離婚を前に家の査定を取ったら、ローンの残りより安かった。そんな家をどうすればよいのか、迷っていませんか。
話し合いがこじれやすいのは、売っても返しきれない差額を誰が負担するかが、決まっていないからです。
この記事を読むと、返しきれない差額の負担まで含めて、家をどうするかを1つに決められます。
離婚でオーバーローンの家はどうなる?売却・ローン・保証の3つの問題
オーバーローンの家は、離婚したあとも、売るときのお金・ローンの返済・保証の3つの問題が残ります。
オーバーローンとは、ローンの残りが家の売値を上回っている状態のことです。
この3つの問題は、どれも銀行などの金融機関との契約で決まっていて、変えるには金融機関との手続きが必要です。この記事では、金融機関をまとめて「銀行」と書きます。
家を売るには、足りない分を決済の日までに用意する
オーバーローンの家を普通に売るには、ローンを返すのに足りない分を、決済の日までに現金で用意する必要があります。
決済の日とは、買い手から代金を受け取り、家を引き渡す日のことです。
住宅ローンを借りた家には、銀行の抵当権が付いています。抵当権とは、ローンが返せなくなったときに、銀行が家を売って貸したお金を取り戻せる権利です。
買い手は、抵当権が外れることを条件に家を買います。そのため決済の日には、売った代金でローンを全額返し、その場で抵当権を外します。
用意するお金は、次の式で計算できます。
用意するお金=ローンの残り+売るときの費用−売値の見込み
ここからは、次の数字を例に説明します。数字はすべて、説明のために置いた架空の値です。
- ローンの残り 2,800万円
- 売値の見込み 2,400万円
- 売るときの費用 90万円(仲介手数料の上限の約86万円に、抵当権を外す手続きの費用などを足した仮の額)
この場合、用意するお金は2,800万円+90万円−2,400万円で、490万円です。
ローンの残りと売値の差は400万円です。ただ、それだけで考えると、売るときの費用の90万円が抜け落ちてしまいます。
ローンの残りは、銀行から届く残高証明書か返済予定表で確かめられます。決済の日までの利息も加わるので、売ると決めたら、全額返すのにいくら必要かを銀行に聞いておきましょう。
売値の見込みは、いちばん高い査定額ではなく、同じマンションや近くの似た部屋が実際に売れた値段(成約価格)に近い額で考えておくと安心です。
不動産会社は、売却を任せてもらうために、高めの査定額を出すことがあります。その額で計算すると、実際には安くしか売れず、決済の直前にお金が足りなくなるおそれがあります。
残ったローンは、離婚後も名義人が払い続ける
オーバーローンの家のローンは、離婚したあとも、ローンの名義人(ローンを借りた本人)が銀行に返し続けます。
離婚のときは、結婚している間に夫婦で築いた財産を分けます。これを財産分与といいます。
オーバーローンの家は、売っても手元にお金が残らないので、財産分与では価値ゼロとして扱われます。
そのため、名義人が相手に「ローンの残りを半分払って」と求めても、財産分与の中では認められにくいと考えられます。
ただし、ローンの負担をどう分けるかは、2人が合意すれば自由に決められます。預金など家以外の財産と合わせて調整する方法が、よく使われます(後半でくわしく説明します)。
名義人でない人も、次の立場になっていれば、銀行から返済を求められます。
- 連帯保証人(名義人が払えないとき、代わりに払う約束をした人)
- 連帯債務者(名義人と一緒にローンを借りた人)
自分がどの立場かは、ローンの契約書で確かめられます。
出典: 法テラス「ローンが残っている住宅も、財産分与の対象とすることができるのですか?」
連帯保証とペアローンは、離婚届を出しても残る
連帯保証人の立場もペアローンの契約も、離婚届を出したあとも続きます。
ペアローンとは、夫婦がそれぞれ1本ずつローンを組む形のことです。
保証やローンの責任から外れる方法は、主に次の3つです。
- ローンを全額返す(家を売った代金で返す場合も含む)
- 住み続ける人が、ひとりの名義で借り換える
- 代わりの保証人を立てる
借り換えとは、別の銀行で新しくローンを組み、今のローンを返すことです。
ただ、オーバーローンの家では、借り換えの審査が厳しくなります。新しい銀行は家の値段くらいまでしか貸さないことが多く、足りない分は自分のお金で入れることになるからです。
さらに、離婚後は住み続ける人ひとりの収入で、審査に通る必要があります。
代わりの保証人にも、元の保証人と同じくらいの収入や資産が求められるのが普通で、頼める人は限られます。
ペアローンでは、夫婦がお互いの連帯保証人になっていることがよくあります。片方だけが抜けるには、住み続ける人が2本のローンをまとめて、ひとりで借り換える必要があり、審査はさらに厳しくなります。
離婚協議書(離婚の取り決めをまとめた書面)に「相手が払う」と書いても、それは夫婦の間だけの約束です。銀行は契約どおり、名義人と連帯保証人に返済を求めます。
離婚でオーバーローンの家をどうするか?3つの方法と選び方
オーバーローンの家をどうするかは、次の3つの方法に分かれます。
- 足りない分を払って売る
- どちらかが家とローンを引き継いで住み続ける
- 任意売却で手放す
どれを選ぶかは、次の2つの問いで決まります。
- 住み続けたい人が、ひとりで借り換えられるか
- 売るときに用意するお金を、現金で払えるか
1が「はい」なら、住み続ける方法を選べます。ここでの「借り換えられる」は、審査に通り、足りない分を自分のお金で入れられることを指します。
1が「いいえ」で2が「はい」なら、足りない分を払って売る方法になります。2も「いいえ」なら、残るのは任意売却です。
| 方法 | 選べる場合 | 足りない分を払う人と時期 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|---|
| 足りない分を払って売る | 用意するお金を現金で払える | 払う人が、決済の日までに | 高い査定額で計算すると、直前にお金が足りなくなる |
| どちらかが住み続ける | 住み続けたい事情があり、ひとりで借り換えられる | 住み続ける人が、借り換えのときに自分のお金で | 新しいローンは、家の値段くらいまでしか借りられないことが多い |
| 任意売却で手放す | 用意するお金を払えず、住み続ける人もいない | 名義人(払えなければ保証人)が、売ったあとに分割で | 返済が遅れてから進むことが多く、遅れが信用情報に残る |
足りない分を払えるなら、売ってローンも保証も終わらせる
足りない分を用意できるなら、普通に売ってローンを全額返すのが、いちばんすっきりした方法です。
例の数字では、490万円を決済の日までに用意すれば、ローンを全額返せて抵当権も外れます。
連帯保証やペアローンの責任もこのときになくなるので、離婚後にお金のことで元の相手と関わり続けずに済みます。
490万円を誰が出したかは、財産分与で調整できます。夫婦の預金から出したのか、結婚前からの貯金など1人のお金から出したのかを記録し、分けるときの計算を先に決めておきましょう。
売りに出している間のローンや、管理費・修繕積立金を誰が払うかも、不動産会社に売却を頼む前に決めておくとよいでしょう。売り出し価格をいくらまで下げてよいかも話しておくと、途中で話し合い直さずに済みます。
家が2人の共有名義なら、売るときは2人の同意と手続きが必要です。離婚後に連絡を取りにくくなりそうなら、不動産会社とやり取りする人と2人の連絡方法を、売り出す前に決めておくと、手続きが止まるのを防げます。
住み続けるなら、ひとりで借り換えて家とローンを引き継ぐ
子どもの学校などの理由で住み続けたいなら、家の名義とローンの両方を、住む人ひとりに移す方法があります。
家の名義だけを移して、ローンを元のままにすると、家を出た人に返済や保証の責任が残ります。
ローンが残っている家の名義を変えるには、多くの場合、銀行の承諾がいります。そのため、住む人がひとりで借り換えて、元のローンを全額返す形が一般的です。
例の数字で、新しい銀行が家の値段に近い2,400万円までしか貸さない場合、残りの400万円は住む人が自分のお金で入れることになります。
家を売らないので、売るときの費用90万円の代わりに、借り換えの手数料や名義を変える手続きの費用がかかります。
マンションでは、ローンに加えて、管理費と修繕積立金を毎月払い続けます。大きな修繕の前には、積立金が上がったり、一時金としてまとまったお金を求められたりすることもあります。
引き継ぐ前に、修繕の予定をまとめた長期修繕計画や、管理組合の最近の総会の記録で、値上げの予定を確かめておきましょう。ローンと合わせて、ひとりの収入で払い続けられるかも確かめておきたい点です。
出典: 法テラス「ローンが残っている住宅も、財産分与の対象とすることができるのですか?」
足りない分を払えず借り換えもできないなら、任意売却で手放す
足りない分を払えず、住み続けられる人もいないときに残る方法が、任意売却です。
任意売却とは、銀行の同意を得て、ローンを返しきれない値段でも家を売る方法です。裁判所を通して強制的に売られる競売より、ふつうの相場に近い値段で売れる傾向があります。
仲介手数料や抵当権を外す費用は、売った代金から差し引かれるのが一般的です。つまり、手元のお金を先に用意しなくても、家を手放せます。
銀行や保証会社によっては、引っ越し費用の一部や、滞納した管理費を代金から払うことも認めてくれます。
どこまで認められるかは交渉で決まるので、任意売却を扱う会社に間に入ってもらうと、話を進めやすくなります。
注意したいのは、返済が何か月も遅れてから、任意売却の話が進むことが多い点です。
返済の遅れが続くと、ローンを保証している保証会社が、銀行に代わって残りを返します。そのあとは保証会社が返済を求める相手になり、任意売却の相談先も保証会社に変わります。
このころには、返済の遅れが信用情報(ローンやクレジットカードの返済の記録)に残っています。しばらくは新しいローンを組みにくくなるので、離婚後に家を買う予定がある人には大きな痛手です。
売ったあとも、例の数字では、490万円に遅れていた間の利息などを足した額が残ります。
この残りは名義人が分割で返し、名義人が払えなければ連帯保証人に請求が来ます。毎月いくら返すかは、保証会社との話し合いで決まります。
返済が苦しくなりそうだと分かった時点で、遅れる前に銀行へ相談すると、毎月の返済額を減らすなど、条件を見直してもらえることもあります。
任意売却は、それでも払えないときの方法です。任意売却をするために、わざと返済を遅らせるのは避けましょう。
離婚で残るオーバーローンの差額を、2人でどう負担するか
差額を2人でどう負担するかは、財産分与の計算と、2人の約束で決められます。
決めた約束を書面に残しておくと、後で「言った・言わない」の争いを防げます。
家だけを見て分けると、家を引き継いだ人に負担が偏ります。預金など家以外の財産もいっしょに並べて考えると、合意しやすくなります。
「家がマイナスだから分与はゼロ」と言われたら、預金と合わせて計算する
家のマイナスを預金から差し引いて計算すると、家を出る人が受け取る額は、例の数字で200万円減ります。
ここでは、どちらかが家とローンを引き継いで住み続け、夫婦の預金が600万円あるとします。
家を売らないので、売るときの費用は計算から外します。家のマイナスは、2,400万円−2,800万円で400万円です。
| 分け方 | 家を出る人が受け取る預金 | 住み続ける人に残る預金 | 住み続ける人の手元(残る預金−家のマイナス) |
|---|---|---|---|
| 家を外して、預金だけを半分ずつ分ける | 300万円 | 300万円 | −100万円 |
| 家のマイナスを預金から差し引いて、半分ずつ分ける | 100万円 | 500万円 | +100万円 |
家を外して分けると、家を出る人は300万円を受け取ります。住み続ける人は、残った300万円で家のマイナス400万円を抱えるので、差し引き100万円のマイナスです。
差し引いて分けると、2人の財産の合計は600万円−400万円で200万円です。これを半分ずつにすると、2人とも手元は100万円になります。
「家がマイナスだから分与はゼロ」という言い分が通るのは、家のマイナスが預金より大きいときです。この例のように預金のほうが多ければ、差し引いても分ける預金は残ります。
どちらの計算にするかは、2人で話し合って決められます。まとまらなければ家庭裁判所が決めますが、判断はケースによって分かれます。
弁護士に相談するときは、2通りの金額を見せると、自分の場合はどちらに近いかを答えてもらいやすくなります。
分ける預金やローンの残りは、別居した日の額を基準にすることが多いです。別居したら、通帳のコピーや残高証明書を取っておくと安心です。
出典: 法テラス「ローンが残っている住宅も、財産分与の対象とすることができるのですか?」
保証を外せないまま離婚するなら、返済が止まったときの対応を決めておく
保証やペアローンの責任を外せないまま離婚するなら、返済が止まったときに誰が何をするかを、離婚の前に書面で決めておきましょう。
決めておきたいのは、次の4つです。
- 返済できているかを、どの書類で、どのくらいおきに見せ合うか
- 返済が遅れたら、誰が誰に、いつまでに連絡するか
- 保証人が代わりに払ったら、その分を名義人がどう返すか
- 返済の遅れが何か月続いたら、家を売るか
銀行からの連絡は名義人に届くことが多く、保証人が気づくのは請求が来てからになりがちです。
返済用の口座の引き落とし記録を定期的に見せてもらう約束にしておくと、遅れにすぐ気づけます。
結論を先に延ばすなら、住む人・払う人・見直す時期を書面に残す
売るか住み続けるかを決めきれないまま離婚するなら、いつまでに結論を出すかと、それまで誰が何を払うかを書面に残しておくとよいでしょう。
よくあるのは、名義人が家を出てローンを払い続け、もう一方と子どもが住み続ける形です。この形では、名義人の返済が止まると、住んでいる人が競売で家を失うおそれがあります。
住宅ローンは、借りた本人が住むことを条件に貸し出されています。名義人が家を出るなら、銀行に伝えて相談する必要があります。
マンションの管理費と修繕積立金は、住む人が払うと約束しても、管理組合が請求するのは部屋の持ち主(登記上の所有者)です。
管理組合は、滞納分を、その部屋を買った人にも請求できます(建物の区分所有等に関する法律第8条)。買い手がその分を背負わないように、売るときは代金から滞納分を払うことになります。
待つことには良い面もあります。毎月の返済でローンの残りが減れば、差額が縮み、売りやすくなります。
返済予定表で数年後のローンの残りを確かめ、「3年後に査定を取り直す」のように、見直す時期も書いておきましょう。
出典: 法テラス「ローンが残っている住宅も、財産分与の対象とすることができるのですか?」
決めたことは公正証書にし、財産分与を請求できる期限も確かめる
2人で決めた差額の負担や返済の約束は、離婚協議書にまとめ、できれば公正証書にしておくと安心です。
公正証書とは、公証役場で作る公的な文書のことです。
公正証書に「払わなかったら強制執行を受けてもかまわない」という一文(強制執行認諾文言)を入れておくと、約束が破られたとき、裁判をしなくても相手の給料などを差し押さえられます。
ただし、公正証書も夫婦の間の約束です。銀行は、これまでどおり契約に従って、名義人と保証人に請求します。
家庭裁判所に財産分与を請求できるのは、離婚から5年以内です(民法第768条第2項)。法律が改正され、2026年4月1日から、それまでの2年が5年に延びました。
2026年3月31日までに離婚した人は、改正前の2年のままです。期限が近い人は、早めに弁護士に確かめておきましょう。
出典: e-Gov法令検索「民法」
出典: 法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について」
まとめ:返しきれない差額を誰がいつ負担するかを、最初に決める
離婚でオーバーローンの家に残るのは、分けられる財産ではなく、返しきれない差額です。
売る、住み続ける、任意売却のどれを選ぶとしても、この差額を誰がいつ負担するかが決まると、話し合いが進みます。
まずは、残高証明書と、実際に売れた値段に近い査定額から、売るときに用意するお金を計算しておきましょう。この数字がないと、預金との差し引きも借り換えの見通しも、根拠のないまま話し合うことになります。
数字が出たら、自分がローンの契約でどの立場にいるか(名義人か、連帯保証人か)を契約書で確かめておくと、誰と何を話すべきかがはっきりします。
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