マンションをリースバックしたら、毎月いくら払うことになるのか。家賃は周辺相場だけでなく、買取価格や契約条件でも変わります。
この記事では、マンションのリースバックの家賃の目安と計算方法、周辺相場より高くなる理由、家賃に含まれる費用と別に払う費用、家賃を抑える方法、値上げと払えなくなったときの扱いを順に説明します。
マンションのリースバックの家賃の目安と計算方法
家賃の決め方は事業者によって異なります。買取価格と利回りを使う方法もありますが、共通の計算式や年6〜10%という一律の基準があるわけではありません。
リースバックの仕組みそのものと基本のメリット・デメリットは、別の記事でまとめています。
買取価格と利回りを使う計算例
説明のため、買取価格を2,000万円、経費を引く前の年間家賃の割合を8%と置くと、2,000万円×8%÷12か月=月約13.3万円です。
これは当サイトの仮定による計算で、実際の査定額ではありません。事業者は周辺家賃、費用や契約条件なども踏まえて提示します。
買取価格と利回りごとの月額家賃の目安
買取価格と利回りの組み合わせで、月額家賃がどう変わるかを表にします。式に当てはめた仮の数字で、月額は小数第2位を四捨五入しています。
| 買取価格 | 利回り6% | 利回り8% | 利回り10% |
|---|---|---|---|
| 1,500万円 | 月7.5万円 | 月10万円 | 月12.5万円 |
| 2,000万円 | 月10万円 | 月13.3万円 | 月16.7万円 |
| 3,000万円 | 月15万円 | 月20万円 | 月25万円 |
表の同じ列では、買取価格が高いほど計算上の家賃が上がります。ただし、実際の家賃をこの幅に収まると予測する表ではありません。価格の仕組みは別の記事で説明しています。
出典: 国土交通省「不動産取引に係る新たなサービス形態について」(2025年2月・不動産・建設経済局不動産業課)
周辺の賃貸相場との差が住み続ける代金になる
仮に周辺の家賃が月10万円、リースバックの提示が月13万円なら、差は年36万円、5年で180万円です。初期費用や設備条件もそろえ、引っ越す場合の費用と比べます。
短期間なら許容できる差でも、長く住むと負担が大きくなります。月額だけでなく、住みたい期間の合計を見ましょう。
調査でも家賃の決め方は分かれている
国土交通省の2025年2月資料では、リースバック物件の賃貸・管理を行う21社の回答を次のようにまとめています。住宅全般の事業者調査で、マンションの契約件数の割合ではありません。
| 家賃の査定方法 | 回答した事業者 |
|---|---|
| 売却金額を踏まえて決めている | 43% |
| 周辺相場を踏まえて決めている | 24% |
| その他(利用者の資金状況を斟酌・買戻し特約を踏まえて等) | 33% |
売却金額を踏まえる回答が43%、周辺相場が24%、その他が33%です。この調査からも、全社が同じ式で決めているとはいえません。
この結果は、利用者にとって2つの意味があります。ひとつは、事業者によって家賃の決め方が違うので、複数社で比べる価値があること。もうひとつは、「資金状況を斟酌する」事業者がいる以上、希望する家賃を先に伝えることに意味があること。この点は、抑える方法の章で使います。
出典: 国土交通省「不動産取引に係る新たなサービス形態について」(2025年2月・不動産・建設経済局不動産業課)
リースバックの家賃が周辺相場より高くなる理由
周辺相場より高い提示になる理由には、買取価格や事業者が負担する費用があります。ただし、どの費用を誰が払うかは契約で確認する必要があります。
買取価格を踏まえる場合がある
同じ家賃相場の部屋でも、事業者の提示額や条件は違います。「売却額を下げれば家賃は変わるか」「希望家賃ならいくらで買えるか」と別案を聞くと、比較しやすくなります。
家賃が買取価格の年10%でも、10年で投資をすべて回収できるとは限りません。経費がかかり、将来の売却代金も収支に関わるためです。
固定資産税や管理費が家賃に織り込まれるため
事業者は所有中の税金や管理・修繕に関わる費用も踏まえて家賃を設定します。国土交通省のガイドブックでも、貸主の負担する費用が家賃の設定に関わると説明しています。
ただし、修理費などを借主負担とする契約もあります。「家賃を払えば住居費はすべて込み」とは限りません。
出典: 国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」(2022年6月発行)
入居者が決まっていてもリスクは残る
リースバックは売主がそのまま住むため、新しい入居者を最初から探す必要がない利点があります。ただし、滞納や退去後の空室リスクまでなくなるわけではありません。これを理由に家賃が必ず安くなるともいえず、実際の提示を比べることが大切です。
マンションの家賃に含まれる費用と別に払う費用
家賃以外の請求があると、毎月の負担は変わります。所有者が管理組合や自治体へ払う費用と、賃貸借契約で借主が負担する費用を分けて確認します。
| 費用 | 確認する点 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 1月1日の所有者に課税。売却年の納付・精算を確認 |
| 管理費・修繕積立金 | 所有者の管理組合への負担と、借主への別請求の有無 |
| 設備の修理 | 故障原因・設備ごとに誰が払うか |
| 駐車場・駐輪場 | 継続して使えるか、別料金はいくらか |
| 敷金・保険・保証料 | 初期費用、更新時や退去時の負担 |
売却後も税金の納付や家賃改定に注意する
売却年の固定資産税は、その年の1月1日の所有者に納付書が届きます。買主との精算は売買契約で確認します。修繕積立金の値上げがそのまま借主への請求になるわけではありませんが、家賃が期間中ずっと固定とも限りません。家賃改定と別途負担の条項を確認します。
管理費は家賃込みか別払いかが事業者で分かれる
ここがマンション特有の分かれ目です。管理費(共益費)は、家賃に含める事業者と、家賃とは別に請求する事業者があります。国土交通省の調査では、リースバック物件の賃貸借契約で「共益費・管理費(マンション等の場合)」を設定している事業者が24%でした。
これは事業者の回答割合で、契約の4分の1で別払いという意味ではありません。仮に家賃13万円に管理費1.5万円が別なら、月額は14.5万円です。
賃貸借契約書の賃料・共益費・特約を見て、家賃に含む費用と別に払う費用が一致しているか確かめます。
出典: 国土交通省「不動産取引に係る新たなサービス形態について」(2025年2月・不動産・建設経済局不動産業課)
駐車場代と設備の修繕費は別に出ていく場合がある
駐車場・駐輪場の使用料は、リースバック後も借主が払うのが基本です。管理組合が区分所有者にだけ貸す棟では、そもそも使えなくなる場合もあります。
国土交通省の調査では、設備などの修理費を貸主負担とする回答38%、借主負担38%、その他24%でした。21社の回答であり、「約4割の契約が借主負担」という統計ではありません。
給湯器や水回りなど、故障時の負担者と連絡先を確認します。設備の古さだけで交換時期や費用を決めつけず、分かる範囲の状態を伝えましょう。
出典: 国土交通省「不動産取引に係る新たなサービス形態について」(2025年2月・不動産・建設経済局不動産業課)
敷金・火災保険などの初期費用と更新料の有無
契約時の初期費用も、家賃とは別です。国土交通省の調査では、事業者が設定している初期費用は、火災保険料等が71%、敷金が48%、礼金が14%でした(複数回答)。
敷金は未払家賃や借主負担の原状回復費などを差し引いて精算するため、全額が戻るとは限りません。保険や保証会社の費用も、見積もりで確認します。
普通借家の更新料と、定期借家の再契約料は別の条件です。金額だけでなく、再契約自体が可能かも確かめます。
提示額を「総支払額」に直す例(金額は仮に置いた値です)
家賃13万円 + 管理費1.5万円(別払い)+ 駐車場1万円(別払い)= 月15.5万円
管理費込み・駐車場込みで家賃13万円の事業者なら 月13万円
差は月2.5万円で、2.5万円×12か月=年30万円
自分で試すときは、提示された家賃と、契約書の共益費・管理費の欄、駐車場の使用料の実額を入れます
出典: 国土交通省「不動産取引に係る新たなサービス形態について」(2025年2月・不動産・建設経済局不動産業課)
リースバックの家賃を抑える方法
希望する家賃と住む期間を伝え、複数社の見積もりを比べます。買取額を下げる以外に調整できる費用があるかも聞きます。
複数社に希望家賃を先に示して買取価格を出させる
「家賃は月○万円まで、○年間住みたい」と同じ希望を伝え、買取額と費用を出してもらいます。査定の時点で契約する必要はありません。
毎月払える額から、今の家で受け取れる金額を確かめましょう。 家賃だけでなく、初期費用や修理負担も比べます。
居住期間が決まっているなら別案を聞く
退去日が決まっている場合は、その条件で見積もりを聞けます。ただし、定期借家なら必ず家賃が下がるわけではありません。予定が遅れた場合の再契約可否も確認します。
敷金を増やす案は返還条件まで比べる
事業者から家賃を下げる代わりに多額の敷金・保証金を預ける案が出たら、手元資金と返還条件を確認します。未払分などの控除や返還されないリスクもあり、全額戻る前提では判断しません。
管理費込みと設備修繕の貸主負担で総支払額を抑える
家賃の数字を下げるのが難しくても、「別に出ていく費用」を家賃に含めてもらえば、総支払額は下がります。交渉する項目は3つです。
- 管理費を家賃込みにする
- 駐車場を今のまま使える条件にする
- 設備の修繕を貸主負担にする
交渉で変更できた項目は、契約書や見積もりにも反映してもらいます。負担がどれだけ減るかは、実際の金額で計算します。
住む期間を入れて買取価格とのバランスを見る
家賃が安くても買取額が低ければ、短期利用では手元に残る額が少ない場合があります。次は条件を仮に置いた比較です。
住む期間で優先順位が変わる例(金額と期間は仮に置いた値です)
1年住む場合: 家賃を月1万円下げる → 1万円×12か月=12万円の差。買取価格を100万円上げるほうが手元に残る
5年住む場合: 家賃を月1万円下げる → 1万円×60か月=60万円の差。買取価格の差に迫る
自分で試すときは、住む予定の月数を入れて、「家賃の差×住む月数」と「買取価格の差」を並べます
短期なら、通常売却で引渡し時期を調整する案も比較できます。猶予期間・使用料・事故時の責任などは買主との合意が必要で、数か月無料で住める制度ではありません。
家賃の値上げと払えなくなったときの扱い
家賃改定の条項と、支払いが難しくなった場合の連絡先を確認します。住める期間と、資金が持つ期間は別です。
普通借家の家賃増額は根拠を確かめる
借地借家法32条は、税負担や経済事情、近隣の家賃などから賃料が不相当になったときの増減請求を認めています。請求額に争いがあれば、協議や調停・裁判で判断することになります。
増額請求を無視してよいわけではありません。裁判が確定するまで相当と認める額を支払う扱いがありますが、不足と判断された差額には利息を付ける規定があります。支払額に迷う場合は専門家へ相談します。
同じ32条には、「一定の期間は家賃を増額しない」という特約があるときは、その定めに従う、というただし書もあります。住み続ける期間が決まっているなら、その期間の増額をしない特約を契約書に入れてもらう交渉ができます。
国土交通省の実態調査では、リースバック物件の賃貸借契約で締結している契約種類は、普通借家が71%、定期借家が48%でした(複数回答・賃貸や管理を行う事業者21社)。国土交通省も「普通賃貸借契約が最も多いが、定期賃貸借契約も約半数存在」とまとめています。自分の契約書がどちらなのかを、まず確かめる場面です。
出典: 国土交通省「不動産取引に係る新たなサービス形態について」(2025年2月・不動産・建設経済局不動産業課)
定期借家の再契約時は家賃の条件が変わりうる
定期借家は、法律で定める書面等による契約や事前説明などの要件を満たすことで、更新のない契約となります。期間満了後も住むには、貸主と再契約する必要があります。
期間の途中にも、確かめておく点があります。借地借家法38条9項は、定期借家で家賃の改定に関する特約があるときは、32条の増減請求の規定を適用しない、と定めています。契約書に「3年経過後は家賃を◯円とする」といった改定の特約があれば、その定めのとおりに家賃が動きます。
国民生活センターには、こんな相談が寄せられています。約1,600万円で自宅マンションを売り、家賃は約6万円と言われて契約したところ、3年後に約11万円へ上がり、事業者からは「3年経過後は家賃が上がることは契約時に説明している」と言われた、というものです。売却代金は生活費で使い切っていました。
期間中の家賃改定と、満了後の再契約の条件を別々に確かめます。口頭で「住み続けられる」と言われても、再契約が保証されるとは限りません。第三者への売却で貸主が変わる場合の扱いも確認します。
出典: 独立行政法人国民生活センター「強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!」(2025年5月21日)
出典: 国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」(2022年6月発行)
滞納が続くと契約解除で退去になる
滞納が続いて信頼関係が壊れたと判断される場合などは、契約解除・明渡しを求められることがあります。保証会社が立て替えても、借主の支払義務がなくなるわけではありません。
買戻しの権利も、滞納で必ず自動停止するわけではなく契約によります。支払いが難しくなりそうなら、早めに貸主へ相談してください。引っ越しの遅れで支払期間が延びる可能性も、資金計画に入れます。
売却代金から家賃の総額を引いて住める期間を先に計算する
国土交通省のガイドブックは、リースバックを検討する人に「住み続ける期間にわたって、毎月賃料を支払うことができるか、一度計算しましょう」と勧めています。国土交通省がまとめた相談事例には、「売却で受け取る資金と支払う家賃を計算すると、数年で足が出てしまう契約だった」というものがあります。
当サイトで仮に、ローン返済・売却費用を引いた残額を1,800万円、家賃を月13万円と置くと、家賃だけで割った期間は約138か月です。生活費や別料金を使えば短くなり、契約上その期間住めるとも限りません。
1年分の家賃を引くと1,644万円ですが、すべてを次の家の頭金に使えるとは限りません。生活費・引越費用・税金などを別に見込み、手元資金を残します。
出典: 国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」(2022年6月発行)
出典: 国土交通省「不動産取引に係る新たなサービス形態について」(2025年2月・不動産・建設経済局不動産業課)
まとめ:家賃は決め方と総支払額を確認する
家賃は買取価格だけで一律には決まりません。国土交通省の21社への調査でも、売却金額・周辺相場・個別事情など、決め方が分かれています。
次の一歩は、希望する家賃と期間で査定を受けることです。家賃に含まれる費用、修理負担、改定・再契約条件まで比べれば、受け取る金額と住み続ける負担を具体的に判断できます。
住み替えのトビラ 
