住み替え(買い替え)をしたいけれど、失敗が怖くて動き出せない方もいるでしょう。
取り返しのつかない失敗の多くは、「先に売るか、先に買うか」と「手元にいくら残るか」を、動き出す前に考えていなかったことから起きます。
この記事を読み終えるころには、その失敗を動き出す前に防げるようになります。
住み替えでよくある失敗7つと、取り返しのつきやすさ
住み替えの失敗は、お金と売り買いの順番にまつわる5つと、住み替え先選びにまつわる2つに分けられます。
このうち、お金と順番の失敗のほうが、後から取り返しがつきにくくなります。
| 失敗 | 起きること | 取り返しがつくか |
|---|---|---|
| 売りと買いの順番を決めずに動き出す | ・先に売ると、仮住まいの家賃と2回分の引っ越し代がかかる ・先に買うと、2つのローンを同時に返す期間(ダブルローン)が長引く | つかない 払った家賃や利息は、そのまま失うお金になる |
| 先に買ったのに、今の家が売れないまま住み替え先の残りの代金を払う日が来る | 住み替え先の契約をやめて手付金を失うか、違約金を払う | つかない 手付金は売買価格の5〜10%が多く、数百万円になることもある |
| 今の家の売却額を高く見込む | 売った代金でローンを返しきれず、自分のお金を足すか、借入を増やすことになる | つきにくい 増えた借入は、何年もかけて返すことになる |
| 売り出し価格を相場より高くつける | 値下げを重ねるうちに売却が長引き、最後は相場より安く売ることもある | つきにくい 一度下げた価格から、さらに値引きを求められる |
| 税の特例の使い方を誤る | ・売った利益にかかる税金を減らす特例の期限を過ぎる ・その特例と住宅ローン控除のどちらを使うかを、比べずに決める | つきにくい 期限を過ぎた特例は使えなくなる |
| 住み替え先の修繕積立金が将来上がることを計算に入れない | 住んでから積立金が上がり、毎月の支払いが苦しくなる | 一部はつく 家計の見直しで補えるが、値上げ分は住む限り続く |
| 譲れない条件を決めないまま、住み替え先を選ぶ | 日当たり・音・広さの不満が、住んでから出てくる | 一部はつく 内装や収納はリフォームで直せるが、日当たりや音、広さは変えにくい |
表の上から5つは、今の家を売り出す前の準備で防げる失敗です。どれも失ったお金や増えた借入・税金が後から戻らないので、この5つから先に手を打っておきましょう。
下の2つは、住み替え先を探し始める前に、将来の支払い額の調べ方を知り、譲れない条件を決めておくと防げます。
取り返しがつきにくい「お金と順番」の失敗は、売り出す前に防ぐ
お金と順番の失敗は、売り出す前に次の3つを決めておけば避けられます。
- 売りと買いのどちらを先にするか
- 資金計画で見込む売却額
- 税の特例をどう使うか
どれも、ローンの残高や査定の結果など、手元の数字と書類があれば、物件を見に行く前に決められます。
売りと買いの順番は、ローンの残りと手元資金で決める
今の家を先に売る「売り先行」と、住み替え先を先に買う「買い先行」のどちらにするかは、ローンの残りと手元資金で決まります。
比べる数字は、今のマンションの査定額と住宅ローンの残り(残債)の差、そして手元資金の余裕の2つです。査定額とは、不動産会社が出す「このくらいで売れそう」という見積もり額のことです。
| 今の状況 | おすすめの進め方 | 理由 |
|---|---|---|
| 査定額が残債より高く、手元資金にも余裕がある | 買い先行も選べる | 今の家が売れるまで、2つのローンを手元資金で返し続けられるため |
| 査定額が残債より高いが、手元資金は少ない | 売り先行 | 今の家の売却代金が入るまで、住み替え先の頭金を用意できないため |
| 査定額が残債より低い(オーバーローン) | 売り先行 | ローンを全部返さないと今の家を売れず、足りない分の用意を先に決める必要があるため |
迷ったら売り先行にしておくと、資金が足りなくなる失敗を避けられます。
住宅ローンが残っている家を売るときは、売った代金でローンを全部返し、抵当権を外してから買主に引き渡すのが一般的です。抵当権とは、ローンが返せなくなったときに、銀行が家を売ってお金を回収できる権利のことです。
オーバーローンのときは、足りない分を自分のお金で払うか、「住み替えローン」を使うことになります。住み替えローンは、今の家で返しきれない分を、住み替え先のローンに上乗せして借りる商品です。
売り先行と聞いて、「先に売ったら、次の家に入るまで仮住まいが必要になるのでは?」と心配になる方もいるでしょう。代金の支払いと引き渡し(決済)の日取りを工夫すれば、仮住まいの期間は短くしたり、なくしたりできます。
代表的な方法が、売る家と買う家の決済を同じ日に行う「同日決済」です。売却代金でローンを返し、そのまま住み替え先の代金に回せるので、2つのローンを抱える期間がなく、引っ越しも1回で済みます。
住み替え先の引き渡しが数日遅れるときは、「引き渡し猶予」という方法もあります。今の家の決済のあと、数日から1週間ほど住み続けさせてもらう約束です。
買主から見ると、代金を払ったのにすぐ入居できない期間になります。そのため、売り出す段階で条件として伝えておきましょう。
同日決済にするには、銀行や司法書士(登記の手続きをする専門家)、買主、住み替え先の売主など、関わる人全員の日程を合わせる必要があります。
売る家と買う家を同じ不動産会社に任せると、この調整を1つの窓口で進められます。
一方、買い先行では、今の家が売れないまま、住み替え先の残りの代金を払う日が来てしまうことに注意が必要です。
手付金は、契約のときに買主が売主へ払うお金で、額は売買価格の5〜10%が多くなっています。
住み替え先の売主が契約の実行に取りかかる前(履行の着手前)なら、手付金をあきらめれば契約をやめられます(民法第557条)。
売主が取りかかった後にやめると違約金を払うことになり、その額を売買価格の10〜20%と決めている契約が多くあります。
この失敗を防ぐのが「買い替え特約」です。期限までに決めた額で今の家が売れなかったら、住み替え先の契約を白紙に戻せるという取り決めです。
ただし、売主が受け入れなければ付けられず、売り出したばかりの人気物件では断られることもあります。
特約を付けられないときは、「買取保証」で備えられます。期限までに売れなければ、不動産会社があらかじめ決めた価格で今の家を買い取る仕組みです。
買取保証の価格は、ふつうに買い手を探して売る場合(仲介)の相場より低めに決められます。その額で残債を返しきれるかを、先に確かめておくと安心です。
売り先行と買い先行の選び方は、売り先行・買い先行はどちら?住み替え(買い替え)で損しない選び方で詳しく解説しています。
売り出しから引き渡しまでの日数の目安は、住み替え(買い替え)にかかる期間にまとめています。
売却額は、一番高い査定額ではなく実際に売れた価格で見積もる
資金計画に入れる売却額は、一番高い査定額ではなく、近くで実際に売れた価格(成約価格)をもとにすると、ローンを返しきれない失敗と売れ残る失敗を両方防げます。
査定額は、その額で売れると約束した金額とは違います。不動産会社が売却を任せてもらおうと、高めに出すこともあります。
一番高い査定額は、「売り出し価格をこれより上にはしない」という上限の目安として見ておくと、売り出し価格を高くしすぎずに済みます。
マンションは同じ建物や近くで売れた例が多く、戸建てより価格の見当をつけやすい住まいです。次の2つのサイトで、同じ駅が最寄りで築年数の近い物件の成約価格を調べ、査定額と比べてみてください。
- レインズ・マーケット・インフォメーション(不動産流通機構が運営)
- 不動産情報ライブラリ(国土交通省が運営)
手元に残る額は、次の式で見積もれます。
手元に残る額 = 売却額 − 住宅ローンの残債 − 売却の諸費用 − 税金
売却の諸費用のうち、大きいのは不動産会社に払う仲介手数料です。上限は法律で決まっていて、売買価格が400万円を超える場合は「売買価格×3%+6万円」に消費税を加えた額です(宅地建物取引業法第46条)。
たとえば4,000万円で売れたときの上限は、138.6万円になります。
この式で手元に残る額がマイナスになるなら、足りない分を自分のお金か住み替えローンで用意する必要があります。
住み替えローンを使うなら、売り出す前に事前審査を受けておきましょう。住み替えローンは物件の価格より多く借りるため審査が厳しく、多くの金融機関は同日決済を条件にしています。
売り出し価格も成約価格に近づけておくと、値下げを重ねずに売りやすくなります。
相場より高く売り出し、問い合わせや内覧の申し込みが少ないまま値下げを重ねると、「売れ残っている物件」と見なされます。買い手の値引き交渉も、下げた価格から始まります。
その結果、最初から相場どおりに売り出した場合より、手元に残る額が減ることもあります。
価格を見直す区切りの目安になるのが、売却を頼む契約の期間です。1社だけに売却を任せる専任媒介契約は、期間が最長3か月と法律で決まっています(宅地建物取引業法第34条の2)。
3か月たっても問い合わせが少なければ、価格を見直す時期と考えられます。
売却で起きやすい失敗は、マンション売却で多い失敗とその避け方で詳しく紹介しています。
複数の会社の査定額を比べたいときは、不動産一括査定サイトのおすすめ比較が参考になります。
利益が出るなら、税の特例は売る前に使い方を決める
今のマンションを売って利益が出る人は、売る前に、3,000万円特別控除と住宅ローン控除のどちらを使うと得かを比べておきましょう。
ここでいう利益とは、売った価格から、買ったときの価格や売るときの費用などを引いた額です。
3,000万円特別控除は、マイホームを売った利益から最大3,000万円を差し引いて、税金を計算できる特例です。持っていた期間の長さに関係なく使えます(租税特別措置法第35条)。
利益が3,000万円までなら、売ったときの税金はかからなくなります。
住宅ローン控除は、住み替え先のローンの残高に応じて、毎年の所得税などが減る制度です。
ただし、住み替え先に入居した年と、その前の2年・後の3年の合わせて6年の間に3,000万円特別控除を使うと、住宅ローン控除は受けられなくなります(租税特別措置法第41条)。
つまり、今の家を売る年と住み替え先に入る年が近い住み替えでは、使えるのはどちらか一方になります。
では、どちらを使うと得なのでしょうか。3,000万円特別控除で減る売却時の税金と、住宅ローン控除で何年かにわたって減る税金の合計を比べると分かります。
一般に、売却の利益が大きいほど3,000万円特別控除が、利益が小さいほど住宅ローン控除が有利になる傾向があります。
期限にも注意が必要です。引っ越した後の家で3,000万円特別控除を使うには、住まなくなった日から3年たつ日を含む年の12月31日までに売る必要があります。
たとえば2026年5月に引っ越したなら、期限は2029年12月31日です。
先に買って引っ越したあと今の家が売れ残ると、この期限を過ぎて特例を使えなくなるおそれがあります。
特例を使わない場合や、利益のうち3,000万円を超えた分には、持っていた期間の長さで税率が変わります。
売った年の1月1日の時点で5年を超えて持っていれば税率は20.315%、5年以下なら39.63%と、およそ2倍になります。
10年を超えて持っていたマイホームなら、税率を下げる「軽減税率の特例」を、3,000万円特別控除と一緒に使えます(租税特別措置法第31条の3)。
使える条件は細かく、住宅ローン控除の額も住み替え先の種類や入居した年で変わります。
売り出す前に国税庁のページで条件を確かめ、迷ったら税理士に試算を頼むと、自分の場合にどちらが得かを数字で確かめられます。
出典: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
出典: 国税庁「No.1213 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
出典: 国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
住んでから後悔する「住み替え先選び」の失敗を防ぐ
住み替え先選びの失敗は、物件を探す前に、将来の支払い額の調べ方を知り、譲れない条件を決めておくと防げます。
立地や向きは住んでから変えられず、毎月の支払いは住む限り続きます。どちらも、契約の前であれば確かめて選び直せます。
修繕積立金は、長期修繕計画に書かれた将来の額で比べる
住み替え先の修繕積立金は、現在の月額ではなく、長期修繕計画に書かれた将来の額で比べると、住んでからの値上げに慌てずに済みます。
長期修繕計画とは、外壁の塗り直しなどの大きな修繕をいつ行い、いくらかかるかと、そのための積立金の額をまとめた計画です。
新築マンションの多くは、最初の修繕積立金を低くして、数年ごとに上げていく計画になっています。そのため築年数の浅い物件ほど、現在の月額だけで比べると負担を軽く見誤りやすくなります。
取り寄せて確かめる書類は、次の3つです。
- 長期修繕計画書
- 重要事項調査報告書(管理会社が作る、管理費や積立金の額、滞納の有無などをまとめた書類)
- 管理組合の総会議事録(住民が集まる会議の記録)
どれも、申し込みの前に仲介する不動産会社へ頼めば、取り寄せてもらえることが多くあります。
総会議事録を読むと、積立金の値上げや、まとまったお金を一度に集める「一時金」が話し合われていないかも分かります。
積立金の額が妥当かは、国土交通省の修繕積立金ガイドラインにある目安と照らし合わせて判断できます。目安は、建物の階数と延床面積(各階の床面積の合計)ごとに分かれています。
同じ書類は、今のマンションを売るときにも買い手から求められます。売り出す前に管理会社から取り寄せておくと、内覧で聞かれたときにすぐ答えられます。
出典: 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和6年6月改定)」
譲れない条件を決めて、住んでから変えられない点を内覧で確かめる
物件を探す前に家族で譲れない条件に順位を付け、内覧では住んでから変えられない点を重点的に確かめると、妥協による後悔を減らせます。
今の家の引き渡し日が迫ると、条件に合わない物件でも「もうここでいい」と決めてしまいがちです。
立地、広さ、間取り、予算、通勤・通学のしやすさなどに順位を付けておけば、急いでいるときも判断がぶれずに済みます。
マンションで迷いやすいのが、階数や向き、眺めの違いにどこまでお金を出すかです。同じマンションで階や向きが違う部屋の成約価格と比べると、その違いに払う額を自分の基準で決められます。
内覧のあとも、時間帯や曜日を変えて周りを歩いてみてください。昼と夜、平日と休日で、音や人通りが大きく変わることがあります。
エントランスやゴミ置き場、掲示板などの共用部も見ておきましょう。片付き具合から、管理がきちんとされているかが分かります。
住んでから直せるのは、内装や収納などリフォームで手を入れられる部分です。立地や向き、窓からの景色は、住み始めた後もずっとそのままです。
今の家具のサイズを控えておき、内覧のときに部屋の寸法と、廊下やエレベーターなど家具を運び込む通り道の幅を測っておくと、引っ越しの当日に家具が入らず困ることを避けられます。
老後も見据えて住み替えるなら、段差の少なさやエレベーターの有無、病院までの距離も確かめておきましょう。
老後を見据えた住み替えの注意点は、老後の住み替え(買い替え)で失敗しないためにで解説しています。
まとめ:住み替えの失敗は、売り出す前の順番とお金の準備で防ぐ
住み替えで後から取り返しがつかない失敗の多くは、売りと買いの順番と、お金の準備でつまずいたことから起きます。
まずは今のマンションのローン残高を確かめ、同じマンションの成約価格と比べてみてください。この差を知らないまま住み替え先の契約を結ぶと、手付金を失ったり、ダブルローンを抱えたりするおそれがあります。
差が分かったら、売り先行と買い先行のどちらで進めるかを決めましょう。住み替えのトビラでは、売りと買いの順番や税の特例の使い方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
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