きく上がるのは、3,000万円控除を使えなかった人や、1人あたりの利益が3,000万円を超えた人です。利益が大きい人は、保険料が上限に届くこともあります。
出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
タイプを見分ける前に、売った利益・家の名義・今の軽減を確かめる
自分のタイプを見分けるには、売った利益、家の名義、今受けている軽減の3つを、手元の書類で確かめておきましょう。
| 確かめること | 確かめる書類 |
|---|---|
| 売った利益 | 買ったときと売るとき(予定)の売買契約書 |
| 家の名義 | 登記事項証明書(登記簿)や権利証 |
| 今受けている軽減 | 今年度の保険料の通知書 |
売った利益とは、売った値段から、買った値段と売るときの費用を引いた残りのことです。この利益を、税金の言葉では「譲渡所得」と呼びます。
買った値段のうち建物の分は、持っていた年数に応じて減らしてから引きます。税金のルールでは、建物は古くなるほど価値が下がると考えるためです。
減らす割合は、鉄筋コンクリートのマンションなら1年につき約1.35%です。
モデル世帯の場合、建物の2,000万円は30年で810万円減って、1,190万円になります。土地の1,000万円を足すと、買った値段は2,190万円です。
売った値段の4,000万円から、この2,190万円と売るときの費用150万円を引くと、利益は1,660万円になります。
買ったときの契約書をなくした人は、注意が必要です。契約書がないと、買った値段は「売った値段の5%」とみなされます。
モデル世帯の場合、買った値段が4,000万円の5%の200万円になり、利益は3,650万円までふくらみます。
3,000万円控除は名義人1人ごとに使えるので、家の名義も確かめておく必要があります。夫婦で半分ずつ持ち、2人とも住んでいたなら、控除は2人分使えます。
モデル世帯の場合、利益が3,650万円にふくらんでも、1人あたりは1,825万円なので、控除の範囲に収まります。もし夫1人の名義だったら、3,000万円を超えた650万円に税金と保険料がかかります。
今、保険料の軽減を受けている世帯の通知書には、「7割軽減」などと書かれています。毎年6月ごろに届く保険料の通知書で、この表示を探しておきましょう。
通知書をなくした人は、次の目安で見当をつけられます。
軽減の目安(65歳以上の夫婦2人、収入は年金だけ、妻の年金が年110万円以下の場合)
| 軽減の割合 | 夫の年金の年額 |
|---|---|
| 7割軽減 | 168万円以下 |
| 5割軽減 | 230万円以下 |
| 2割軽減 | 282万円以下 |
※2026年度の国の基準額をもとに、この記事で計算した目安です。基準額は毎年のように見直され、市区町村によって扱いが違う場合もあります。
モデル世帯は夫の年金が150万円なので、7割軽減に当たります。
出典: 国税庁「No.3308 共有のマイホームを売ったとき」
出典: 横浜市「保険料に関する用語説明」
3つの質問で自分のタイプが分かる
確かめた利益・名義・軽減をもとに次の3つの質問に答えると、自分のタイプが分かります。
- 質問1 3,000万円控除を使えるか
- 質問2 名義人1人あたりの利益は3,000万円以下か
- 質問3 今、保険料の軽減を受けているか
質問1は、次の4つがすべてそろえば「はい」です。
- 自分が住んでいた家である
- 引っ越してから3年後の年末までに売る
- 親子や夫婦など、特別な関係のある人以外に売る
- 新居では、住宅ローン控除より3,000万円控除を選ぶ
質問の答えごとのタイプは、次の表のとおりです。
| 質問1 | 質問2 | 質問3 | あなたのタイプ |
|---|---|---|---|
| はい | はい | いいえ | ほぼ同じ |
| はい | はい | はい | 数万円増える |
| はい | いいえ | どちらでも | 大きく上がる(はみ出した分に保険料がかかる) |
| いいえ | どちらでも | どちらでも | 大きく上がる |
売って損が出た人の保険料は、質問の答えにかかわらず、売る前とほぼ同じです。
モデル世帯の答えは、質問1が「はい」、質問2も「はい」(1人あたり830万円)、質問3も「はい」(7割軽減)です。そのためモデル世帯は「数万円増える」に当たり、税金はゼロのままでも保険料が上がります。
「大きく上がる」に当たった人は、控除を引いたあとに残った利益に、所得割(所得に応じてかかる保険料)がかかります。今、軽減を受けている人は、その軽減も外れます。
出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
出典: 国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
上がった保険料の通知が届くのは、売った翌年の6月
売った年の利益が反映された保険料の通知は、売った翌年の6月ごろに届きます。
国保料は、前の年の所得をもとに、4月から翌年3月までの1年分ごとに計算されます。この1年分を「年度」と呼びます。
売った年の利益は、翌年3月までの確定申告で金額が決まり、6月ごろに届く保険料の通知に反映されます。2026年に売った場合の流れは、次のとおりです。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2026年 | マンションを売る |
| 2027年2月〜3月 | 確定申告をする(期限は3月15日) |
| 2027年6月ごろ | 2027年度の保険料の通知が届き、売った年の利益が反映される |
| 2027年6月〜2028年3月 | 上がった保険料を払う |
| 2028年度 | 保険料が元の水準に戻る(2027年の所得は年金だけのため) |
売った年の保険料(2026年度分)は、売る前と同じ金額のままです。
なお、75歳以上の人が入る「後期高齢者医療制度」の保険料も、国保料と同じように前の年の所得をもとに決まります。
例えば2026年の1月に売った場合、通知が届くのは1年半近くあとです。そのころには、売ったお金を新居の購入や引っ越しで使っている人も多いでしょう。
まとまった請求が売ってから時間がたって届くことを、売る前から頭に入れておきましょう。
出典: 横浜市「保険料について」
税金はゼロなのに保険料は上がる|軽減を受けている年金世帯の落とし穴
軽減を受けている年金世帯は、3,000万円控除で税金がゼロになっても、売った翌年度の保険料が上がります。
モデル世帯の場合、保険料は年3.4万円から11.2万円に上がります。その理由を、保険料の仕組みから順に見ていきます。
3,000万円控除で利益がゼロになれば、所得割は売る前と同じ
3,000万円控除で利益がゼロになれば、保険料のうち所得に応じてかかる「所得割」は、売る前と同じ金額です。
国保料は、主に次の2つを足して決まります。
| 部分 | 決まり方 |
|---|---|
| 所得割 | 前の年の所得に、一定の割合をかけて決まる |
| 均等割 | 加入している人1人ごとに、決まった額がかかる |
市区町村によっては、1世帯ごとに決まった額がかかる「平等割」もあります。
売却益が関わるのは、このうち所得割の計算です。例えば横浜市では、所得割は3,000万円控除を引いたあとの利益で計算します。
モデル世帯の利益は1人あたり830万円なので、3,000万円の控除を引くとゼロになります。
そもそもモデル世帯は、売る前から所得割がゼロです。所得割は、1人ごとの所得から43万円を引いた残りにかかります。
夫の所得は年金150万円から年金の控除(公的年金等控除)110万円を引いた40万円、妻の所得は0円なので、2人とも43万円を下回ります。
ここで気をつけたいのは、税金がゼロになる場合も、3,000万円控除は確定申告をして初めて使えることです。申告の期限は、売った年の翌年の3月15日です。
出典: 横浜市「保険料に関する用語説明」
出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
それでも上がるのは、軽減の判定に控除前の利益が入るから
市区町村は、軽減を受けられる世帯を決めるとき、3,000万円控除を引く前の利益を所得に入れます。
軽減とは、所得が少ない世帯の均等割を、世帯の所得に応じて7割・5割・2割安くする割引のことです。所得の少ない世帯を助けるための割引なので、売却で一度に大きなお金が入った世帯は、翌年度の対象から外れます。
例えば北海道喜茂別町の案内には、軽減の判定について次のように書かれています。
土地、建物などの譲渡所得は特別控除前の額で計算されます
(喜茂別町「国民健康保険税の軽減・減免について」より)
つまりモデル世帯は、税金の計算では利益がゼロでも、軽減の判定では1,660万円の所得がある世帯として扱われます。その結果、売る前に受けていた7割軽減が外れます。
売った翌々年度(2028年度)は所得が年金だけに戻るので、モデル世帯はまた7割軽減を受けられます。
出典: 横浜市「保険料に関する用語説明」
モデル世帯の場合、控除で税金はゼロでも保険料は年7.8万円増える
モデル世帯の保険料は、控除で税金がゼロのままでも、売った翌年度に年7万8,428円増えます。
売る前と売った翌年度の保険料を比べると、次のようになります。
| 売る前(2026年度) | 売った翌年度(2027年度) | |
|---|---|---|
| 所得割 | 0円 | 0円 |
| 均等割(2人分) | 11万2,040円 | 11万2,040円 |
| 軽減 | 7割軽減(−7万8,428円) | なし |
| 1年間の保険料 | 3万3,612円 | 11万2,040円 |
※横浜市の2026年度の料率で計算しました。均等割は、医療分40,870円・支援金分13,380円・子ども分1,770円の合計で、1人あたり56,020円です。2027年度の料率は、2026年度と同じと仮定しました。
保険料の増えた7万8,428円は、売る前に受けていた7割軽減の額と同じです。所得割はゼロのままなので、軽減が外れた分だけ保険料が上がったことになります。
モデル世帯の計算に使った横浜市の国保料は、所得割と均等割の2つで決まります。平等割がある市区町村では平等割の軽減も外れるので、増える額はさらに大きくなります。
モデル世帯の年金は夫婦で年230万円なので、増えた7.8万円は、年金収入の3%を超える負担です。
自分の世帯で計算するときは、次の順に進めます。
年金や給与を一定額以上受け取る人が2人以上いる世帯は、基準額の43万円に「10万円×(その人数−1)」を足します。基準額は2026年度の国の値で、毎年のように見直されます。
出典: 横浜市「保険料について」
相談サイトで回答が割れるのは、物差しが2本あるから
国保料は、所得割の計算と軽減の判定とで、違う物差しを使って利益を測ります。
そのため相談サイトには、売却益が国保料に影響するかについて、正反対の回答が並んでいます。
例えば税理士ドットコムの相談には、「控除後の金額で計算するので影響はない」という回答があります(相談1)。一方で、「控除前の金額で計算されるので高くなる」という回答も見つかります(相談2)。
どちらかが間違っているように見えますが、実は両方とも、保険料の一部分については正しい説明です。2本の物差しの違いは、次のとおりです。
| 所得割の物差し | 軽減の物差し | |
|---|---|---|
| 使う利益 | 3,000万円控除を引いた後 | 3,000万円控除を引く前 |
| モデル世帯の場合 | 0円 | 1,660万円 |
「影響はない」と答えた人は所得割の物差しを、「高くなる」と答えた人は軽減の物差しを見て答えています。
今、割引なしの保険料を払っている世帯には、「影響はない」が当てはまります。この世帯の保険料は、所得割の物差しだけで決まるからです。
一方、軽減を受けている世帯には、「高くなる」が当てはまります。軽減の物差しで測った所得が増え、軽減が外れてしまうためです。
細かい扱いは、市区町村の条例で決まります。そこで国保の窓口では、所得割と軽減の判定で、控除の前と後のどちらの利益を使うのかを聞いておきましょう。自分の世帯の保険料が上がるかを、売る前に知ることができます。
出典: 横浜市「保険料に関する用語説明」
控除を使えないと上限113万円まで上がる|住み替えで陥りやすいケース
3,000万円控除を使えないと、売った利益にそのまま所得割がかかります。
モデル世帯なら、保険料は年3.4万円から96万円に上がります。住み替えでは、この控除を使えなくなる場面が意外と多くあります。
新居の住宅ローン控除と古い家の3,000万円控除は、どちらか1つを選ぶ
住み替える人は、新居の住宅ローン控除と古い家の3,000万円控除のうち、どちらか1つを選ぶことになります。
住宅ローン控除とは、ローンで家を買った人に、年末のローン残高に応じて所得税などを戻す制度のことです。
選ぶ必要があるのは、古い家を売った年が、新居に住み始めた年をはさむ6年の間に入る場合です。6年とは、住み始めた年と、その前の2年・後の3年を合わせた期間です。
この6年は、2020年4月1日以後に古い家を売った場合の期間です。2020年3月31日以前に売った場合は、住み始めた年とその前後2年の計5年でした。
ほとんどの住み替えは、この6年の間に収まると考えられます。
例えば2026年に古い家を売り、同じ年に新居に入ったとします。古い家で3,000万円控除を使えば、新居の住宅ローン控除はあきらめることになります。
反対に住宅ローン控除を選べば、古い家の利益に税金と保険料がそのままかかります。
10年を超えて持っていた家を売ったときに使える、税率の低い特例も、住宅ローン控除とはどちらか1つを選ぶことになります。選ぶ控除によって、翌年度の国保料も大きく変わります。
出典: 国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
期限を過ぎた・身内に売った・利益が3,000万円を超えたときも、控除の対象から外れる
売る時期や売る相手、利益の大きさによっても、3,000万円控除の対象から外れます。
- 引っ越してから3年後の年末を過ぎて売った
- 親子や夫婦、生計を一にする親族など、特別な関係のある人に売った
- 前の年か前々年に、この控除や買換え特例をすでに使った
- 名義人1人あたりの利益が3,000万円を超えた
例えば2023年10月に引っ越した家なら、売る期限は2026年12月31日です。
住み替えでは、先に新居に移ってから古い家を売ることもよくあります。古い家が売れるまでに時間がかかると、気づかないうちに期限を過ぎてしまうことがあります。
3,000万円控除の枠は名義人1人ごとなので、夫婦の共有なら枠は2人分あります。1人の名義なら、利益のうち3,000万円を超えた部分に、税金と保険料がかかります。
控除の対象から外れると、利益がそのまま所得に加わるので、所得割が上がります。今、軽減を受けている世帯は、その軽減も外れます。
出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
出典: 国税庁「No.3308 共有のマイホームを売ったとき」
控除なしで計算すると、モデル世帯の保険料は年96万円になる
モデル世帯が3,000万円控除を使えなかった場合、翌年度の保険料は上限の年96万円になります。
所得割は、次の式で1人ごとに計算します。
例えば、先に引っ越してから売るまでに期限を過ぎてしまい、控除を使えなかったとします。この場合、夫の所得は年金の40万円と利益の830万円を足して870万円、妻の所得は830万円です。
2人の所得からそれぞれ43万円を引いて足すと、1,614万円です。これに料率の11.29%をかけると、所得割は約182万円になります。
ただし保険料には区分ごとに上限があるので、実際の保険料は上限の合計96万円で止まります。96万円は、売る前の保険料(年3.4万円)の約29倍です。
利益の大きさごとに翌年度の保険料を計算すると、次のようになります。
| 利益(夫婦の合計・控除なし) | 翌年度の保険料(年) | 売る前との差 |
|---|---|---|
| 50万円 | 8万858円(5割軽減) | +4万7,246円 |
| 100万円 | 15万598円(2割軽減) | +11万6,986円 |
| 300万円 | 39万8,806円 | +36万5,194円 |
| 500万円 | 62万4,606円 | +59万994円 |
| 950万円以上 | 96万円(上限) | +92万6,388円 |
※モデル世帯(年金は夫150万円・妻80万円、利益は夫婦で半分ずつ)を、横浜市の2026年度の料率で計算しました。
利益が50万円と小さくても、7割軽減が5割軽減に下がるため、保険料は売る前の2倍以上になります。
上限は毎年のように上がり、2026年度は合計113万円
国保料の上限は毎年のように引き上げられていて、2026年度の国の上限は合計113万円です。
区分ごとの上限は、次のとおりです。
| 区分 | 上限 | かかる人 |
|---|---|---|
| 医療分 | 67万円 | 加入者全員 |
| 後期高齢者支援金分 | 26万円 | 加入者全員 |
| 介護分 | 17万円 | 40〜64歳の人 |
| 子ども・子育て支援金分 | 3万円 | 加入者全員(2026年度から) |
| 合計 | 113万円(65〜74歳だけの世帯は96万円) |
国の上限の合計は、2024年度が106万円、2025年度が109万円でした。2026年度は医療分が1万円上がり、子ども・子育て支援金分を除いた合計が110万円になりました。新しく加わった子ども・子育て支援金分の3万円を足すと、113万円です。
利益が大きく上限に届く世帯は、上限が上がった分だけ保険料も増えます。
市区町村によっては、国と違う上限を決めている場合もあります。住んでいる市区町村のホームページや保険料の案内で、正確な額を確かめておきましょう。
出典: 厚生労働省「国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について」
売る前なら打てる手|効果が大きい順に4つ
国保料を抑える手は、売ったあとより売る前のほうが多くあります。
ここでは、効果が大きいものと、期限があるものから順に紹介します。
3,000万円控除の期限(引っ越してから3年後の年末)までに売る
国保料をいちばん大きく抑えられる手は、3,000万円控除を期限内に使うことです。
モデル世帯の翌年度の保険料は、控除を使えれば11.2万円、使えなければ96万円です。控除を使えないと、売却益に約337万円の税金もかかります。
控除の期限は、引っ越した日のちょうど3年後が来る年の12月31日です。例えば2024年5月に新居に移ったなら、2027年12月31日が期限です。
先に引っ越す人は、期限から逆算して、売り出しを始める時期を決めておきましょう。売れ残ったときにいつ値下げするかも、前もって考えておくと安心です。
税金のルールでは、売った日は原則として、買主に家を引き渡した日で数えます。売買契約の効力が生じた日を、売った日として申告することもできます。
そのため年末に契約しても、引き渡しの日で数えると年明けになり、期限を過ぎてしまうことがあります。
期限ぎりぎりの取引になりそうなときは、売った日の数え方を、税務署か税理士に確かめるとよいでしょう。
出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
住宅ローン控除と3,000万円控除は、国保料まで含めて損得を比べる
新居でローンを組む人は、住宅ローン控除と3,000万円控除のどちらが得かを、国保料まで含めて比べましょう。
モデル世帯が新居でローンを組んだとすると、次のようになります。
| 3,000万円控除を使う | 住宅ローン控除を選ぶ | |
|---|---|---|
| 売却益にかかる税金 | 0円 | 約337万円 |
| 翌年度の国保料 | 11万2,040円 | 96万円 |
| 住宅ローン控除で戻る税金 | なし | 払っている税金の範囲内 |
※住宅ローン控除を選んだ場合の税金は、利益1,660万円に20.315%(所得税15%・復興特別所得税・住民税5%)をかけて計算しました。この場合、10年を超えて持っていた家を売ったときの、税率の低い特例も使えなくなります。
住宅ローン控除で戻るのは、自分が払っている所得税と住民税です。年金だけで暮らすモデル世帯は、ふだん払っている税金が少ないので、戻るお金もわずかです。
そのため年金世帯なら、3,000万円控除を選ぶほうが得になる場合がほとんどと考えられます。
働いていて税金を多く払っている人は、住宅ローン控除で戻る税金が多くなる場合があります。そこで、住宅ローン控除で戻る税金の合計と、3,000万円控除を手放したときに増える税金・国保料を比べるとよいでしょう。
利益が3,000万円を超える人には、「買換え特例」という方法もあります。買換え特例を使えるのは、10年以上住んだ家を1億円以下で売り、新しい家を買う人です。
この特例を使うと、売却益にかかる税金を、新しい家を売るときまで先送りできます。
買換え特例は、2026年度の税制改正で期限が2年延び、2027年12月31日までの売却が対象になりました。ただし、この特例を使う場合も、住宅ローン控除とはどちらか1つを選ぶことになります。
この特例には細かい要件があるので、自分の家が当てはまるかを、使う前に税務署か税理士に確かめておきたいところです。
出典: 国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
出典: 国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」
退職直後なら、任意継続を選ぶと売却益は保険料の計算から外れる
会社を辞めたばかりの人は、任意継続を選ぶと、家の売却益を保険料の計算から外せます。
会社を辞めた人は、国保に入るか、会社の健康保険を最長2年続ける「任意継続」を選べます。任意継続の保険料は、所得ではなく、辞めたときの給料をもとにした額(標準報酬月額)で決まります。
ただし任意継続では、会社が払っていた分も自分で払うので、保険料は働いていたころのおよそ2倍になります。任意継続の保険料と、売却益を入れた国保の保険料を見積もり、安いほうを選ぶとよいでしょう。
保険料の見積もりは、任意継続なら加入している健康保険組合や協会けんぽで、国保なら市区町村の窓口で教えてもらえます。
任意継続の申し込みの期限は、退職日の翌日から20日以内です。見積もりは、会社を辞める前に済ませておくと安心です。
出典: 全国健康保険協会「任意継続」
売る前に、窓口で翌年度の保険料を試算してもらう
住んでいる市区町村の国保の窓口に頼めば、売る前に翌年度の保険料を試算してもらえます。
保険料の細かい扱いは市区町村ごとに違いますが、窓口の試算なら、その扱いどおりの金額が分かります。電話で相談できるところも多くあります。
試算を頼むときは、次のものを用意しておくと、話が早く進みます。
- 売る予定の金額が分かるもの(査定書や売買契約書)
- 買ったときの売買契約書
- 年金の額が分かるもの(年金振込通知書など)
- 今年度の保険料の通知書
窓口では、次の5つを聞いておくと、自分の市区町村での扱いが分かります。
試算の金額が分かれば、売る時期や使う控除を決められます。
もう売った人が今からできること
すでに売った人にも、まだ間に合う手があります。
ここでは、期限が早いものから順に紹介します。
税金がゼロでも、3,000万円控除は確定申告で申し込む
3,000万円控除を使うには、売った年の翌年の2月16日から3月15日までに、確定申告をする必要があります。
2026年に売った人なら、期限は2027年3月15日(月)です。
夫婦の共有名義なら、夫と妻のそれぞれが、自分の持ち分について申告する必要があります。2人とも申告すれば、2人分の控除を使えます。
申告には、次のものが必要です。
- 売ったときと買ったときの売買契約書の写し
- 売るときにかかった費用の領収書(仲介手数料など)
- 「譲渡所得の内訳書」(国税庁のホームページで手に入る)
申告をしないままでいると、税務署から申告を求められ、保険料もさかのぼって計算し直されることがあります。
買ったときの契約書がないと、買った値段は売った値段の5%とみなされ、利益が大きく計算されます。申告の前に、買ったときの契約書をしっかり探しておきましょう。
出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
出典: 国税庁「No.3308 共有のマイホームを売ったとき」
6月の通知が届いたら、所得割と軽減の有無を確かめる
6月ごろに保険料の通知書が届いたら、所得割の額と軽減の欄の2か所を見ておきましょう。
3,000万円控除を申告したのに所得割が大きく増えていたら、控除が保険料の計算から漏れている可能性があります。
去年まで書かれていた「7割軽減」などの表示が消えていたら、控除前の利益で判定されて、軽減が外れています。
通知書の様子ごとに考えられる理由と、することは次のとおりです。
| 通知書の様子 | 考えられる理由 | すること |
|---|---|---|
| 所得割は同じで、軽減の表示が消えた | 控除前の利益で軽減が外れた(正しい計算) | 1年分を払う。翌年度には元に戻る |
| 控除を申告したのに、所得割が大きく増えた | 控除が計算から漏れている可能性 | 申告書の控えを持って窓口に相談する |
| 控除を使わず、所得割が大きく増えた | 利益にそのまま所得割がかかった | 必要なら分割払いを相談する |
金額に疑問があるときは、申告書の控えを持って窓口へ行き、計算の内訳を説明してもらうと安心です。
一度に払うのが難しいときは、分割納付を相談する(減免は認められにくい)
保険料を決められた回数で払いきるのが難しいときは、まず窓口で分割払いを相談しましょう。
保険料を払わずに放っておくと、延滞金がかかります。滞納が長く続くと、病院でいったん医療費を全額払う必要が出ることもあります。
減免という、保険料そのものを安くしてもらう制度もあります。ただし減免の対象は、災害や失業、事業の不振などで、収入が大きく減った人が中心です。
家を売って所得が増えたことを理由にした減免は、多くの市区町村で認められにくいと考えられます。
それでも減免の条件は、市区町村ごとに違います。今年になって収入が大きく減ったなどの事情がある人は、減免の対象になるかを窓口で聞いておくとよいでしょう。
翌年度の1年分を、売却代金から先に取り分けておく
売ったお金が入ったら、新居の資金とは別に、翌年度の保険料1年分を取り分けておきましょう。
保険料の通知は売った翌年の6月ごろに届くので、それまでに、お金を新居の家具や引っ越しに使ってしまうおそれがあります。
モデル世帯なら、取り分ける額は、控除を使えた場合は11.2万円、使えなかった場合は96万円です。
例えば横浜市では、保険料を6月から翌年3月までの10回に分けて払います。96万円なら、1回あたり約9.6万円です。
65歳以上で条件を満たす人は、保険料が年金から天引きされることもあります。
保険料が上がるのは1年だけです。金額の見当をつけて前もって用意しておけば、通知が届いても落ち着いて払えます。
出典: 横浜市「保険料について」
まとめ:税金がゼロでも、軽減を受けている世帯は売った翌年の国保料が上がる
マンションを売った翌年の国保料は、3,000万円控除で税金がゼロになっても、軽減を受けている世帯では上がります。軽減の判定には、控除を引く前の利益が数えられるためです。
売る前に、住んでいる市区町村の国保の窓口で、翌年度の保険料を試算してもらいましょう。試算をしないまま売ると、売ったお金を新居や引っ越しに使ったあとで、翌年6月にまとまった請求が届いて困ることがあります。
試算の金額が分かったら、3,000万円控除の期限と、住宅ローン控除とのどちらを使うかも確かめておきましょう。住み替えのトビラでは、マンションを売った翌年の国民健康保険料の変わり方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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