騒音の苦情が管理会社の記録や議事録に残っているマンションは、正直に伝えて売ると、いくら下がるのでしょうか。
隣人とのトラブルを伝えずに家を売った売主に、裁判所が売買代金の2割を賠償するよう命じた例があります。
苦情のタイプごとの値下がりの目安と、自分の値下がり額を査定で出す方法、値引きを大きくしない報告書の書き方を紹介します。
子どもの声をめぐる判決で、黙って売った売主は価値の「2割」の賠償を命じられた
隣人とのトラブルを知りながら黙って売ると、売主は売ったあとで、値下がりに当たる額を賠償として求められることがあります。
2004年に大阪高等裁判所が出した判決をもとに、何が起き、裁判所がどう判断したかを順に紹介します。
入居の翌日から隣人の苦情と嫌がらせが続き、売主一家は家を売ることにした
事件の始まりは、子どものいる一家が家を買って引っ越した翌日に、隣の住人から子どもの声への苦情を受けたことでした。
この記事で取り上げるのは、2004年(平成16年)12月2日に大阪高等裁判所が出した判決です。家を売った側のこの一家を、ここからは「売主一家」と呼びます。
売られたのは土地付きの一戸建てで、マンションとは条件が違います。それでも、苦情を伝えずに売ると売主がどうなるかが、この事件からよく分かります。
相談しても隣人の言動が続いたため、売主一家は家を売ることに決めました。
ここまでの売主一家は、隣人に悩まされた側です。裁判で責任を問われたのは、このあと家を売るときの対応でした。
出典: 全日本不動産協会「隣人の迷惑行為」(不動産お役立ちQ&A)
出典: 弁護士法人みずほ中央法律事務所「住居売買後の迷惑な隣人の発覚と売主・仲介の責任(肯定裁判例)」
売主は「子どもが住んでも問題はない」と答えて売り、買主一家も同じ目にあった
売主は隣人とのトラブルを知っていたのに、買主に聞かれても「問題はない」と答えて家を売りました。
買主は妻と幼い子ども3人と一緒に入居し、売主一家と同じような言動を隣人から受けることになりました。
そこで買主は、売主と仲介会社の責任を問う裁判を起こしました。
出典: 弁護士法人みずほ中央法律事務所「住居売買後の迷惑な隣人の発覚と売主・仲介の責任(肯定裁判例)」
裁判所は、迷惑な隣人がいる家の価値は2割下がると判断し、売主と仲介会社の責任を認めた
裁判所は、売主がトラブルを説明せず、買主の質問にも「問題ない」と答えたことを、説明する義務に反すると判断しました。
売主側の仲介会社も責任を問われました。この会社は、買主側の仲介会社にはトラブルを伝えていました。
ところが、買主側の仲介会社は、トラブルを話せば契約が流れ、手数料を受け取れなくなる立場にありました。売主側の仲介会社はそのことに気づけたため、責任を負うことになりました。
損害の額について、裁判所は、迷惑な隣人がいることで家の価値は2割下がるとみました。そして、売買代金2,280万円の2割にあたる456万円を、買主の損害と認めています。
一方で、思い違いで買ったので契約は無効だ、という買主の主張は退けられました。家は住み続けられる状態で、実際に買主一家も2年以上住んでいたためです。
この判決を自分の売却に当てはめるときは、次の3点に気をつけておきましょう。
- 一戸建ての事件である
- 嫌がらせまで続いた重いケースである
- 2020年4月の民法改正より前の判決である
2割という数字は、嫌がらせまで続いた重いケースでの値です。自分のケースがもっと軽ければ、値下がりも2割より小さくなると考えられます。
出典: 全日本不動産協会「隣人の迷惑行為」(不動産お役立ちQ&A)
出典: 弁護士法人みずほ中央法律事務所「住居売買後の迷惑な隣人の発覚と売主・仲介の責任(肯定裁判例)」
出典: 法務省「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について」
マンションでは苦情の記録が議事録などから買主側に伝わり、「売主は知っていた」証拠になる
マンションで苦情が記録に残っていると、売主がトラブルを知っていたことは、その記録から買主側にも分かります。
マンションと一戸建ての違いは、管理会社や管理組合に記録が残ることです。苦情の記録が買主側に伝わる主な書類を、次の表にまとめました。
| 書類 | どんなものか | 買主側に伝わるまで |
|---|---|---|
| 総会の議事録 | 総会での話し合いの記録 | 売主から仲介を頼まれた不動産会社が、管理組合に見せてもらえる |
| 重要事項調査報告書 | 管理の状況を管理会社がまとめた書類 | 売買のときに仲介会社が取り寄せ、買主への説明に使う |
国が示すひな形の標準管理規約では、組合員や利害関係人から求められたら、理事長は総会の議事録を見せることになっています。この利害関係人には、組合員から仲介を頼まれた不動産会社も含まれます。
裁判では、売主がトラブルを知っていたことを、買主の側が示す必要があります。苦情が記録に残っていれば、買主はその記録を出して示せます。
国は、人が亡くなった物件について、告知が必要になる場合の目安をガイドラインで示しています。騒音の苦情はこのガイドラインの対象外で、告知が必要になるかは苦情の中身で決まります。
何年も前の苦情でも、記録に残っているなら、買主に伝えておくと安心です。
出典: 国土交通省「『宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン』を策定しました」
「責任を負わない」特約を付けても、知っていて黙っていたことには売主が責任を負う
民法572条では、売主が知っていて伝えなかった事実は、「責任を負わない」という免責特約の対象から外れます。
個人どうしの売買では、引き渡したあとに見つかった不具合について「売主は責任を負わない」と、契約書に書くことがあります。これを免責特約といい、原則として有効です。
それなら特約を付けて黙って売ればいい、と考える人もいるでしょう。
しかし、特約で売主が責任を免れるのは、売主自身も知らなかった不具合の場合です。
騒音の苦情が記録に残っていれば、売主が知っていたことは記録から分かります。そのため、特約を付けて黙って売っても、売主は責任を問われると考えておくとよいでしょう。
2020年4月に改正された今の民法にも、この決まりがあります。改正前の判決であっても、黙って売ったときの売主の責任は、今も同じように考えられます。
出典: 法務省「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について」
告知すれば値下がりは売るときに済み、隠せば売ったあとに賠償で払うことになる
迷惑な隣人が残る限り、告知しても隠しても、売主は値下がりの分を負担することになります。
告知しておけば、その負担は売り出しや価格交渉の段階で済みます。
さらに告知しておくと、売主は売ったあとで責任を問われにくくなります。売主の責任は、引き渡した家が「契約の内容と違う」ときに問われるためです。
騒音の苦情を書類に書き、買主がそれを知って買えば、その事実は契約の内容に含まれます。あとで買主から「聞いていない」と言われにくくなります。
告知して売る場合と隠して売る場合の違いを、次の表で比べます。
| 告知して売る | 隠して売る | |
|---|---|---|
| 値段が下がるタイミング | 売り出しや価格交渉のとき | 売ったあと、ばれたとき |
| 下がる額 | 買主との話し合いで決まる | 判決では家の価値の2割とされた |
| 売ったあとの責任 | 書いた事実については問われにくい | 免責特約があっても負う |
| 上乗せされる負担 | ほぼゼロ | 裁判の手間と費用、仲介会社ともめるおそれ |
| 住み替えへの影響 | 最初から資金計画に組み込める | 新居に移ったあとで賠償を求められる |
隠して売ると、値下がりの分の負担に、裁判の手間と費用が上乗せされます。住み替えの資金計画を立てるなら、値下がりを最初から見込んでおける告知のほうが、売主にとって安全といえます。
値下がりの大きさは、苦情のタイプと今の状態で変わる
騒音の苦情の記録は、苦情を受けた側・苦情を出した側・外の騒音の3つのタイプに分けられます。
自分がどのタイプで、問題が今も続いているかが分かれば、値下がりの大きさの見当がつきます。
苦情を受けた側・出した側・外の騒音の3タイプは、売ったあとに残るものが違う
売ったあとも苦情の相手や音を出す住人がそこに住み続けるタイプほど、値下がりは大きくなりやすいといえます。
3つのタイプの違いは、次の表のとおりです。
| 苦情を受けた側 | 苦情を出した側 | 外の騒音 | |
|---|---|---|---|
| よくある例 | 子どもの足音、楽器、ペットの鳴き声 | 上の階の足音、隣の部屋の話し声 | 道路、線路、飲食店、工事 |
| 売ったあとに残るもの | 苦情を言った隣人 | 音を出していた住人 | 音の原因(工事なら終わる) |
| 買主の心配 | 自分も苦情を言われないか | 同じ音に悩まされないか | 音がいつまで続くか |
| 判決との近さ | 最も近い(同じ構図) | 近い(困った隣人が残る) | 遠い(人どうしの対立とは別) |
| 値下がりの大きさ(目安) | 小〜大(隣人の言動しだい) | 中〜大 | 小〜中 |
騒音の苦情による値下がりは物件ごとに違うため、表では%の代わりに大・中・小で示しています。
2004年の判決で家の価値が2割下がったのは、苦情を受けた側のケースです。自分がどの列に当たるかを確かめ、その列の「判決との近さ」を見ておくと、2割を目安にしてよいかが分かります。
苦情を受けた側は、自分たちが引っ越しても苦情を言った隣人が残る
苦情を受けた側の売主は、2004年の事件で家を売った一家と同じ立場にあります。
このタイプに当たるのは、例えば、子どもの足音や楽器、ペットの鳴き声で、下の階や隣の部屋から苦情を受けた場合です。
音を出していた自分たちが引っ越せば、音の原因はなくなります。そのため、売るときの問題は小さいと考える人もいるでしょう。
しかし2004年の事件では、売主一家が出ていっても隣人は残り、子どものいる買主一家が同じ目にあいました。
このタイプの部屋を買う人が心配するのは、「自分も苦情を言われないか」です。子どもがいる家族や、楽器を弾く人、ペットを飼う人ほど気にします。
そうした人が買うのをためらうと、買いたい人が減り、売主は値引きを求められやすくなります。
同じ苦情を受けた側でも、苦情の出方によって判決との近さは変わります。管理会社を通した穏やかなやり取りが一度あったくらいなら、判決からは遠いといえます。
強い口調の抗議や嫌がらせが続いていたなら、判決に近いと考えておくとよいでしょう。
苦情を出した側は、音を出していた住人が残り、買主が同じ音に悩まされやすい
苦情を出した側の部屋を買う人は、前の持ち主と同じ音を聞くことになります。
このタイプに当たるのは、例えば、上の階の足音や隣の部屋の話し声に悩み、管理会社に申し入れた場合です。
このタイプの部屋を買う人が心配するのは、「同じ音に悩まされないか」です。その音は誰が住んでも聞こえるため、買いたい人の多くが同じように気にします。
子どもの有無などに関係なく気になる音なので、苦情を受けた側よりも値引きを求められやすいと考えられます。困った隣人が残るという点でも、2004年の判決に近いといえます。
ただし、音を出していた住人がすでに引っ越していれば、音の原因は消えています。その場合は、判決からも遠くなります。
住人が替わった時期と、その後は静かになったことを、買主に説明できるようにしておきましょう。
外の騒音は、工事のように終わる音と道路のように続く音で値下がりの大きさが違う
外の騒音は人どうしの対立とは別なので、値下がりは小さめと考えられます。
このタイプに当たるのは、例えば、道路や線路、近くの飲食店、建物の工事の音について、管理会社や役所に苦情を出した場合です。
音のもとが道路や店、工事なので、買主が隣人とのもめごとに巻き込まれる心配は小さいといえます。その一方で、売主が音を止める手立ては限られます。
工事の音なら、終わる予定の時期が現場の掲示などで分かります。工事が終わってから引き渡すなら、買主への影響は小さくなります。
道路や線路の音は、これからも続きます。ただ、同じマンションで同じ向きの部屋も、同じ音を聞いています。
そのため、その部屋が売れた価格には、音の分がある程度含まれているとみられます。苦情の記録があっても、その価格からの値下がりは小さくおさまると考えられます。
飲食店のように、営業時間や店の入れ替わりで音が変わるものは、工事と道路の中間と考えておくとよいでしょう。
同じタイプでも、問題が今も続いているか、解決したかで値下がりの大きさが変わる
同じタイプの苦情でも、解決したことを記録で示せれば、値下がりは小さくなります。
今の状態ごとの買主の受け止め方と値下がりの大きさを、次の表にまとめました。
| 今の状態 | 買主の受け止め方 | 値下がりの大きさ(目安) |
|---|---|---|
| 今も続いている | 買えば自分も巻き込まれる | 大 |
| 解決したが、それを示す記録がない | 本当に終わったのか分からず、悪いほうに想像する | 中 |
| 解決して、その後は苦情がないと記録で示せる | 過去の出来事として受け止めやすい | 小 |
買主が信用するのは、売主の「もう解決しました」という言葉より、管理会社の記録のような第三者の資料です。
あわせて買主は、苦情の頻度と時間帯も気にします。例えば、深夜に何度も続いた苦情は、昼間に一度だけあった苦情より重く受け止められます。
同じ「解決済み」でも、記録の有無で値下がりの大きさが変わります。
査定と近くの成約価格から、自分の値下がり額を数字で出す
自分の物件でいくら下がるかは、不動産会社の査定で確かめられます。
苦情を伝えて出してもらった査定額と、近くで実際に売れた価格を比べると、値下がり額の目安が分かります。
苦情のことを伝えたうえで、複数の会社に同じ説明をして査定を頼む
苦情のことを最初に伝えておくと、不動産会社が出す査定額は、告知を前提にした金額になります。
査定を頼むときに伝える項目は、次の5つです。
- 苦情のタイプ(受けた側・出した側・外の騒音)
- 苦情があった時期と回数
- 何の音についての苦情か
- 管理会社や理事会の対応
- 今の状態(続いている・解決した・記録がある)
どの会社にも同じ内容と同じ言い方で伝えておけば、査定額の差を、会社ごとの見方の違いとして比べられます。
査定の依頼先は、少なくとも3社を目安にするとよいでしょう。
担当者に「この査定額は苦情の告知を織り込んでいますか」と聞く
苦情の告知を織り込まずに出た高い査定額で売り出すと、あとで値下げすることになりがちです。
内覧や交渉の途中で苦情の話が出ると、最初から伝えた場合より買主の不安は大きくなります。2004年の事件でも、内覧の最中に隣人が苦情を言い、購入希望者が購入を見送りました。
査定額が出たら、担当者に例えば次のように聞いておくと、その金額が告知を前提にしたものかが分かります。
- 「この金額は、騒音の苦情を告知する前提で出したものですか」
- 「苦情のことで、いくらくらい調整しましたか」
- 「似た事情のある物件を売ったことはありますか。そのとき、価格はどうなりましたか」
不動産会社は、売却の依頼を取るために、高めの査定額を出すこともあります。質問への答えがあいまいな会社は、候補から外して考えてよいでしょう。
査定額を近くの成約価格と比べ、その差を値下がり額の目安にする
苦情がなかった場合の相場は、近くで実際に売れた価格(成約価格)から自分で計算できます。
成約価格は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」や、不動産流通機構の「レインズ・マーケット・インフォメーション」で調べられます。
計算の手順は次のとおりです。
- 同じマンションか、近くで築年数や広さが似た物件の成約価格を3〜5件集める
- それぞれの価格を広さで割り、1㎡あたりの単価を出す
- 単価の平均に自分の部屋の広さを掛け、苦情がなかった場合の相場を出す
- 告知を前提にした査定額との差を出す
ただし、この差には階数や日当たりなど、騒音以外の違いも混ざります。
そのため、差のうち苦情による分がいくらかを、担当者に聞いておくと安心です。
買取の査定額を聞いておくと、値下がりの下限が分かる
買取の査定額を知っておくと、仲介で大きな値引きを求められたときに、その値引きを受け入れてよいかを判断できます。
買取とは、不動産会社が自分で物件を買い取る売り方です。不動産会社は、買ったあとのリスクや、売り直す手間と費用を見込んで値段をつけます。そのため買取の価格は、買主を探して売る仲介より低くなるのが一般的です。
つまり買取の査定額は、どうしても手放すときに受け取れる金額の目安です。
仲介で売り出したあと、大きな値引きを求められたら、値引き後の金額を買取の査定額と比べましょう。
両者の差が小さくなっているなら、値引きを受け入れる前に、買取に切り替えることも含めて担当者と相談するとよいでしょう。
買取の査定を頼むときも、苦情のことは仲介と同じ内容で伝えておくと安心です。前提が同じなら、仲介で値引きしたあとの金額と買取の査定額を、そのまま比べられます。
物件状況等報告書の書き方ひとつで、買主が求める値引き額は変わる
買主は、物件状況等報告書に書かれた騒音の内容を読んで、求める値引きの額を考えます。
物件状況等報告書は、売主が物件の状態を買主に伝えるための書類です。苦情のことをこの書類に正確に書いておけば、売主は売ったあとで「聞いていない」と言われにくくなります。
報告書の騒音の記載は、時期・内容・対応・現状の4点で書く
買主は、報告書の騒音の記載から、苦情のもとになった問題が今も続いているかを読み取ろうとします。
騒音のことは、次の4点に分けて書くと伝わりやすくなります。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| いつ | 苦情があった時期と回数 |
| どんな | 何の音についての苦情か |
| 対応 | 誰が、どう対応したか |
| 現状 | 今どうなっているか |
「苦情がありました」とだけ書いて現状が抜けていると、買主は「今も続いているのでは」と最悪の場合を想像します。そうなると、買主は値引きの幅を大きめに求めてきます。
反対に、対応と現状まで書いてあれば、買主は苦情を過去の出来事として受け止めやすくなります。
報告書の書式は、仲介会社によって少しずつ違います。騒音のことを書く場所は、騒音や近隣とのトラブルの欄か、備考の欄です。どちらに書くかは、担当者に確かめておくと安心です。
同じ事実でも、現状まで書いておけば、買主が求める値引き額は小さくなります。
タイプ別の記入例
どのタイプでも、4点を事実だけで短く書けば、買主は自分で判断できます。
3つのタイプごとの記入例は、次のとおりです。どれも架空の例なので、日付や内容は自分のケースに合わせて置き換えるとよいでしょう。
苦情を出した側の例のように、苦情のもとがまだ続いている場合も、頻度と時間帯まで書いておきましょう。
そこまで書いてあれば、買主は住んだあとの様子を自分で想像できます。そのほうが、値引きの話し合いもまとまりやすくなります。
相手の名前や感情的な評価、推測は、報告書に書くと逆効果になる
報告書を事実に絞ると、買主は余計な不安を抱かずに読めます。
報告書から省いておきたいことと、その理由は次のとおりです。
| 省くもの | 例 | 省く理由 |
|---|---|---|
| 相手の名前や部屋番号 | 「〇〇号室の△△さん」 | プライバシーにかかわり、新しいもめごとの種になる |
| 相手への評価 | 「非常識な人です」「とても神経質です」 | 買主が売主の感情を読み取り、必要以上に不安になる |
| 推測 | 「また苦情が来るおそれがあります」 | 根拠のない予想が、買主の想像を悪いほうへふくらませる |
苦情の相手は、「上の階の住戸」「隣の住戸」のように、部屋の位置だけで書けば伝わります。
ただし、評価や推測を省くことと、事実を隠すことは別です。苦情があったことや、その時期・対応・現状は、すべて書いておきましょう。
事実はすべて書き、評価と推測は省く。この書き方なら、買主は苦情の中身だけを見て判断できます。
「解決した」と書くなら、それを示す記録を管理会社から集めておく
報告書に「解決しました」と書くなら、最後の苦情の日付が分かる記録を、管理会社から取り寄せておくと安心です。
集めておきたい記録は、例えば次のとおりです。
- 管理会社への申し入れの日付と内容
- 理事会や総会の議事録のうち、その件を扱った部分
- 注意をうながす掲示物の写し
- 管理会社からの回答や、相手とのやり取りの記録
- 最後の苦情の日付と、その後の申し入れの有無(管理会社に確かめた結果)
手元にない記録は、管理会社に問い合わせれば取り寄せられます。
最後の苦情があった日から今日までの期間を示せれば、買主は問題が終わったと判断しやすくなります。
集めた記録は仲介会社に渡し、買主から聞かれたときに見せられるようにしておきましょう。
報告書の内容と重要事項説明書の記載を、契約の前に突き合わせる
物件状況等報告書と重要事項説明書で騒音の書き方が食い違うと、買主は「どちらが本当なのか」と疑います。
重要事項説明書は、仲介会社が契約の前に、物件の大切な情報を買主に説明するために作る書類です。食い違いがあると、売主がせっかく報告書に正直に書いても、買主からの信用を失ってしまいます。
2004年の事件でも、トラブルの情報が買主本人に伝わらないまま、契約が結ばれました。裁判所は、売主側の仲介会社にも責任があると判断しています。
売主も、伝えた内容が重要事項説明書を通じて買主本人に届くことを、自分の目で確かめておく必要があります。
そのために、報告書の写しを担当者に渡し、重要事項説明書に騒音の件がどう書かれるかを、契約の前に見せてもらうとよいでしょう。言い回しや日付がずれていれば、その場で直してもらえます。
売主と仲介会社が同じ内容を同じ言葉で伝えれば、売ったあとのもめごとを防ぎやすくなります。
まとめ:騒音の苦情は告知して売り、値下がりは苦情のタイプと記録の有無で見積もる
騒音の苦情を知りながら黙って売ると、売ったあとで売買代金の2割ほどを賠償として求められることがあります。告知して売れば、値下がりは売るときに済み、その幅は苦情のタイプと今の状態で変わります。
次の一歩は、管理会社から苦情の記録を取り寄せ、最後の苦情の日付を確かめることです。これを飛ばすと、報告書に「解決しました」と書いても買主に信じてもらえず、大きな値引きを求められるおそれがあります。
記録が集まったら、苦情の内容を同じ言葉で3社以上の不動産会社に伝え、告知を前提にした査定額を出してもらいましょう。住み替えのトビラでは、騒音の苦情がある部屋を告知して売るときの値下がりと伝え方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
住み替えのトビラ 
