住宅ローン控除が終わる年が近づくと、マンションを売って住み替え(買い替え)をするか、このまま住み続けるかで迷う人もいるでしょう。
控除が終わったあとは、修繕の予定や家族の暮らしに合わせて、売る時期を選べます。
売るか住み続けるかの判断基準から、控除の途中で売ったときの影響、売却で使える税金の特例と新居の控除の選び方まで紹介します。
住宅ローン控除の終了後にマンションを売るか住み続けるかの判断基準
住宅ローン控除が終われば、控除のために売却を待つ理由も終わります。
住み替えるかは、待って受けられる控除の額、住み替え先で受け直せる控除、マンションの修繕の予定、暮らしの変化の4つを並べて考えましょう。
残り期間に受けられる住宅ローン控除の総額
残りの控除の総額は、「年末のローン残高×控除率」を、残りの年数分だけ足した額です。
令和3年までに新築マンションに住み始めた人なら、控除額は年末残高の1%で、上限は年40万円です(消費税8%または10%で買った場合)。
たとえば、年末残高が2,000万円で控除が残り2年、元金が毎年80万円ずつ減る仮の例で計算します。
| 年 | 計算 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1年目 | 2,000万円×1% | 20万円 |
| 2年目 | 1,920万円×1% | 19.2万円 |
| 合計 | 39.2万円 |
控除は、その年の所得税から引かれます。所得税から引いて余った分は翌年度の住民税から引けますが、平成26年4月から令和3年末に住み始めた人の上限は13万6,500円です。
そのため、納めている税金が少ない人は、計算した額より戻ってくる額が小さくなります。
自分の数字は、年末残高証明書と、源泉徴収票の「住宅借入金等特別控除の額」の欄で確かめられます。
出典: 国税庁 No.1212 住宅の新築等をし、令和3年までに居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除) 出典: 長野市 個人市民税・県民税(住民税)の住宅借入金等特別税額控除(住宅ローン控除)
住み替え先で住宅ローン控除を受け直す要件
住み替え先でローンを組めば、新しく住宅ローン控除を受けられます。
控除の額と期間は、住み始める年と、住宅の省エネ性能で決まります。令和8年から令和12年に住み始めるなら、控除率は0.7%です。
| 住宅の省エネ性能 | 新築 | 中古 |
|---|---|---|
| 認定長期優良住宅・認定低炭素住宅 | 4,500万円・13年 | 3,500万円・13年 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円・13年 | 3,500万円・13年 |
| 省エネ基準適合住宅 | 2,000万円・13年 (令和10年以降の入居は、条件つきで2,000万円・10年) | 2,000万円・13年 |
| 省エネ基準より性能が低い住宅 | 対象外 | 2,000万円・10年 |
表の金額は、借入の限度額です。この額までの年末残高に0.7%を掛けた額が控除されます。子育て世帯などは、限度額が上乗せされます。
令和7年までに住み始めた中古住宅は、どの区分も控除期間が10年でした。中古の13年は、令和8年の入居からです。
ほかの主な条件は、次の3つです。
- 床面積50㎡以上(合計所得1,000万円以下なら40㎡以上)
- 合計所得2,000万円以下
- 中古マンションは、昭和57年以後に建てられたもの
新築マンションで控除を受けるには、省エネ性能の証明書があることが条件です。購入前に、証明書があるかを売主へ確かめておきましょう。
旧居の売却で3,000万円特別控除などを使うと、この控除が対象外になることもあります。
出典: 財務省 令和8年度 税制改正の解説(租税特別措置法等〈所得税関係〉の改正) 出典: 国土交通省 令和8年度税制改正概要 出典: 国税庁 No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除) 出典: 国税庁 No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
大規模修繕の周期と修繕積立金の値上げ
住宅ローン控除が終わる築10〜13年は、1回目の大規模修繕の時期に近づきます。
国土交通省のガイドラインは、外壁の塗装や屋上の防水などを行う大規模修繕の周期を、一般的に12〜15年程度としています(部材や工事の内容で変わります)。
修繕積立金を年数とともに上げていく計画のマンションでは、この頃に値上げや一時金の集金が予定されていることがあります。
予定は、管理組合の長期修繕計画と、総会の議事録で確かめられます。住み続けるなら、値上げした後の金額を、家計に当てはめてみましょう。
売る場合は、修繕の前と後で、買い手の見方が変わります。
| 売る時期 | 買い手の見方 |
|---|---|
| 修繕の前 | 修繕積立金の値上げや一時金の予定を見て、買うかを決める |
| 修繕の後 | 外壁や共用部分が新しくなり、印象がよくなる |
修繕の前と後のどちらで売るかは、値上げの額と、売りたい時期を並べると決めやすくなります。
出典: 国土交通省 長期修繕計画作成ガイドライン(令和6年6月改定)
家族構成や働き方の変化
売るか住み続けるかは、最後は控除よりも、暮らしの都合で決まります。
住み替えを考えるきっかけには、次のような変化があります。
- 子どもが大きくなり、部屋が手狭になった
- 子どもの進学に合わせて、学区を変えたい
- 在宅勤務が増えて、仕事部屋がほしい
- 親の介護のために、実家の近くに住みたい
- 子どもが独立して、部屋が余るようになった
こうした変化があるなら、控除が残っていても、住み替えの時期を考え始めてよいでしょう。旧居の控除が止まっても、住み替え先で控除を受け直せるからです。
たとえば部屋が手狭なまま2年待つと、39.2万円の控除と引き換えに、狭い家での暮らしがあと2年続きます。
子どもの入学など期限が決まっているなら、その時期から逆算して売却を始めましょう。売却と購入の時期を合わせるには、数か月単位の準備がかかります。
反対に、今の住まいに満足していて、ローンの返済も順調なら、控除が終わっても住み続けるのは筋の通った選択です。
住宅ローン控除の期間中にマンションを売ったときの影響
控除の期間中に売ると、控除は引っ越した年の分から止まります。
すでに受けた控除はそのまま残り、引っ越す時期によって、最後の1年分の控除が変わります。
12月31日の居住で決まる控除の打ち切り年
住宅ローン控除は、その年の12月31日まで住んでいた年の分が対象です。年内に引っ越すと、その年の分から控除が止まります。
| 引っ越した時期 | 控除を受けられる最後の年 |
|---|---|
| 2026年11月 | 2025年分 |
| 2027年1月 | 2026年分 |
翌年1月に引っ越せば、前の年の12月31日にはまだ住んでいたので、前の年の分まで受けられます。
つまり、12月の引き渡しを年明けにずらせば、1年分の控除が残ります。残高2,000万円なら、1%の20万円の差です。
ただ、引き渡し日は買い手との話し合いで決まり、住み替え先に住み始める日とも関わります。日程を動かす手間と1年分の控除額を比べて、ずらすかを決めましょう。
住民税から引く分の控除も、所得税の控除を受けていることが前提なので、同じ年から対象外になります。
会社員なら、年末調整で毎年出していた住宅ローン控除の申告書も、引っ越した年の分から提出が終わります。
出典: 国税庁 No.1212 住宅の新築等をし、令和3年までに居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除) 出典: 横浜市 税額控除(個人市民税・県民税)
すでに受けた住宅ローン控除は売った後も手元に残る
売る前の年までに受けた住宅ローン控除は、売った後もそのまま手元に残ります。
「売ったら、これまでの控除を返すことになるのでは」と心配する人もいるでしょう。
控除は、1年ごとに「その年の12月31日まで住んでいたか」で判定されます。過去の年は条件を満たしていたので、その年の控除は売った後も有効です。
返すことになる場面は、1つあります。新居に住み始めて控除を受けた後に、旧居を売って3,000万円特別控除(売却益から最大3,000万円を差し引ける特例)などを使った場合です。
このときに返す控除は、旧居の分ではなく新居の分です。手続きは、買い先行で3,000万円特別控除を使うときの修正申告で紹介します。
出典: 国税庁 No.1212 住宅の新築等をし、令和3年までに居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除) 出典: e-Gov法令検索 租税特別措置法 第41条の3
売却代金で住宅ローンを完済できるか確かめる手順
売却代金でローンを返しきれるかは、ローン残高、売却価格の見込み、費用を引いた手取り額の順に確かめると分かります。
手取り額が残高を下回ったときの対処法まで知っておけば、売り出す前に資金の計画を立てられます。
住宅ローン残高の調べ方
今のローン残高は、毎年金融機関から届く「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」で分かります。
住宅ローン控除を受けている人は、年末調整や確定申告でこの証明書を使っているので、手元にあるはずです。返済予定表や、金融機関のネットサービスでも確かめられます。
ただし、売るときに返す額は、引き渡し日に一括で返す時点の残高です。年末の残高から、その後に返した分が減り、日割りの利息と一括返済の手数料が加わります。
正確な額は、一括返済の予定日を金融機関に伝えて確かめましょう。手数料は金融機関や手続きの方法で変わるので、合わせて聞いておくと、手取り額の計算に使えます。
出典: 国税庁 No.1212 住宅の新築等をし、令和3年までに居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
成約事例から売却価格を見積もる方法
売却価格は、査定額より、実際に売れた価格(成約価格)をもとに見積もると、現実に近い額が分かります。
成約価格は、次の2つのサイトで調べられます。
- 指定流通機構の不動産取引情報提供サイト(通称レインズ・マーケット・インフォメーション)
- 国土交通省の不動産情報ライブラリ
同じマンションや近くのマンションから、築年数・広さ・駅からの距離が近い事例を選びましょう。1㎡あたりの価格を出して、自分の部屋の面積を掛ければ目安になります。
たとえば70㎡の部屋で、近い事例が1㎡あたり60万円なら、4,200万円が目安です。
査定額は、不動産会社が「この値段なら売れそう」と考える価格です。仲介の契約を取るために、高めに出す会社もあります。成約価格を基準にし、値下げする分も見込んでおくと安心です。
出典: 指定流通機構 不動産取引情報提供サイト 出典: 国土交通省 不動産情報ライブラリ
売却費用を差し引いた手取り額の出し方
手取り額は、成約価格から、売却にかかる費用と税金を引いて出します。
| 費用 | 金額 |
|---|---|
| 仲介手数料 | 上限は(売却価格×3%+6万円)+消費税 (売却価格が400万円を超える場合) |
| 印紙税(売買契約書) | 売却価格1,000万円超5,000万円以下なら1万円 (軽減措置。令和9年3月31日まで) |
| 抵当権抹消の登録免許税 | 不動産1個につき1,000円 |
| 抵当権抹消の司法書士報酬 | 全国平均17,470円 |
| 一括返済の手数料 | 金融機関や手続きの方法で変わる |
| 譲渡所得税 | 売却益が出たときにかかる |
4,000万円で売り、抵当権を消す不動産が2個と仮定すると、費用は次のとおりです。
| 費用 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 4,000万円×3.3%+6.6万円 | 138.6万円 |
| 印紙税 | 1万円 | |
| 登録免許税 | 2個×1,000円 | 2,000円 |
| 司法書士報酬 | 全国平均 | 17,470円 |
| 合計 | 約141.5万円 |
手取りは約3,858万円です。一括返済の手数料と税金は、この額からさらに引くことになります。
仲介手数料は、法令で決まった上限の額で計算しています。資金の計画も、上限の額で立てておくと安心です。
登録免許税は、登記事項証明書に載っている不動産の個数に1,000円を掛けて出します。譲渡所得税は、使う特例によって0円になることもあるので、売却益の計算と特例の選び方で確かめましょう。
出典: 国土交通省 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(告示) 出典: 国税庁 No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置 出典: e-Gov法令検索 登録免許税法 別表第一 出典: 日本司法書士会連合会 報酬に関するアンケート結果
手取り額がローン残高を下回るときの対処法
手取り額がローン残高を下回るときは、次の3つの方法から選べます。
| 方法 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自己資金で足す | 預貯金で不足分を払い、ローンを完済する | 住み替え先の頭金が減る |
| 住み替えローンを使う | 不足分を住み替え先のローンに上乗せして借りる | ・借入額が住み替え先の価格を超えるので、審査が厳しくなりやすい ・売却と購入の決済を同じ日にそろえる |
| 残高が減るまで待つ | 返済を続け、残高が手取り額を下回ってから売る | ・その間に相場が下がることもある ・住み替えの時期が遅れる |
不足額が小さければ、自己資金で足すのが手軽で、借入額も今のままで済みます。
住み替えローンは、売却と購入の決済を同じ日に合わせることが前提です。売れる時期が決まる前に購入を決めると、日程がずれるおそれがあるので、早めに金融機関と不動産会社へ相談しておきましょう。
どの方法を選ぶかは、不足額の大きさと、住み替えを急ぐ事情で決まります。
売却益が出たときに3,000万円特別控除と新居の住宅ローン控除を選ぶ基準
旧居の売却益に3,000万円特別控除を使うと、新居の住宅ローン控除は原則として対象外になります。
どちらが得かは、売却益と新居の控除額を試算して比べると分かります。不動産会社の案内どおりに3,000万円特別控除を選ぶ前に、両方の金額を出してみましょう。
取得費と減価償却費から求める売却益
売却益は、「売却価格−取得費−譲渡費用」で出します。
| 項目 | 求め方 |
|---|---|
| 取得費 | 購入価格−建物の減価償却費 (購入時の仲介手数料なども入れられる) |
| 譲渡費用 | 売るときにかかった仲介手数料などの費用 |
| 減価償却費 | 建物の購入価格×0.9×0.015×持っていた年数 (鉄筋コンクリート造の住まいの場合。6か月以上の端数は1年) |
減価償却費は、年数とともに減った建物の価値を、決まった式で計算した額です。
購入価格4,000万円(うち建物2,000万円)、12年所有、売却価格5,000万円、譲渡費用175万円と仮定します。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 減価償却費 | 2,000万円×0.9×0.015×12年 | 324万円 |
| 取得費 | 4,000万円−324万円 | 3,676万円 |
| 売却益 | 5,000万円−3,676万円−175万円 | 1,149万円 |
買値より1,000万円高く売ると、売却益は1,000万円より大きい1,149万円になります。建物の価値が減った分、取得費が小さくなるからです。
建物と土地の内訳は、購入時の売買契約書で確かめましょう。契約書を失くして買った値段が不明なときは、売却価格の5%(この例では250万円)で計算することになり、売却益が大きく膨らみます。
この計算は、売却損が出たかを判定するときにも使います。
出典: e-Gov法令検索 減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第七 出典: 国税庁 No.3261 建物の取得費の計算 出典: 国税庁 No.3258 取得費が分からないとき
3,000万円特別控除と住宅ローン控除の減税額の比べ方
3,000万円特別控除で減る税金と、新居の住宅ローン控除の総額を比べ、大きい方を選ぶと得になります。
住宅ローン控除を選んだ場合は、10年超所有の軽減税率の特例(10年を超えて持った住まいの税率を下げる特例)も対象外になり、売却益に20.315%の税金がかかります。内訳は次の3つです。
- 所得税15%
- 復興特別所得税0.315%(所得税額の2.1%)
- 住民税5%
次の条件で、2つを比べてみます。
- 新居は中古のZEH水準省エネ住宅(令和8年入居・借入3,500万円以上)
- 旧居の売却益は1,149万円
| 3,000万円特別控除を使う | 住宅ローン控除を使う | |
|---|---|---|
| 旧居の売却益にかかる税金 | 0円 | 約233.4万円 (1,149万円×20.315%) |
| 新居の住宅ローン控除 | 対象外 | 最大318.5万円 (3,500万円×0.7%×13年) |
実際の控除の総額は、残高の減り方と納めた税金の額によって、これより小さくなります。
分かれ目の目安は「控除の見込み総額÷20.315%」で、見込み総額が250万円なら約1,231万円です。売却益がこれより小さければ、住宅ローン控除が得になりやすくなります。
見込み総額は、返済予定表の各年末の残高に0.7%を掛けて足すと出せます。
出典: 国税庁 No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除) 出典: 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算 出典: 財務省 令和8年度 税制改正の解説(租税特別措置法等〈所得税関係〉の改正)
3,000万円特別控除で新居の住宅ローン控除が対象外になる期間
新居に住み始めた年と、その前2年・後3年の計6年間に、旧居の売却で3,000万円特別控除を使うと、新居の住宅ローン控除は13年分すべてが対象外になります。
10年超所有の軽減税率の特例や、買換え特例(売却益への課税を、次に売るときまで先に延ばす特例)を使った場合も同じです。
以前の決まりと並べると、次のとおりです。
| 旧居を売った日 | 制限の期間 |
|---|---|
| 2020年(令和2年)4月1日以後 | 住み始めた年と、その前2年・後3年の計6年間 |
| 2020年(令和2年)3月31日以前 | 住み始めた年と、その前後2年の計5年間 |
旧居を売った年の3年後以降に新居へ住み始めれば、両方を使えます。その分、仮住まいの期間が長くなります。
新居に住み始めてから旧居を売る場合は、制限の期間が終わるまで待つと、3,000万円特別控除の期限が過ぎます。
この特例は、旧居を出た日から3年たつ日のある年の年末までに売ることが条件だからです。つまり、新居に先に住み始めた人は、両方を使うのが難しくなります。
出典: 国税庁 No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除) 出典: 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例
買い先行で3,000万円特別控除を使うときの修正申告
買い先行(新居を先に買って住み始める進め方)で新居の控除を受けた後に、旧居を売って3,000万円特別控除を使うと、受けた新居の控除を返すことになります。
手続きは、租税特別措置法第41条の3で決まっています。
旧居を売った年分の確定申告の期限までに、控除を受けた年分の修正申告書を出して、差額を納めます。年末調整だけで控除を受けた年分は、期限後申告書を出します。
旧居を売り出す前に、3,000万円特別控除で減る税金と、新居の控除の総額を比べておきましょう。売却益が小さければ、新居の控除を残したほうが得になることもあります。
迷うときは、税理士に試算を頼むと安心です。
売却損が出たときに損益通算と新居の住宅ローン控除を併用する条件
売却損が出たときは、「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と、新居の住宅ローン控除を併用できます。
この特例では、売却損を給与などの所得から差し引き(損益通算)、それでも残った損失を翌年以後3年間に繰り越せます(繰越控除)。対象は令和9年12月31日までの売却で、旧居と新居の両方に条件があります。
売却の期限は、以前は令和7年12月31日まででした。令和8年度の税制改正で、2年延びています。
買値より安く売っても税金の計算では売却益になる理由
税金の計算では取得費から減価償却費を引くので、買値より安く売っても、売却益が出ることがあります。
取得費の計算で使った例(購入価格4,000万円、うち建物2,000万円、12年所有)では、取得費は3,676万円です。
| 売却価格 | 譲渡費用(仮定) | 税金の計算での損益 |
|---|---|---|
| 3,850万円 | 約137万円 | 37万円の売却益 |
| 3,800万円 | 約135万円 | 11万円の売却損 |
買値より150万円安い3,850万円で売っても、税金の計算では37万円の売却益になります。
この場合は損益通算の特例の対象外になり、3,000万円特別控除と住宅ローン控除のどちらを使うかを考えることになります。
価格が高い時期に買った場合や、周りの相場が下がった場合は、売却損が出やすくなります。
自分の損益は、取得費と減価償却費から求める売却益の式で確かめましょう。
出典: 国税庁 No.3261 建物の取得費の計算 出典: 国税庁 No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき
新居の取得・入居の期限と住宅ローンの返済期間
新居は、旧居を売った年の前年1月1日から翌年12月31日までに取得し、取得した年の翌年12月31日までに住み始めることが条件です。
ほかの条件は、次のとおりです。
- 旧居を売った年の1月1日に、旧居の所有期間が5年を超えている
- 新居の床面積が50㎡以上
- 新居を取得した年の12月31日に、新居について返済期間10年以上の住宅ローンがある
- 繰越控除を使う年の合計所得金額が3,000万円以下
所有期間の条件は、控除が終わる時期まで住んだ人なら満たしています。
繰越控除を使う各年の12月31日にも、返済期間10年以上の住宅ローンが残っていることが条件です。繰上返済で新居のローンを完済すると、その年から繰越控除が止まります。
2026年に旧居を売ったなら、新居の取得の期限は2027年12月31日です。売り先行(旧居を先に売る進め方)で仮住まいをする人は、新居を買う時期に気をつけましょう。
出典: 国税庁 No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき 出典: 財務省 令和8年度 税制改正の解説(租税特別措置法等〈所得税関係〉の改正)
損益通算をした年に減る住宅ローン控除の戻り
損益通算で所得税が小さくなると、新居の住宅ローン控除を引ききる前に所得税が0円になり、控除の一部が消えることがあります。
住宅ローン控除は、まず所得税から引かれます。
所得税から引いて余った分は翌年度の住民税から引けますが、令和4年から令和12年末に住み始めた人の上限は、所得税の課税総所得金額等の5%(最高9万7,500円)です。
売却損で課税総所得金額等が小さくなると、この上限も下がります。たとえば控除額が24.5万円あっても、売却損で所得税が0円になった年は、使える額が0円に近づきます。
この年は損益通算で税金そのものが大きく減るので、家計全体の負担は軽くなります。
ただ、損益通算と繰越控除を使う最長4年間は、控除の戻りが少ない前提で資金の計画を立てておくと安心です。
出典: 長野市 個人市民税・県民税(住民税)の住宅借入金等特別税額控除(住宅ローン控除)
売却の翌年から毎年必要な確定申告
特例を使うには、売った年の分から、繰越控除を使い終える年まで、毎年続けて確定申告をすることが条件です。
会社員も、年末調整とは別に確定申告が必要です。1年目の確定申告には、主に次の書類を付けます。
- 居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)
- 居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書
- 旧居の所有期間や床面積が分かる書類(登記事項証明書、売買契約書の写しなど)
- 新居の取得日や床面積が分かる書類と、年末の住宅ローン残高の証明書
1年目は期限内に出すことが条件で、2年目以降は確定申告書(損失申告用)を出します。1年でも出し忘れると、その年から後の繰越控除が止まります。
売った年と新居に住み始めた年が同じなら、新居の住宅ローン控除の1年目の申告も、同じ確定申告で行えます。
出典: 国税庁 No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき
まとめ:控除が終わったら、修繕の予定と暮らしの変化で売る時期を決める
住宅ローン控除が終われば、控除のために売却を待つ理由も終わります。旧居の控除が止まっても住み替え先で控除を受け直せるので、売る時期は修繕の予定と暮らしの変化で決められます。
売り出す前に旧居の売却益を計算し、3,000万円特別控除で減る税金と新居の控除の見込み総額を比べておきましょう。比べる前に3,000万円特別控除を使うと、新居の控除は13年分すべてが対象外になります。
まずは、年末残高証明書と購入時の売買契約書をそろえ、残りの控除額と売却益を確かめましょう。住み替えのトビラでは、住宅ローン控除が終わる前後のマンションの売り方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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