借地権付きの分譲マンションを仲介で売り出したのに、買主が付かない。あるいは、住み替え先の決済日が迫っていて、早く現金にしたい。そんなときに浮かぶのが、不動産会社に直接買ってもらう買取です。
借地権付きマンションの買取価格に、一律の割引率はありません。仲介での査定と買取の提示を取り、承諾料などを引いた手取りと決済条件を比べることが、安く手放さないための第一歩です。
この記事では、借地権付きマンションの買取が向いている場面、買取価格の決まり方、買取業者の見分け方、そして損をしない進め方を順に説明します。
借地権付きマンションの買取が向いている場面
買取は、早期の決済や現状のままの引渡しを相談したい場合の選択肢です。仲介で一定期間売れなければ切り替える、という順番に限りません。借地の条件と希望期限を伝えて、両方の価格を比較できます。
仲介で買主のローンが付かず売れ残っている
購入希望者のローン審査が進まず、売買がまとまらない場合は、取扱金融機関や条件を確認します。フラット35でも借地は一定の要件で対象となりますが、すべての買主・物件が利用できるわけではありません。
買取会社は自社資金や事業用の融資で購入するため、個人の住宅ローンとは判断が異なります。ただし、会社側の資金調達や審査の条件は残ります。「3か月売れないから買取」と期間だけで決めず、仲介の反応と買取の提示を並べましょう。
定期借地権の残存期間が短く買い手が減っている
一般定期借地権は更新がなく、満了時の返還を前提に価格を考えます。残存期間が短くなると、買主が使えるローンや利用期間に影響します。
ただし、「残り20年で買取向き」という共通の境目はありません。立地、地代、解体などの費用、買主の利用目的によって違います。残りの期間を伝え、仲介で見込む買主と買取の条件を聞きましょう。
出典: e-Gov法令検索「借地借家法」(第22条 定期借地権)
地主との承諾の手続きを自分で進めにくい
賃借権の譲渡には原則として地主の承諾が必要です。地上権や包括承諾がある契約では扱いが異なります。まず権利と契約を確認します。
買取会社が書類準備や連絡を支援する場合もありますが、必要な承諾を省略できるわけではありません。連絡の担当、費用、不承諾時の契約の扱いを確認します。争いがある場合は弁護士への相談が必要です。
出典: e-Gov法令検索「借地借家法」(第19条 土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
住み替え先の決済日が決まっていて待てない
入金の期限が決まっているなら、査定時に伝えましょう。提示額だけでなく、地主の承諾や会社側の審査を含めて、その日までに決済できる条件かを確認します。
契約前に「最短○日」だけを頼りにせず、今回の決済予定日を書面で確かめます。
広告を抑えて、現状のまま売却を相談したい
直接買取なら、一般の買主向けに広く広告する手間を省ける場合があります。ただし、会社の現地調査や、地主・管理会社への確認、名義変更の届出は必要になり得ます。誰にも知られない売却とは限りません。
現況渡しでも、残置物の撤去や設備の扱いは契約次第です。契約不適合責任を免責にできる範囲も確認し、知っている不具合は伝えます。
仲介での価格も確認してから選ぶ
更新のある借地権や需要のある立地でも、価格・日程は物件ごとに違います。買取の提案だけで決めず、仲介ならどの程度の価格と期間を見込むか聞きましょう。査定は売却の約束ではありません。
出典: e-Gov法令検索「借地借家法」(第3条 借地権の存続期間)
借地権付きマンションの買取価格の決まり方
会社は、将来の売却や運用の見込みから、取得・保有・改装などの費用と利益を考えて買取価格を提示します。「所有権の価格×借地の割引×買取の割引」という共通の計算式はありません。
仲介の査定額の7割が、買取の下限とは限らない
仲介査定は成約の予想で、買取査定は会社が買うための条件です。仲介査定に一定割合を掛けても、買い取ってもらえる額や妥当な最低価格は分かりません。
| 比較する価格 | 確認すること |
|---|---|
| 仲介の査定 | 成約事例、売れるまでの見込み、値下げが必要になる条件 |
| 買取の提示 | 現地確認前か最終提示か、有効期限、承諾などの条件 |
| 最終的な手取り | 各社の費用・残債・税金を反映した受取見込み |
1社の提示額を、自宅の価値の上限にしない。 仲介と買取を比較すれば、早く確定させるためにどの程度の価格差を受け入れるか判断できます。
業者は転売価格から承諾料と地代と利益を引いて逆算する
買取業者の価格の作り方は、逆算です。転売の想定価格から、譲渡承諾料、保有期間中の地代、リフォーム費用、販売経費、利益を引いた残りが、買取価格です。
「承諾料は会社負担」と言われたら、提示額から別に引かれないかを確認します。費用は会社の採算に関わりますが、同額がそのまま値引きされているとは限りません。契約の定額・不要の定めがあれば伝えます。
承諾と残存期間は、提示額の条件として確認する
承諾が必要な取引では、自分から会社への譲渡と、会社が次に売るときの手続きが関わります。承諾の見込みが不明なら、価格が暫定なのか、何を確認すれば確定するのかを聞きましょう。
定期借地権では、残存期間だけでなく、地代や満了時の負担、運用・再販売の見込みも価格に影響します。「15年を切ればさらに何割安い」とは決めず、現在の査定と価格の根拠を確かめます。
仲介と買取は、費用を引いた手取りで比べる
仲介会社を挟まない直接買取なら仲介手数料はかかりません。買取会社を仲介会社に紹介してもらう取引では、手数料が生じ得ます。契約不適合責任の免責も、買取なら自動で付く条件ではありません。
仲介手数料の上限は、国土交通省の報酬告示で決まっています。売買の媒介では、代金のうち200万円以下の部分に5.5%、200万円超400万円以下の部分に4.4%、400万円を超える部分に3.3%を掛けた合計が上限です(いずれも消費税等相当額を含む割合)。よく言われる「3%+6万円」は、この計算を税別で簡単に表した式です。4,300万円なら、上限は148.5万円(税込)になります。
次は当サイトの仮定による計算例です。相場や査定結果ではありません。借地権マンションを仲介で4,300万円、直接買取で3,200万円で売る場合を比べます。
| 項目 | 仲介の例 | 直接買取の例 |
|---|---|---|
| 売買代金 | 4,300万円 | 3,200万円 |
| 仲介手数料(税込・上限で計算) | 148.5万円 | 0円 |
| ここまでの差引額 | 4,151.5万円 | 3,200万円 |
| さらに確認する費用 | 承諾料、地代精算、登記費用など | 別途の承諾料・精算・登記費用など |
| 資金計画で引くもの | ローン残債、必要な税金 | ローン残債、必要な税金 |
手数料だけを引いた段階の差は951.5万円です。最終手取りはまだ確定していません。自分の提示額と費用を入れて比べると、「手数料無料」だけで判断するのを避けられます。
契約不適合責任の免責は、引き渡し後の請求リスクが小さくなる利点です。ただ、免責の効き方には限りがあります。民法では、引き渡された目的物が種類・品質・数量について契約の内容に適合しないとき、買主は修補や代替物の引渡しを請求できると定められています。この責任を負わない旨の特約は結べますが、売主が知りながら告げなかった事実については、特約があっても責任を免れられません。つまり、知っている不具合は免責でも伝えます。この点を踏まえたうえで、手取りの差と免責の安心を天秤にかけて決めます。
出典: 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号) 出典: e-Gov法令検索「民法」(第562条 買主の追完請求権、第572条 担保責任を負わない旨の特約)
借地権付きマンションの買取業者の見分け方
借地権マンションの取扱経験、承諾の担当、最終価格と変更条件を確認します。一般的な会社選びの話より、この物件で何を引き受けるかを具体的に聞きましょう。
借地権マンションの買取実績を件数で確かめる
「借地権の買取実績があります」と書かれた業者は多くあります。聞くべきは「借地権マンションの買取実績」です。戸建ての借地権買取と、分譲マンションの区分所有の買取は、承諾の手続きも転売先も違います。
戸建てなら地主と1対1で底地の買い取りや同時売却の交渉ができます。マンションでは敷地の借地権が区分所有者全員の準共有なので、1戸の売主が使える手段は限られます。この違いを分かっている業者かどうかが、実績の件数に表れます。
具体的な件数と事例が返ってくる業者を選びます。
地主との承諾交渉を代行した進め方を聞く
承諾の連絡や書類準備を誰が行うのか、地主と条件が合わないときはどうするのかを聞きます。「取れなかった事例」の有無だけで優劣を決めず、今回の役割分担と不承諾時の費用を確認します。
見積書に承諾料の負担者と引き渡し条件が書かれているか
口頭だけでは認識の違いが残りやすいため、見積書と契約書で条件を確認・保存します。次の項目が分かる形にしてもらいましょう。
| 項目 | 確かめる中身 |
|---|---|
| 承諾料 | 負担者は売主か業者か |
| 地代 | 引き渡し日で日割り精算するか |
| 引き渡し条件 | 現況渡しか・契約不適合責任は免責か |
| 決済日 | 具体的な日付 |
| 有効期限 | 買取価格はいつまで有効か |
初期査定では未確定の項目もあります。契約前に、未確定の内容・確定予定・価格が変わる条件を明らかにします。
減額の理由と最終価格を書面で確認する
現地調査や契約確認で、初期の査定から金額が変わることはあります。変更があれば、理由、確認した事実、追加費用を聞きます。説明が十分でないまま、その場で承諾する必要はありません。
会社の内部原価や利益がすべて開示されるとは限りません。比べるのは、売主が受け取る最終額と、そこから引かれる費用、契約後に変更できる条件です。他社の同条件の見積もりも比較材料になります。
仲介と買取の両方を提案できる会社を選ぶ
仲介と買取を扱う会社なら、両方の条件を聞けます。別々の会社に依頼して比べる方法でも構いません。買取保証を提案された場合は、この物件が対象か、保証額・期限・除外条件を確認します。
借地権付きマンションの買取で損をしない進め方
査定、承諾条件の確認、見積もり比較は並行して進められます。契約前に未確定の条件をなくすことが大切です。
仲介の査定と買取の見積もりを取る
仲介で見込む成約価格と、買取会社の実際の提示額を確認します。同じ棟などの事例をどう使ったかも聞きましょう。仲介査定の7割を買取の下限にするのではなく、双方の手取りと期限で比べます。
査定と並行して承諾の条件を確認する
契約書を見て、窓口に「不動産会社が買主になる場合の承諾条件」を聞きます。分かっている承諾料と、まだ確認中の点を各社へ同じように伝えます。条件が判明したら、見積もりを更新してもらいましょう。
複数の買取業者に同じ条件で見積もりを頼む
見積もりは、同じ条件で頼んで初めて比べられます。承諾料の負担者、引き渡し条件(現況渡し・契約不適合責任の免責)、決済日の希望、地代の精算方法。この条件を売主側で書面にして、各業者に同じものを渡します。
条件をそろえれば、費用別の見積もりを見誤りにくくなります。借地権マンションを扱う複数社に相談し、条件の違いが残る場合は、その違いも含めて判断します。
買取保証を使って仲介で売る期間を確保する
買取保証は、一定期間の仲介で売れなかったときに、条件に従って会社が買う仕組みです。期間や対象物件は会社ごとに異なります。借地権への対応、承諾が得られない場合の扱い、保証価格、有効期限を確認し、即時買取と比較しましょう。
決済日を住み替え先の資金計画に合わせる
必要な日までに入金されても、費用やローン返済を引いた金額が足りるとは限りません。決済日と受取額を両方確かめます。同日決済なら、入出金の順序と金融機関・司法書士の手配も必要です。
買取代金だけでローンを完済できない場合は、自己資金で補えるか、担保を外す条件を金融機関に相談します。承諾の取得予定も含め、無理のない日程で契約しましょう。
まとめ:借地権マンションの買取は手取りと条件で比べる
借地権と買取の割引率を掛ければ価格が分かる、というものではありません。仲介の査定と買取の提示を取り、承諾料などの費用を引いた受取額と決済日を比べましょう。
次の一歩は、借地権マンションに慣れた会社へ査定を相談することです。契約書があれば提示し、不明な条件は並行して確認します。仲介査定は成約の保証ではなく、買取査定も最終条件かを確かめる必要があります。
地主の承諾が必要な場合は、担当者・費用・不承諾時の扱いを決めてから契約します。住み替えのトビラでは、借地権付きマンションの価格の考え方や比較方法も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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