「当社のお客様が買いたいと言っています」。売り出しから間もなく担当者にそう言われたとき、素直に喜んでよいのか、迷う売主は多いはずです。
先に答えを書きます。両手仲介そのものは合法で、他社にも紹介された上で自社の顧客が最も高い条件を出したのなら、売主の損はゼロです。損が出るのは、担当者が買主の側にも立つことで値引きに寄りやすい構造と、両手にしたい動機が他社への紹介を止める(囲い込み)ときです。しかも日本の法律は、両手であることを売主に告げる義務までは定めていない形です。
この記事では、両手仲介の仕組みと報酬、売主が受ける4つのデメリット、両手が起きやすい会社と契約の特徴(大手の両手比率と手数料率の読み方)、損しない両手の条件、そして避け方の順に整理します。
両手仲介の仕組みと報酬
両手仲介とは、1つの不動産会社が売主と買主の両方から仲介の依頼を受け、両方から仲介手数料を受け取る取引です。売主側だけ(または買主側だけ)を担当する取引は片手仲介と呼びます。まず、この2つで会社の報酬がどう違うか、法律上どう扱われているかを押さえます。
片手仲介と両手仲介で報酬が2倍違う
不動産会社が売買の仲介で受け取れる報酬には、国土交通大臣が告示で定めた上限があります。報酬告示の第二は、価格を区分してそれぞれに割合を掛ける形で上限を定めています。
宅地建物取引業者が宅地又は建物…の売買又は交換の媒介に関して依頼者から受けることのできる報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。)は、依頼者の一方につき、それぞれ、当該売買に係る代金の額…を次の表の上欄に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に同表の下欄に掲げる割合を乗じて得た金額を合計した金額以内とする。
| 代金の区分 | 割合(消費税等相当額を含む) |
|---|---|
| 200万円以下の金額 | 5.5% |
| 200万円を超え400万円以下の金額 | 4.4% |
| 400万円を超える金額 | 3.3% |
この区分計算の結果は、税別で表すと「代金の3%+6万円」と同じ金額になります。不動産会社の説明で使われる「3%+6万円」は、この告示の計算を短く言い換えた形です。
大事なのは、上限が「依頼者の一方につき」と書かれている点です。国土交通省の解釈・運用の考え方は、双方から受け取る場合の扱いをこう説明しています。
依頼者の双方から報酬を受ける場合及び依頼者の一方のみから報酬を受ける場合のいずれにあっても依頼者のそれぞれ一方から受ける報酬の額が当該限度額以下でなければならない。
つまり、同じ会社が買主とも媒介契約を結べば、買主からも上限まで受け取れます。1件の売却で会社の報酬は最大2倍になります。
5,000万円のマンションで計算すると、200万円×5.5%+200万円×4.4%+4,600万円×3.3%=171万6,000円(税込・税別156万円)です。両手仲介なら売主と買主から同額ずつで、合計343万2,000円(税込・税別312万円)になります。同じ1件の仕事で報酬が2倍になるため、会社には「自社で買主を見つけたい」という動機が構造として生まれます。この動機が、後で説明するデメリットの出発点です。
出典: 国土交通省 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和45年建設省告示第1552号) 出典: 国土交通省 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方
両手仲介は法律で認められている
両手仲介は法律で認められた取引です。民法には、1人が契約の両方の当事者の代理人になることを制限する規定があります。
同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。(民法108条)
不動産の仲介は、この「代理」ではなく、契約の成立に向けて動く「媒介」です。不動産流通推進センターは、両手媒介と双方代理の関係をこう整理しています。
この場合の媒介業者は、売主の代理人として行動したり、買主の代理人として行動するわけではなく、また、契約の一方の当事者になるわけでもないので、何ら民法第108条の双方代理や自己契約の禁止規定に抵触するものではない。単に、媒介の受託者として、売主・買主双方に対し、それぞれ公正中立な媒介業務を行うべく「善管注意義務」と「報告義務」などの受託者としての義務を負うに過ぎない(民法第656条、第644条、第645条等)。
両手であっても、会社は売主と買主の双方に対して善管注意義務と報告義務を負う立場です。この記事で扱うデメリットは、その義務が果たされる範囲の外側で、報酬の構造が判断をどちらへ寄せるか、という話になります。
海外に目を向けると、米国では州ごとに両手仲介の扱いが法制化されています。土地総合研究2016年冬号の論文は、あらゆる両手仲介を許容する代わりに売主と買主の双方への開示(disclosure)を求める州(ニューヨーク州など)、同一企業内の両手仲介は許容しつつ同一人物による両手仲介を禁じる指定両手仲介(designated dual agency)の州(コロラド州・メリーランド州など)、両手仲介を禁じて売主・買主のいずれの立場にも立たない取引仲介(transaction brokerage)を許容する州(フロリダ州など)の3類型を挙げています。同じ論文は、日本について「米国のように、両手仲介を行う際の事前の告知義務が定められていれば」と仮定の形で書いており、日本には事前の告知義務の定めがない前提に立っています。
つまり、両手仲介そのものは合法で、告知は会社の任意に委ねられている。売主の側で「両手かどうか」を意識して動く必要がある、というのが日本の前提です。
出典: 不動産流通推進センター 両手媒介と「双方代理」の禁止規定との関係 出典: e-Gov法令検索 民法 出典: 土地総合研究所 土地総合研究2016年冬号 中古住宅市場における両手仲介と手数料率設定
売主は契約時まで両手かどうか分からない
売主が両手仲介だと気づくのは、多くの場合、購入申込みが入ったときです。申込みを持ってきた買主の担当者が、自分が依頼した会社の営業であれば両手、別の会社の営業であれば片手です。
売り出し中は、担当者から「反応はどうですか」と聞いても、その反応が自社の顧客からなのか他社からなのかは、報告に書かれて初めて分かります。
このため、両手仲介のデメリットは「後から気づく」形で表れます。契約の直前に「当社のお客様で決まりました」と言われても、その時点で他社にどれだけ紹介されていたかを売主が確かめる手段は限られます。仲介手数料の仕組みそのものは、別記事で整理しています。
両手仲介で売主が受けるデメリット
両手仲介で売主が失うものは、「価格」「機会」「時間」「情報」の4つに分けられます。両手そのものから生まれる不利(価格・情報)と、両手を狙う動きから生まれる不利(機会・時間)は別物なので、分けて見ていきます。
値引きの交渉で担当者が売主の側に立ちきれない
両手仲介では、担当者は売主と買主の両方から報酬を受け取る立場です。買主から「あと100万円下がれば買います」と言われたとき、担当者はその要望を売主に伝え、「この条件で決めましょう」と勧めやすくなります。
売主が100万円値下げすると、売主の手取りは100万円減ります。一方、会社の報酬は価格に対する3%分、つまり片側で3万円(税別)、両側でも6万円(税別)の減少にとどまります。担当者にとって、値下げをして早く決めるほうが合理的になりやすい構造です。
片手仲介なら、買主側の担当者が値引きを求め、売主側の担当者はそれに対抗する立場です。両手では、この対抗する役目が同じ人の中に同居します。担当者に悪意がなくても、売主の側に立ちきれないのは構造の問題です。
囲い込みで他社の買主と出会う機会が減る
両手にしたい動機が強い会社では、他の不動産会社から「この物件を買主に紹介したい」と問い合わせが来ても、「商談中です」「図面を作成中です」と断ることがあります。これが囲い込みです。
国土交通省と4つの不動産流通機構が売主向けに出したチラシは、囲い込みをこう説明しています。
「囲い込み」とは、一部の宅建業者が自社の利益のため、売主・買主双方の媒介を行うことを目的として、故意に物件の取引状況を隠し、売主の意向に反して物件の紹介を行わないような行為を指します。こうした行為は、早期の成約可能性を狭め、売主や買主の利益を損なう可能性があり、市場の公正を害するものです。
売主にとっての損失は、高く買う人と出会う母数が減ることです。レインズに登録された物件は全国の不動産会社が見られるので、本来は他社の顧客も買主候補になります。囲い込みはその母数を自社の顧客だけに絞ります。囲い込みのサインと見抜き方は、別記事で整理しています。
出典: 国土交通省 宅地や建物の(専属)専任媒介契約を締結したらレインズの「ステータス管理機能」を活用しましょう!
売却が長引いて値下げや買取の提案が早まる
他社からの紹介を断れば、内覧の数は減り、売却は長引きます。すると担当者から「反応が薄いので値下げしましょう」「当社で買い取ります」「買取保証を付けましょう」という提案が早まります。
値下げすれば自社の顧客で決めやすくなり、買取なら会社は仲介手数料ではなく転売の利益を得られます。売主から見ると、売り出しから1か月ほど(目安で、物件と時期によって幅があります)で値下げや買取を勧められる形になり、「市場の反応が悪い」と受け取ってしまいます。
ただし、相場より高く売り出していれば値下げの提案は正当です。見分ける目安は、提案の根拠に「他社からの問い合わせ件数」「内覧の内訳」が示されているかです。示されないまま値下げを勧められるなら、両手を優先する運用を疑います。
買主の予算や本気度が売主に伝わらない
両手仲介では、買主の情報を握っているのは担当者だけです。買主の予算の上限、他の物件と比較しているか、住宅ローンの審査状況、いつまでに決めたいか。こうした情報は、担当者が伝えて初めて売主に届きます。
売主が聞けるのは「買主さんの予算がこれが限界で」という言葉までです。それが本当に限界なのか、担当者が早く決めるために丸めた数字なのかは、売主の側から確かめる手段はごく限られます。
片手仲介なら、売主側の担当者が買主側の担当者から情報を引き出し、売主の利益になる形で交渉します。両手では、この情報の非対称が売主に不利に働きます。だからこそ、申込みが入ったときは「他の問い合わせや申込みはあるか」を売主から聞く必要があります。
両手仲介が起きやすい会社と契約の特徴
両手仲介の起きやすさは、会社によって大きく違います。会社の顧客の抱え方、契約の種類、手数料の仕組みで、起きやすさが変わります。自分の依頼先を見分けるための特徴を4つ挙げます。
大手仲介は両手取引の比率が集計されている
大手の不動産仲介会社は、毎年の取扱件数・取扱高・手数料収入を決算で公表しています。両手取引の比率そのものは決算資料の外にありますが、業界紙の住宅新報が毎年の売買仲介実績としてまとめており、売主が読める形で公開されています。2024年度通期の集計から、大手5グループを抜き出すと次のとおりです。
| 会社 | 手数料率(2024年度) | 両手取引比率(2024年度) |
|---|---|---|
| 住友不動産ステップ | 4.98% | 50.90% |
| 三井不動産リアルティグループ | 4.57% | 38.42% |
| 東急リバブル | 4.38% | 32.61% |
| 野村不動産ソリューションズ | 4.02% | 21.97% |
| 三菱地所グループ | 3.45% | 4.45% |
同じ大手でも、比率には10倍以上の開きがあります。購入希望者を多く抱える会社ほど、自社の顧客で決められる場面が多く、両手比率が高くなります。この数字は会社の方針や顧客層の違いを示すもので、良し悪しは別の観点で決まります。ただ、売主として「自分の物件が両手で決まる確率」を知る目安にはなります。
出所は住宅新報2025年5月27日号「2024年度通期売買仲介実績」です。表の2列は独立した数字ではなく、両手取引比率のほうが手数料率から逆算された推定値です。次のh3で、その計算の中身を開きます。
手数料率が3.3%を超える分は両手の証拠になる
手数料率は、仲介の手数料収入を取扱高で割った数字です。片手仲介だけなら、会社が受け取れるのは片側の上限までなので、告示が定める割合の上限は3.3%(400万円を超える部分・消費税等相当額を含む)です。
全件が両手なら、売主と買主の両方から受け取るので、比率は約6.6%まで上がります。つまり、手数料率が3.3%を超えている分は、両手で受け取った分です。式にすると「両手取引比率 = 手数料率 ÷ 3.3% − 1」で、前のh3の表はこの式で並んでいます。住友不動産ステップの4.98%なら 4.98÷3.3−1=0.509 で50.90%、三菱地所グループの3.45%なら 3.45÷3.3−1=0.045 で4.45%です。手数料率4.5%なら 4.5÷3.3−1=0.36 で、3件に1件ほどが両手だった計算になります。
住宅新報の2025年度の集計では、主要39社の手数料率の平均は4.32%でした。同じ式に当てはめると、業界の平均では3割ほどが両手で決まっている計算になります。各社の決算資料に取扱高と手数料収入が載っていれば、売主が自分で同じ計算をできます。依頼先を選ぶときの、公開された指標です。
出典: 国土交通省 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和45年建設省告示第1552号)
専任媒介の独占期間は両手を狙う時間になる
専任媒介契約を結ぶと、売主はその会社1社にしか依頼できず、期間は最長3か月です。会社は契約の締結の日から7日以内(専属専任は5日以内・いずれも会社の休業日数は算入しません)にレインズへ登録する義務がありますが、裏返せば、登録までの期間と3か月の独占期間は、他社が紹介を通せる相手が1社しかいない時間です。
この期間に自社の顧客で決められれば、両手仲介が成立します。両手を優先する運用の会社にとって、専任媒介は都合のよい契約です。
専任媒介そのものは、1社に集中して動いてもらえる利点があります。問題は、独占の時間を「自社客で決めるための時間」として使われる場合です。専任を選ぶなら、登録証明書と売主専用画面で登録の状態を自分で見る前提で結びます。
出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法 出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法施行規則
仲介手数料の無料や半額は両手を前提にしている
「売主の仲介手数料が無料」「半額」をうたう会社があります。この仕組みは、買主側から受け取る手数料で利益を確保する、つまり両手仲介を前提に成り立っています。
売主の手数料が減ること自体は得です。ただ、自社で買主を見つけなければ利益が出ないので、他社の買主を紹介する動機が弱くなります。紹介の範囲が狭まれば、高く買う人と出会う機会が減り、手数料で得した以上に売却価格で損する場合があります。
同じ理由で、買取再販部門を持つ会社は、仲介で売れなければ自社買取へ、という誘導が起きやすくなります。買取は早く現金化したい売主には正当な選択肢ですが、市場で買主を探した結果を見た後で判断する順番を守ります。
両手仲介でも売主が損しない条件
両手仲介には、売主に不利にならない形もあります。他社に開かれた状態で、自社の顧客が最も高い条件を出したなら、両手でも売主の損はゼロです。損しない両手と、損する両手を分ける条件を整理します。
| 条件 | 損しない両手 | 損する両手 |
|---|---|---|
| 他社への紹介 | レインズに公開し、他社の内覧も入った | 他社からの問い合わせを断っていた |
| 申込みの競合 | 複数の申込みが競合した | 自社の顧客1組だけで決めた |
| 売主の判断 | 両手と知った上で価格を決めた | 「これが限界」と言われて下げた |
他社にも紹介された上で自社の買主が最も高い条件だった
レインズに登録され、図面も公開され、他社の担当者を通じた内覧も入っていた。その上で、自社の顧客が最も高い価格と良い条件で申し込んだ。この場合、両手仲介は「たまたま自社の顧客が勝った」だけで、売主の損はゼロです。
見分ける方法は、内覧の内訳です。内覧に立ち会えば、買主側の担当者の会社名が分かります。他社の内覧が複数入っていれば、市場に開かれていた証拠です。
逆に、内覧がすべて自社の顧客で、他社からの問い合わせが報告に出てこない状態で自社の顧客が申し込んだなら、比較の相手がいなかったことになります。同じ両手でも、意味がまったく違います。
複数の申込みが競合した末に成約した
申込みが複数入り、価格や条件を比べた上で1組に決めた場合、価格は市場で決まっています。その1組が自社の顧客だったとしても、他の申込みと比べて選ばれたのなら、両手による価格の不利は消えています。
担当者に「他に申込みや検討中の方はいますか」と聞き、複数いるなら条件を並べて見せてもらいます。宅建業法は、媒介契約の目的物である宅地や建物の売買の申込みがあったときは、遅滞なくその旨を依頼者に報告するよう会社に義務づけています。
競合がないまま「早く決めないと他に取られます」と急かされる場合は、逆に注意が必要です。競合の存在は、売主が確かめられる形で示してもらいます。
出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法 34条の2第8項
両手であることを知った上で売主が価格を決めた
担当者が「この買主は当社のお客様です」と最初に伝え、他社からの問い合わせ状況と合わせて説明した上で、売主が価格を決める。この順番が守られていれば、両手の構造的な不利はかなり薄れます。
問題は、両手であることを伏せたまま「買主さんの予算がこれが限界で」と値引きだけを求められる場合です。売主は判断の材料を持たないまま価格を下げることになります。
売主から「この買主は御社のお客様ですか」と聞くだけで、状況は変わります。両手だと分かれば、「では他社からの問い合わせ状況を教えてください」と続けられます。
両手なら売主側の仲介手数料を交渉できる
両手仲介では、会社の報酬は片手の2倍になります。売主にとっては、ここに交渉の余地があります。報酬の上限は告示で決まっていますが、国土交通省の解釈・運用の考え方は、上限の扱いをこう書いています。
媒介業務に対する報酬の額は、告示(昭和四十五年建設省告示千五百五十二号)で定める限度額の範囲内でなければならないが、この場合、報酬の限度額を当然に請求できるものではなく、具体的な報酬額については、宅地建物取引業者が行おうとする媒介業務の内容等を考慮して、依頼者と協議して決める事項であること。
自社の顧客で決まった場合、「両手で報酬が2倍になるので、売主側の手数料を下げてもらえませんか」と持ちかけるのは、筋の通った交渉です。会社にとっても、片手で他社に持っていかれるより、売主側を割り引いても両手で決めたほうが利益は大きい場合があります。
また、両手には話が早いという利点もあります。売主と買主の調整が1社の中で済むため、契約や引き渡しの日程が組みやすくなります。損しない条件が揃っていれば、両手は売主にとっても納得できる取引になります。
両手仲介のデメリットを避ける方法
避ける方法は、依頼前・契約・売り出し後の3段階に分けると整理できます。両手そのものを完全に避けるより、「他社に開かれた状態」を保ち、「価格を決める材料」を自分で持つことが目的です。
依頼前に両手比率と片手仲介の方針を聞く
依頼先を決める前に、担当者に3つ聞きます。「御社の両手取引の比率はどれくらいですか」「自社のお客様から申込みが入ったとき、他社からの問い合わせ状況も教えてもらえますか」「片手仲介を方針にしていますか」。
この質問に具体的に答えられる会社は、両手と片手の違いを売主に説明できる会社です。答えをはぐらかす、または「うちは囲い込みとは無縁です」とだけ言う場合は、比率の話を避けています。
質問すること自体が、抑止になります。売主が両手の仕組みを知っていると担当者に伝われば、他社への紹介を丁寧に扱う動機が生まれます。片手仲介を方針として明示している会社を選ぶのも1つの方法です。
一般媒介で複数社に依頼して独占を作らない
一般媒介契約なら、2〜3社に同時に依頼できます。1社が自社の顧客で決めようとしても、他の会社が別の買主を連れてくるので、独占が崩れます。両手を狙う動機が、会社どうしの競争で打ち消される形です。
一般媒介はレインズの登録も業務報告も任意です。その分、各社に「登録しているか」「反応はどうか」を売主が聞いて回る手間が増えます。
専任媒介の集中した営業を取るか、一般媒介の競争を取るかは、物件の売りやすさと売主の手間のかけ方で決めます。契約の種類の違いは、別記事で整理しています。
専任媒介ならレインズの取引状況を自分で見る
専任媒介を選ぶなら、レインズへの登録と登録証明書の交付が会社の義務になります。証明書の下部にある二次元コードから、売主専用の確認画面に入り、取引状況(公開中・書面による購入申込みあり・売主都合で一時紹介停止中)と図面の登録を自分で見られます。二次元コードから簡単にアクセスできる仕組みは、国交省と4機構のチラシによれば令和7年1月から始まりました。
国土交通省の解釈・運用の考え方には、専属専任媒介契約や専任媒介契約に基づいて登録した物件について、取引の申込みの受付に関する状況等の登録内容が事実と異なるときは、宅建業法65条1項の指示処分の対象となる、と書かれています。売主が確認画面を見る習慣を持つだけで、他社への紹介を止める運用はしにくくなります。
登録の確認手順と、確認画面で見るべき項目は別記事で整理しています。
出典: 国土交通省 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 34条の2関係9(1)
自社の買主の申込みは他社の反応を聞いてから判断する
売り出し後、担当者から「当社のお客様から申込みが入りました」と言われたら、すぐに返事をせず、3つを書面で聞きます。「他社からの問い合わせは何件ありましたか」「内覧のうち他社のお客様は何組でしたか」「他に申込みや検討中の方はいますか」。
この答えが揃って初めて、申込みの価格が市場の中でどの位置にあるかが分かります。他社の内覧が複数入った上での申込みなら、両手でも安心して進めます。他社の反応がないまま値引きを求められているなら、「もう少し他社の反応を待ちたい」と返す選択があります。
値下げや買取保証の提案にも、同じ質問で根拠を求めます。両手仲介のデメリットは、売主が「価格を決める材料」を持てば、多くを防げます。依頼先の選び方の全体は別記事で整理しています。
まとめ:両手仲介の損は、他社に開かれていたかで決まる
両手仲介そのものは合法で、会社は売主にも買主にも善管注意義務と報告義務を負います。それでも売主が損をするのは、報酬が1件で2倍になる構造が、値引きの勧めと他社への紹介の絞り込みへ働くときです。裏返せば、レインズに公開され、他社の内覧と問い合わせが入った上で自社の顧客が最も高い条件を出したのなら、両手であっても売主の損はゼロで済みます。
次の一歩は、依頼先を決める前に「御社の両手取引の比率はどれくらいですか」と聞き、各社の決算資料から手数料収入÷取扱高を自分で計算してみることです。この2つを飛ばすと、売り出し後に「当社のお客様で決まりました」と言われたときに、その申込みが市場の中で高いのか安いのかを判断する材料を持たないまま、値引きに応じる側へ回ります。
依頼先を選んだ後は、レインズの取引状況と内覧の内訳を自分の目で確かめる番です。住み替えのトビラでは、両手仲介の見分け方と避け方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
住み替えのトビラ 
