借地権付きの分譲マンションを売って住み替えたいのに、不動産会社から「地主の承諾が要ります」と言われて足が止まっている。承諾は本当に要るのか、誰にどう頼むのか、承諾料はいくらで誰が払うのか。調べても出てくるのは戸建ての借地権の話ばかりで、自分のマンションにどう当てはまるかが分かりません。
先に答えを言います。分譲マンションでは、承諾の要否も承諾料も、分譲時の契約書で先に決まっている例が多くあります。よく見る「借地権価格の10%」は慣行の数字で、法律に定めはありません。そして地主が承諾しなくても、裁判所の許可という出口が法律に用意されています。
この記事では、自分のマンションで承諾が要るかどうかの確かめ方、地主の承諾を取る手順、譲渡承諾料の相場と交渉のコツ、そして地主が承諾しないときの手段を順に説明します。
自分のマンションで承諾が要るかどうかの確かめ方
承諾が要るかどうか、要るならどんな条件かは、手元の書類で分かります。確かめる順は5つです。
- 登記事項証明書で、敷地権が地上権か賃借権か
- 土地賃貸借契約書と管理規約で、承諾の定め
- 分譲時の包括承諾と、定額の名義書換料の有無
- 地主が個人か法人か公的機関か
- 同じ棟の過去の売買で、承諾がどう取られたか
順に見ていきます。
登記事項証明書で敷地権が地上権か賃借権かを確かめる
借地権とは、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権をいうと借地借家法2条1号に定められています。つまり借地権には2種類あります。このうち賃借権は、賃貸人の承諾を得なければ譲り渡せないと民法612条1項に定められているので、地主の承諾が要ります。地上権は物権なので、地主の承諾なしに譲渡できるとされています。
分譲マンションの敷地の権利は、どちらの例もあります。自分のマンションがどちらかは、法務局で取れる登記事項証明書で分かります。区分所有建物の登記記録の表題部には敷地権の欄があり、そこに敷地権の種類が記録されている、と法務局が案内しています。
「地上権」なら譲渡に地主の承諾は原則不要ですが、契約上の届出・費用や買主の融資条件は確認します。「賃借権」なら、承諾の条項を続けて確認しましょう。
出典: e-Gov法令検索「借地借家法」(第2条 定義) 出典: e-Gov法令検索「民法」(第612条 賃借権の譲渡及び転貸の制限) 出典: 法務局「区分所有建物の『敷地権』とは,どのようなものですか?」(情報番号1317)
土地賃貸借契約書と管理規約で承諾の定めを読む
賃借権の場合、承諾の要否・承諾料・手続きは、分譲時の土地賃貸借契約書に書かれています。あわせて、重要事項説明書と管理規約(使用細則)にも、譲渡時の手続きが書かれていることが多いです。
・土地賃貸借契約書 … 譲渡・転貸の条項、承諾料(名義書換料)、地代、契約期間
・重要事項説明書 … 借地権の要点と、譲渡時の承諾料の説明
・管理規約(使用細則) … 譲渡時の届出先と手続き
手元になければ、管理組合か管理会社、または分譲した会社に写しを求めます。
承諾料を一律10%として計算する前に、自分の契約を確認します。分からない条項は、不動産会社と窓口に確かめましょう。
分譲時の包括承諾と定額の名義書換料があるか確かめる
分譲マンションでは、分譲時に地主と分譲会社が、あとの区分所有者の売買まで見越して契約を結んでいる例があります。「区分所有者が第三者に譲渡することをあらかじめ承諾する」という包括承諾や、「名義書換料は1戸あたり定額」という定めです。
包括承諾の対象や条件に今回の売買が当てはまれば、個別交渉が少なく済む場合があります。ただし、届出や指定書類、費用の支払いが残ることはあります。包括承諾があるだけで、承諾料が固定・不要になるとは限りません。
定めが見つからない場合は、窓口に確認します。書類にないから直ちに承諾料を払う、と決める必要はありません。
地主の属性より、今回の窓口と回答予定を聞く
地主が法人・自治体でも、内部決裁に時間がかかる場合があります。個人なら必ず遅いとも限りません。登記と契約書で相手を確かめ、管理会社などに次を聞きます。
| 確認すること | 聞く内容 |
|---|---|
| 窓口 | 管理会社経由か、地主の担当者へ直接か |
| 申請 | 指定様式・添付資料・費用は何か |
| 日程 | いつ申請でき、回答予定日はいつか |
| 条件 | 買主が個人か不動産会社かで違いがあるか |
同じ棟の過去の売買で承諾がどう取られたかを聞く
同じ棟の売買は参考になります。ただし、契約の変更や買主の条件によって違う場合もあるため、前例と今回の要件を分けて聞きます。
管理組合か管理会社に、過去の売買で承諾がどう取られたか、承諾料はいくらだったか、回答に何日かかったかを聞きます。個人情報は伏せたまま、手順と金額の目安だけ教えてもらえれば足ります。
買主の金融機関が求める地主の書面についても、過去に扱った様式があるか聞いておくと役立ちます。譲渡承諾と融資に必要な確認は別なので、必要書類は今回の金融機関にも確かめます。
地主の承諾を取る手順
窓口の確認、事前相談、買主決定後の正式申請へと進めます。承諾待ちのまま契約する場合の条件と、決済までの日程も確認しましょう。
承諾の窓口が管理組合か地主本人かを確かめる
承諾を誰に頼むかは、契約で決まっています。管理組合か管理会社を通して地主に届く形が多く、地主に直接申請する形、分譲した会社が窓口を残している形もあります。
窓口を間違えると、時間だけが過ぎます。契約書の「譲渡」の条項を読むか、管理会社に「売却時の承諾はどこに申請しますか」と聞けば分かります。
窓口が管理会社なら、申請書の様式も管理会社が持っています。地主本人なら、自分か不動産会社が地主に連絡します。
買主が決まる前に売却の予定を地主に伝えておく
正式な承諾の申請は買主が決まってからですが、「売却を考えている」と早めに伝えておく価値があります。承諾の手順、必要な書類、承諾料の額を先に聞けるからです。
承諾料が先に分かれば、売り出し価格に織り込めます。手順と期間が分かれば、引き渡し日を現実的に決められます。買主が決まってから初めて聞くと、承諾料の額で手取りが想定より減ったり、承諾の期間で引き渡しが遅れたりします。
最初の問い合わせ文例(当サイト作成)
「マンションの売却を検討しています。譲渡承諾の要否、申請窓口、必要書類、承諾料と回答までの予定を教えてください。不動産会社が買主となる場合の違いも確認したいです。」
地代の滞納があると承諾が出にくくなるので、この時点で滞納がないことも確かめます。
買主が決まったら申請書と買主の資料を出す
買主が決まったら、窓口の指定に沿って申請します。申請書、契約条件、登記資料など、必要なものを確認しましょう。買主の個人情報は、必要な範囲と提出先を説明して同意を得たうえで扱います。
申請時には回答希望日を伝え、書類不足の有無と回答の見込みを確認します。一般的な「数週間」という目安だけで決済日を確約しないようにします。
承諾の条件を文書に残し、融資用の書類も確認する
承諾は、対象の買主・物件、承諾料と支払時期、引き継ぐ地代・契約条件が分かる書面で残します。口頭の合意だけに頼らず、双方が同じ内容を確認できる形にしましょう。
賃借権そのものは抵当権の対象になりません。一方、建物への融資で地主の書面を求めるか、地上権や土地への担保設定が必要かは、権利の種類と金融機関の条件で変わります。「承諾書を必ず2種類そろえる」と決めず、金融機関の指定様式を確認します。
出典: e-Gov法令検索「民法」(第369条 抵当権の内容)
承諾前に契約するなら、不承諾時の扱いを決める
売買契約には、状況に応じて停止条件や解除条項を設けます。停止条件は条件の実現により効力を生じさせるものですが、条項の書き方によって契約の扱いは変わります。
- 承諾の取得期限と担当者
- 取得できない場合の終了手続き、手付金等の返還
- 承諾料・申請費用の負担者と上限
不動産会社と確認し、争いがある場合は弁護士に相談します。短い定型文だけで、違約金や費用の問題がすべてなくなるわけではありません。
出典: e-Gov法令検索「民法」(第127条 条件が成就した場合の効果)
承諾の回答の期間を見込んで引き渡し日を組む
窓口の回答予定日、管理組合などの会議日、買主の融資審査と書類準備を合わせて日程を組みます。地主が個人か法人かだけで期間を決めず、遅れたときの対応も確認します。
住み替え先の購入を先に決めている場合は、住み替え先の決済日から逆算して、承諾の申請をいつまでにするかを決めます。売却と購入の決済日をどう組むかは、別の記事で説明しています。
譲渡承諾料の相場と交渉のコツ
承諾料に法律上の一律の料率はありません。まず自分の契約に金額や計算方法があるかを確認し、提示額の算定根拠を聞きます。
「10%」は法律上の決まりではない
不動産流通推進センターの2018年の相談事例では、地域による承諾料の目安が解説されています。ただし、個別事例への回答であり、現在のすべての分譲マンションに共通する料金表ではありません。
割合が提示されたら、何の価格に掛けるのかを確認します。土地の所有権価格、借地権の価格、建物を含むマンションの売買価格は別です。
出典: 公益財団法人不動産流通推進センター「借地権譲渡の承諾料等に関する地主との条件交渉の方法」
分譲マンションでは契約で定額や不要と決まっている例がある
定額・不要とする契約がある場合は、その条項が今回にも適用されるかを確かめます。提示額が契約と違うときは、変更の根拠と計算を確認しましょう。
高いと感じたら、契約上の根拠と算定を聞く
不動産流通推進センターの2018年の相談事例は、地主が土地所有権価額の10%と地代の増額を求めたケースです。同センターは、借地権の価額を基準とする慣行などを説明して交渉する方法を示しています。この事例の結論を、自分の契約にも当然に通用するとは考えません。
確認の文例(当サイト作成)
「提示いただいた承諾料について、根拠となる契約条項と計算の内訳を確認できますか。分譲時の定めや同じ棟の手続きも踏まえて相談したいです。」
連絡は不動産会社と役割を決めて進めます。法的な争いの交渉が必要になったら、弁護士へ相談しましょう。
出典: 公益財団法人不動産流通推進センター「借地権譲渡の承諾料等に関する地主との条件交渉の方法」
裁判所の手続きも、金額や許可が決まっているわけではない
借地借家法19条には、地主の承諾に代わる許可を求める手続きがあります。裁判所は許可に金銭の支払いなどの条件を付けることができますが、許可の可否や金額は事案ごとの判断です。
「断れば地主にお金が入らない」「裁判でも必ず10%だから値下げすべき」とは言えません。契約や経緯を整理し、話し合いと法的手続きの費用・時間を弁護士に確認します。
出典: e-Gov法令検索「借地借家法」(第19条 土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可) 出典: 公益財団法人不動産流通推進センター「借地権譲渡の承諾料等に関する地主との条件交渉の方法」
地代の変更は承諾料と分けて確認する
承諾の条件として地代の変更を求められたら、承諾料と地代を別々に整理します。地代の増減請求には借地借家法11条の要件がありますが、当事者間の合意や裁判所が付ける条件も関わり得ます。
「承諾とは別だから無効」と即断せず、現在の契約、変更理由、買主が引き継ぐ負担を確認します。価格への影響も不動産会社に見てもらいましょう。
出典: e-Gov法令検索「借地借家法」(第11条 地代等増減請求権)
承諾料の負担者は契約で買主負担や折半にもできる
承諾料は、慣行では売主が払います。ただ、法律で決まっているわけではなく、売買契約で買主負担や折半にもできます。
売買代金と承諾料を合計した買主の負担、費用を引いた売主の手取りを確認します。負担者・額・支払時期を書面にし、金額未確定なら上限や超過時の扱いも合意します。
地主が承諾しないときの手段
承諾が必要なのに得られない場合は、理由を確認して交渉し、解決できなければ法的な手続きを相談します。買取会社に変えても、承諾が不要になるわけではありません。
承諾なしで売ると契約を解除されるおそれがある
最初に、避けたい道を潰します。賃借人が地主の承諾を得ずに第三者へ賃借物を使用・収益させたときは、賃貸人は契約の解除ができると民法612条2項に定められています。解除されると、買主も借地権を失い、建物を使い続けられなくなります。
裁判では、地主との信頼関係を壊すほどの事情がない場合は解除が認められないこともあります。ただ、それを当てにして無断で売るのは、買主を巻き込む危ない賭けです。
承諾が必要な取引を、無断のまま進めないことが大切です。承諾や裁判所の許可をどう得るか、専門家と確認します。
出典: e-Gov法令検索「民法」(第612条 賃借権の譲渡及び転貸の制限)
承諾しない理由を確認し、解決できる条件を探す
まず、承諾料、買主の条件、地代の未払いなど、何が問題になっているかを書面で整理します。理由によって対応は変わります。
折り合わない場合は、弁護士に契約と経緯を見せ、裁判所への申立てが使えるかを確認します。法的手続きの話をすれば相手が必ず応じる、と期待するものではありません。
借地借家法の承諾に代わる許可を裁判所に申し立てる
交渉で承諾が出ないときの法的な手段が、借地借家法19条1項の「承諾に代わる許可」です。借地権者が借地上の建物を第三者に譲渡しようとする場合に、その第三者が賃借権を取得しても地主に不利となるおそれがないのに地主が承諾しないときは、裁判所が借地権者の申立てにより、地主の承諾に代わる許可を与えられます。条文の言葉から読み取れる申立ての前提は3つです。
- 譲渡しようとする段階であること
- 譲り受ける第三者が決まっていること
- 借地上に建物があること
裁判所は、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、譲渡を必要とする事情その他一切の事情を考慮して判断します。借地の期限が迫っている場合や、建物が朽ちている場合に許可が出ないことがあるのは、この考慮によるものです。残存期間が決まっている定期借地権のマンションについては、別の記事で説明しています。
手続きは、東京地方裁判所の案内によれば、申立てのあと、おおむね1か月から1か月半後に第1回の審問期日が指定され、必要に応じて審問を重ね、主張の整理が終わった段階で鑑定委員会に意見を求め、意見書が提出されてから1か月から1か月半程度で審問期日を開き、和解か決定で終わります。
出典: e-Gov法令検索「借地借家法」(第19条 土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可) 出典: 東京地方裁判所「第2 借地非訟事件手続の流れ」
申立てから決定までの期間と手数料を見込む
手続き全体の期間は、審問や鑑定の必要性、争点によって変わります。東京地裁の案内にある各段階の日数を、そのまま全体の完了期限としないようにします。依頼する弁護士に見込みを聞きましょう。
費用は、裁判所に払う申立ての手数料が計算で決まります。民事訴訟費用等に関する法律の別表第一の一三の項で、借地借家法41条の事件の申立ては、借地権の目的である土地の価額を基礎に手数料を算出すると定められています。基礎となる額が1,000万円なら2万円、5,000万円なら6万8,000円です。東京地方裁判所は、この基礎となる土地の価額を、譲渡の許可の申立てでは固定資産評価額の2分の1で計算すると案内しています。これに弁護士費用と、予納する郵便切手が加わります。
期間は、住み替えの日程に大きく響きます。買主が待てるとは限りません。この手続きは、地主が理由なく承諾しないときの最後の手段であって、最初から当てにする道とは別です。
出典: e-Gov法令検索「民事訴訟費用等に関する法律」(別表第一の一三の項) 出典: 東京地方裁判所「第3 費用」
地主が介入権で買い取ると申し立てる場合がある
承諾に代わる許可の手続きには、地主側の「介入権」という仕組みがあります。借地借家法19条3項は、承諾に代わる許可の申立てがあった場合に、裁判所が定める期間内に地主が自ら建物の譲渡と賃借権の譲渡を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所が相当の対価を定めてこれを命ずることができる、と定めています。
地主が介入の申立てをした場合、裁判所が相当の対価や条件を定めて地主への譲渡を命じることがあります。申立てだけで必ず売買が成立するわけではなく、価格も「借地権の9割」と固定されていません。介入がなければ元の買主への譲渡が自動で許可される、という制度でもありません。
出典: e-Gov法令検索「借地借家法」(第19条第3項 借地権設定者の介入権)
買取を相談する場合も、承諾の条件を確かめる
承諾手続きに慣れた買取会社へ、査定と手続きの相談を並行して進める方法もあります。必要な承諾は買取でも省略できません。誰が連絡を担当し、承諾が得られない場合に契約や費用をどう扱うか、決済日は何を条件に確定するかを確認します。
承諾料を引くと、いくら残るのか。 査定額と費用を一緒に確認すれば、売却を進めるか判断しやすくなります。
地主が高齢で意思表示ができない、相続で地主が複数になっている、という場合は、承諾の相手を特定するところから始まります。
法定相続人の全員か、遺産分割後の所有者か。不動産会社と司法書士に相談して相手を確定してから、承諾の申請に進みます。
まとめ:承諾の要否と承諾料は分譲時の契約書で先に決まっている
分譲マンションでは、承諾の手順や承諾料が分譲時の契約で定められている場合があります。「借地権価格の10%」は法律上の決まりではありません。包括承諾や定額の定めがあれば、その適用条件と届出・書類を確かめましょう。
次の一歩は、法務局で登記事項証明書を取り、分譲時の土地賃貸借契約書を手元に揃えて、敷地権の種類と譲渡の条項を自分の目で読むことです。ここを飛ばして「10%」を前提に動くと、払わずに済む承諾料を払うか、逆に承諾料を売り出し価格に織り込めないまま契約して手取りが減ります。書類が手元になければ、管理組合か管理会社、分譲した会社に写しを求めます。
条項が読めたら、承諾の窓口と同じ棟の前例を確認します。過去の手順や金額は参考になりますが、今回の回答予定や買主の条件は改めて確認が必要です。住み替えのトビラでは、地主承諾の進め方や費用の確認も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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