「臭いが残っている」「エレベーターがない」部屋を売るとき、買取に出したほうが楽で安心だと考える人は多いでしょう。
ところが3,000万円の部屋で試算すると、臭いの部屋は、消臭してから仲介で売るほうが手元に残るお金が500万円以上多くなりました。
弱点が直せるものか直せないものかで答えが変わる理由と、自分の部屋の査定額で仲介と買取を比べる方法を紹介します。
臭いの部屋は仲介が得になりやすく、エレベーターなしの部屋は仲介と買取の差が縮む
臭いの部屋とエレベーターなしの部屋では、仲介と買取で手元に残るお金の差が大きく違います。
この章では、2つの部屋の試算と、買取のほうが得になる値下げの幅を紹介します。
3,000万円の部屋を仲介と買取で売ったときの手残りを比べる
弱点がなければ3,000万円で売れる部屋で試算すると、臭いの部屋もエレベーターなしの部屋も、仲介で売ったほうが手元に多くのお金が残ります。
この記事では、手元に残るお金を「手残り」と呼びます。売れた値段から、仲介手数料や直す費用、売れるまでの月々の費用を引いた額です。
買取の値段は、業者が工事費と自分たちの利益を引いてつけるため、仲介で売れる値段より安くなります。
この試算では、臭いの部屋の買取の値段を、3,000万円の75%と仮定しました。エレベーターなしの5階は、売り出し価格2,550万円の7割です。業者にとっても売り直しにくい部屋なので、少し低めにしています。
次の表に、売り方ごとの売れた値段と引かれるお金、手残りをまとめました。
| 部屋 | 売り方 | 売れた値段 | 引かれるお金 | 売れるまで | 手残り |
|---|---|---|---|---|---|
| 臭いの部屋 | 消臭してから仲介 | 3,000万円 | ・手数料106万円 ・工事100万円 ・月々の費用20万円 | 4か月 | 約2,774万円 |
| 臭いの部屋 | 手を入れずに仲介 | 2,800万円 | ・手数料99万円 ・月々の費用30万円 | 6か月 | 約2,671万円 |
| 臭いの部屋 | 買取 | 2,250万円 | ・月々の費用5万円 | 1か月 | 約2,245万円 |
| エレベーターなしの5階 | 仲介 | 2,295万円 | ・手数料82万円 ・月々の費用45万円 | 9か月 | 約2,168万円 |
| エレベーターなしの5階 | 買取 | 1,785万円 | ・月々の費用5万円 | 1か月 | 約1,780万円 |
仲介と買取の手残りの差は、臭いの部屋が約529万円、エレベーターなしの5階が約388万円です。
差が小さいエレベーターなしの部屋は、値下げが重なると、買取のほうが得になることもあります。
出典: 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(告示)
出典: 国土交通省「令和5年度マンション総合調査の結果について」
臭いの部屋では、消臭の費用を差し引いても仲介の手残りが買取を上回る
臭いの部屋を消臭してから仲介で売ると、手残りは買取より約529万円多くなります。
臭いは、直せば消える弱点です。臭いが消えれば、その部屋は弱点のない部屋に近い値段で売れると考えられます。
一方、買取では、業者が工事費と自分たちの利益を先に引いて値段をつけます。売主が自分で消臭してから売れば、業者の利益として引かれる分も手元に残せます。
手を入れずにそのまま仲介で売った場合でも、手残りは買取より約426万円多くなります。臭いの部屋でも、まずは仲介を候補に入れて考えるとよいでしょう。
ただし、この試算は、消臭で臭いが消えることを前提にしています。臭いが床の下地まで染み込んでいる部屋は、工事費が大きく増えます。
消臭しても臭いが戻れば、売った後に買い手から修理の費用を求められるおそれもあります。
エレベーターなしの部屋では、値下げと長い売り出し期間で、仲介と買取の差が縮む
エレベーターなしの5階は、売れるまでに9か月かかって1割値下げしたため、仲介と買取の手残りの差が約388万円に縮みました。
もし売り出した2,550万円のまま3か月で売れていたら、手残りは約2,444万円で、買取との差は約664万円ありました。1割の値下げと、6か月長くかかった分の月々の費用で、仲介の手残りが約277万円減ったことになります。
値下げが必要になったのは、エレベーターなしという弱点を誰にも直せないからです。階段の上り下りがつらい人は買い手の候補から外れるため、買い手が少なくなります。
買い手が少ない部屋は、売れるまでに時間がかかります。売れ残ると、値下げをして買い手を探すことになります。
それでも、値下げが1割で済めば、この例のように仲介のほうが手残りは多くなります。
仲介と買取の手残りが逆転するかは、売れるまでの月数より値下げの幅で決まる
仲介の手残りは、売れるまでの月数より、値下げの幅で大きく減ります。
売れるのが1か月遅れても、減るのは月々の費用の5万円です。一方、3,000万円の部屋を1割値下げすると、手残りは約290万円減ります。
査定額とは、不動産会社が「この値段なら売れそう」と見積もった値段のことです。次の2つの表では、査定額が3,000万円の部屋で、仲介と買取の手残りの差を値下げの幅と月数ごとに計算しました。
買取の値段が査定額の8割(2,400万円)の場合
| 仲介での値下げ | 3か月で売れた | 6か月で売れた | 12か月で売れた |
|---|---|---|---|
| 値下げなし | 仲介が484万円多い | 仲介が469万円多い | 仲介が439万円多い |
| 1割値下げ | 仲介が194万円多い | 仲介が179万円多い | 仲介が149万円多い |
| 2割値下げ | 買取が96万円多い | 買取が111万円多い | 買取が141万円多い |
| 3割値下げ | 買取が386万円多い | 買取が401万円多い | 買取が431万円多い |
買取の値段が査定額の7割(2,100万円)の場合
| 仲介での値下げ | 3か月で売れた | 6か月で売れた | 12か月で売れた |
|---|---|---|---|
| 値下げなし | 仲介が784万円多い | 仲介が769万円多い | 仲介が739万円多い |
| 1割値下げ | 仲介が494万円多い | 仲介が479万円多い | 仲介が449万円多い |
| 2割値下げ | 仲介が204万円多い | 仲介が189万円多い | 仲介が159万円多い |
| 3割値下げ | 買取が86万円多い | 買取が101万円多い | 買取が131万円多い |
※月々の費用5万円、仲介手数料は上限額、買取は1か月で引き渡しとして計算(すべて仮の数字)
買取の値段が高いほど、少しの値下げで買取のほうが得になります。買取の値段が査定額の8割なら2割の値下げで、7割なら3割の値下げで、買取の手残りが仲介を上回ります。
仲介が得になる目安は、仲介で売れる値段が買取の値段を4〜6%ほど上回ることです。3か月で売れるなら4%ほど、1年かかるなら6%ほど上回れば、仲介手数料と月々の費用の分を取り返せます。
新居のローンと二重に払っている人など、月々の費用が大きい人は、売れるまでの月数でも手残りが大きく変わります。表の月々の費用5万円を自分の額に置き換えて、手残りを計算し直しておくと安心です。
弱点のある部屋の主な買い手は、直して売り直す買取再販業者
買取で部屋を買う不動産会社の多くは、「買取再販業者」です。
買取再販業者とは、古い部屋を買い取り、きれいに直してから売り直す不動産会社です。
業者の利益の出し方を知ると、買取の値段が仲介より安くなる理由がわかります。
古いマンションを買い取って売り直す業者が増えている
買取再販業者が直して売り出す中古住宅は、ここ数年で大きく増えています。
矢野経済研究所の推計では、買取再販で売られた中古の戸建てとマンションは、合わせて2024年に52,800戸でした。前の年より13.3%多く、2025年は62,700戸まで増える見込みです。
古くて手を入れる必要がある部屋は、業者にとって、直して売り直すための大事な仕入れ先だと考えられます。
出典: 矢野経済研究所「中古住宅買取再販市場に関する調査を実施(2025年)」
買取の値段は「売り直す値段 − 工事費 − 業者の利益」で決まる
業者は、直した後に売り直せる値段から、工事費と自分たちの利益を引いて買取の値段を決めます。
この式で、弱点によって大きく変わるのは、最初の「売り直せる値段」です。
臭いは工事で消せるので、臭いの部屋でも売り直せる値段は下がりにくくなります。
一方、エレベーターがないことは、業者が工事をしても残る弱点です。工事の後も5階は5階のままなので、売り直せる値段そのものが下がります。
その下がった値段から、さらに工事費と利益が引かれます。そのため、エレベーターなしの部屋は、買取に出しても弱点の分だけ値段が低くなります。
部屋をまるごと改装する業者にとって、臭いのために増える工事費は小さい
臭いのある部屋を買い取っても、業者の工事費はあまり増えないと考えられます。
買取再販業者は、買い取った部屋の壁紙や床、キッチンなどの水回りを、まとめて新しくすることが多いからです。壁紙や床を全部張り替えるなら、臭いがあってもなくても、工事の中身はほぼ同じです。
臭いのために加わるのは、床の下地の処理や消臭作業などです。売主には大きな弱点に見える臭いも、業者にとっては少し手間が増える程度のことが多いといえます。
それでも、買取の査定で「臭いがあるので」と値段を下げる業者もいます。査定のときに、臭いの分でいくら引いたかを業者に聞いておきましょう。その額が消臭の見積もりより大きければ、臭いを理由に引きすぎていると考えられます。
1階・北向き・騒音などの弱点も、工事で消えるか残るかで売り方を考える
臭いやエレベーターなし以外の弱点も、工事で消えるか残るかで分ければ、同じ考え方で売り方を決められます。
次の表では、よくある弱点を、工事の後に消えるものと残るものに分けています。
| 弱点 | 工事の後 | 理由 |
|---|---|---|
| 臭い(タバコ・ペット・カビなど) | 多くは消える | 壁紙や床の張り替えで消えることが多い |
| 室内の傷み・汚れ | 消える | 内装工事で新しくできる |
| 古いキッチン・浴室 | 消える | 設備ごと交換できる |
| 線路や大通りの騒音 | 和らぐ | 内窓(二重窓)で音を小さくできる |
| 1階・北向き・眺めの悪さ | 残る | 部屋の位置と向きは工事の後も同じ |
| エレベーターなし | 残る | 建物全体の設備で、1部屋の工事の範囲外 |
| マンションの管理の悪さ | 残る | マンション全体の問題で、1部屋の工事の範囲外 |
弱点が「消える」側なら、臭いの部屋と同じく、直してから仲介で売ると得になることがあります。直す費用より、直して上がる値段のほうが大きければ、手残りが増えます。
弱点が「残る」側なら、その弱点を気にしない買い手が見つかりそうかで、仲介と買取を選ぶことになります。
騒音のように工事で和らぐ弱点は、内窓の工事費と、内窓を付けると上がる査定額を比べて、付けるかを決めるとよいでしょう。
仲介で売ると、業者がリノベーションした同じ築年数の部屋と比べられる
仲介で売るなら、臭いが残ったままの部屋は、業者がリノベーションした部屋より見劣りすると考えておく必要があります。
不動産の情報サイトでは、同じ駅で同じくらいの築年数の部屋が一覧で並びます。その中には、業者がリノベーション(大がかりな改装)をした、新品同様の部屋も含まれます。
首都圏で直近2年以内に中古マンションを買った人のうち、リノベーションやリフォームが済んだ物件を選んだ人は53.2%でした(コスモスイニシア調べ、2026年)。
しかも今は、売りに出ている部屋が増えています。2026年9月に首都圏で売りに出ていた中古マンション(在庫)は50,450件で、前の年より15.1%多く、7か月続けて増えました。
買い手に選ぶ余裕があるほど、臭いの残る部屋は後回しにされやすくなります。仲介で売るなら、臭いを消してから売り出すか、自分で直したい人に向けて売るとよいでしょう。
出典: コスモスイニシア「中古マンション購入検討者・購入者の価値観と購入行動に関する調査」
出典: 東日本不動産流通機構「Market Watch サマリーレポート 2026年9月度」
臭いの部屋は、消臭にかかる費用と売った後の責任で売り方を決める
臭いの部屋を仲介で売って得をするには、臭いが消えることと、売った後にもめないことの2つが条件になります。
この章では、2つの条件を満たせるかを見分ける方法と、満たせないときの売り方を紹介します。
臭いが消えやすいかは、原因と染み込んだ深さで決まる
臭いは、床の下地のような奥まで染み込んでいるほど、消すのに大きな工事が必要になります。
次の表に、臭いの原因ごとの染み込みやすい場所と、主な対処をまとめました。
| 原因 | 染み込みやすい場所 | 主な対処 | 消えやすさの目安 |
|---|---|---|---|
| タバコ | 壁紙、天井、エアコンの内部 | 壁紙と天井の張り替え、エアコンの洗浄 | 張り替えで消えることが多い |
| ペット | 床とその下地、壁の下のほう、ドア | 床を下地から張り替える、消臭作業 | 下地まで染みていると、床をはがす工事が必要 |
| カビ | 押し入れ、北側の壁、浴室や洗面所 | カビの除去、結露や換気の改善 | 結露の原因まで直す必要がある |
| 排水 | 排水口、配管 | 排水口の掃除や部品の交換、配管の修理 | 原因が見つかれば消えやすい。共用の配管が原因なら管理組合が対応 |
壁紙の表面についた臭いなら、張り替えで消えることが多いです。一方、ペットの尿が床板の下まで染みていると、表面をきれいにしても、しばらくするとまた臭ってきます。
臭いの深さを自分で判断しにくいときは、リフォーム会社や消臭の専門業者に部屋を見てもらいましょう。見積もりのときに「どこまで工事すれば臭いが消えますか」と聞いておくと、必要な工事費がわかります。
消臭して得になるのは、消臭の費用が値段の差より小さいとき
消臭の費用が、消臭した場合とそのまま売る場合の値段の差より小さければ、消臭したほうが手残りは多くなります。
消臭した場合とそのままの場合の査定額は、不動産会社に両方を聞くとわかります。
消臭の費用は、壁紙の張り替えで済むか、床を下地から作り直すかで大きく変わります。部屋の広さや傷み方でも違うため、リフォーム会社や消臭の専門業者の見積もりで確かめましょう。
上の例で工事費が100万円なら、消臭したほうが得です。臭いが広い範囲の床の下地まで染みていて、工事に250万円かかるなら、そのまま売るほうが得になります。
消臭のついでにキッチンの交換などまで手を広げると、買う人の好みに合わず、かけたお金を取り戻せないことがあります。工事の範囲は、臭いの原因になっている場所に絞るのがおすすめです。
自分でリノベーションしたい買い手には、消臭せずにそのまま売る方法もある
買い手が自分でリノベーションするつもりなら、臭いがあっても、手を入れないまま仲介で売れることがあります。
前の章で見たとおり、リノベーションやリフォームが済んだ物件を選んだ人は53.2%です。残りの半分近くの人は、それ以外の物件を選んでいます。
その中には、安く買って、自分の好みに直したい人もいます。こうした人は、もともと壁紙や床を全部張り替えるつもりです。そのため臭いがあっても、業者と同じように「工事が少し増える」くらいに考える人もいます。
自分で直したい人に向けて売るときは、広告に「リノベーション向き」「現状のまま引き渡し」と書いてもらうとよいでしょう。リノベーションした後の間取りの例を、広告に載せてくれる不動産会社もあります。
ただし、手を入れずに売る場合も、臭いがあることは買い手に必ず伝えておきましょう。伝えずに売ると、引き渡しの後に修理の費用を求められるおそれがあります。
出典: コスモスイニシア「中古マンション購入検討者・購入者の価値観と購入行動に関する調査」
臭いを伝えずに売ると、引き渡しの後に修理の費用を請求されることがある
売主は、臭いのように知っている不具合を買い手に伝えずに売ると、引き渡しの後も責任を負います。
この責任は、一般に「契約不適合責任」と呼ばれます。契約のときに伝えていなかった不具合が売った後に見つかると、売主は修理の費用や値下げを求められます。
2020年3月までの民法では、売主の責任は、買い手が気づけない欠陥(隠れた瑕疵)があるときの「瑕疵担保責任」とされていました。2020年4月1日の民法改正で、売ったものが契約の内容に合っているかで判断する形に変わっています。
民法では、買い手は不具合を知ってから1年以内に売主へ知らせれば、責任を問えます。個人が売主の取引では、売主が責任を負う期間を、契約で「引き渡しから3か月」などと短く決めることもあります。
ただし、売主が臭いを知っていて伝えなかった場合は、期間を短くする取り決めや責任を負わない取り決めがあっても、売主は責任を負います。その場合、買い手から契約を解除されることもあります。
臭いを買い手に伝えるには、「物件状況等報告書」(「告知書」とも呼ばれます)という書類を使います。この報告書は、仲介で売るときに、売主が部屋の今の状態を書いて買い手に渡す書類です。
この書類には、どんな臭いがするか、原因、これまでの対処を書いておきましょう。消臭した後でも臭いが戻るおそれがあるなら、そのことも書いておくと安心です。
内覧に来た人に臭いを指摘されて、つらく感じることもあるでしょう。それでも、最初に伝えておけば、売った後に修理の費用をめぐってもめずに済みます。
出典: 法務省「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について」
出典: 法務省「民法(債権関係)の改正に関する説明資料 -主な改正事項-」
臭いが床の下地まで染み込んだ部屋は、売った後の責任を免除してもらえる買取が有力
消臭しても臭いが戻りそうな部屋は、売った後の責任を負わずに済む買取を選ぶと安心です。
買取では、業者が部屋を調べたうえで買うため、売った後の責任を売主に求めない約束にすることが一般的です。
ただし、知っている臭いは業者にも伝えておく必要があります。売主が知っていて伝えなかった不具合は、責任を免除する約束があっても、売主が責任を負うからです。
買取を選ぶと安心なのは、次のような部屋です。
- 臭いが床の下地や壁の奥まで染みている
- 臭いの原因がわからず、消臭しても戻るおそれがある
- 消臭の費用が、値段の差より大きくなりそう
ほかにも買取には、内覧がいらず、近所に売ることを知られにくい良さがあります。
ただ、3,000万円の部屋のモデル試算では、仲介と買取の手残りの差が400万円を超えていました。臭いがあるという理由だけで買取に決めず、自分の部屋の査定額で手残りを計算してから選ぶとよいでしょう。
エレベーターなしの部屋は「誰が買うか」で売り方が決まる
エレベーターなしの部屋は、階段を気にしない買い手が見つかりそうかで、仲介と買取のどちらにするかが決まります。
エレベーターは後から付けられないため、売主にできるのは、その部屋を買ってくれそうな人に向けて売ることです。
エレベーターなしの上の階でも、若い世帯や投資家には買い手がいる
エレベーターなしの上の階でも、値段の安さや静かさを重視する人は、階段を気にせずに買うことがあります。
とはいえ、買い物袋や小さな子どもを抱えて毎日階段を上り下りするのは大変です。そのため、年配の人や子育て中の家族は、こうした部屋を選びにくいと考えられます。
階段を気にせずに買うのは、例えば次のような人です。
- 値段の安さを重視する、若い一人暮らしや二人暮らし
- 日当たりや眺め、上の階の静かさを重視する人
- 部屋を賃貸に出したい投資家
若い一人暮らしや二人暮らしの人は、毎日の上り下りを負担に感じにくく、エレベーターがない分の安さを選ぶことがあります。上の階は、下の階より日当たりや眺めがよくなりがちです。最上階なら、上の部屋からの足音に悩まされずに済みます。
賃貸に出す投資家は自分では住まないため、階段よりも、買う値段に対してどれだけ家賃が入るかを重視すると考えられます。
投資家も買い手に数えると、エレベーターなしの部屋を買ってくれる人は、思ったより多いでしょう。
仲介で売るなら、同じマンションの下の階が売れた値段を目安に売り出し価格を決める
エレベーターなしの部屋の売り出し価格は、同じマンションの下の階が実際に売れた値段を目安に決めるとよいでしょう。
下の階の成約価格(実際に売れた値段)より大きく高い値段で売り出すと、売れ残って値下げを重ねやすくなるからです。
2026年9月の首都圏では、売りに出ている中古マンション(在庫)の平均価格は6,971万円でした。同じ月に実際に売れた中古マンションの平均価格は5,111万円で、在庫の平均価格を大きく下回っています。
売り出し価格が高すぎる部屋は、売れ残りやすいと考えられます。
同じマンションの成約価格は、次の2つの方法で調べられます。
- 仲介を頼む不動産会社に、成約事例を出してもらう
- 国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で、自分で調べる
不動産会社は、業者どうしで売買の情報を共有する仕組み(レインズ)を使い、階数や広さ、売れた時期まで調べられます。不動産情報ライブラリは誰でも使えますが、どの部屋か特定できないように情報がぼかされています。
階数ごとの値段の差は、不動産会社が出す成約事例で確かめられます。
出典: 東日本不動産流通機構「Market Watch サマリーレポート 2026年9月度」
駅から遠い・建物が古いなどの弱点が重なると、買取を断られることもある
エレベーターなしの部屋にほかの弱点が重なると、業者が売り直す見込みを立てられず、買取を断ることがあります。
業者が買い取るのは、売り直して利益が出ると見込める部屋です。そうした見込みが立たない部屋は、売主が値段を下げても断られることがあります。
エレベーターなしの部屋で、買取が難しくなりやすいのは、次の弱点が重なる場合です。
- 駅から遠く、バスが必要
- 旧耐震基準の建物(1981年5月以前に建築確認)
- 管理が行き届いていないマンション
- 家族向けの広い間取り
旧耐震基準の建物は、買う人が住宅ローン控除を受けにくいため、もともと買い手が限られます。中古住宅で住宅ローン控除を受けるには、1982年1月1日以後に建てられたか、耐震基準に合うと証明された住宅であることが条件だからです。
この条件は、2022年1月1日以後に住み始める人から変わりました。2021年までに住み始めた人は、マンションなら築25年以内(または耐震基準に合うことの証明)が条件でした。
そこに階段の弱点が重なると、業者も売り直す見込みを立てにくくなります。
家族向けの広い間取りの部屋は、主な買い手が子育て世帯です。子育て世帯は階段を避けがちなので、買い手がさらに少なくなります。
1社に断られても、ほかの会社が買い取ることもあります。買取を考えるなら、複数の会社に査定を頼みましょう。
出典: 国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
出典: 国税庁「No.1214 中古住宅を取得し、令和3年までに居住の用に供した場合」
出典: 国土交通省「マンションの耐震性等についてのQ&Aについて」
駅に近い・値段が手頃などの条件に多く当てはまれば、仲介で買い手を待つ価値がある
エレベーターなしの部屋でも、若い世帯や投資家が重視する条件に多く当てはまれば、仲介で買い手が見つかる見込みがあります。
仲介で買い手が見つかりやすい条件は、次のとおりです。
- 駅から歩いて行ける
- 近くに、同じくらいの値段の部屋が少ない
- 一人暮らしや二人暮らし向けの間取り
- 日当たりや眺めがよい
- 階段や廊下などの共用部分がきれい
- 新耐震基準の建物(1981年6月以降に建築確認)
当てはまる条件が多いほど、階段を気にしない若い世帯や、賃貸に出したい投資家に選ばれやすくなります。その場合は、時間をかけて仲介で買い手を探すとよいでしょう。
当てはまる条件が少ない場合は、仲介と同時に買取の査定も取り、両方の手残りを比べておくと安心です。
仲介で待つときに気をつけたいのは、売れるまでの月数より、値下げの幅です。査定額が3,000万円、買取の値段がその8割の部屋で試算すると、1年かかっても値下げが1割なら、仲介のほうが約149万円多く残ります。
一方、2割値下げすると、3か月で売れても買取のほうが多く残ります。そのため、値下げが2割に近づいたら、買取への切り替えも考えておきたいところです。
業者に「弱点でいくら引いたか」を聞けば、仲介と買取を同じ基準で比べられる
仲介と買取のどちらにするかは、査定で業者から聞いた数字を使い、自分の部屋の手残りを計算して決めるとよいでしょう。
査定のときに業者へ聞いておきたい3つの質問
査定では、どの会社にも同じ3つの質問をすると、会社ごとの査定額の根拠を比べられます。
査定額の数字だけを並べると、弱点の分を会社ごとにいくら引いたのかがわかりにくくなります。そこで、次の3つを聞いておきましょう。
- 「弱点の分として、いくら引いていますか」(仲介と買取の両方の会社に)
- 「買い取った後、どんな工事をして、いくらで売り直す予定ですか」(買取の会社に)
- 「何か月で売れそうですか。根拠になる成約事例はどれですか」(仲介の会社に)
1つ目の質問で、臭いやエレベーターなしの弱点で何万円引かれたかがわかります。引かれた額が会社によって大きく違えば、引きすぎている会社を見分けられます。
2つ目の質問で売り直す値段がわかれば、そこから買取額を引いて、工事費と業者の取り分の合計を出せます。臭いの部屋なら、その合計を消臭の見積もりと比べると、臭いを理由に引きすぎていないかがわかります。
3つ目の質問で、手残りの計算に使う売れるまでの月数と、値下げの見込みがわかります。成約事例や工事の中身まで具体的に答えてくれる会社ほど、根拠のある査定をしているといえます。
査定は、仲介の会社と買取の会社に、それぞれ複数頼んでおくと安心です。弱点は、最初から正直に伝えておくことが大切です。弱点を隠して高い査定額をもらっても、部屋を見られた後で下げられるからです。
査定で得た数字を式に入れて、仲介と買取の手残りを比べる
仲介と買取の手残りは、査定額と月々の費用がわかれば、次の式で計算できます。
式に入れる数字は、仲介と買取で次のように違います。
| 項目 | 仲介 | 買取 | 数字の確かめ先 |
|---|---|---|---|
| 売れる値段 | 仲介の査定額(値下げの見込みも考える) | 買取の査定額 | 各社の査定 |
| 仲介手数料 | 上限は売れる値段×3%+6万円(税別) | 0円 | 仲介の会社 |
| 直す費用 | 消臭などをする場合にかかる | 0円 | リフォーム会社の見積もり |
| 月々の費用 | 売れるまでの月数分 | 引き渡しまでの1か月ほど | 管理費・修繕積立金の通知、ローンの返済表、固定資産税の通知書 |
| 売った後の責任 | 期間を決めて負う | 免除されることが多い | 売買契約書の案 |
例えば、買取額が2,100万円で、月々の費用が5万円の人で考えます。仲介で売れる値段が、6か月で売れるなら約2,200万円以上、1年かかるなら約2,240万円以上なら、仲介のほうが多く残ります。
新居のローンと二重に払っている人は、月々の費用が大きくなります。月々の費用が15万円の人が1年かけて売る場合は、仲介で約2,350万円以上で売れたときに、ようやく仲介のほうが多く残ります。
月々の費用が大きいほど、時間のかかる仲介は不利になります。自分の月々の費用は、実際に払っている額をそのまま式に入れましょう。
出典: 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(告示)
新居の購入時期が決まっているなら、買取保証付き仲介で期限を守る
新居の購入時期が決まっている人には、「買取保証付き仲介」がおすすめです。
買取保証付き仲介では、まず契約で決めた期間だけ仲介で売り出します。その間に売れなければ、あらかじめ決めた値段で不動産会社が買い取ります。
住み替えでは、新居の引き渡しやローンの支払いが始まる時期が、先に決まっていることがあります。それまでに今の部屋が売れないと、支払いが二重になります。
期限だけを考えれば、すぐに売れる買取のほうが安心です。ただ、買取だけに決めると、仲介で高く売れたかもしれない分をあきらめることになります。
買取保証付き仲介なら、まず仲介で高く売ることを目指せます。仲介で売れなかったときも、期限までに買い取ってもらえます。
契約の前に、不動産会社に次の3点を確かめておきましょう。
- 保証される買取額が、ほかの会社の買取査定より安すぎないか
- 仲介で売り出す期間が、新居の期限に間に合うか
- 買取に切り替わったときの仲介手数料の有無
中でも気をつけたいのは、保証される買取額です。保証額が低いと、仲介で売れなくても、会社は安く買い取って利益を出せます。そのため、仲介で熱心に売ってもらえないおそれがあります。
保証額がほかの会社の買取査定と同じくらいなら、安心して任せられます。
まとめ:直せる弱点は仲介、直せない弱点は値下げの幅しだいで買取も選ぶ
弱点のある部屋でも、すぐに買取に決めると損をすることがあります。3,000万円の部屋の試算では、仲介のほうが、臭いの部屋で約529万円、エレベーターなしの5階でも約388万円多く手元に残りました。
次の一歩は、仲介の会社と買取の会社の両方に査定を頼み、弱点の分でいくら引いたかを聞くことです。この質問を飛ばすと、買取の値段が弱点を理由に引きすぎていても気づけず、数百万円を手放すおそれがあります。
査定額が集まったら、月々の費用と売れるまでの月数を式に入れて、自分の部屋の手残りを計算してみましょう。住み替えのトビラでは、弱点のある部屋を仲介と買取のどちらで売るかの判断も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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