査定額の目安は見て、ローンの残りも分かっている。それでも「結局、手元にいくら残るのか」は、どのサイトを見てもすっきりしません。
マンション売却の手取りは、売却価格から費用とローンの完済額を引き、契約に応じた精算金・返戻金と税金を反映して求めます。最終的に残る額と、決済日に使える額を分けて確認することが大切です。
この記事では、手取りの計算式と受け取りの時系列、売却価格から引かれる費用の内訳、決済で売主が受け取る精算金と返戻金、手取りのモデルケース、手取りを減らさないコツを順に説明します。
マンション売却の手取りは「最終額」と「入る時期」を分ける
手取りの基本は、次の式です。ここでは引っ越しなど売却に伴う支出まで含め、次の生活に使えるお金を考えます。
手取り=売却価格−ローンの完済額−売却に伴う費用+精算金の受取額−精算金の支払額+返戻金−売却にかかる税金
精算金や返戻金は、契約によって有無も金額も違います。確認できていない入金を、確実に戻るお金として足さないことが大切です。
契約・決済・後日の3つに分けて書き出す
| 時点 | 入るお金 | 出るお金・残しておくお金 |
|---|---|---|
| 売買契約時 | 契約で決めた手付金 | 仲介手数料の一部、紙の契約書の印紙税など |
| 決済・引き渡し時 | 手付金を除いた残代金、契約上の精算金 | ローン完済、仲介手数料の残額、登記費用など |
| 引き渡し前後 | 保険・保証料の返戻金がある場合、その入金 | 引っ越し・片付けなど。日程によって決済前に必要 |
| 売却後の申告・納税時期 | ― | 譲渡所得に対する税金が生じる場合、その納税資金 |
最終的に残る額が足りても、支払日に間に合わなければ別の現金が必要です。 後日入る保証料の返戻金を、決済当日の完済資金へ先に充てることはできません。
手付金は売却価格の一部。もう一度足さない
4,500万円の売買で手付金を200万円受け取ったなら、決済時の残代金は4,300万円です。4,500万円に手付金200万円を足して、入金を4,700万円と数えないようにします。
手付金を費用の支払いに使った場合は、その支払いも記録します。売却全体の計算で既に引いた費用を、決済時にもう一度引かないことも大切です。
解除時の手付金の扱いは、解除の理由や契約条件によって異なります。受け取った直後に自由に使える余剰金と考えず、不動産会社と必要な保管額を確認しましょう。
引かれる費用は、見積額と支払日をそろえる
手取りを出すために必要なのは、一律の「売却価格の何%」ではなく、自分にかかる費用です。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 仲介手数料 | 税込の契約額、契約時と決済時の支払額 |
| 印紙税 | 紙の契約書を作成するか、契約金額に応じた税額 |
| 登記関連費用 | 抵当権抹消、住所・氏名変更など必要な登記と司法書士の見積もり |
| ローン返済関連 | 決済日の元本・利息・全額返済手数料。完済額に含めた費用は別に引かない |
| 引っ越し・片付け | 引っ越し、残置物処分、仮住まいの有無と支払日 |
| 修繕・クリーニング | 売買で約束する範囲、売却前に実施する必要があるか |
仲介手数料は「上限」と実際の契約額を分ける
一般の個人が自宅を4,500万円で売る例では、通常の仲介手数料の上限は税込155万1,000円です。計算は「(4,500万円×3%+6万円)×1.1」。上限額が、そのまま必ず払う額になるわけではありません。
この速算式は400万円を超える売買の通常の計算です。800万円以下の物件には別の特例もあるため、価格帯を問わず同じ式を使わないようにします。費用ごとの計算方法や価格別の表は、マンション売却の費用で確認できます。
完済額は「予定している決済日」で銀行へ確認する
返済予定表の残高に加え、返済日までの利息や手数料が必要になる場合があります。ペアローンなら各契約の金額を合算します。
銀行には「売却代金で○月○日に完済する場合、いくら必要ですか」と聞きます。返済の申込期限と、当日に抵当権抹消の書類を受け取る手順も確認してください。詳しい手続きは残債があるマンションの売却にまとめています。
精算金と返戻金は、相手・条件・入金日が違う
売却時に受け取る精算金と、保険会社などから後日戻るお金は別です。次の4項目を確認すると、手取りの見落としを減らせます。
固定資産税・都市計画税は、売買契約の精算条件を見る
固定資産税等の精算金は、市区町村から税金が返る制度ではありません。売主と買主が契約で決め、一定期間の負担を調整するものです。精算の有無、起算日、引き渡し当日をどちらが負担するか、未納分の扱いを確認します。
仮に年税額15万円、平年の7月1日引き渡し、1月1日起算で引き渡し当日から買主負担と合意した場合、買主負担は184日分です。当サイトで計算すると、15万円×184÷365=約7万5,616円。端数処理は契約上の扱いに合わせます。
この金額を受け取っても、売主に課された税金の納付義務がなくなるわけではありません。まだ払っていない税額があれば、その支払い分を残してください。
また、未経過の固定資産税等に相当する精算金は、譲渡所得の計算では収入金額に含まれます。「戻ってきたから税金と無関係」とは扱えません。
出典:国税庁・土地建物を売ったときの収入金額、国税庁・固定資産税等清算金の取扱い
管理費・修繕積立金は、既払い分と滞納分を確認する
月途中の引き渡しでは、その月の管理費等を誰が払っているかを確認し、売買契約に従って精算します。管理会社に、引落日・対象月・口座変更の時期を聞くと整理できます。
ここで精算するのは、例えば引き渡し後の期間に対応する既払い分です。何年も積み立てた修繕積立金が、売却でまとめて返ってくるわけではありません。 国土交通省の標準管理規約は、納入した管理費等の返還請求・分割請求を認めていません。実際のマンションの管理規約も確認します。
滞納がある場合は、受け取る分だけでなく支払う分も明細に入れます。引き渡し後に旧口座から引き落とされた場合の調整先も、管理会社へ確認しておきましょう。
火災保険・地震保険は、解約日と返金額を保険会社へ聞く
前払いした保険料は、解約で一部が戻ることがあります。契約期間・支払方法・解約日などで金額が違い、単純な日割りとは限りません。
保険会社や代理店へ、売却予定を伝え、手続き・返金見込み・入金日を確認します。保険を先に切って引き渡しまで無保険になることがないよう、補償を終える日も調整してください。
住宅ローン保証料は、返戻がある契約かを確認する
借入時に保証料を一括で払った契約では、繰上返済に伴い一部が戻る場合があります。金利上乗せ方式や融資事務手数料とは分けて確認します。
返戻額は保証会社の計算方法や手数料によって変わります。「払った保証料×残り年数の割合」で決めず、銀行へ金額と手続きの要否を聞きましょう。返戻がない場合や、少額になる場合もあります。
確認する質問は「返戻はありますか」「手数料を引いた額はいくらですか」「いつ入金されますか」の3つです。
4,500万円で売る場合の手取りを、時期別に計算する
以下は当サイトが作成した仮定例で、実際の売却事例や費用相場ではありません。完済額3,010万円には利息・返済手数料を含め、同じ費用を二重に引かない設定です。
売却全体で残るお金
| 項目 | 仮定した金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 4,500万円 |
| ローン完済額 | −3,010万円 |
| 仲介手数料(税込・通常上限) | −155.1万円 |
| 紙の契約書の印紙税 | −1万円 |
| 登記費用(税・報酬を含む仮定) | −2万円 |
| 引っ越し・片付け(仮定) | −20万円 |
| 契約で確定した精算金の受取額 | +8万円 |
| 後日入ると確認した保険・保証料の返戻金 | +10万円 |
| 税金を引く前に残る額 | 1,329.9万円 |
印紙税1万円は、軽減対象の紙の不動産売買契約書で契約金額が1,000万円超5,000万円以下の場合です。軽減の適用期間は2027年3月31日まで。電子契約などでは扱いが異なります。
この例では、精算対象の管理費等・固定資産税は支払済みとしています。未払いなら別に支払い分を確保します。引っ越し費用も含めて引いているため、後でもう一度引かないようにしてください。
決済当日の入金は、最終的な手取りと一致しない
同じ例で、手付金200万円、仲介手数料は半額ずつ払い、印紙税は契約時、引っ越し代は決済後に払うとします。
| 時点 | 計算 | 累計で残るお金 |
|---|---|---|
| 契約時 | 手付200−手数料77.55−印紙1 | 121.45万円 |
| 決済時 | 残代金4,300+精算8−完済3,010−手数料77.55−登記2 | 当日分1,218.45万円。累計1,339.9万円 |
| 決済後 | 引っ越し等−20、返戻+10 | 1,329.9万円 |
ここから売却にかかる税金があれば、その分を差し引きます。表の「当日分」は収支の差額で、銀行口座に1回でこの金額が振り込まれるという意味ではありません。
手取りと税金上の利益は、違う数字
手取りは、返済などを済ませて残る現金です。一方、税金の計算に使う譲渡所得は、売却の収入金額から取得費と譲渡費用を引いて求めます。ローンを返した額を、そのまま税金の計算で引けるわけではありません。
購入額より安く売っても、税金の確認は必要
建物の取得費は、所有中の減価償却費相当額を差し引きます。そのため「買った額より安いから税金はゼロ」と即断できません。購入時の売買契約書、費用の領収書、売却の精算明細をそろえて計算します。
売却に伴う支出でも、税務上の譲渡費用にならないものがあります。手取り表を、そのまま確定申告の計算表に使わないようにしましょう。
3,000万円控除は、適用条件と申告を確認する
マイホーム売却には、要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。自宅なら無条件に使える制度ではなく、適用には確定申告も必要です。
次の住まいの住宅ローン控除との併用制限もあるため、税金をゼロと置く前に確認します。税額が決まっていない段階は、手取り表に「納税用に残す額」を別枠で設けましょう。
手取りを減らさないために、査定で確認すること
費用の安さと、売却価格をセットで比べる
仮に手数料を10万円節約できても、売却価格が50万円低くなれば、他の条件が同じなら手取りは40万円減ります。手数料だけで依頼先を決めず、成約を見込む価格・販売期間・売り方を比べましょう。
リフォームも同じです。工事代以上に高く売れるとは限らないため、まず現状で査定を受け、「直した場合と、そのまま売る場合」を確認してから判断します。
高めに売れた場合と、価格を調整した場合を並べる
査定額は売却の保証ではありません。複数社から価格と根拠を聞き、価格が下がる場合も試算します。上の例で他の項目を固定し、売却価格だけ100万円低くすると、税引前の手取りも100万円減ります。実際には仲介手数料なども売却価格に合わせて再計算します。
不動産会社には、次の3点を聞けば比較しやすくなります。
- この価格で売れると考える成約事例と、想定期間
- 価格を調整する場合の見込みと、費用込みの手取り
- 契約時・決済時・後日に必要になる現金
今の価格が分かれば、残るお金も見えてきます。 費用だけを細かく削る前に、自宅をいくらで売れそうか、複数社の査定で確かめましょう。
まとめ:手取りは費用・完済額・精算金・税金を合わせて確認する
マンション売却の手取りは、売却価格から費用とローンの完済額を引き、契約に応じた精算金・返戻金を反映したうえで、売却にかかる税金を差し引いて求めます。受け取る予定だけでなく、支払う精算金や納税用に残すお金、入金の時期も確認します。
次の一歩は、売買契約書に書かれる固定資産税の起算日と精算額を、署名の前に読むことです。起算日を1月1日にするか4月1日にするかに法律の定めはなく、地域の慣行と当事者の合意で決まります。実際の支払済み額と精算明細を照らし、未払いの税金があれば、その支払い分も残してください。
自分の売却価格と完済額を入れて、入るお金と出るお金を、日付も含めて一度書き出してみましょう。住み替えのトビラでは、マンション売却の手取りの出し方も含めて、住み替え(買い替え)で悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
住み替えのトビラ 
