管理会社が撤退したら、マンションの価値はどうなる?下がる4つの場面と売り時

管理会社が撤退したら、マンションの価値はどうなる?下がる4つの場面と売り時

「契約を終了させていただきます」という通知が管理会社から届いたら、マンションを売るときの価格は下がるのでしょうか。

価格を左右するのは撤退そのものより、その後の管理費や管理の中身、後任が決まるまでの期間です。

住み替えでマンションを売ることも考えている持ち主に向けて、撤退後に起きることと売り時の決め方を説明します。

管理会社がマンションを選ぶ時代になった

管理会社は人手不足のため、引き受けるマンションを自分たちで選ぶようになっています。

多くのマンションでは、持ち主全員でつくる「管理組合」が、清掃や会計、設備の点検を管理会社に任せています。これまでは、管理組合が管理会社を選ぶ側でした。

ところが今は、管理会社のほうが人手不足に悩んでいます。業界団体のマンション管理業協会は、2026年4月から7月に会員の管理会社へ調査を行いました。回答した290社のうち、管理員の採用に苦労している会社の割合は56%でした。

人手が限られる管理会社は、契約を続けるマンションと手放すマンションを分け始めています。

出典: マンション管理業協会「マンション管理会社状況調査2026」結果概要

撤退は3か月前の通知1枚で決まる

管理の契約が国のひな形どおりなら、管理会社は少なくとも3か月前に書面で申し入れるだけで、契約を終えられます。

このひな形は、国土交通省が作った「標準管理委託契約書」です。解約の申し入れは、管理組合と管理会社のどちらからでもできます。契約の期限が来る前でも、申し入れから3か月で契約を終えられます。

また、どちらからも更新の申し出がなければ、契約は期限が来た時点で終わります。そのため、管理組合が「続けてほしい」と頼んでも、管理会社がやめると決めれば契約は終わります。

管理組合は、その3か月のうちに次のことを済ませる必要があります。

  • 理事会で対応を話し合う
  • 後任の候補を探し、見積もりを取る
  • 総会を開いて新しい会社を決める
  • 新しい会社に仕事を引き継ぐ

理事会は持ち主の代表が集まる会議で、総会は持ち主全員で物事を決める会議です。総会を開くには、前もって持ち主全員に案内を出す必要があります。

後任探しに使える時間は、案内を出す期間の分だけ3か月より短くなります。撤退の通知が「突然」と受け止められやすいのは、このためです。

出典: 国土交通省「マンション標準管理委託契約書」(第21条 解約の申入れ・第23条 契約の更新等)

管理費が安いマンションほど手放されやすい

管理会社は、管理費を何年も据え置いてきたマンションほど赤字を抱えやすく、撤退を考えるようになります。

管理会社の収入は、管理組合から受け取る「管理委託費」です。このお金は、持ち主が毎月払う管理費から出ています。

ここ数年、管理員や清掃スタッフの人件費は上がり続けています。委託費を何年も据え置いたマンションでは、上がった人件費の分だけ、管理会社が赤字を抱えることになります。

管理会社は、委託費の値上げを頼んで総会で否決されると、撤退を選ぶことになります。つまり「うちは管理費が安い」というマンションほど、実は管理会社が赤字を抱えているおそれが大きいといえます。

報道や専門家の指摘をもとにすると、次のサインに多く当てはまるマンションほど、撤退の通知が届きやすいと考えられます。

  • 管理委託費を長いあいだ据え置いている
  • 戸数が少ない
  • 管理会社からの値上げの依頼を、総会で断ったことがある
  • 住民からの要望や苦情が多く、管理会社の担当者がよく替わる
  • 管理員の勤務日や勤務時間が減った

戸数が少ないマンションでは、管理会社が受け取る委託費の総額が小さくなります。それでも、管理員の手配や設備の点検には、大きなマンションとほぼ同じ手間がかかります。そのため管理会社から見ると、もうけの小さい仕事になりがちです。

管理員の勤務日や勤務時間が減ったマンションでは、管理会社がすでに人手のやりくりに困っていると考えられます。

当てはまる項目が多いなら、持ち主は総会の資料で委託費の値上げの話に注意しておくと、撤退の前ぶれに早く気づけます。

撤退の理由になった赤字は後任の会社にも当てはまる

前の管理会社が赤字を理由に撤退したマンションは、後任の会社にとっても赤字になりやすいと考えられます。

管理員や清掃スタッフの人件費は、どの管理会社でも同じように上がっています。同じ委託費で引き受ければ、後任の会社も前の会社と同じように赤字を抱えることになります。

人手不足も、業界全体に共通する悩みです。後任の会社にも、人手の余裕は少ないとみられます。

そのため、管理組合の後任探しは、次の3つのどれかに落ち着きやすくなります。

  • 委託費を上げて引き受けてもらう
  • 委託費は据え置き、管理の中身を減らして引き受けてもらう
  • 引き受ける会社が見つからず、自主管理に移る

同じ条件のまま後任が決まる例もあります。ただ、撤退の理由が赤字である以上、委託費と管理の中身のどちらかは変わると考えておくと安心です。

撤退されたマンションの価値はどれだけ下がるのか

後任の管理会社が今と同じか、それより良い条件で決まれば、マンションの価値への影響は小さいと考えられます。

管理会社が替わること自体は、よくあることです。国土交通省の令和5年度マンション総合調査は、管理会社に仕事を任せている管理組合に、管理会社の決め方を聞いています。分譲時の管理会社から別の会社に替えた管理組合の割合は、24.5%でした。

この調査は、管理組合と管理会社のどちらから契約を終えたかを分けずに数えています。管理会社が替わったマンションは多いので、替わったことだけを理由に買い手が避けるとは考えにくいといえます。

一方、撤退の後に次の4つの場面になったマンションは、売るときに値下げを求められやすくなります。

  • 管理費が上がったとき
  • 管理の中身が減ったとき
  • 自主管理に切り替えたとき
  • 後任がまだ決まっていないとき(空白期間)

売り手が求められる値下げの大きさは、4つのうちどの場面に当たるかで変わります。

出典: 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果(データ編)管理組合向け調査の結果」(表43② マンション管理業者の決定方法)

委託費の値上げを受け入れると管理費の値上がりが売値に響く

委託費の値上げで管理費が上がると、買い手がそのマンションに出せる金額は下がります。

マンションを買う人の多くは、住宅ローンの返済に管理費と修繕積立金を足して、毎月払える額から予算を決めます。管理費が上がれば、その分だけローンの返済に回せるお金が減ります。

例えば管理費が月1万円上がると、住宅ローンで借りられる額は次のように減ります。

管理費が月1万円上がった場合の試算(仮定の計算)

前提は、返済期間35年、毎月同じ額を返す方式、金利は年3.830%です。

年3.830%は、2026年10月のフラット35(返済期間21〜35年・融資率9割以下)で最も多い金利です。

この前提では、月1万円の返済で借りられる額は約231万円になります。

つまり管理費が月1万円上がると、買い手が住宅ローンで借りられる額は約231万円減ります。

自分の数字で計算するときの式は、借りられる額=毎月の返済額×{1−1÷(1+月利)^返済回数}÷月利です。

「^返済回数」は、(1+月利)を返済回数の数だけ掛け合わせることを表します。月利は年の金利を12で割った値です。

毎月の返済額に管理費の値上げ額を、金利に借りる予定の金融機関の金利を入れると、減る額がわかります。

そのため買い手は、借りられる額が減った分の値下げを求めることがあります。

ただし、上がった後の管理費が周りのマンションと同じくらいなら、価格への影響は限られます。買い手は、近くのほかのマンションと管理費を比べて物件を選ぶからです。

東日本不動産流通機構によると、2025年度に首都圏で成約した中古マンションの管理費は、平均で月13,895円でした。値上げ後の管理費がこの平均を大きく上回るほど、売り手は値下げを求められやすくなります。

出典: 東日本不動産流通機構「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2025年度)」

出典: 住宅金融支援機構「フラット35の借入金利の推移」

値上げを避けて管理を削ると内見で見抜かれる

委託費を据え置く代わりに管理の中身を減らすと、共用部分の汚れや傷みが、内見に来た買い手の目に入ります。

後任の会社は、仕事を減らした分だけ費用を抑えて引き受けます。減らされやすい仕事には、次のようなものがあります。

  • 共用部分の清掃の回数
  • 管理員がマンションにいる日数や時間
  • 植え込みの手入れや見回り

管理員の勤務を減らす動きは、管理員の人手不足でさらに広がっています。マンション管理業協会は2026年の調査で、管理員を採るための工夫を管理会社に聞いています。

協会のまとめでは、管理員を採るための工夫の61%が「勤務日数・勤務形態・勤務時間等の見直し」でした。管理員が毎日長い時間いるマンションは、これから減っていくと考えられます。

内見に来た買い手は、例えば廊下のほこりや散らかったゴミ置き場、だれもいない管理員室に気づきます。

管理の中身が減ったことは、書類からもわかります。国のひな形では、売却のときに管理会社が不動産会社へ伝える項目に、管理員の勤務日と勤務時間が入っています。

管理費を据え置いたマンションでも、管理を減らしたことは、内見と書類の両方から買い手に知られます。

出典: マンション管理業協会「マンション管理会社状況調査2026」結果概要

出典: 国土交通省「マンション標準管理委託契約書」(別表第5 宅地建物取引業者等の求めに応じて開示する事項)

後任が決まらず自主管理になると買い手が減る

後任が見つからずに自主管理へ切り替えたマンションは、買い手から避けられやすいといわれます。

自主管理のマンションでは、管理の質が、持ち主から選ばれた役員の働きしだいで変わるためです。

役員は、管理費の集金や帳簿づけを担います。清掃やエレベーターの点検は、役員が専門の会社と直接契約して頼みます。会計など一部の仕事だけを管理会社に任せる「一部委託」という方法もあります。

買い手が自主管理のマンションを買うときに特に気にするのは、次の3点です。

  • 役員が高齢になった後に管理を担う人
  • お金の管理のしかた
  • 将来の大きな修繕の計画

この3点に答えられる資料は、毎年の総会の記録や、収入と支出を持ち主に公開している会計報告、長期修繕計画などです。長期修繕計画は、何年後にどんな修理をするかを決めた計画です。

こうした資料があれば、買い手の不安はかなり和らぎます。自主管理になったマンションを売るなら、これらの資料を仲介会社に渡せるように準備しておきましょう。

後任が決まるまでの空白期間に売るといちばん買い叩かれる

後任がまだ決まっていない空白期間に売り出すと、売り手は4つの場面の中でいちばん大きな値下げを求められやすくなります。

管理費が上がった場合や自主管理になった場合なら、買い手は新しい管理費や管理する人を確かめてから買えます。

一方、空白期間のうちは、管理費の額も管理する人も、まだ白紙のままです。管理費が大きく上がることも、自主管理になることも考えられます。

そこで買い手は、いちばん悪い場合を想定して、大きめの値下げを求めます。管理の先行きが読みにくいマンションを、買う候補から最初に外してしまう買い手もいます。

空白期間に売り出すと、売り手は少ない買い手を相手に、大きな値下げの交渉をすることになります。

住み替えで売るなら「後任決定」の前か後か

撤退を告げられたマンションを住み替えで売る人は、後任が決まるまで待つか、待たずに売るかを選ぶことになります。

後任が決まるまでの空白期間は、売り手がいちばん値下げを求められやすい時期です。この章では、通知から後任が決まるまでの流れと、待つか売るかの分かれ目、買い手への伝え方を順に説明します。

通知から後任決定までの3か月で売り手が見ておきたい時点

通知から2か月目ごろに後任の見積もりが出ると、売り手は新しい管理費の額を知ることができます。

理事会のお知らせや総会の案内、議事録を読めば、理事以外の持ち主も後任探しの進み具合を追えます。

撤退の通知から新しい管理が始まるまでの流れと、各時点で売り手が確かめることは、次のとおりです。

時点(目安)起きること売り手が確かめること確かめる場所
通知が届く管理会社が撤退を申し入れる契約が終わる日理事会のお知らせ
1か月目理事会が後任の候補を探す候補の会社の有無理事会の報告、掲示板
2か月目候補から見積もりが出る・新しい管理費の額<br>・管理の中身の変化総会の案内と資料
3か月目総会で後任を決める後任の会社の名前総会の議事録
契約が終わる新しい管理が始まる引き継ぎの完了新しい管理会社のお知らせ

見積もりで新しい管理費と管理の中身がわかれば、売り手は求められそうな値下げの大きさに見当をつけられます。売るか待つかの最終判断は、見積もりが出てからにすると安心です。

ただし、3か月のうちに後任が決まらなければ、契約が終わった後も空白期間が続きます。

仲介会社への相談や査定の依頼は、通知が届いた時点で始めておくとよいでしょう。早めに相談しておけば、見積もりが出たときに、すぐ売り出しの準備に入れます。

後任決定を待つべきマンションと待たずに売るべきマンション

後任の候補が見つかり、値上げも小さく済みそうなら、後任が決まってから売るほうが高く売れると考えられます。

後任が決まれば、買い手が気にする新しい管理会社と管理費の額がはっきりします。そのため、売り手が求められる値下げは、空白期間に売るときより小さくなりやすいといえます。

後任決定を待つほうがよいマンションと、待たずに売るほうがよいマンションの目安は、次のとおりです。

後任決定を待つ待たずに売る
後任の見通し候補の会社があり、話が進んでいる候補が見つからず、自主管理になりそう
管理費の値上げ小さい、または周りのマンション並み大きく、周りより明らかに高い
住み替えの都合新居の引き渡しまで時間がある新居の支払い期限が迫っている

待っても条件が良くなる見込みが薄いなら、高く売ることより、早く売ることを優先してもよいでしょう。売れる前に新居の代金の残りを払う期限が来ると、そのお金を別に用意する必要が出てきます。

判断が分かれた2つの例(架空のケース)

後任決定を待ったAさん

Aさんのマンションでは、通知から1か月で後任の候補が2社見つかりました。見積もりでの管理費の値上げは、月2,000円ほどでした。新居の引き渡しは8か月後だったので、Aさんは後任が決まってから売り出しました。

待たずに売ったBさん

Bさんのマンションでは、後任の候補が見つからず、自主管理の話が出ていました。新居の代金の残りを4か月後に払う必要があったため、Bさんは後任を待たずに売り出しました。

※この2つの例は、説明のために作った架空の話で、金額や期間は仮の値です。

待たずに売るなら、値下げを求められることと、売れるまでの期間が延びることを、はじめから見込んでおきましょう。住み替え先の予算も、売却額を低めに見積もって組むと安全です。

撤退の事情を伝えたうえで2〜3社に査定を頼むと、売れそうな価格の幅がわかります。

撤退を隠して売れるか

撤退を隠しても、管理会社が替わることや新しい管理費の額は、売るときの手続きの中で買い手に伝わります。

不動産会社の仲介で売るときは、契約の前に、不動産会社が買い手へ「重要事項説明」をします。この説明は、宅地建物取引業法35条で不動産会社に義務づけられています。

マンションの場合、その説明には管理を任されている会社の名前と住所が入ります。管理費や修繕積立金の額も、説明する項目です。

そのため買い手は、契約の前に、新しい管理会社の名前も値上げ後の管理費も知ることになります。買い手が総会の議事録を読めば、撤退のいきさつがわかる場合もあります。

売り手が撤退のいきさつまで説明する必要があるかは、事情によって変わります。迷ったときは、説明が必要な範囲を仲介会社や宅地建物取引士に確かめておきましょう。

撤退がいずれ買い手に知られるのなら、大切なのは伝え方です。売り出す前に、次の3つを準備しておくと安心です。

  • 撤退の理由の説明
  • 後任の進み具合がわかる資料
  • 仲介会社への事前の連絡

撤退の理由が管理会社の赤字や人手不足なら、売り手は、建物ではなく管理会社側の事情だと説明できます。後任の候補や見積もり、総会の予定がわかる資料があれば、買い手は新しい管理の見通しを自分で確かめられます。

売り出す前に仲介会社へ事情を伝えておけば、仲介会社は買い手から聞かれそうなことへの答えを前もって用意できます。こうした準備をしておくと、売り手は撤退を知った買い手の不安を小さくできます。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第35条 重要事項の説明等)

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(第16条の2 第6号〜第8号)

まとめ:撤退の後の値下がりは、後任の条件と売り出す時期で大きく変わる

管理会社が撤退したマンションでいちばん大きな値下げを求められやすいのは、後任が決まる前の空白期間に売り出したときです。

撤退の通知が届いたら、2か月目ごろに出る後任の見積もりを、総会の案内と資料で確かめておきましょう。見積もりを見る前に売り出すと、新しい管理費を買い手に示せないまま、値下げの交渉に入ることになります。

次は、自分のマンションの管理費が周りより高いか安いかを、請求書と近くの売り出し物件の情報で確かめておきましょう。住み替えのトビラでは、管理会社が撤退したマンションの売り時も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。