買った会社・建てる会社・勤務先の提携先に売却を任せていい?4つの質問で比べる

買った会社・建てる会社・勤務先の提携先に売却を任せていい?4つの質問で比べる

マンションを売って住み替えるとき、新居を建てる会社や勤務先の提携先から「売却もうちで」と勧められることがあります。

ただ、ほかの会社と比べずに1社に決めると、手数料が割り引かれても、それ以上に売値が下がって損をすることがあります。

この記事では、「売却もうちで」の裏のお金の流れと、紹介元ごとに任せていい条件を、Aさん一家の数字で解説します。

「売却もうちで」と勧める裏で、誰がいくら得るのか

「売却もうちで」と勧めてくる会社や紹介元には、売却が決まると、手数料や紹介料、転売の利益が入ります。

誰がいくら得るのかを知っておくと、勧めてくる会社が自分の利益のために提案している部分を見分けられます。この記事では、次のAさん一家を例にお金の流れを確かめます。

この記事の例(Aさん一家)

Aさん一家は、築15年のマンションに住んでいます。

今の部屋は、5,000万円ほどで売れそうです。

一家は今、新しい家を注文住宅で建てています。

ハウスメーカーの担当者からは「今のマンションの売却も、うちの提携先で引き受けます。買取保証も付けられます」と言われました。

Aさんの勤務先には、不動産を売るときに手数料が安くなる制度があります。

マンションを買ったときの不動産会社からも、ときどき連絡が来ます。

この記事の金額は、すべて説明のための仮の値です。

仲介会社が買い手も自社で見つけると、受け取る手数料は2倍になる

1社の仲介会社が売る側と買う側の両方を受け持つと、その会社は両方から仲介手数料を受け取れます。

マンションを売る人は、ふつう不動産会社に「仲介」を頼みます。仲介とは、買い手を探し、契約までの手続きをまとめる仕事です。

売る側は、部屋が売れたときに、仲介を頼んだ会社へ仲介手数料を払います。手数料の上限は、国が定めています。

Aさんの部屋が5,000万円で売れた場合、売る側が払う手数料の上限は税込171.6万円です。

買う側も、自分が頼んだ仲介会社に、同じ上限までの手数料を払います。1社が両方から手数料を受け取る取引を、「両手仲介」と呼びます。片方からだけ受け取る取引は「片手」です。

Aさんの部屋が5,000万円で売れたときに、仲介会社が受け取る手数料の上限は次のとおりです。

5,000万円で売れた場合売る側からだけ(片手)売る側と買う側の両方から(両手)
会社が受け取る手数料(上限・税込)171.6万円343.2万円

売値が400万円を超えるときの手数料の上限は、(売値×3%+6万円)×1.1(消費税)で求めます。自分の部屋の売値を入れると、払う手数料の上限がわかります。

両手仲介は、日本の法律で認められた取引です。

ただ、両手なら同じ1件の取引で手数料が2倍になるため、会社には「買い手も自社で見つけたい」という気持ちが生まれます。紹介を受けて売却を任された会社も、この点は同じです。

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出典: 国土交通省「宅地建物取引業法関係(宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額)」

両手を狙う「囲い込み」を防ぐため、2025年からレインズへの取引状況の登録が義務になった

国は「囲い込み」を防ぐため、2025年1月から、レインズへの取引状況の登録を不動産会社に義務づけました。

囲い込みとは、売る側と買う側の両方の仲介を狙う不動産会社が、物件の取引状況をわざと隠し、ほかの会社に部屋を紹介しないことです。国土交通省は、囲い込みが早く売れる見込みを狭め、売主や買主の利益を損なうおそれがあるとしています。

レインズとは、不動産会社どうしで売り物件の情報を共有するしくみです。国土交通省の資料は、レインズを使った囲い込みの例を挙げています。事実と違うのに「売主都合で一時紹介停止中」と登録し、ほかの会社からの問い合わせを断るやり方です。

レインズに取引状況を登録する仕組みは、2016年からありました。2025年1月からは、専任媒介契約や専属専任媒介契約(売却を1社だけに任せる契約)で預かった物件について、不動産会社に取引状況の登録が義務づけられています。

登録する取引状況は、次の3つです。

  • 公開中
  • 書面による購入申込みあり
  • 売主都合で一時紹介停止中

売主は、レインズの売主専用の画面で、自分の部屋がどの状況で登録されているかを見られます。国土交通省も、売主が自分で取引状況を確かめることが、囲い込みの防止につながるとしています。

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出典: 国土交通省「レインズの機能強化について、物件の売主向けのリーフレットを作成しました!」(2024年12月24日)

買取保証なら、会社は売れ残っても利益を出せる

買取保証を付けた会社は、部屋が売れ残っても、市場より安く買い取って転売すれば利益を出せます。

買取保証では、まず決まった期間だけ、仲介で部屋を売り出します。その期間に売れなければ、不動産会社が前もって決めた値段で部屋を買い取ります。

新居の代金を払う時期が決まっている人には、心強い約束に感じられるでしょう。

ただ、買い取りの値段は、仲介で売れる値段より低く決められます。会社は買い取った部屋を直して転売し、その差で利益を出すためです。

Aさんの例で、買い取りの値段を市場の値段の7〜8割と仮定すると、手取りは次のように変わります。

売れ方Aさんの手取り
市場の値段(5,000万円)で売れた約4,828万円(手数料171.6万円を引いた額)
買取保証で買い取られた(市場の値段の7〜8割と仮定)3,500万〜4,000万円(買い取りに手数料がかからない場合)
2つの手取りの差約830万〜1,330万円

この仮定では、保証での買い取りまで進むと、Aさんの手取りは1,000万円前後減ってしまいます。

自分の部屋で手取りを比べるときは、次の式に数字を入れられます。

自分の数字で手取りを出す式
  • 仲介で売れたときの手取り=売値-(売値×3%+6万円)×1.1
  • 買取保証で買い取られたときの手取り=契約で決めた買い取りの値段(手数料がかからない場合)
  • 実際の金額は、査定書と買取保証の契約書で確かめる

買い取りの値段は会社や物件ごとに違うため、7〜8割はあくまでこの記事の仮定です。

売れても売れ残っても利益が出るため、会社が仲介で高く売る努力をおろそかにするおそれもあると考えられます。会社にとって買取保証は、仲介の手数料と転売の利益の両方を得る機会にもなります。

買取保証とは?メリット・デメリットと損しない使い方 買取保証とは?メリット・デメリットと損しない使い方

出典: 国土交通省「宅地建物取引業法関係(宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額)」

新居の会社や勤務先の提携サービスにも、紹介料などのお金が流れることがある

新居の会社や勤務先が売却先を「紹介するだけ」でも、紹介料などのお金が動いていることがあります。

不動産の業界では、お客さんを紹介された会社が、紹介した相手にお礼として紹介料を払うことがあります。

例えば新居の会社が提携先の仲介会社へ売主を紹介すると、提携先から新居の会社へ紹介料が払われることも考えられます。

勤務先の福利厚生で使える売却サービスには、勤務先が費用を払わずに導入できるものもあります。例えば株式会社SUMiTASの「SUMiFiT」では、サービスを使う社員が、正規の仲介手数料から25%の割引を受けられます。

サービスの事業者は、社員をまとめて見込みのお客さんにできるため、勤務先から費用を取らなくても採算が合うと考えられます。

売主が紹介料の有無を知るには、担当者に直接聞くのが早道です。

Aさんの売却で動く可能性のあるお金を、受け取る相手ごとに並べると次のとおりです。

受け取る相手何のお金かAさんの場合の目安
仲介会社売主からの仲介手数料最大171.6万円
仲介会社買主からの仲介手数料(両手のとき)最大171.6万円
買い取る会社買い取りから転売までの利益市場の値段との差(Aさんの例の仮定では1,000万〜1,500万円)から、直す費用などを引いた残り
紹介元(新居の会社・提携サービスなど)紹介料非公開の契約で決まる

表のどの相手にも、売主の手取りとは別に、自分の利益を増やしたい事情があります。だからこそ、紹介された会社に加えてほかの会社を1社入れて比べると、相手の提案が売主にとって得な内容かを判断できます。

出典: 株式会社SUMiTAS「SUMiFiT(スミフィット)|法人向け福利厚生 従業員不動産売却サポート」

買った会社・建てる会社・勤務先の提携先に売却を任せていいのは、それぞれどんなときか

3つの相手は「売却もうちで」と勧める理由がそれぞれ違うため、任せていい条件も違います。

3つの相手が勧めてくる理由から任せていい目安までは、次の表のとおりです。

紹介元勧めてくる理由頼む利点損をしやすい点任せていい目安
今のマンションを買ったときの会社一度取引したお客さんに、また頼んでほしい物件の資料や特徴を知っている中古を売る力は会社によって差があるこのエリアで中古を売った実績がある
新居を建てる会社・買う会社・新居の契約を予定どおり進めたい
・グループに仲介や買取の会社がある
・新居の時期に合わせやすい
・買取保証が付く
・早く売るため安めの値段になりやすい
・買取保証の値段は市場より安い
仲介で売る期間を十分に取れる
勤務先の提携先提携する事業者が、社員をお客さんとして集めている手数料が安くなる割引より売値の差のほうが大きくなりやすい査定と売り方が、ほかの会社と同じ水準以上

表の「任せていい目安」を満たすかは、どの相手でも、ほかの会社と比べると判断できます。

今のマンションを買ったときの会社:このエリアで中古を売った実績があれば候補になる

マンションを買ったときの会社は、このエリアで最近中古を売った実績があれば、売却を任せる候補になります。

マンションを新築で買った人には、分譲した会社のグループの仲介会社から、売却の誘いが来ます。中古で買った人に声をかけてくるのは、そのとき仲介した会社です。

会社にとって、一度取引したお客さんは次の仕事につながる大事な相手です。

買ったときの会社は、物件のことをよく知っています。買ったときの資料や、間取りの売りどころも把握しています。当時の担当者が残っていれば、話も早く進むでしょう。

ただ、「このマンションを売った会社」と「中古を売るのが得意な会社」は、分けて考える必要があります。新築を売る部署と中古の仲介をする部署が、別々になっている会社も多くあります。

Aさんのように買ってから15年たつと、その間にこのエリアで中古の取引をしなくなった会社もあります。

担当者には、このマンションや近くで最近中古を売った例を聞いておきましょう。例が出てこなければ、ほかの会社にも査定を頼み、近くで売った実績を比べてから決めると安心です。

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新居を建てる会社・買う会社:買取保証を保険と割り切れるなら任せる手はある

仲介で売る期間を十分に取り、買取保証を「いざというときの保険」として使うなら、新居の会社に売却を任せてもよいでしょう。

新居の会社が売却まで勧めてくるのは、新居の契約を予定どおり進めたいからです。今の家が売れないと、新居の代金を払えない人も多くいます。そうした人の売却が遅れると、新居の契約も遅れてしまいます。

また、グループの中に仲介や買い取りの会社を持ち、売却でも利益を得られるハウスメーカーもあります。

新居の会社に頼むと、新居と売却の段取りを1社にまとめられます。新居の完成や引き渡しに合わせて、売り出しや引っ越しの予定を組んでもらえます。

買取保証があれば、今の家と新しい家のローンを両方払い続ける心配も減ります。

一方で、新居の予定に合わせるぶん、早く売れる安めの値段を勧められやすくなります。買取保証の値段は市場の値段より低いため、保証での買い取りまで進むと手取りは大きく減ります。

新居の会社と話すときは、仲介で何カ月売り出せるかを先に確かめておきましょう。最初から保証の値段を当てにしている人は、ほかの会社にも買取保証の値段を出してもらうと安心です。

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勤務先の提携先:約34万円の手数料割引は、売値が1%下がれば消える

Aさんの場合、勤務先の提携先で手数料が約34万円安くなっても、売値が1%下がればその得は消えてしまいます。

Aさんの数字で計算すると、手数料の割引と売値の差は次のようになります。

Aさんの場合の計算(割引率は仮定)
  • 手数料の上限=(売値×3%+6万円)×1.1。5,000万円なら171.6万円
  • 割引で安くなる額=手数料の上限×割引率。割引率を20%と仮定すると約34万円
  • 売値が下がったときに減る額=売値×下がった割合。1%なら50万円

割引率は制度によって違うため、自分の勤務先の制度の割引率に置き換えて計算できます。

提携先の売り方が少し弱く、売値が3%下がると、Aさんの売値は150万円減ります。割引の約34万円を差し引いても、100万円を超える損です。

勤め先が選んだ会社だという安心感から、割引の額だけを見て決めたくなる人もいるでしょう。

制度を使ったことや売却の中身が勤務先に伝わる範囲も、制度によって違います。勤務先に伝わる情報は、申し込む前に制度の説明や規約で確かめておくと安心です。

割引の額で決める前に、提携先とほかの会社の査定の根拠や売り方を比べておきましょう。提携先がほかの会社と同じ水準以上なら、割引はそのまま得になります。

出典: 国土交通省「宅地建物取引業法関係(宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額)」

ほかの会社を1社足して比べると、何が分かるのか

紹介された会社にほかの会社を1〜2社加えて比べると、査定額の根拠と売る力の差がわかります。

査定は同じ時期に頼み、どの会社にも同じ質問をすると、会社ごとの答えをそのまま比べられます。

今は特に、比べる意味が大きい時期です。首都圏で売れた中古マンションの1㎡あたりの価格は、2026年5月から9月まで、5カ月続けて前年の同じ月を下回りました。

9月に売れた部屋の1㎡あたりの価格は、前年の同じ月より4.8%低くなっています。売れた件数も、前年の同じ月より22.7%減りました。

一方で、売りに出ている部屋の数は、前年の同じ月より15.1%増えています。

買い手が減って売り物が増えると、買い手は部屋をじっくり選べるようになります。そのため、会社ごとの値付けや売り方の差が、売値の差になって表れやすくなります。

ここからは、担当者にそのまま聞ける質問を4つ紹介します。

出典: 東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年9月度」

「この査定額は、どの売れた例をもとに出しましたか」

査定額を比べるときは、金額の高さより、どの売れた例をもとに出したかを見ると、信用できる会社がわかります。

査定額は「この値段なら売れそう」という各社の予想なので、同じ部屋でも会社ごとに金額がばらつきます。査定額の根拠を聞くと、担当者の答えは例えば次のように分かれます。

担当者の答えの例
  • 良い答えの例「同じマンションの別の階が、この春に4,950万円で売れました。こちらは角部屋なので、少し上に見ています」
  • 気をつけたい答えの例「相場が上がっているので、この金額でいけます」(根拠が相場の話だけ)

良い答えをする担当者は、同じマンションや近くで実際に売れた部屋を例に挙げます。そのうえで、広さや階数、日当たりの違いで金額をどう調整したかまで説明します。

気をつけたいのは、売れた例を出さずに高い金額だけを言う会社です。そうした会社は、最初に高い金額を見せて契約を取り、売れなければ値下げを求めてくることがあります。

紹介先の査定額がほかの会社より低いときも、理由を聞いておきましょう。紹介先が新居の予定に合わせて、早く売れる安めの値段を付けていたとわかる場合もあります。

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「このマンションで最近売った例はありますか。どう売り出しますか」

最近の売却実績と売り出しの計画を聞くと、会社ごとの売る力の差がわかります。

近くで最近売った実績がある会社は、この辺りでどんな人が部屋を探しているかを知っています。買いたい人を、すでに抱えていることもあります。

実績は、同じマンションや同じ駅の近くで最近売った例を聞くと確かめられます。

売り出しの計画として聞いておきたいのは、次の4つです。

  • 売り出す値段と、その値段にした理由
  • 物件を載せる不動産サイト
  • 写真の撮り方や内覧の準備
  • 売れないときに見直す時期と方法

4つのどれにも具体的に答えられる会社なら、売り方を任せても安心です。

紹介された会社の説明が「新居に合わせて、○月までに売りましょう」という時期の話に限られるなら、注意が必要です。時期だけを決めている会社は、期限が近づくと値下げで売り切ろうとしがちです。

「買取保証の値段はどう決めますか。紹介料は出ていますか」

買取保証の条件と紹介料の有無を聞くと、紹介された会社の提案が売主に得な内容かを判断できます。

買取保証を勧められたら、次の3つを聞いておきましょう。

  • 仲介で売り出す期間
  • 売れなかったときの買い取りの値段
  • その値段の決め方

保証の値段が査定額の何割にあたるかも、計算しておくと安心です。例えば保証の値段が査定額の7割か8割かで、査定額5,000万円のAさんなら買い取りの値段に500万円の差が出ます。

ほかの会社にも買取保証や買い取りの査定を出してもらうと、紹介された会社の保証の値段が高いのか安いのかがわかります。

紹介料が出ているかも、担当者に遠慮なく聞いて大丈夫です。例えば次のように聞けます。

紹介料の聞き方の例

「今回の紹介で、新居の会社に紹介料は出ていますか。出ているなら、誰が払っていますか」

この質問に正面から答えてくれる会社なら、ほかの条件の説明も信用できると考えられます。

「レインズの登録証明書はもらえますか」

レインズの登録証明書をもらうと、自分の部屋がほかの会社にも紹介されているかを、売主が自分で確かめられます。

レインズとは、不動産会社どうしで売り物件の情報を共有するしくみです。部屋がレインズに登録されると、ほかの不動産会社も、自分のお客さんにその部屋を紹介できるようになります。

売却を1社だけに任せる「専任媒介契約」や「専属専任媒介契約」を結ぶと、会社にはレインズへの物件の登録が義務づけられます。登録を済ませた会社には、登録を示す証明書を売主に渡す決まりもあります。

登録の義務があるのはこの2つの契約で、複数の会社に頼める「一般媒介契約」は対象外です。

証明書には、レインズの売主専用の画面に入るための2次元コードが載っています。画面に入るには、確認用のIDとパスワードも必要です。

売主はこの画面で、自分の部屋の取引状況が「公開中」になっているかを見られます。

「証明書はもらえますか」と聞いて、すぐに「お渡しします」と答える会社なら安心です。あいまいな返事をする会社は、囲い込みの心配があると考えておきましょう。

4つの質問の答えを会社ごとに1つの表へ書き込めば、どこに任せるかを1枚で判断できます。次の表は、Aさんが3社を比べたときの記入例です(数字は説明のための仮の値)。

確かめること新居の会社の提携先勤務先の提携先地元の不動産会社
査定額4,800万円5,100万円5,000万円
査定の根拠売れた例の説明なし近くの売れた例1件同じマンションの売れた例2件
最近の売却実績近くで1件駅の周りで2件同じマンションで2件
売り出しの計画時期の説明が中心載せるサイトの説明あり値段・載せるサイト・見直す時期まで説明
買取保証3,600万円(4カ月売れなければ)なし3,800万円(3カ月売れなければ)
手数料上限どおり20%割引上限どおり
紹介料「あり」と回答「なし」と回答対象外(自分で探した会社)
レインズの登録証明書渡すと回答渡すと回答渡すと回答

選ぶときは、まず査定の根拠と売り出しの計画を見て、手数料の安さは最後に比べるとよいでしょう。

この記入例で第一候補になるのは、地元の不動産会社です。査定の根拠と売り出しの計画がいちばん具体的で、買取保証の値段も3社でいちばん高いためです。

勤務先の提携先は査定額こそいちばん高いものの、根拠に挙げた売れた例は1件にとどまります。その金額をそのまま当てにするのは危険です。

出典: 国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」(レインズのステータス管理機能のリーフレット)

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」第34条の2

新居の会社や勤務先と気まずくならない比べ方と断り方

比べることを最初に伝えておけば、紹介してくれた相手との関係を保ったまま、別の会社を選べます。

紹介してくれた相手とは、新居の打ち合わせや職場で、これからも顔を合わせます。比べたい気持ちがあっても、言い出しにくいと感じる人は多いでしょう。

最初に言っておく一言:「ほかとも比べてから決めます」

紹介を受けたその場で「ほかとも比べてから決めます」と伝えておくと、あとで別の会社に決めても角が立ちにくくなります。

紹介された会社を断りにくくなる一番の原因は、「お願いします」と言ったように受け取られたまま、話が進んでしまうことです。最初に比べると伝えておけば、あとで別の会社に決めても「最初にお伝えしたとおり」で済みます。

伝え方の例は、次のとおりです。

最初に伝える一言の例

「ありがとうございます。大事な資産なので、ほかの会社の話も聞いてから決めます。査定はぜひお願いします」

あわせて、新居の契約書や値引きの条件に「売却もうちに任せる」が入っているかも、確かめておきたい点です。入っていなければ、売却をどの会社に頼むかは、新居の契約と切り離して決められます。

もし入っていたら、新居の契約をする前に、その条件を外せるか新居の会社に相談しておきましょう。

「買取保証があるからうちで」と言われたときの返し方と断り方

買取保証を理由に引き止められたら、保証の条件を書面でもらい、ほかの会社の条件と並べてから決めましょう。

買取保証は、その会社に売却を任せることが条件になっている場合があります。「保証だけ残して、売却はほかの会社に頼もう」と考えても、その形では保証を使えないことがあります。

書面でもらった条件のうち特に見ておきたいのは、保証を受けるために結ぶ契約の種類です。専任媒介契約や専属専任媒介契約が条件になっていれば、その契約の期間中は、ほかの会社に売却を頼めません。

返し方と断り方は、例えば次のように言えます。

返し方と断り方の例
  • 条件を聞くとき「保証の条件を書面でいただけますか。ほかの会社の条件とも比べて決めたいので」
  • 断るとき「今回は、売り出しの計画がより具体的だった会社にお願いすることにしました。新居のほうは、引き続きよろしくお願いします」

新居の会社の提携先を断るときは、理由を短く伝えるのがおすすめです。細かく説明するほど、引き止めの話が長くなりがちです。

勤務先の提携先には、「ほかの会社と比べて決めました」と伝えれば十分です。制度を使うかは社員が自由に選べるので、断っても勤め先との関係が悪くなることは少ないと考えられます。

まとめ:紹介された会社に任せるのは、ほかの会社と比べて売る力を確かめてから

紹介された会社に売却を任せてよいかは、手数料の割引や段取りの楽さより、ほかの会社と比べた売る力で決まります。Aさんの例では、約34万円の手数料割引は、売値が1%下がるだけで消えてしまいます。

まずは紹介された会社のほかに1〜2社へ同じ時期に査定を頼み、査定額の根拠と売り出しの計画を同じ質問で比べておきましょう。この比較を飛ばすと、早く売るための安めの値段や、市場より低い買取保証の値段に気づけず、手取りが数百万円単位で減るおそれがあります。

あわせて、新居の契約書に「売却もうちに任せる」という条件が入っているかも、契約の前に確かめておくと安心です。住み替えのトビラでは、紹介された会社に売却を任せるときの見極め方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。