査定の電話や面談で、どこまで話す?事実は話し、値段の手の内は伏せる

査定の電話や面談で、どこまで話す?事実は話し、値段の手の内は伏せる

査定を申し込むと、不動産会社の担当者から、売る理由やローンの残り、希望の価格まで次々に聞かれます。

答えに迷ったときに伏せておきたいのは、最低ラインと他社の査定額という、値段の交渉で手の内になる2つの数字です。

これから査定を受ける人に向けて、よく聞かれる12の質問への答え方と、電話・面談・契約後で話す範囲の広げ方を紹介します。

答えは「売買の事実は話し、値段の手の内は伏せる」

査定の電話や面談では、値段の交渉で手の内になる数字のほかは、すべて話して大丈夫です。

手の内になる数字とは、最低ライン(この値段なら売ってもよいと自分で決めた一番低い値段)や、ほかの会社が出した査定額のことです。どちらも相手に知られると、値段の交渉で売主が不利になります。

この章では、よく聞かれる質問への答え方を早見表で示したあと、事実と手の内の見分け方を説明します。

よく聞かれる12の質問と答え方の早見表

査定でよく聞かれる12の質問は、そのまま話す、言い方を変えて話す、伏せておく、の3つの答え方に分けられます。

どの不動産会社でも、査定で聞かれることはほぼ同じです。物件のこと、売る事情、お金のこと、名義のことの4つの範囲から質問が来ます。

次の表は、不動産会社に買主を探してもらう「仲介」で売る場合の答え方の一覧です。会社が自分で家を買い取る「買取」の査定では、お金の事情を話す範囲をもっと絞っておくと安心です。

聞かれること答え方そのまま使える一言
売ろうと思った理由は?言い方を変える「家族の事情で、住み替えを考えています」
いつまでに売りたいですか?そのまま話す「〇月ごろまでに引き渡せると助かります」
住み替え先は決まっていますか?そのまま話す「まだ探している段階です」「候補が1件あります」
ローンはどのくらい残っていますか?そのまま話す「約〇〇万円です。返済予定表をお見せします」
希望の価格はありますか?言い方を変える「査定の結果を聞いてから、理由と一緒にお伝えします」
最低いくらなら売りますか?伏せておく「査定と、売り出した後の反応を見てから決めます」
ほかの会社にも頼んでいますか?そのまま話す「はい、ほかに2社にお願いしています」
ほかの会社はいくらでしたか?伏せておく(査定が出そろうまで)「各社の査定が出そろってからお話しします」
部屋の不具合や修理の跡はありますか?そのまま話す「〇年に下の階へ水漏れさせて、配管を直しました」
上下や隣の部屋とのトラブルは?そのまま話す「上の階の足音のことで、管理会社に一度相談しました」
名義はどなたですか?そのまま話す「夫婦の共有名義です。2人とも売ることに賛成しています」
お仕事や収入、家族のことは?言い方を変える「家族の都合です。売却に関係がある部分はお話しします」

「伏せておく」が付くのは、「最低いくらなら売りますか」と「ほかの会社はいくらでしたか」の2つの質問です。どちらの質問も、答えると手の内になる数字を相手に教えることになります。残りの10の質問は、表の一言のように言い方を選べば、安心して話せます。

「事実」と「手の内」はどう見分けるか

事実と手の内は、「黙っていても、いずれ相手に分かることか」で見分けられます。

家の売り買いに関わる事実は、売る途中でいずれ相手に知られます。例えばローンを借りていることや名義は、登記簿という国の記録を見れば誰でも確かめられます。部屋の不具合も、内見のときや買主が調べたときに見つかります。

いずれ分かる事実を隠すと、売主は後から知られたときに信用を失います。

一方で、最低ラインや、ほかの会社が出した査定額は、売主が口に出して初めて相手に伝わります。一度伝えた数字は、担当者も買主もそれを前提に話を進めます。そのため、売主があとから取り消すのは難しくなります。

迷ったときは、いずれ分かる事実なら早めに話し、自分だけが知っている数字なら伏せておくとよいでしょう。

私生活の事情は一言で伝え、名義は詳しく話す

離婚や親の介護、転職、収入のような私生活の事情は、「家族の事情で住み替えを考えています」の一言で伝えれば十分です。

査定額は、部屋の広さや場所、同じマンションで実際に売れた値段のような、部屋そのものの情報で決まります。家庭の事情を詳しく話しても、査定額はそのままです。

ただし名義だけは、私生活に関わることでも詳しく話しておきましょう。家は、登記簿に載っている名義人が全員賛成して初めて売れるからです。

例えば、次のような場合は最初の面談で伝えておくと安心です。

  • 夫婦でローンを組み、共有名義にしている
  • 離婚した相手との共有名義のままになっている
  • 親から相続した持ち分が、親の名義のままになっている

相続した家の名義変更(相続登記)は、2024年4月1日から義務になりました。

2024年3月までに相続した家も、名義を変えていなければ対象になり、2027年3月31日までに登記が必要です。

名義が亡くなった親のままだと、売り出す前に名義を変える手続きが要るため、そのぶん時間がかかります。

名義人が複数いるときは、ほかの名義人が売ることに賛成しているかも話しておくとよいでしょう。担当者はそれを聞いて、名義人全員がそろって契約できる日を考えながら段取りを組めます。

出典: 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

担当者は何のために質問するのか

査定の担当者は、売却を任せてもらう契約を取るために質問しています。

担当者の目的を知っておくと、売主はそれぞれの質問にどう答えればよいかが分かります。

無料の査定は担当者にとって仲介の契約を取る面談

不動産会社は、売却を任せてもらう約束(媒介契約)を売主と結ぶために、査定を無料で引き受けています。

仲介をする不動産会社の主な収入は、家が売れたときに受け取る「仲介手数料」です。この手数料は、売却を任された会社が受け取ります。

媒介契約には、複数の会社に同時に頼める一般媒介と、1社だけに任せる専任媒介・専属専任媒介があります。

1社だけに任される専任の契約なら、不動産会社はその家の売却を自社だけで最後まで扱えます。そのため、担当者から専任の契約を勧められることもあります。

担当者は、専任の契約を取るための情報集めとしても質問しています。

契約を取るために、高めの査定額を出す会社もある

複数の会社に査定を頼むと、実際に売れそうな値段より高い査定額が混ざることがあります。

売主は、一番高い金額を出した会社を選びたくなりがちです。その気持ちを見込んで、契約を取るために高めの金額を出すやり方を、業界では「高預かり」と呼びます。

高預かりの値段で売り出すと、問い合わせが少ないまま何か月も過ぎることがあります。売主はそのあと値下げを勧められ、結局は相場どおりか、それより安い値段で売ることもあります。

そもそも家は、高預かりでなくても、売り出した値段より安く売れる例が多く見られます。

アットホームの2023年11月の調査では、住み替えでマンションを売った人の売り出し価格と売れた価格の差は、平均でマイナス4.5%でした。売るまでの期間が長い人ほど、この差は大きくなる傾向もありました。

例えば売り出し価格を5,000万円と仮定すると、5,000万円×4.5%=約225万円下がる計算です。自分の部屋の目安は、「売り出し価格×4.5%」で出せます。

値段の交渉では、これくらいの金額が動くと考えておくとよいでしょう。

出典: アットホーム「マンション売却に関する実態調査」(2023年11月)

担当者は答えから売主の急ぎ具合と競争相手を見ている

担当者は質問の答えをもとに、売り出す値段の高さと、自社が出す査定額を考えています。

売る理由や期限、住み替え先の状況を聞けば、担当者は売主がどれくらい急いでいるかが分かります。期限に余裕のある売主なら、担当者は高めの値段から始めて、時間をかけて売る計画を立てられます。

ほかに査定を頼んだ会社の数を聞けば、担当者は何社と比べられるかが分かります。そのうえで、ほかの会社より選ばれるための査定額や説明の仕方を考えます。

どちらも、担当者が仕事として当然知りたい情報です。聞かれたら、落ち着いて答えて大丈夫です。

相手が買取の会社なら話す範囲を絞る

買取の会社が相手なら、話すのは物件の事実と名義までにしておくと安全です。

会社が自分で家を買い取る「買取」では、査定した会社がそのまま買主になります。そのため売主と会社は、値段の交渉で向き合う立場になります。

買取の会社に「急いでいる」「ローンがたくさん残っている」と話すと、安い値段を出されやすくなります。会社は、早く売りたい売主なら多少安くても応じると考えるためです。

部屋の不具合だけは、買取の会社にも正直に伝えておきましょう。買取でも、知っている不具合を隠して売ると、売った後に責任を問われることがあります。

一括査定サイトで申し込むと、連絡してくる会社の中に、仲介の会社と買取の会社が混ざっていることがあります。電話や面談の最初に、次のように聞いておくと安心です。

「この査定額は、仲介で売り出す場合の金額ですか。それとも御社が買い取る場合の金額ですか」

この一言で、その会社が家を買う側なのか、買主を探してくれる側なのかが分かります。

不具合を隠して売ると、売った後に責任を問われる

部屋の不具合やトラブルは、家の売り買いに関わる事実の中でも、特に査定の段階で伝えておきましょう。

不具合を隠したまま売った売主は、売った後に買主から修理や値引きを求められることがあります。

責任を外す約束があっても、知っていた不具合は責任を問われる

売った後の責任を外す約束を契約書に入れても、売主が知りながら黙っていた不具合は責任の対象になります。

家を売った後に、契約の内容と違う不具合が見つかる場合があります。このとき売主は、買主から修理や値引き、契約の取り消しなどを求められることがあります。売主が負うこの責任を、「契約不適合責任」といいます。

個人が家を売るときは、契約書でこの責任を外したり、引き渡しから数か月に限ったりする約束をよく結びます。こうしておけば、売主は売った後に修理を求められる心配を減らせます。

ところが、この約束には民法572条で定められた例外があります。売主が知りながら買主に伝えなかった不具合は、責任を外す約束をしていても、売主が責任を負います。

逆にいえば、知っている不具合をきちんと伝えておけば、売る前に家じゅうを調べ尽くさなくても大丈夫です。知っている不具合を伝える最初の機会は、査定の面談です。

出典: e-Gov法令検索「民法」(第562条・第572条)

マンションで言い漏らしやすい事実

マンションの売主は、すでに直した過去のトラブルや、管理費の滞納のような部屋の外のことを言い漏らしがちです。

次の表は、面談で伝えておきたい事実の主な例です。

範囲伝えておきたい事実の例
部屋の中・水漏れ(直したものも含む)
・給湯器やエアコンの不調
・結露やカビ
・窓やドアの開け閉めの不具合
・ペットによる傷やにおい
周りとの関係・上下や隣の部屋との騒音トラブル
・管理会社や管理組合への苦情(出した・出された)
お金と建物・管理費や修繕積立金の滞納
・決まっている大規模修繕や一時金
部屋で起きたこと・事件や事故

売主の中には、直した水漏れのような過去のトラブルを「もう直ったから」と考えて、話から外す人もいます。けれども買主は、同じことがまた起きないか、どう直したのかを知りたいと考えます。

管理費や修繕積立金を滞納したまま売ると、管理組合は滞納分を買主にも請求できます(区分所有法8条)。買主に迷惑がかかるため、滞納があれば面談の段階で伝えておきましょう。

部屋で人が亡くなった場合については、国土交通省が、不動産会社が買主に伝える範囲のガイドラインを出しています。ガイドラインでは、老衰や持病による病死などは、原則として伝えなくてよいとされています。

例外は、長い間だれにも気づかれず、特殊清掃や大きなリフォームが必要になった場合などで、このときは伝える対象になります。迷ったときは、担当者に相談しておくと安心です。

修繕積立金の残高など管理組合全体の情報は、管理会社が出す書類で買主に伝わります。売主は、自分が知っている範囲を伝えておけば十分です。

出典: e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」(第8条)

出典: 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」

不具合は先に話したほうが、値引きを小さく抑えられる

不具合を査定の段階で担当者に話しておけば、担当者はその不具合を前提にした値段で売り出しを計画できます。

「不具合を話したら、査定額が下がるのでは」と心配する人もいるでしょう。たしかに、不具合の中身によっては査定額が下がることもあります。それでも、後から見つかった場合と比べると、先に話したほうが売主の損は小さく済みます。

次の表は、不具合が後から見つかった場合と、査定で先に話した場合の違いです。

比べること後から見つかった場合査定で先に話した場合
買主の受け止め方「ほかにも隠しているのでは」と疑う不具合を知ったうえで検討する
値段大きな値引きを求められやすい不具合を織り込んだ値段で売り出せる
交渉の進み方買主のペースで進みがち買主への伝え方を担当者と前もって決められる

不具合が後から見つかる場面は、主に内見のときや、買主が調べたときです。そこで一度疑われると、売主は買主から値引きを求められても断りにくくなります。

売主は、面談で話した不具合を「物件状況報告書(告知書)」にも書きます。告知書は、部屋の状態を買主に知らせるために、売主が書いて渡す書類です。

あわせて探しておきたいのが、修理の見積書や領収書、業者の報告書です。「いつ、どう直したか」を書類で示せると、買主は不具合の話を聞いても安心して検討できます。

仲介の査定なら「急いでいる」「ローンが残っている」はそのまま話してよい

仲介の担当者は、売りたい期限やローンの残高を聞いて、売主に合った売り出しの計画を立てます。

ここでの話は、不動産会社に買主を探してもらう仲介の場合に限ります。

ローンの残高は最初に伝える

ローンの残高を最初に伝えておけば、担当者は完済できる値段を下限にして、売り出しの計画を立てられます。

ローンが残っている家を売るときは、売ったお金でローンを全部返す必要があります。家には、お金を貸した銀行の「抵当権」(返済が止まったときに銀行が家を売れる権利)が付いています。売主はローンを完済してこの権利を外して初めて、買主に家を引き渡せます。

売ったお金からは、ローンの残りのほかに次のような費用も払います。

  • 仲介手数料
  • 抵当権を外す手続きの費用
  • ローンを一度に返すときの手数料

売主が残高だけを見て「これ以上で売れれば大丈夫」と考えていると、ローンと費用を払うお金が不足することがあります。

また、残高を知らされる前の担当者は、相場だけを見て売り出す値段を決めることになります。そのまま値下げを重ねると、売り出す値段が完済に必要な額を下回ることもあります。

残高を伝えても、担当者に分かるのは完済に必要な額までです。売主が自分で決めた最低ラインは、伏せたままにしておけます。

住み替え先の状況は決まっている範囲だけ話す

住み替え先の状況を決まっている範囲で話しておけば、担当者は買う家の予定に合わせて、今の家を売る計画を立てられます。

次の表は、住み替え先の状況ごとの一言と、担当者の計画の違いです。

住み替え先の状況そのまま使える一言担当者の計画
考え始めたところ「住み替えを考え始めたところです」いくらで売れそうかを知るための査定が中心になる
探している「〇〇駅の周りで探しています」高めの値段から始めて、反応を見ながら値段を調整する
候補がある「気になる物件が1件あります」買う時期の見込みに合わせて、売り出す時期を考える
契約した「〇月に引き渡しの予定です」引き渡し日から逆算して、値段と見直しの時期を決める

担当者の計画が一番大きく変わるのは、買う家の契約が済んだときです。買う家の引き渡しの日が、今の家を売る期限になります。

担当者から買う家の仲介も勧められたときは、「まずは売るほうの話から進めたいです」と伝えておくとよいでしょう。買う家の仲介をどの会社に頼むかは、あとで決めても間に合います。

担当者に話した期限は、買主への伝え方を相談できる

急いでいることを担当者に話しても、買主に伝える内容は、売主が担当者と相談して決められます。

不動産会社には、仕事で知った客の秘密を守る義務があります(宅地建物取引業法45条)。担当者は、売主から聞いた事情を、売る作戦を立てるために使います。

それでも「買主に足元を見られるのでは」と心配なときは、担当者に次のように頼んでおくと安心です。

「買主さんには、売る理由を『住み替えのため』とだけお伝えいただけますか」

内見などで買主から売る理由を直接聞かれたときも、「住み替えのためです」のように本当のことを短く答えるとよいでしょう。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第45条)

期限を話した後は担当者の提案の中身を確かめる

期限やローンの残高を話した後は、担当者から出てくる提案に根拠があるかを、その場で担当者に聞いておきましょう。

期限があると知った担当者の中には、早く売るための提案を急ぐ人もいます。次の表は、気を付けたい提案と、そのとき担当者に確かめたいことの一覧です。

気を付けたい提案担当者に確かめたいこと
売り出してすぐに値下げを勧める値下げの根拠になる問い合わせや内見の数
根拠を示さずに「今月中に決めないと売れなくなります」と言う期限から逆算した、値段の見直しの時期
早い段階から自社や提携先の買取を勧める仲介で売った場合に、期限までに売れる見込み

よい提案には、期限から逆算した段取りがあります。例えば「最初の数週間はこの値段で出し、問い合わせが少なければ〇月に見直す」のような提案です。

見直しの時期と目安の両方が示された提案なら、売主も納得したうえで値段を見直せます。

損につながるのは、値段の手の内を先に話すこと

最低ラインや他社の査定額のような値段の手の内は、先に話すと、値段の交渉で売主が不利になります。

この章では、最低ライン、希望価格、他社の査定額の3つについて、伝え方と伝えるタイミングを説明します。

ローン残高と最低ラインは別物

最低ラインは、ローンの残高と違って、担当者にも伏せておきましょう。

どちらも値段の下限に見えますが、中身が違います。ローンの残高から分かるのは、「これより安いと完済できない」という値段です。この値段は、借りたお金の残りと売るための費用で決まります。

最低ラインは、「この値段なら手を打ってもよい」と売主が自分で決める値段です。住み替え先の頭金や引っ越しの費用、気持ちの面も含めて決めるため、完済に必要な額より上になることが多いと考えられます。

例えば、次の数字で計算すると(数字は仮の値です)

ローンの残りを3,000万円、売るための費用を200万円とすると、完済に必要な額は3,000万円+200万円=3,200万円です。

住み替え先の頭金に500万円を回したいなら、最低ラインは3,200万円+500万円=3,700万円になります。

自分の場合は「ローンの残り+売るための費用+住み替えに回したい額」で計算できます。ローンの残りは返済予定表で、売るための費用は担当者の見積もりで確かめられます。

担当者がローンの残高から計算できるのは、3,200万円という下限までです。3,700万円という最低ラインは、売主が口に出して初めて担当者に伝わります。値段の交渉で売主が守りたいのは、この500万円の差です。

希望価格は理由と一緒に言う

希望の価格は、査定額を聞いた後に、理由と一緒に伝えるとよいでしょう。

売り出す値段は、最終的には売主が決めます。希望を伝えておけば、担当者もそれに合わせた計画を立てられます。

ただし、伝えるタイミングには注意が要ります。査定の前に「5,000万円で売りたい」と数字だけ言うと、その数字に合わせた査定額を出す会社もあります。そうなると、各社の査定額から本当の相場を読み取るのが難しくなります。

理由も一緒に伝えれば、担当者はその値段で売れる見込みを判断できます。見込みが低いときも、希望に近づける方法を考えて提案できます。

伝え方の例は次のとおりです。

「住み替え先の頭金を考えると、〇〇万円くらいで売れるとありがたいです。相場から見て難しければ、率直に教えていただけますか」

このように伝えると、担当者も相場から見た意見を率直に話せます。

他社の査定額は、全社の査定が出そろってから見せる

他社の金額を全社の査定が出そろうまで伏せておけば、売主は各社の査定額を公平に比べられます。

ほかの会社にも査定を頼んでいることは、事実として話せます。ほかの会社と比べられると分かれば、担当者は査定額の根拠を丁寧に説明しようとします。

ただ、先に「A社は5,400万円でした」と言うと、その数字を少し上回る金額を出す会社もあります。そうなると、その会社の査定額は、その会社が自分で相場を調べて出した値段ではなく、A社の数字に合わせた値段になります。

査定額が出そろった後なら、他社の金額を見せて、各社に根拠を聞けます。

「A社は5,400万円でした。御社の5,100万円とは300万円の差がありますが、どこが違うのでしょうか」

このように聞くと、それぞれの会社が何を根拠に値段を出したのかが分かります。根拠をはっきり答えられる会社なら、売り出した後に値段を見直すときも、理由を示して話してくれると考えられます。

同じ情報を全社に渡すと高すぎる査定が見抜ける

複数の会社に同じ情報を伝えておけば、1社だけ飛び抜けて高い査定額が出たときに、その差が会社の見方の違いから出たと分かります。

伝える情報が会社ごとに違うと、査定額の差が情報の違いから出たのか、見方の違いから出たのかを区別するのが難しくなります。

査定の根拠としてよく使われるのは、同じマンションで実際に売れた値段です。アットホームの調査でも、査定額の根拠として「同じマンションの成約情報」を挙げた人が37.7%で最も多くなっていました(複数回答)。

飛び抜けて高い査定額が、同じマンションで売れた値段とかけ離れていたら、担当者に理由を聞いておくとよいでしょう。説明があいまいなら、契約を取るために高めに出した金額と考えられます。

出典: アットホーム「マンション売却に関する実態調査」(2023年11月)

電話・面談・契約後と、段階ごとに話す範囲を広げる

担当者に話す範囲は、売却が進んで担当者との話が具体的になるにつれて、広げていけます。

次の表は、段階ごとに話すことと、あとに回すことの一覧です。

段階話すことあとに回すこと
電話・物件のこと
・売りたい時期の目安
・ほかの会社にも頼んでいること
・希望価格
・ローンの残高
面談・部屋の不具合
・ローンの残高
・売りたい期限
・住み替え先の状況
・名義
・最低ライン
・他社の査定額(出そろうまで)
契約後・希望価格とその理由・最低ライン(値下げの申し込みが来るまで)

段階ごとに話すことを決めておけば、売主は電話で急に聞かれても落ち着いて答えられます。

最初の電話は物件のことと日程決めが中心

最初の電話では、物件のことと売りたい時期の目安を答えれば十分です。

査定を申し込むと、早ければその日のうちに不動産会社から電話が来ます。一括査定サイトを使うと、複数の会社から続けてかかってくることもあります。

不動産会社がこの電話でしたいのは、申し込んだ人と物件の情報の確認と、訪問の日程決めです。そのため、マンションの名前と部屋番号、広さ、名義人が自分であることを伝えれば、担当者は査定の準備ができます。

「半年以内には売りたい」のような時期の目安や、ほかの会社にも頼んでいることも、電話の段階で話せます。

希望価格やローンの残高を電話で細かく聞かれたら、面談に回すとよいでしょう。

「お金のことは、面談のときに資料を見ながらお話しします」

こう伝えておけば、お金の話は面談で、資料を見ながら正確にできます。

面談では事実をすべて話す

面談では、売買に関わる事実を漏れなく伝えられるように、話すことのメモと書類を用意しておきましょう。

担当者は、事実を全部聞いて初めて、正しい査定額と売主の事情に合った提案を出せます。

話すことは、次の3つに分けてメモに書いておくと、面談の途中でも見返しながら話せます。

  • そのまま話すこと
  • 言い方を変えて話すこと
  • 伏せておくこと

複数の会社と面談するときも、同じメモを使えば全社に同じ情報を渡せます。

書類は、次のものがあると安心です。

  • 買ったときの売買契約書と重要事項説明書
  • ローンの返済予定表(または銀行の残高証明書)
  • 修理やリフォームの記録(見積書・領収書・業者の報告書)
  • 管理規約と、管理組合の総会の資料
  • 固定資産税の納税通知書

書類があれば、担当者は買ったときの条件やローンの残り、修理の中身をその場で確かめられます。口で説明するより正確に伝わるため、査定額の根拠もしっかりします。

契約後も、最低ラインは値下げの申し込みが来たときに決める

売却を任せる契約を結んだ後も、担当者へ伝える値段の話は、希望価格とその理由までにしておくとよいでしょう。

契約を結ぶと、担当者は売主の側に立って買主を探します。それでも、担当者と売主とでは、値段に対する事情が少し違います。

仲介手数料の上限は、国の告示で決まっています。売れた値段が400万円を超える場合の上限は、「売れた値段の3%+6万円(これに消費税)」です。

2024年7月からは、800万円以下の物件に限る特例もできました。売主との合意があれば、不動産会社は税込33万円(30万円×1.1)まで受け取れます。

次の表は、売れた値段ごとの仲介手数料の上限です。

売れた値段仲介手数料の上限(税抜き)
5,000万円156万円
4,900万円153万円

売れた値段が100万円下がると、売主が受け取る代金は100万円減ります。一方で、会社が受け取る手数料の減り方は3万円にとどまります。そのため担当者にとっては、少し安くても早く売れるほうが助かる面があります。

これは担当者の人柄の話ではなく、手数料の仕組みから生まれる違いです。

最低ラインは、買主から値下げの申し込みが来たときに、問い合わせや内見の数を担当者と見ながら決めていけば十分です。

出典: 国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第46条)

まとめ:査定では、値段の手の内のほかはすべて話して大丈夫

査定の電話や面談では、最低ラインと他社の査定額という値段の手の内を伏せておけば、ほかの事実はそのまま話して大丈夫です。不具合やローンの残高は、早く話すほど担当者が売主に合った計画を立てられます。

まずは面談の前に、話すことを3つの答え方に分けたメモを作っておきましょう。メモを持たずに面談に臨むと、聞かれた勢いで最低ラインを口にしたり、会社ごとに違う情報を渡したりしがちです。そうなると、各社の査定額を公平に比べられなくなります。

あわせて、ローンの返済予定表と、不具合を直したときの記録が手元にあるかも確かめておきたい点です。住み替えのトビラでは、査定の電話や面談で不動産会社にどこまで話すかも含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。