リノベ直後に手放すとリノベ代は回収できる?戻る割合と手取りの目安

リノベ直後に手放すとリノベ代は回収できる?戻る割合と手取りの目安

リノベを終えたばかりのマンションを、転勤や家族の事情で売ることになる人もいます。

そのとき真っ先に気になるのは、かけたリノベ代が売値でいくら戻るのかでしょう。

この記事では、架空の家庭の例を使い、リノベ代が戻る割合と売ったあとに手元に残るお金を数字で確かめ、損を小さくする売り方まで解説します。

リノベ代は売値でどこまで戻るか:数字で見るリノベの回収率

リノベをした部屋は高く売れますが、売値に上乗せされる額は、かけたリノベ代より少なくなりがちです。

この章では、架空の家庭Aさんの例で、リノベ代が売値にいくら戻るのかを計算していきます。

Aさんの例(説明のために作った架空の家庭)

  • 2020年4月、首都圏の中古マンション(63㎡・3LDK)を4,000万円で購入
  • 2025年10月、800万円かけてリノベーション
  • 2026年秋、家族の転勤が決まり、マンションを売ることに
リノベの中身費用
キッチン・浴室・トイレ・洗面台と給湯器の交換300万円
床下の給排水管の交換100万円
床・壁紙・建具の張り替え200万円
3LDKを広いリビングの2LDKにする間取り変更と、造り付けの家具200万円

Aさんの疑問は「800万円かけたばかり。売ったら、いくら戻ってくるの?」です。

「回収できたか」は2つの物差しで測る:リノベで上がった売値と、住まい全体の損得

「リノベ代を回収できたか」の答えは、リノベ代が戻った割合で見る場合と、住まい全体の損得で見る場合とで、逆になることがあります。

リノベの回収率とは、リノベで上がった売値の額を、リノベ代で割った割合のことです。住まい全体の損得とは、今の売値から、買った値段とリノベ代の合計を引いた額のことです。

Aさんが不動産会社に査定を頼むと、リノベをした今の部屋は5,400万円で売れる見込みでした。リノベをしていなければ、5,000万円ほどの見込みです。

次の表は、2つの計算のしかたと、Aさんに当てはめた結果です。

物差し計算のしかたAさんの場合
リノベの回収率(リノベ後の売値 − リノベしなかった場合の売値)÷ リノベ代400万円 ÷ 800万円 = 50%
住まい全体の損得今の売値 −(買った値段 + リノベ代)5,400万円 − 4,800万円 = +600万円

Aさんは、リノベ代が半分戻っただけでも、住まい全体では600万円の得をしています。買ってから相場が上がり、Aさんの部屋はリノベをしなくても、買った時より1,000万円高く売れるようになっていたためです。

リノベ代の戻り方を知りたいなら回収率を、売って得か損かを知りたいなら住まい全体の損得を計算するとよいでしょう。

米国の調査では、かけた費用以上に売値が上がる工事は28項目中5つ

米国の調査では、ほとんどの工事で、売値が上がった額はかけた費用を下回っています。

この調査は、米国の住宅業界誌が毎年出している「Cost vs Value(費用と価値)」です。2025年版で調べた28の工事のうち、かけた費用以上に売値が上がったのは5つでした。

次の表は、キッチンと浴室の改装について、かけた費用のうち売値に戻った割合です。

工事(全米平均)かけた費用のうち売値に戻った割合
キッチンの小さな改装(標準的な仕様)約113%
キッチンの大きな改装(標準的な仕様)約51%
浴室の改装(高級な仕様)約42%
キッチンの大きな改装(高級な仕様)約36%

工事が大がかりになるほど、また高級な仕様になるほど、売値に戻る割合は下がっています。

この調査の対象は米国の一戸建てなので、日本のマンションには細かい割合より傾向を当てはめるとよいでしょう。お金をかけた工事ほど戻る割合が下がりやすいことは、日本のマンションでも同じと考えられます。

出典: The Journal of Light Construction「Cost vs Value Report 2025」(全米平均)

買主の半数超がリノベ済みを選ぶのに、リノベ代が売値に戻りにくい理由

買主はリノベ済みの部屋を好みますが、物件を選ぶときに一番重視するのは値段です。

不動産会社のコスモスイニシアは2026年8〜9月、首都圏で最近2年以内に中古マンションを買った500人にアンケートを行いました。そのうち53.2%が、リフォーム・リノベ済みの物件を買っていました。

同じアンケートで物件選びに一番重視したことを尋ねると、「物件価格」と答えた人の割合が18.2%で最も高くなりました。

企業がネットで行ったアンケートなので、この数字は傾向の目安として受け取るとよいでしょう。

この結果から、買主はまず値段で候補を絞り、同じくらいの値段ならリノベ済みの部屋を選ぶと考えられます。相場より高いお金を払ってまでリノベ済みを選ぶ買主は、限られるといえます。

さらに市場には、不動産会社が買い取って改装した「買取再販」のリノベ済み物件も多く出回っています。買主は、個人がリノベした部屋も、それらの物件と値段で比べます。

そのため、リノベ代をそのまま上乗せした値段は、買主の目には割高に映りやすくなります。

出典: 株式会社コスモスイニシア「中古マンション購入検討者・購入者の実態調査」(2026年10月5日発表)

売値に上乗せされる額は「買主が自分で直したらいくらかかるか」で決まる

買主は、自分で直せばかかる費用の分までなら、リノベ済みの部屋に高いお金を払います。

例えば、古い浴室を交換するのに100万円かかるとします。浴室が交換済みの部屋なら、買主はその出費と工事の手間を省けます。そのため、100万円までなら高く払ってもよいと考えます。

反対に、造り付けの家具が好みに合わない場合、買主は外す費用がかかると考えます。売主は、その費用の分だけ値下げを求められることもあります。

不動産会社が査定でリノベの分を見積もるときも、買主と同じ考え方をします。不動産会社は、近くの似た部屋が実際に売れた価格(成約価格)を基準に、リノベの分を足したり引いたりして査定額を出します。

査定でリノベの分がいくらと見込まれたかは、査定を頼んだ不動産会社に内訳を聞くと分かります。

住まい全体の損得を決めるのは相場:買った時より高く売れるか

住まい全体の損得は、リノベの中身よりも、買った時から今までの相場の動きで大きく変わります。

まず首都圏の今の相場を確かめ、そのあとAさんの例で損得を計算していきます。

首都圏の中古マンションは2026年5月、1㎡あたりの成約価格が約6年ぶりに前年を下回った

首都圏の中古マンションが売れた価格は、1㎡あたりで見ると、2026年5月から前年の同じ月を下回り続けています。

東日本レインズは、不動産会社が取引の情報を登録する機関です。登録された情報から、実際に売れた中古マンションの1㎡あたりの価格を「成約㎡単価」として毎月まとめています。

首都圏以外の地域の成約価格は、近畿・中部・西日本の各レインズや、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で調べられます。

東日本レインズによると、2026年5月の成約㎡単価は80.8万円で、前年の同じ月を3.9%下回りました。成約㎡単価が前年の同じ月を下回ったのは、2020年4月以来73か月ぶりです。

次の表は、値上がりが続いていた時期から2026年9月までの成約㎡単価です。

時期成約㎡単価前年の同じ月と比べた変化
2025年9月85.2万円+12.3%
2026年1月87.0万円+6.3%
2026年5月80.8万円−3.9%
2026年9月81.1万円−4.8%

2026年9月に売れた中古マンションの件数は、前年の同じ月より22.7%減りました。反対に、売りに出ている物件の件数は15.1%増えています。

売る人が増えて買う人が減ると、売り手どうしが少ない買主を取り合うことになります。

ただし、成約㎡単価の下げ幅は数%で、2025年秋の10%を超える値上がりと比べれば小さな動きです。今は、値上がりが止まったところと受け止めるとよいでしょう。

出典: 東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年9月度」

買った時より相場が上がっていれば、値上がり分がリノベ代を埋めてくれる

買った時より相場が上がっていれば、リノベ代の一部が戻るだけでも、住まい全体では得をすることがあります。

Aさんが部屋を買ったのは2020年4月で、価格は4,000万円でした。その後に相場が上がったため、Aさんの部屋は、リノベをしていなくても今なら5,000万円ほどで売れます。

相場の値上がりだけで、部屋の価格は1,000万円上がったことになります。そこにリノベの上乗せ400万円が加わり、売値は5,400万円です。

この売値から、買った値段とリノベ代の合計4,800万円を引くと、住まい全体では600万円の得になります。

では、Aさんが相場の高い時期に同じ部屋を5,000万円で買い、その後の相場が横ばいだったら、結果はどう変わるでしょうか。

Aさん(2020年に購入)高い時期に買い、相場が横ばいだった場合
買った値段4,000万円5,000万円
リノベ代800万円800万円
リノベしなかった場合の今の価格5,000万円5,000万円
リノベの上乗せ+400万円+400万円
今の売値5,400万円5,400万円
住まい全体の損得+600万円−400万円

同じ部屋に同じリノベをしても、買った時期が違うだけで、600万円の得が400万円の損に変わります。

2024〜2025年ごろの相場が高い時期に買ってリノベした人は、住まい全体で損になることもあります。売り出す前に、買った値段とリノベ代の合計を、今の価格の目安と比べておくと安心です。

自分の住まいで確かめる:買った値段とリノベ代の合計を、今の価格の目安と比べる

自分の住まいの損得は、手元の契約書と、無料で見られる最近の売買価格から計算できます。

必要な数字は、次の3つです。

  1. 買った値段(売買契約書に記載)
  2. リノベ代(工事の請負契約書や領収書に記載)
  3. 今の価格の目安

今の価格の目安には、同じマンションや近くの似たマンションが最近売れた価格を使います。実際に売れた価格は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」や、レインズの「レインズ・マーケット・インフォメーション」で無料で見られます。

調べた1㎡あたりの価格に自分の部屋の広さをかけると、リノベをしていない場合の価格の目安が出ます。そこに、不動産会社の査定で示されたリノベの上乗せを足した額が、今の価格の目安です。

不動産ポータルサイトに出ている「売り出し価格」は、売主の希望の値段です。首都圏では実際に売れた価格を大きく上回っているので、計算には実際に売れた価格を使いましょう。

次の表に、自分の数字を書き込んで計算できます。

買った値段リノベ代合計(A)今の価格の目安(B)差(B−A)
Aさん4,000万円800万円4,800万円5,400万円+600万円
あなた

表の差(B−A)がプラスなら、住まい全体では得をしています。

出典: 国土交通省「不動産情報ライブラリ」

同じリノベでも業者は利益を出す:買取再販の工事から分かる、売値に上乗せされやすい工事

買取再販の業者は、売れる値段から逆算して工事を絞るので、リノベをしても利益を出せます。

中古マンションを買い取ってリノベし、利益を乗せて売ることを「買取再販」といいます。買取再販をする不動産会社(業者)の工事の選び方を知ると、売値に上乗せされやすい工事が分かります。

業者は売値から逆算して工事費を決め、個人は理想の暮らしから工事を足していく

個人は暮らしやすさを基準にリノベの予算を決めるので、リノベ代と売値に戻る額との差が開きやすくなります。

業者は、まず「この地域なら、いくらで売れるか」を決めます。そこから利益と経費を引いた残りで、仕入れ値と工事費をまかないます。工事も、売値が上がる部分に絞ります。

個人は反対に、「こんな暮らしがしたい」という理想から工事を足していきます。自分が住むためのリノベなので、暮らしやすさを基準に工事を選ぶのは自然なことです。

リノベ代のうち売値に戻るのが一部でも、残りは快適に暮らすために使ったお金と考えられます。

次の買主が評価するのは、リノベ代のうち、その買主にとっても価値がある工事の分です。どの工事が評価されやすいかは、業者が選ぶ工事を見ると分かります。

業者が選ぶのは多くの人が住める仕様:評価されやすい工事と、評価が割れる工事

配管や水回りのように、どの買主もいずれ直す工事は、売値に上乗せされやすくなります。

業者のリノベ済み物件では、白やベージュを基調にした内装と、標準的な設備の組み合わせが目立ちます。間取りも、家族で住める部屋数のままにするのが基本です。できるだけ多くの人に「これなら住める」と思ってもらうためです。

業者の考え方に沿って工事を分けると、次の表のようになります。

工事の例買主の評価理由
床下の給排水管の交換評価されやすい後からやると、床をはがす大工事になる
給湯器の交換評価されやすい古いと、買主はすぐに交換費用を見込む
キッチン・浴室・トイレ・洗面台の交換評価されやすい古いと、買主は交換費用を見込む(高級仕様の上乗せ分は評価が割れる)
床・壁紙の張り替え(落ち着いた色)評価されやすい傷みが消え、内覧での第一印象がよくなる
部屋数を減らす間取り変更評価が割れる家族で住みたい人が、買主の候補から外れる
造り付けの家具、個性の強い色や素材評価が割れる好みが合わないと、外す費用や作り直す費用がかかる

評価が割れる工事にも、価値はあります。例えば広いリビングの2LDKは、2人暮らしの買主に好まれることがあります。

ただ、気に入ってくれる買主が限られるので、売れるまでに時間がかかりやすくなります。

Aさんの800万円を表に当てはめると、評価されやすい工事が600万円、評価が割れる工事が200万円です。不動産会社は、主に評価されやすい600万円分の工事を見て、400万円を上乗せしたと考えられます。

リノベ直後の部屋は買取より仲介で売る:業者に売ると、新しい内装の価値は業者の利益になる

リノベ直後の部屋は、仲介で一般の買主に売るほうが、新しい内装の分まで値段に含めてもらえます。

マンションの売り方は、大きく分けて次の2つです。

  • 仲介(不動産会社に、一般の買主を探してもらう)
  • 買取(不動産会社に、そのまま買い取ってもらう)

買取の強みは、早く売れることです。ただし業者は、再販できる値段から工事費・経費・利益を引いて、買い取る値段を決めます。

工事をやり直す場合も、そのまま売る場合も、業者は売れ残りに備えて低めの値段をつけます。Aさんの新しい水回りの分は、業者が再販するときの値段に上乗せされ、業者の利益になります。

仲介なら、新しい水回りを見た買主が「すぐ住める」ことに価値を感じ、その分も含めた値段で買ってくれます。

引っ越しの日が迫っている人や、今の家と新居のローンを両方払う期間を短くしたい人は、早く売れる方法も考えておきたいところです。その場合は、仲介で売りに出し、期限までに売れ残ったら業者が買い取る「買取保証」を使う方法があります。

時間に余裕があるなら、リノベ直後の部屋は仲介で売りに出すとよいでしょう。

リノベ直後に売ることは強みにも弱みにもなる:手取りを増やす売り方

リノベ直後に売るときは、内装の新しさを値段に生かしつつ、買主の疑いを先に解いておくと、手取りを増やせます。

リノベ直後は、内装の新しさと設備の保証が一番残っている時期

買主がリノベの分に払う額は、工事を終えた直後が一番高くなります。

リノベ済みの部屋を買えば、自分で直す手間と費用を省けるからです。ところが売主が住み続けるうちに、床には傷がつき、設備も少しずつ古くなります。

傷や古さが目立つほど、買主は「どうせ直すなら」と考えます。そのぶん、リノベの分として払ってもよいと考える額は減っていきます。

「せっかくリノベしたのに、すぐ売るなんてもったいない」と感じる人もいるでしょう。それでも売値だけを見れば、工事を終えた直後なら、業者のリノベ済み物件と同じくらいの新しさで比べてもらえます。

設備の保証も、直後に売るほど長く残っています。キッチンや給湯器などの設備には、1〜2年ほどのメーカー保証がついているものがあります。施工会社が独自に工事を保証している場合もあります。

保証が切れる日と、買主に引き継ぐときの条件を、施工会社やメーカーに確認しておきましょう。保証を引き継げれば、買主は安心して設備を使い始められます。

弱みは「何か問題があったのでは」という疑い:売る理由は聞かれる前に伝える

売る理由を聞かれる前に伝えておくと、リノベ直後の部屋でも、買主に疑われにくくなります。

「お金をかけて直したばかりなのに、なぜ手放すのか」と考えた買主は、騒音や近所とのトラブル、工事の欠陥などを想像します。疑いを持ったままの買主は、値下げを求めてきたり、購入をやめたりします。

例えば「家族の転勤が決まったため」と最初に伝えておけば、買主の不安は小さくなります。仲介の担当者にも理由を伝えておき、広告や内覧の場で説明してもらいましょう。

ただし、部屋に本当に問題がある場合は、その問題も正直に伝える必要があります。

雨漏りや設備の不具合、近所とのトラブルなどを知っていて黙って売ると、買主から修理費や契約の解除を求められることがあります。売主が負うこの責任を、契約不適合責任といいます。

売る理由も部屋の不具合も、先に正直に伝えておけば、売ったあとのトラブルを防げます。

出典: e-Gov法令検索「民法」(第562条〜第564条)

工事の明細・保証書・施工前後の写真を、査定や内覧で見せる

リノベの中身は、書類と写真で見せると、査定の担当者や買主に正しく伝わります。

用意しておきたい書類と写真は、次の4つです。

  • 工事の請負契約書と見積明細
  • 工事後の図面
  • 設備の保証書と取扱説明書
  • 施工前と施工後の写真

請負契約書と見積明細があれば、どの工事にいくらかかったかを示せます。4つの中でも特に大事なのが、給排水管のように、完成後は床の下に隠れる工事の写真です。

床をはがして新しい管に替えた様子が写っていれば、査定の担当者や買主に、床下の工事の分も認めてもらいやすくなります。

工事の日付・内容・金額・保証の期限を1枚の表にまとめておけば、査定の担当者にも内覧の買主にも、そのまま渡せます。

これらの書類は、売ったあとの確定申告で取得費を計算するときにも使います。申告が終わるまで、手元に残しておきましょう。

売り出し価格は、リノベ代から逆算するより、近くで実際に売れた価格から決める

売り出し価格は、近くで実際に売れた価格に、査定で示されたリノベの上乗せを足した額を基準に決めましょう。

「800万円かけたのだから、その分は上乗せしたい」と考えて値段を決めると、売れ残りやすくなります。

首都圏の中古マンションでは、売り出し中の価格と、実際に売れた価格が大きく離れています。

2026年9月時点で、売り出し中の物件の1㎡あたりの価格は平均120.0万円でした。実際に売れた物件の平均81.1万円と比べると、売り出し中の価格は約1.5倍です。

売り出し中の価格は、値下げ前の希望の値段です。それでも約1.5倍の開きからは、高い値段のまま売れ残っている物件が多いことがうかがえます。

Aさんがリノベ代を全部上乗せして売り出した場合(例)

リノベしなかった場合の価格5,000万円に800万円を足し、5,800万円で売り出したとします。

  1. 3か月たっても問い合わせが少なく、5,600万円に値下げ
  2. さらに1か月後、5,500万円に値下げ
  3. 「売れ残っている部屋」と見られ、最後は5,300万円で成約

最初から査定どおりの5,400万円で売り出していれば、内装が新しいうちに、より高い値段で売れた可能性があります。少し上乗せして売り出す場合も、いつ・いくら下げるかを先に決めておくと安心です。

出典: 東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年9月度」

リノベ代は税金の計算で取得費に足せる:自宅なら3,000万円の特別控除も使える

家を売って利益が出る人は、リノベ代を取得費に足すと、税金を減らせます。

取得費とは、家を手に入れるのにかかったお金のことです。家を売った利益は「売値 −(取得費 + 売るための費用)」で計算するので、取得費が増えるほど利益は小さくなります。

国税庁によると、取得費には買った代金のほか、設備費や改良費も入ります。つまり、リノベで設備を替えたり間取りを変えたりした費用も、取得費に足せます。

取得費に足せる額は、工事費から、年数がたった分(減価償却費相当額)を引いた額です。経過年数は、6か月以上の端数を1年として数えます。

項目計算
減価償却費相当額(自宅の鉄筋コンクリートのマンション)工事費 × 0.9 × 0.015 × 経過年数
Aさんの減価償却費相当額800万円 × 0.9 × 0.015 × 1年 = 約11万円
Aさんが取得費に足せる額800万円 − 約11万円 = 約789万円

元の状態に戻すだけの修繕費は、取得費から外れることがあります。工事のどの部分を取得費に入れられるかは、工事の明細を持って、税務署か税理士に確認しておきましょう。

もっとも、自宅を売るときは「3,000万円特別控除」を使えます。利益が3,000万円までなら、税金はゼロです。

Aさんの利益もこの範囲に収まるため、税金はゼロになります。リノベ代で税金が減るのは、利益が3,000万円を超える人などに限られます。

売って損が出たときに、給料などの所得と差し引ける特例も2つあります。どちらも、売った年の1月1日時点で、5年を超えて持っていることが条件です。

そのため、中古を買ってすぐリノベし、買ってから5年以内に売る人は対象外になります。手取りを計算するときは、税金が減る分を小さめに見込んでおくと安心です。

出典: 国税庁「No.3252 取得費となるもの」

出典: 国税庁「No.3261 建物の取得費の計算」

出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」

出典: 国税庁「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき」

出典: 国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき」

「回収できるか」より「今売って手元にいくら残るか」

売るかを決めるときは、ローンを返したあとに手元に残るお金で判断するとよいでしょう。

回収率や住まい全体の損得は、リノベの結果を振り返るための数字です。次の住まいの頭金や引っ越し代に使えるお金は、売ったあとの手取りで決まります。

手取りは、売却価格からローンの残りと諸費用、税金を引いた額

Aさんが今売ると、ローンを返して諸費用を払ったあと、手元に約1,505万円が残ります。

手取りは、売却価格から住宅ローンとリフォームローンの残り、諸費用、税金を順に引いて計算します。次の表は、Aさんの手取りの内訳です。表の金額は、ローンの残りも含めてすべて説明のための仮の値です。

項目金額内容
売却価格5,400万円査定どおりに売れた場合
住宅ローンの残り−2,950万円2020年に借りた住宅ローンの残り
リフォームローンの残り−750万円2025年に借りたばかりで、残りは借りた額に近い
諸費用−約195万円仲介手数料 約185万円、印紙税 3万円、ローンの完済や抵当権を外す手続きの費用など
税金0円3,000万円特別控除で非課税
手取り約1,505万円

仲介手数料は、法律で上限が決まっています。売値が400万円を超える場合の上限は「売値 × 3% + 6万円」に消費税を足した額で、5,400万円なら約185万円です。

印紙税の3万円は、売買契約書に貼る印紙の額です。2027年3月31日までに作る契約書に使える軽減措置の額で、売値が5,000万円を超え1億円以下の場合にあたります。

自分の手取りを出すときは、ローンの残りを返済予定表や金融機関で、仲介手数料などの諸費用を不動産会社の見積もりで確かめ、同じ順に引いていくとよいでしょう。

リノベの回収率が50%と聞くと、損をしたように感じる人もいるでしょう。それでもAさんの手元には、新しい住まいの頭金や引っ越し代に使える約1,505万円が残ります。

出典: 国土交通省「宅地建物取引業法関係」(宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額)

出典: 国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」

ローンの残りと諸費用が売値を上回るときの埋め方

売値よりローンの残りと諸費用の合計が多いときは、その差を預貯金か住み替えローンで埋めることになります。

リノベ直後はリフォームローンの残りが借りた額に近いので、この差が出やすくなります。

相場の高い時期に買っていた場合(例)

相場が高い時期に5,000万円で買い、800万円のリノベをしたあと、相場が横ばいのまま売る例です。

売値5,400万円に対し、住宅ローンの残りが4,700万円、リフォームローンの残りが780万円、諸費用が約195万円だとします。返す額と諸費用の合計は約5,675万円で、売値を約275万円上回ります。

まず、リフォームローンの契約書で、担保の有無を確かめておきましょう。

リフォームローンの種類売るときの扱い
担保つき(マンションに抵当権が設定されている)抵当権を外すため、売るときに完済する
担保なし売ったあとも返し続けられる場合がある(条件は契約による)

担保なしのローンで売ったあとも返し続けられるかは、約款(ローンの細かい決まりを書いた書面)を読むか、銀行に問い合わせると分かります。

売値を上回った分を埋める方法は、主に次の2つです。

  • 預貯金などの自己資金
  • 住み替えローン(新居のローンに上回った分を上乗せして借りる)

住み替えローンは借りる額が増えるので、審査が厳しくなります。借りられた場合も、毎月の返済額は増えます。

新居を買う前に、住み替えローンで借りられる額を銀行に確かめておくと、返せる範囲で資金計画を立てられます。

払い終えたリノベ代は計算から外す:売り時を逃すほうが高くつく

今売るか待つかを決めるときは、すでに払ったリノベ代を計算から外して考えましょう。

すでに払っていて、売っても住み続けても取り戻せない費用を「サンクコスト(埋没費用)」といいます。リノベ代の800万円も、これにあたります。

ところが「せめてリノベ代の分は取り戻したい」と考えると、強気の値段で売り出したり、売るのを先のばしにしたりしがちです。

待っているあいだにも、内装の新しさは少しずつ失われていきます。首都圏の成約㎡単価も、2026年9月の時点で前年の同じ月を下回り続けています。この先の相場は、上がることも下がることもあります。

比べるのは、「今売った場合の手取り」と「待ってから売った場合の手取り」です。転勤や家族の事情など、住み替えの目的も合わせて考えると、自分にとって損の小さい時期を選べます。

リノベ代は、快適に暮らした日々のために使ったお金として区切りをつけ、これからの手取りで売る時期を判断していきましょう。

出典: 東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年9月度」

まとめ:リノベ代が戻るのは一部。売るかは手取りで決める

リノベ直後に売っても、売値に上乗せされるのは買主が自分で直せばかかる費用の分で、かけたリノベ代の一部にとどまりがちです。Aさんの例でも、800万円のうち売値に戻ったのは400万円でした。

次の一歩は、不動産会社に査定を頼み、リノベの上乗せ額の内訳を聞いたうえで、ローンを返したあとの手取りを計算しておくことです。この計算を飛ばしてリノベ代から売り出し価格を決めると、売れ残って値下げを重ねるうちに、内装が新しいという強みを失いやすくなります。

まずは売買契約書と工事の請負契約書を手元に出し、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で、近くの似たマンションが最近いくらで売れたかを調べてみるとよいでしょう。住み替えのトビラでは、リノベ直後にマンションを売るときのリノベ代の戻り方と手取りの計算も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。