一般媒介なら複数の不動産会社に同時に頼める。そう聞いて、では何社に頼むのがよいのかで止まる人は多いはずです。解説記事を読み比べても、2社から3社とするもの、社数を多めに勧めるものがあり、答えが割れています。
先に答えを書きます。社数の上限は、法律にも標準の約款にも置かれていない状態です。ただ、買主を連れてくる網のうちレインズ経由の部分は1社が登録すれば完成するため、社数を増やして増えるのは各社の自社顧客への窓口です。そこに連絡の手間と会社側の動きの鈍りが重なるので、現実的な線は2社か3社になります。
この記事では、社数の上限と仕組み、社数で変わる要素、2社と3社のどちらが向くかの条件、会社の組み合わせ方、途中で増やす・減らすときの連絡の手順を順に見ていきます。
一般媒介で依頼できる社数の上限と仕組み
一般媒介契約は、複数の不動産会社に同時に売却を頼める契約です。最初に線を引いておきたいのは、査定を頼んだ社数と、媒介契約を結ぶ社数は別だという点です。査定は3社でも6社でも受けてよい段階で、そのうち何社と契約するかが、この記事の主題です。査定の社数は、別の記事で扱っています。
この章では、次の3点を押さえます。
- 法律と約款が社数をどう扱っているか
- 明示型で契約書に何を書くか
- 複数の会社が同じ部屋をレインズに登録する状態がどう扱われているか
法律にも約款にも社数の上限はない
宅地建物取引業法34条の2第1項第3号は、媒介契約書に「依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することの許否及びこれを許す場合の他の宅地建物取引業者を明示する義務の存否に関する事項」を書くよう求めています。重ねて頼めるかどうかと、頼むなら会社名を明示する義務があるかどうかを書面に残す、という作りです。社数そのものの上限は条文に出てこず、国土交通省の標準媒介契約約款にも、一般媒介で依頼できる会社の数を制限する条項は置かれていない状態です。
つまり2社でも3社でも、極端に言えば10社でも、契約自体は成立します。上限を決めるのは法律ではなく、売主の手間と、会社側の動き方です。
社数の上限を置かない代わりに、法律と約款は「誰に頼んでいるかを明らかにする」仕組みを置いています。次のh3で見る明示型と非明示型の区別です。一般媒介で社数を考えるときは、この仕組みとセットで押さえておきます。
出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第1項第3号) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(一般媒介契約約款)
明示型では依頼先の会社名を契約書に書く
標準約款の一般媒介契約は「明示型」が基本です。契約書の冒頭に「依頼者は、重ねて依頼する宅地建物取引業者を明示する義務を負います」と書かれており、「1 依頼する当社以外の宅地建物取引業者」の欄に、契約の時点で頼んでいる他の会社の商号と主たる事務所の所在地を記入します。契約のあとで別の会社に頼もうとするときは、その旨を通知する形です(一般媒介契約約款第4条)。
伝えていない会社の仲介で売却が成立すると、依頼していた会社は、契約の履行のために使った費用の償還を請求できます(同第14条)。費用の額は約定報酬額、つまり協議して決めた報酬額が上限で、請求する会社は、現地調査の交通費や広告費などの明細書を作り、領収書等で金額を立証する決まりです。社数を増やすほど、通知の手間と通知漏れのときの負担が増える仕組みです。
他の会社に頼んでいることを伝えたくない場合は「非明示型」にできます。標準約款の契約書の特約欄に、適用除外の旨を書いてもらう形です。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(以下、運用指針)は、次の方法を示しています。
「10 特約事項」の欄に「本契約では、約款第4条及び第14条は適用せず、依頼者が乙以外の宅地建物取引業者に重ねて依頼する場合でも、その宅地建物取引業者を明示する義務を負わないものとします。」と記載し、「1 依頼する当社以外の宅地建物取引業者」の欄と「2 甲の通知義務」の第1号の箇所を斜線で抹消する等の方法によることとする。
(国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」第34条の2関係 6(3)⑩)
多くの会社は明示型の書式で契約を用意するため、非明示型を希望するなら契約前に伝えます。
出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(一般媒介契約書・一般媒介契約約款第4条・第14条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)⑦・⑩)
一般媒介の物件が複数社から登録される運用は織り込み済み
「一般媒介だとレインズ登録を断られる」と聞くことがあります。一般媒介にレインズ登録の法律上の義務はなく、登録するかどうかは契約書で決めます。約款も「この媒介契約において目的物件を指定流通機構に登録することとした場合」に登録義務が生じる書き方です(一般媒介契約約款第9条)。東日本不動産流通機構のQ&Aも、一般媒介について「契約の内容により登録は可能です。指定流通機構(レインズ)へ登録することとした一般媒介契約の場合、レインズに登録することとなります」と説明しています。
流通機構の側は、一般媒介の物件も登録するよう会員に求めています。中部圏不動産流通機構の「レインズ利用ガイドライン」には、次の記述があります。
レインズ利用規程第5条第2項にあるように、売却の一般媒介契約や売主・代理物件、賃貸物件等についても、積極的にレインズへ物件登録
(中部圏不動産流通機構「レインズ利用ガイドライン」令和7年1月1日改正版。原文は会員への依頼の形で書かれています)
同じガイドラインには、一般媒介契約の委託を受けた複数の会員から登録されている物件の取引が成立した場合、取引を仲介した会員のみが成約報告をし、他の会員は物件を削除するという運用も書かれています。同じ部屋が複数の会社からレインズに登録される状態が、成約したあとの後始末まで含めて想定されているわけです。
登録を渋るのは会社側の判断で、機構の規程に沿って頼めば登録は通ります。この文書は中部圏不動産流通機構のもので、自分の地域を担当する機構の規程は会社に確かめると分かります。
出典: 中部圏不動産流通機構「レインズ利用ガイドライン 令和7年1月1日改正版」 出典: 東日本不動産流通機構「よくあるご質問(売却をお考えの方)」 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(一般媒介契約約款第9条)
一般媒介の社数で変わる要素
社数を1社増やすと、増えるものと変わらないものがあります。先に表で整理します。
| 1社増やすと | 内容 |
|---|---|
| 増える | その会社の自社顧客への直接紹介、連絡先、内見調整の窓口、ポータルサイトの掲載数、価格変更時の連絡先 |
| 変わらない | レインズ経由で他社が買主を連れてくる網、仲介手数料の負担、売り出し価格 |
表の中身を、1つずつ見ていきます。
買主が来る経路はレインズ経由と各社の自社顧客
マンションの買主が見つかる経路は、大きく2つです。一つは、依頼した会社が自社の顧客(来店客・会員・過去の問い合わせ客)に直接紹介する経路。もう一つは、レインズに登録された情報を見た他の会社が、自分の顧客を連れてくる経路です。
レインズの経路は、依頼した会社のうち1社が登録すれば完成します。登録された物件は会員の不動産会社が見られるため、依頼していない会社も買主を連れてこられます。2社目、3社目に頼んでも、レインズの網が2倍、3倍に広がるわけではなく、網は1社目で張り終わっています。
社数を増やして増えるのは、自社顧客への直接紹介の窓口です。大手なら自社のサイトや店舗に登録した購入希望者、地元の会社なら近隣で住み替えを考えている人への声かけ。この窓口の数を増やす価値があるかどうかが、社数を決める軸になります。
社数が増えるほど各社の成約の見込みが下がる
会社側の事情も知っておく必要があります。一般媒介で3社に頼めば、各社にとって「自社で成約できる見込み」はおおむね3分の1です。仲介手数料は成約した会社にだけ入り、広告費や人件費は各社の負担です。
運用指針は「指定流通機構への情報登録はもちろんのこと、通常の広告、物件の調査等のための費用は、宅地建物取引業者の負担となる」としています。成約できなかった会社は、その費用を回収せずに終わります。見込みが下がれば、会社は広告の量や担当者の時間をその物件に割きにくくなります。これは会社の怠慢ではなく、費用を負担する側としての合理的な判断です。
なお、売主が特別に依頼した広告の料金と、遠隔地への出張旅費は、売主の負担です(一般媒介契約約款第12条)。通常の広告は会社の負担で、上積みを頼むなら費用の見積りを先に聞く、という切り分けになります。
2社ならおおむね2分の1、3社ならおおむね3分の1、5社ならおおむね5分の1。この数字が小さくなるほど、各社の動きは「売れたら幸い」に近づきます。社数を増やして得られる窓口の数と、各社の動きの鈍りを、天秤にかける形になります。
出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)⑤) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(一般媒介契約約款第12条)
内見の調整と価格変更の連絡が社数分になる
報告の決まりを先に整理します。業務の処理状況を定期的に報告する義務は専任系の契約に置かれたもので、専任媒介では2週間に1回以上と法律で定められています。一般媒介では、進捗を知りたいときは売主が各社に聞く形になります。一方、購入の申込みがあったときの報告は、一般媒介を含むすべての媒介契約に掛かる義務です(宅地建物取引業法34条の2第8項)。申込みの連絡は各社から届き、進捗の把握は売主の側、という分担です。
内見の申込みも、各社から別々に入ります。
A社から土曜の午後、B社から日曜の午前、C社から土曜の午前に内見の希望が届く。鍵の受け渡し、部屋の片づけ、在宅の調整を、週末ごとに社数分こなすことになる。
売り出し価格を変えるときも、全社に同じ日に伝える必要があります。1社だけ古い価格のままだと、ポータルサイトやレインズに違う価格が並び、買主側の会社から「どちらが正しいのか」と問い合わせが来ます。写真の差し替えや紹介文の修正も、社数分の連絡です。こうした手間が、社数に比例して増えます。
出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2第8項・第9項) 出典: 中部圏不動産流通機構「レインズ利用ガイドライン 令和7年1月1日改正版」
ポータルサイトに同じ部屋が社数分並ぶ
一般媒介で3社に頼み、3社ともSUUMOなどのポータルサイトに掲載すると、同じ部屋が3件並びます。これを見て「売れ残りに見えるのでは」と心配する売主は多いです。
買主側の不動産会社から見ると、同じ物件が複数の会社から出ている状態は「一般媒介の物件」と分かる手がかりになります。買主側の会社はレインズでも物件を確認するため、経験上、この状態で物件の評価が下がる心配は薄いと言えます。買主本人も、価格と写真が揃っていれば、同じ部屋が並んでいること自体は気にかけずに先へ進みます。
問題になるのは、価格や写真、間取り図が会社ごとに違うときです。同じ部屋なのに価格が100万円違う、写真の質が違う、階数の表記が違う。こうなると買主は「どれが正しいのか」と不信感を持ちます。社数を増やすなら、全社の掲載内容を揃える手間を引き受ける必要があります。
仲介手数料は成約した1社にしか払わない
「3社に頼むと手数料も3倍かかるのか」という質問をよく受けます。答えは、1社分です。仲介手数料は、売買が成立したときに、成約した会社にだけ支払います。途中まで動いた会社への支払いはゼロです。
手数料の額は、国土交通省の告示で上限が決まっています。売買代金を200万円以下の部分5%、200万円を超え400万円以下の部分4%、400万円を超える部分3%に区分して合計した額(税別)が上限で、400万円を超える物件で使われる「価格の3%+6万円」は、この区分を一度に計算する速算式です。一般媒介契約約款も、報酬の額は「国土交通省告示に定める限度額の範囲内で、甲乙協議の上、定めます」としています。社数を増やしても、売主が払う手数料の合計は同じです。
ただし、明示していない会社の仲介で成約した場合や、成約を通知せずに会社が費用を使い続けた場合は、費用償還の請求を受ける可能性があります。手数料は1社分でも、通知の義務は全社分あります。
出典: 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号) 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(一般媒介契約約款第10条・第14条・第15条)
一般媒介を2社にするか3社にするかの判断基準
社数で変わる要素を踏まえて、2社と3社のどちらが向くかを条件で分けます。数字は目安で、物件と売主の事情で動きます。
- 2社が向くのは会社の動きを比べつつ手間を抑えたいとき
- 3社が向くのは役割の違う会社を組み合わせるとき
- 4社以上は各社の動きが鈍り連絡の手間だけ増える
2社が向くのは会社の動きを比べつつ手間を抑えたいとき
2社は、一般媒介の利点である「比べられること」を残しつつ、手間を最小にする社数です。
働きながら売却を進める人、遠方の実家を売る人、小さな子どもがいて内見の日程調整に余裕がない人には、2社が現実的です。内見の窓口が2つ、価格変更の連絡先が2つ、成約時の通知先が2つ。管理表を作らなくても頭の中で追えます。
2社の組み合わせは、役割の似た会社を選んで「動きの差」を見る形が向きます。たとえば大手2社に頼み、3か月の契約期間で報告の頻度、内見後のフィードバック、価格への助言を比べる。差が見えれば、次の3か月は動きの良い1社と専任媒介に切り替える判断材料になります。各社の成約の見込みはおおむね2分の1で、会社側の動きも2社なら保たれやすい水準です。
3社が向くのは役割の違う会社を組み合わせるとき
3社は、役割の違う会社を組み合わせたいときに向く社数です。大手(自社顧客とポータル露出)、地元密着(周辺の買主と同じマンションの住人への声かけ)、買取もできる会社(売れないときの出口)という分け方です。
役割が違えば、各社が連れてくる買主の層が重なりにくくなります。同じ層を3社が取り合う形より、3つの層に窓口を開く形の方が、社数を増やす効果が出ます。
3社が向くもう一つの条件は、問い合わせが読める物件であることです。駅近、築浅、人気の学区など、売り出せば反応が見込める物件なら、各社の見込みが3分の1でも会社は動きます。反対に、問い合わせが読めない物件で3社に頼むと、各社が様子見に入りやすくなります。
3社の手間は、管理表を1枚作れば追えます。会社名、担当者、連絡手段、内見の日程、価格変更の連絡日を表にしておけば、通知漏れを防げます。
4社以上は各社の動きが鈍り連絡の手間だけ増える
社数を多めに勧める記事もあります。契約自体はできますが、4社以上を勧めにくい理由は3つあります。
一つ目は、各社の成約の見込みが4分の1以下になることです。見込みが下がるほど、会社は広告を抑えて様子見に入ります。4社に頼んで4社とも動かない状態は、1社に頼んで1社が動く状態より売れにくくなります。
二つ目は、レインズの網が1社目で完成していることです。4社目、5社目を足しても、他社が買主を連れてくる経路はそのままです。増えるのは各社の自社顧客への窓口で、4社目以降は顧客層が重なりがちです。
三つ目は、連絡の手間です。明示型では新しい会社を足すたびに既存の全社へ通知し、価格変更も成約の連絡も全社に回します。ポータルサイトには同じ部屋が4件、5件と並び、掲載内容を揃える確認も社数分です。管理表があっても、4社を超えると売主の負担が目立って増えます。
一般媒介で依頼する会社の組み合わせ方
社数を決めたら、どの会社を組み合わせるかです。査定額が高い順に選ぶのではなく、連れてくる買主の層と、レインズ登録の担当を意識して組みます。
- 大手と地元密着で買主の層を分ける
- レインズに登録する会社を1社は決めておく
- 売り出し価格と物件情報は全社で揃える
大手と地元密着で買主の層を分ける
大手の仲介会社は、自社のサイトや店舗に購入希望者の登録が多く、ポータルサイトへの掲載も手厚い傾向があります。広い範囲から買主を探す窓口です。
地元密着の会社は、そのエリアで住み替えを考えている人、同じマンションの住人、近隣で広い部屋を探している家族といった、近い距離の買主を知っています。マンションの売却では、経験上、同じ建物内や近隣からの買い替えが成約につながる場面もあります。
この2つを組み合わせると、買主の層が重なりにくく、社数を増やす効果が出ます。3社目を足すなら、買取も手掛ける会社を入れると、3か月売れなかったときに買取価格の提示を受けられる出口ができます。査定の段階で、各社が「どんな買主を想定しているか」を聞いておくと、役割の違いが見えます。
レインズに登録する会社を1社は決めておく
一般媒介では、レインズに登録するかどうかを契約書で決めます。契約書には「指定流通機構への登録の有無(有・無)」の欄があり、「有」にすれば、会社には約款上の登録義務が生じます。東日本不動産流通機構のQ&Aも、一般媒介について「指定流通機構(レインズ)へ登録することとした一般媒介契約の場合、レインズに登録することとなります」と説明しています。
依頼した会社が全社とも「無」で契約してしまうと、レインズ経由の経路が閉じます。買主を探す範囲が各社の自社顧客だけになり、社数を増やした意味が薄れます。
契約の席で、少なくとも1社には登録の欄を「有」にしてもらい、登録後に登録証明書を受け取ります。運用指針も、登録した場合は登録証明書の交付を受けて登録を確認し、レインズのステータス管理機能で申込みの受付に関する状況を確かめることを、依頼者への周知事項に挙げています。複数の会社が登録しても、中部圏不動産流通機構のガイドラインでは成約した会社だけが報告し、他社は物件を削除する形になっているため、重複は気にせず進められます。
出典: 東日本不動産流通機構「よくあるご質問(売却をお考えの方)」 出典: 東日本不動産流通機構「媒介契約制度」 出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(一般媒介契約書「6 指定流通機構への登録の有無」・一般媒介契約約款第9条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 1(4))
売り出し価格と物件情報は全社で揃える
複数の会社に頼むときの基本は、全社に同じ情報を渡すことです。
- 売り出し価格
- 専有面積、階数、方角
- 管理費と修繕積立金
- リフォーム歴
- 写真、間取り図、紹介文
これらが会社ごとに違うと、ポータルサイトとレインズに食い違う情報が並びます。価格が違えば、買主側の会社は安い方の会社に問い合わせます。写真の質が違えば、良い写真を出した会社に問い合わせが集まります。それ自体は問題ありませんが、売主の意図しない形で「どの会社が有利か」が決まってしまいます。
写真と間取り図は売主が用意して全社に同じものを渡すか、1社が撮った写真を他社にも使ってもらう形が揃えやすいです。価格を変えるときは、全社に同じ日に伝え、ポータルサイトの表示が変わったことを確認します。なお、媒介価額を引き上げるときは会社の承諾が必要で、会社が承諾を拒むときは根拠を示す決まりです(一般媒介契約約款第6条)。
出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(一般媒介契約約款第6条)
一般媒介の社数を途中で増やす減らす手順
社数は契約のあとでも変えられます。増やすとき、減らすとき、そして売却が決まったときの3場面で、やるべき連絡が決まっています。
| 場面 | 連絡先 | 根拠 |
|---|---|---|
| 会社を追加する | 既存の全社へ通知 | 一般媒介契約約款 第4条第2項 |
| 会社を減らす | 有効期間の満了で更新しない | 一般媒介契約約款 第8条・第16条 |
| 売却が決まった | 成約した会社以外の全社へ通知 | 一般媒介契約約款 第15条 |
途中で会社を追加するときは既存の各社へ通知する
一般媒介の契約期間中に、別の会社を足すことはできます。明示型の場合、標準約款の第4条第2項は、契約の締結時にすでに依頼している会社の商号と所在地を契約書に記載し、その後に更に他の会社に依頼しようとするときは、売主がその旨を通知するものと定めています。
通知をしないまま新しい会社の仲介で売却が成立すると、既存の会社から、契約の履行に使った費用の償還を請求される可能性があります(第14条)。上限は約定報酬額で、会社は明細書と領収書等で金額を立証して請求する決まりです。
通知の方法は、メールなど文書で残る形が安全です。新しい会社の商号と所在地を、既存の各社に同じ日に送ります。新しい会社との契約書にも、既存の会社名を「依頼する当社以外の宅地建物取引業者」の欄に書きます。
出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(一般媒介契約約款第4条・第14条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)⑦)
減らすときは有効期間の満了で更新しない
社数を減らしたいときは、有効期間の満了を待つ形が最も摩擦が小さいです。一般媒介の有効期間は、標準約款で「3ヶ月を超えない範囲で、甲乙協議の上、定めます」とされています。法律の期間制限は専任系に掛かるもので、一般媒介については運用指針が「法律上の規制はないが、実情にかんがみ、専任媒介契約等と同じく3月以内で定めている」と説明しています。更新には売主と会社の合意と、満了に際しての売主からの文書等による申出が要るため、申出をしなければ、契約は期間満了で終わります。
期間の途中で終わらせたい場合、標準約款には解除の条項があります。相手が約款に定める義務を本旨に従って履行しないときに、相当の期間を定めて催告してから解除する形(第17条)と、会社に誠実義務違反・重要な事項の不告知・宅地建物取引業に関する不正な行為があったときに売主が解除できる形(第18条)です。理由なく途中で解除すると、費用償還の請求を受ける可能性があります。
専任媒介契約約款が他社への依頼や自己発見取引に違約金を置いているのに対し、一般媒介契約約款の違約金は、反社会的勢力の排除の確約に反した場合(第19条第3項)に限られています。社数を減らす場面で効いてくるのは、違約金ではなく費用償還の条項です。途中解約の進め方は別の記事で詳しく扱います。
動きの良かった1社と専任媒介に切り替える進め方は、他の会社の契約が満了するタイミングで行うと、通知や解除の手間を省けます。
出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(一般媒介契約約款第8条・第16条・第17条・第18条・第19条第3項、専任媒介契約約款第12条) 出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係 6(3)④・⑧)
売却が決まったら全社に遅滞なく通知する
売買契約が決まったら、成約した会社以外の全社に、遅滞なく通知します。標準約款の第15条第1項は、他の会社の仲介で成約したときも、自ら発見した相手方と契約したときも、各社へ通知する義務を定めています。東日本不動産流通機構の媒介契約制度のページも、一般媒介について「他の不動産会社(自己発見も含む)によって取引が成立したときは、その旨を通知」と書いています。
通知を怠ると、各社は売却活動を続けます。その間に会社が善意で使った費用は、第15条第2項により、売主への償還請求の根拠になります。成約の翌日には全社へ連絡する、くらいの速さが目安です。
通知を受けた各社は、レインズの登録を削除し、ポータルサイトの掲載を下げます。中部圏不動産流通機構のガイドラインでは、複数の会員から登録されている物件が成約したとき、仲介した会員が成約報告をし、他の会員は物件を削除する形です。社数分の連絡先を最初から一覧にしておけば、この通知を1度の作業で終えられます。
出典: 国土交通省「標準媒介契約約款」(一般媒介契約約款第15条) 出典: 東日本不動産流通機構「媒介契約制度」 出典: 中部圏不動産流通機構「レインズ利用ガイドライン 令和7年1月1日改正版」
まとめ:一般媒介は2社か3社に絞り、レインズ登録と通知の担当を決める
いちばん重いのは、社数を増やしても買主に届く範囲はそれほど広がらないという点です。レインズの網は依頼した会社のうち1社が登録すれば完成し、2社目、3社目で増えるのは各社の自社顧客への窓口です。法律にも標準約款にも社数の上限はない一方で、各社の成約の見込みは社数に応じて小さくなり、連絡と通知の手間は社数に比例します。現実的な線が2社か3社になるのは、この2つの釣り合いからです。
次の一歩は、契約の席で「指定流通機構への登録の有無」の欄を確かめ、少なくとも1社に「有」で登録してもらうことです。ここを飛ばして全社とも「無」で契約すると、買主を探す範囲が各社の自社顧客にとどまり、社数を増やした意味が薄れます。あわせて、依頼した全社の連絡先を1枚の管理表にまとめておくと、会社を追加するときの通知と、成約したときの通知を一度に回せます。
そのうえで、契約書の「依頼する当社以外の宅地建物取引業者」の欄と、費用償還の条項に目を通します。明示型のまま通知を落とすと、約定報酬額を上限とする費用償還の話になるため、社数を増やす前に通知の段取りを決めておくと安心です。住み替えのトビラでは、一般媒介で何社に頼むかの判断も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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