定期借地権マンションの売却|残存期間と価格の関係・精算項目・売り方

定期借地権マンションの売却は残存期間で決まる|価格の仕組みと精算項目・売り方

定期借地権付きの分譲マンションを持っていて、住み替え(買い替え)を考え始めた。買ったときは「70年あるから大丈夫」と思っていたのに、売るとなると残存期間が気になります。あと何年で売れなくなるのか、保証金や解体準備金は戻るのか。

調べても出てくるのは「早く売りましょう・ご相談ください」ばかりで、自分の残存期間でどう判断すればいいかは書かれていません。

定期借地権マンションは、残存期間に加えて立地・管理状態・地代・融資条件などで価格が変わります。残り35年を境に一律に値下がりするわけではありません。まず今の条件での査定額と、想定される買主を確かめることが判断の出発点です。

この記事では、残存期間が価格に関わる仕組み、売却時の精算項目、買主候補と売り方、高く売るための準備を説明します。

定期借地権マンションの価格に残存期間が関わる仕組み

残存期間は、あと何年使えるか、買主がどんなローンを利用できるかに関わります。ただし、期間だけで売却額が決まるものではありません。

期間満了時の扱いを確認する

一般定期借地権は、存続期間を50年以上として設定し、契約の更新も、建物の築造による期間の延長も、建物の買取請求もしないと定める借地権です。借地借家法22条に定められています。国土交通省は定期借地権について、旧法の借地と違い契約の更新は一切なく、期間が満了すれば借地人が建物を収去し土地を原状回復して返すことになる、と解説しています。

この前提があるため、定期借地権マンションの資産価値は、期間満了の時点でゼロに近づきます。所有権のマンションなら、建物が古くなっても土地の価値が残ります。定期借地権では、土地の価値が最初から売主の手元にありません。

同じ築年数でも残存期間が異なれば、買主が利用できる年数も変わります。契約の満了日と、解体・土地返還の条件を確認します。

出典: e-Gov法令検索「借地借家法」(第22条 定期借地権) 出典: 国土交通省「定期借地権の解説」

残存期間がローン条件に影響する場合がある

フラット35では、定期借地権の場合、通常の借入期間と残存期間の短いほうが上限になります。残り25年なら、通常の上限が35年でも借地期間による制限を受けます。

同じ借入額で期間が短くなると、月々の返済は重くなります。ただし、これだけで「35年を切ると価格が何割落ちる」とは判断できません。ほかの商品や審査条件もあり、残存期間が長くても融資が保証されるわけではありません。

出典: 住宅金融支援機構フラット35「敷地が借地の場合」

年数別の一律の価格表では判断できない

定期借地権の査定では、同じ棟や近隣の成約事例、残存期間、地代、管理・修繕状況などを合わせて見ます。所有権マンションの価格に一定割合を掛けただけでは、自分の部屋の価格は分かりません。

査定時は「同じ棟の取引があるか」「残存期間をどう評価したか」を聞くと、価格の理由が分かりやすくなります。

地代と解体準備金が買主の月々の負担に上乗せされる

定期借地権マンションには、地代や解体準備金を負担する物件があります。地代は土地を借りる対価、解体準備金は満了時の解体に備える積立です。前払地代方式などもあるため、自分の契約と管理資料で実額を確かめます。

買主から見ると、所有権のマンションにはない月々の負担です。「毎月の支払いが重い」と映り、価格に響きます。

一方で、定期借地権マンションでは土地の固定資産税と都市計画税がかかりません。地代と解体準備金の年額と、所有権なら払う土地分の税額を並べて示すと、差が思ったより小さい物件もあります。買主の抵抗を減らす材料になります。土地分の税額の目安は、固定資産税評価額から計算できます。調べ方は別の記事で説明しています。

固定資産税評価額の調べ方|書類・役所・ネットで確認する方法 固定資産税評価額の調べ方|書類・役所・ネットで確認する方法

立地の良さが残存期間による下落を緩める

駅や施設への近さなど、その場所に住む価値も査定に関わります。残存期間が減っても、市況や物件条件によって価格が上がる可能性はあります。

将来の値上がりを当てにする前に今の価格を知る

待てば必ず損をするとも、必ず高く売れるともいえません。今の残存期間でいくら売れるかを知ると、待つか動くかの判断ができます。 査定と一緒に、売却期間の見込みや今後の費用負担も聞きましょう。

売却時に精算する定期借地権固有の項目

定期借地権に固有の項目は、契約や管理規約に沿って整理します。

項目確認すること
保証金返還請求権の移転、価格に含むか別精算か
前払地代前払の対象期間と、買主に引き継ぐ条件
解体準備金返金・承継の規定、残高、追加負担の予定
地代売主・買主の負担期間と精算方法
承諾料権利の種類、承諾の要否、契約上の金額

保証金の返還請求権が買主に移る定めかを契約書で確かめる

定期借地権マンションでは、分譲時に地主へ「保証金」を預けている例があります。区分所有者が持分に応じて負担し、期間の満了時に返還される仕組みで、1戸あたり数百万円になる物件もあります。

保証金返還請求権の扱いは契約を確認します。下記の不動産流通推進センターの解説は事業用定期借地の相談事例で、分譲マンションすべての精算方法を示すものではありません。

自宅では、返還請求権を誰が引き継ぐか、売買価格に含むか別に精算するかを不動産会社に確認します。別精算でないから全額損をする、とは限りません。価格に含める場合は重ねて加算しないようにします。

出典: 公益財団法人不動産流通推進センター「事業用定期借地における借地権譲渡等の場合の保証金返還請求権」

前払地代方式なら既払いの地代の価値を価格に含める

定期借地権マンションの中には、分譲時に数十年分の地代を一括で前払いしている「前払地代方式」の物件があります。毎月の地代がない、または少ない代わりに、分譲価格に地代が含まれていた形です。

前払の対象期間に買主が地代を払わずに済む条件なら、その内容を販売資料で伝えます。既払額をそのまま全額価格に上乗せできるとは限りません。査定にどう織り込んだかを確認します。

解体準備金の承継と将来負担を確認する

管理組合が積み立てる解体準備金は、売却時の返金や買主への承継を管理規約などで確認します。積立があっても解体費全額をまかなえるとは限らないため、残高と計画、追加負担の見込みも伝えます。

売り出す前に、管理組合の会計資料で解体準備金の積立額と計画を確かめます。積立が遅れていると、買主が将来の追加負担を心配して価格に響きます。積立が順調なら、それを資料に載せます。

地代の負担期間を精算する

引渡し日を基準に日割りするなど、売主・買主の負担期間を売買契約で決めます。地主への支払方法と、売主・買主の間の精算は別です。二重払いがないよう確認します。

金額は大きくありませんが、地代の滞納があると地主の承諾が出にくくなります。売却の前に、滞納がないことを確かめておきます。

地主の承諾料は契約で定額や不要と決まっている例がある

賃借権の譲渡では原則として地主の承諾が必要です。地上権なら原則として承諾なく譲渡できますが、契約上の届出などは確認します。定期借地権という名称だけでは、どちらかは分かりません。

承諾料にも一律の法定割合はありません。分譲時の契約で定額や不要と定めているかを確認します。

承諾の取り方、承諾料が高いときの交渉、地主が承諾しないときの手段は、別の記事で詳しく説明しています。ここでは、承諾料が手取りに影響する項目の一つだと押さえておきます。

保証金を二重に足さず手取りを計算する

概算手取り=売買代金+別途受け取る精算金−売却費用−ローン返済額

保証金を売買代金に含めた場合は、別途加算しません。承諾料・仲介手数料・登記費用などの負担と、地代等の精算を確かめます。譲渡所得税がかかる場合は、その資金も別に確保します。

この式ではローン返済額をすでに引いています。さらに同じ残債を引かないようにしましょう。敷地の権利の内容などは買主への重要事項説明にも関わるため、契約資料を不動産会社へ渡します。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第35条 重要事項の説明等)

残存期間に応じて買主候補と資料を考える

残り30年なら投資家だけ、20年未満なら買取だけ、と一律には分かれません。物件と融資条件に応じて、次の候補を検討します。

買主候補・選択肢判断に必要な情報
自分で住む買主居住できる期間、月々の費用、ローンの取扱い
賃貸運用する買主賃貸可能な条件、家賃、空室・修繕・解体までの収支
買取会社現状の買取額、費用、引渡し日
売らずに賃貸する借地契約・規約上の可否、将来負担、満了までの収支

住む人にはローンと毎月の負担を示す

不動産会社に、その物件を扱う金融機関があるか確認してもらいます。過去に融資実績があっても、今回の承認を保証しません。資料では確認時点と条件を示し、「融資可」と断定しないようにします。

投資家には期間満了までの収支を示す

年間家賃を価格で割る表面利回りだけでは不十分です。地代・管理費・修繕費・税金・空室と、満了時の費用を見込みます。年120万円の家賃を5%で割れば2,400万円ですが、残り20年なら満室の総家賃だけで同額です。経費を払う余地がなく、この式だけで売値を決められないことが分かります。数字は説明用の仮定です。

買取と保有は受け取る時期も比べる

買取査定を受ければ、今受け取れる金額が分かります。将来の家賃合計と比べる場合は、費用や未収の可能性だけでなく、お金を受け取る時期の違いも考えます。賃貸後は入居者がいる状態での売却となり、買主候補が変わることもあります。

満了後の話は確定事項と検討段階を分ける

期間の延長・新たな契約・建物譲渡・底地購入は、管理組合で話題に出ただけでは実現が決まったことになりません。地主や権利者との合意、必要な手続きは内容によって異なります。売却資料には確定した内容と検討中の話を分けて記載します。

定期借地権マンションを高く売るコツ

まず今の条件で査定を受ける

残存期間が減れば必ず価格が下がる、というものではありません。それでも、今の査定額を知る意味はあります。売却を決める前に価格と買主候補を聞けば、保有を続ける費用と比べて判断できます。

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定期借地権の売買経験がある会社を保証金の扱いで見分ける

査定では、次を聞きます。

  • 同じ棟や近い条件の成約事例はあるか
  • 保証金は価格に含めるか、別に精算するか
  • 今の残存期間で相談できる金融機関はあるか

その場で即答できるかだけでなく、契約を確認したうえで説明してくれるかを見ます。

フラット35を含む使える金融機関を販売資料に明記する

フラット35でも借地の物件を扱える場合がありますが、担保・建物・借主などの条件があります。残存期間が35年以上というだけで35年の融資が決まるわけではありません。

不動産会社を通じて取扱いを確認し、販売資料には条件付きで正確に記載します。

出典: 住宅金融支援機構フラット35「敷地が借地の場合」

保証金と解体準備金と満了時の扱いを最初から資料に出す

地代・保証金・解体準備金・満了時の扱いを、契約資料に基づいて早めに共有します。不明点を減らすことが、買主の検討を進める助けになります。

投資家も候補なら、賃料の根拠と、諸費用・満了時負担まで含む収支の見込みを用意します。買主の人数が何倍になる、といった効果を保証するものではありません。

売却資金が必要なら先に売れる条件を確かめる

新居の購入に売却代金を充てるなら、先に査定額・売却期間・手取りの見込みを確認します。売り先行が合うかは、自己資金や仮住まいの可否によって変わります。

売却と購入の決済日をどう組むかは、別の記事で説明しています。

住み替えの同時決済と引渡し猶予とは?仕組みと条件 住み替え(買い替え)の同時決済と引渡し猶予とは?仕組みと条件

まとめ:残存期間と契約条件を伝えて今の価格を知る

定期借地権マンションは、残存期間だけでなく立地や管理・融資条件でも価格が変わります。「35年を切れば急落」「早いほど必ず高い」とは決めつけず、自分の物件で確かめましょう。

分譲時の契約書と管理規約があれば、満了日・保証金・地代・解体準備金を確認します。資料が見つからなくても査定相談は始められます。不足する書類は、管理会社などに確認しながらそろえましょう。

契約書が読めたら、次に確かめるのは今の残存期間での価格です。定期借地権の売買経験がある会社に査定を頼み、保証金の精算をどう扱うか、この残存期間で使える金融機関はどこかを、同じ場で聞きます。住み替えのトビラでは、残存期間ごとの買主層と売り方や、定期借地権マンションを高く売るコツも含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。