マンションを売って賃貸へ引っ越すときは、売る手続きと部屋探しが同時に動き出します。
二重の支払いを抑えるには、売却を先に固めてから入居の日を合わせます。そのうえで、費用と入居審査への備えを重ねていきます。
売却の日程に入居の日をどう合わせるのかを、高齢での審査まで含めて説明します。
マンションを売って賃貸に引っ越す全体の流れ
売却と賃貸探しは、どちらか一方を終えてから次に動くのではなく、2つの道筋を並行で進めるのが基本です。
この章では、売却が査定から引き渡しまでどう進むか、賃貸探しが物件探しから入居までどう進むかを、それぞれの道筋として押さえます。売却はおおむね数ヶ月、賃貸は数週間と、進むテンポには差があります。
売却の段取り|何が終われば次へ進むか
マンションの売却は、査定 → 媒介契約 → 売り出し(レインズ登録)→ 成約 → 決済・引渡しの順に進みます。日数として公表されているのはこのうち一区間だけで、首都圏の中古マンションはレインズへの登録から成約まで平均82.5日(2025年・東日本不動産流通機構)です。月に直すと約2.75か月になります。査定から媒介契約までや、売買契約から引渡しまでの所要日数には、公的な統計も業界団体の統計もありません。
まず不動産会社に査定を依頼し、売り出し価格の目安をつかみます。次に売却を任せる会社と媒介契約を結び、売り出しを始めます。この間は今の住まいに暮らしたまま、購入希望者の内覧に対応するのが一般的です。買い手が決まれば売買契約を結び、代金の受け取りと同時に物件を引き渡して売却が完了します。
期間の見通しは、日数ではなく次へ進む条件で持ってください。
| 段階 | 次へ進む条件 |
|---|---|
| 査定 → 媒介契約 | 査定額に納得し、依頼先を決めたら |
| 媒介契約 → 売り出し | レインズ登録と広告の準備が済んだら |
| 売り出し → 成約 | 買主が決まり、価格と引渡し時期の条件がまとまって売買契約を結んだら |
| 成約 → 決済・引渡し | 買主の住宅ローン本審査が通り、決済日を決めたら |
他社の記事や統計で「◯か月」と書かれているときは、その日数がどこを起点に数えたものかを確かめてから自分の予定に当ててください。早く売りたいからと価格を下げすぎず、値付けと売り出しのタイミングを落ち着いて考えることが、納得のいく売却につながります。
出典: 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」p.9
賃貸探しと入居までの流れ
賃貸探しは、物件探しから入居まで数週間ほどで進められ、途中に入居審査という関門があります。
気になる物件を探し、実際に部屋を見る内見を経て、住みたい部屋が決まれば入居を申し込みます。その後、貸主や管理会社が支払い能力などを見る入居審査があり、通れば賃貸借契約を結んで入居となります。
売買のように数ヶ月を要さず、数週間で入居まで進められるのが賃貸の身軽さです。一方で、審査という関門がある点は売買と異なります。審査の中身や高齢での注意点はのちほど詳しく取り上げます。入居時にかかる初期費用は、敷金・礼金があるかどうかで大きく変わります。国土交通省の住宅市場動向調査(令和7年度・三大都市圏)では、敷金や保証金があった世帯は51.9%、礼金があった世帯は43.1%でした。敷金も礼金もない契約が相当数あります。
二重家賃を避ける売却と賃貸契約のタイミング
引き渡し日と賃貸の入居日をできるだけ重ね、家賃やローンの二重払いを小さく抑えることが、この住み替えの肝になります。
賃貸は買い替えと違って新居を早くから押さえる必要が薄いため、段取りの自由度が高いのが特徴です。この章では、売り先行という考え方、日程の合わせ方、日程がずれたときの備えを順に見ていきます。
賃貸への住み替えは「売り先行」が基本
マンションを売って賃貸へ移るなら、売却を先に動かす「売り先行」が基本の進め方になります。
理由は賃貸ならではの身軽さにあります。賃貸は申し込みから入居まで数週間で組めるため、買い替えのように新居を数ヶ月前から確保しておく必要がありません。先に賃貸を借りてしまうと、まだ売れていないマンションの住宅ローンと新居の家賃を同時に払う期間が生まれます。売却の引き渡し日が見えてから賃貸を決める方が、こうした無駄が出にくいのです。仲介する物件を持たない立場から見ても、取引を急がせて二重の負担を抱えるより、売りの見通しを立ててから借りる順番に無理がありません。
ただし、人気の物件は早く埋まります。探し始めは早めに動き、契約の確定だけを引き渡しの時期に合わせる、という緩急をつけるとよいでしょう。売り先行が基本とはいえ、市況や物件の状況によって最適な順番は変わります。
引き渡し日と入居日をどう合わせるか
日程は、売買契約で引き渡し日を決め、その日に退去して同日か翌日に賃貸へ入居する形に重ねるのが理想です。
多くの場合、今のマンションに住みながら売却活動を進め、買い手との売買契約で引き渡し日を確定させます。その日をゴールに、退去と賃貸への入居を合わせていきます。賃貸は入居希望日をある程度後ろへずらす調整がしやすいため、引き渡しの時期に合わせやすいという利点があります。
一方で、空室は先着で埋まっていくという緊張もあります。良い部屋を見つけても、入居時期が先すぎると押さえきれないことがあります。探し始めと申し込みのタイミングを、引き渡し日の見通しとにらみ合わせながら進めるのが現実的です。
仮住まいを挟む場合と二重家賃・二重ローンの注意
日程がずれると、仮住まいの費用や二重家賃、二重ローンといった余分な負担が生じます。
引き渡しが先に来て入居が後ろへずれれば、その間の住まいとしてマンスリーマンションや実家などの仮住まいが必要になります。逆に賃貸を先に借りてマンションが売れ残れば、家賃と住宅ローンの二重払いが続きます。仮住まいの費用は、何か月住むかと初期費用を含むかで決まります。三大都市圏の民間賃貸の月額家賃は平均83,381円・中央値74,000円、共益費は平均4,837円です(令和7年度住宅市場動向調査)。この水準で6か月の仮住まいを見積もると、初期費用(家賃の4.1か月分)と家賃6か月、共益費6か月を足して約87.1万円になります。ここに引越費用は含まれていません。引越運送料を集計した公的統計・業界団体統計は確認できていないため、引越費用の目安は示せません。
もう一つ気をつけたいのが、住宅ローンが多く残っているケースです。売却額と自己資金を合わせても残債を返しきれない状態(オーバーローン)だと、そもそも引き渡し自体ができず、組んだ段取りが崩れてしまいます。残債と手取りの詳しい見方は、次の費用の章で取り上げます。
マンションを売って賃貸に移るときの費用と手取り
費用は「売却で出ていくお金」と「賃貸で新たにかかるお金」の2方向で押さえ、最後に手元へ残る額で全体を判断します。
売却では仲介手数料や税金、賃貸では初期費用や引っ越し代がかかります。この章では両方向の費用を見たうえで、手取りと残債の確認まで進みます。
売却でかかる費用と税金
売却では、仲介手数料や登記費用、印紙税に加え、利益が出た場合の譲渡所得税がかかります。
売却で出ていく主なお金は次のとおりです。
- 仲介手数料
- 登記費用(住宅ローンが残っていれば抵当権抹消の費用)
- 売買契約書に貼る印紙税
- 利益が出た場合の譲渡所得税
このうち仲介手数料は、国土交通省の告示で上限が決まっています。本来は代金を区分して計算するもので、200万円以下の部分に5.5%、200万円超400万円以下の部分に4.4%、400万円を超える部分に3.3%を掛けて合計した額が、依頼者の一方から受けられる上限です(いずれも消費税等相当額を含む割合)。売買価格が400万円を超える場合は「売買価格×3.3%+6.6万円」という速算式が区分計算と一致します。税別の「3%+6万円」で覚えていると、実際の請求額より少なく見積もることになります。価格別に出すと、3,000万円で105.6万円、5,000万円で171.6万円です。告示が定めるのは上限であって定価ではありませんが、実務上は上限どおりに請求されるのが通例です。なお、代金800万円以下の宅地・建物(低廉な空家等)では、依頼者から受ける報酬の上限が33万円(30万円の1.1倍)になる特例があり、代金800万円未満では区分計算より高くなります。
出典: 国土交通省 建設産業・不動産業:宅地建物取引業法関係(報酬額の告示)
譲渡所得税は、売って利益(譲渡所得)が出たときにかかる税金です。ただしマイホーム(居住用財産)を売った場合は、一定の要件を満たせば利益から最高3,000万円まで差し引ける特例があり、税負担を抑えられる場合があります。対象になるかどうかは、移り住む先が賃貸かどうかではなく、売る家が居住用財産にあたるかどうかで決まります。親族など特別な関係の人への売却では使えないなどの要件があり、適用できるかは個々の事情で変わります。詳しい計算や自分が対象になるかは、税理士や国税庁で確認しておくと安心です。
出典: 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例
賃貸への入居・引っ越しでかかる費用
賃貸では、入居時の初期費用と引っ越し費用が新たにかかり、その後は家賃が毎月続きます。
入居時の初期費用には、敷金・礼金・仲介手数料・保証会社の利用料・前家賃などが含まれます。費目ごとに、かかる割合と月数を並べると次のとおりです。
| 費目 | かかる世帯の割合(令和7年度・三大都市圏) | 月数の目安 |
|---|---|---|
| 敷金・保証金 | 51.9%(うち「1ヶ月ちょうど」64.4%) | 1か月 |
| 礼金 | 43.1%(うち「1ヶ月ちょうど」73.4%) | 1か月 |
| 仲介手数料 | 仲介を使えば発生 | 借賃1か月分の1.1倍以内(居住用建物の貸借では、承諾がなければ依頼者の一方から受けられるのは0.55倍まで) |
| 前家賃 | ほぼ発生 | 1か月 |
敷金1か月・礼金1か月がかかる契約なら、仲介手数料と前家賃を足して家賃の4.1か月分ほどになります。敷金も礼金もない契約なら1.55〜2.1か月分です。「家賃4〜6ヶ月分」という目安は、敷金・礼金がかかる側のケースだけを示した数字になります。なお、UR賃貸住宅は敷金が月額家賃の2か月分で、礼金・仲介手数料・更新料はいずれも不要です。引っ越し費用も、荷物の量や時期、移動距離によって変わるため、あくまで目安として見積もっておきましょう。
出典: 国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査報告書」6.4.2/独立行政法人都市再生機構「UR賃貸住宅とは メリット・特徴」(2026-08-06閲覧)
見落としがちなのが、毎月の家賃が続く負担です。売却でまとまったお金が入っても、その後は家賃を払い続けます。この負担に無理がないかどうかは、最後の章であらためて確認します。
売却で手元に残るお金と残債の確認
手元に残るお金は、売却額から住宅ローンの残債と売却費用を差し引いた金額で、これが賃貸生活の原資になります。
計算の考え方はシンプルです。
- 手取り = 売却額 − 住宅ローンの残債 − 売却費用
売却費用のうち、法定・実費で額が決まるものは先に見積もれます。媒介報酬の上限、印紙税(軽減後)、抵当権抹消の登録免許税(不動産1個につき1,000円)、抵当権抹消の司法書士報酬の全国平均17,470円を積み上げると、売却価格1,000万円で42.05万円(売却価格の4.21%)、3,000万円で108.55万円(3.62%)、5,000万円で174.55万円(3.49%)です。価格が上がるほど比率が下がるのは、媒介報酬に定額部分があり、印紙税が階段状の定額だからです。この積み上げには、引越費用・ハウスクリーニング・測量費・譲渡所得税等・住宅ローンの一括返済手数料は含まれていません。
出典: 日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」結果/登録免許税法 別表第一
ここで確認しておきたいのが、住宅ローンの残債です。マンションに住宅ローンが残っている場合、売却代金でローンを完済し、金融機関が設定している抵当権を外してから買い手へ引き渡します。売却額と自己資金を合わせても残債を返しきれない状態(オーバーローン)だと、抵当権を外せず、そのままでは売れません。まずは残債の額と、売れそうな価格の見通しを突き合わせておきましょう。
賃貸へ移ると、この手取りが老後の暮らしの原資になります。毎月の家賃をこの原資と年金でどこまで賄えるかが、住み替え全体を判断するものさしになります。金額は物件やローンの状況で大きく変わるため、自分のケースに当てはめて考えることが大切です。
高齢になっても賃貸を借りられるか
高齢になると入居審査は慎重になりやすいものの、本人ができる備えも公的な支援もあり、借りられないと決めつける必要はありません。
この章では、なぜ審査が慎重になりやすいのか、借りやすくするために何を用意できるか、どんな公的な受け皿があるかを順に見ていきます。
入居審査が慎重になりやすい理由
高齢者の入居審査が慎重になりやすいのは、収入や健康、単身での万一に対する貸主の不安が背景にあります。
現役を退くと収入は年金が中心になり、貸主は家賃を払い続けられるかを気にかけます。加えて、健康面の変化や、単身の場合に室内で万一のことが起きるリスクを心配する声もあります。こうした不安から、保証会社の利用や緊急連絡先を求められる場面が増える傾向があります。
もっとも、これらはあくまで貸主が慎重になりやすい理由であって、高齢だから借りられないという話ではありません。次に、この不安に本人がどう応えられるかを見ていきます。
賃貸を借りやすくするための備え
貸主の不安には、支払い能力を示す材料をそろえ、保証の手当てをし、早めに動くことで応えられます。
まず、年金の受給額や預貯金など、家賃を払い続けられることを示せる材料を用意しておきます。売却で得た手取りを厚めに残しておくと、こうした支払い能力を示しやすくなります。次に、保証会社の利用や、緊急連絡先・身元を引き受けてくれる人を確保しておくと、貸主の不安を和らげられます。さらに、審査には時間の余裕を持たせ、早めに探し始めておくと安心です。
ただし、備えをそろえても審査に通るとは限らず、結果は物件や貸主の判断によります。うまくいかない場合もある前提で、複数の候補をあたっておくと落ち着いて進められます。
高齢者を支える公的な受け皿
高齢者が賃貸を借りやすくするための公的な受け皿として、住宅セーフティネット制度があります。
これは、高齢者や低額所得者など住まいの確保に配慮が必要な人(住宅確保要配慮者)が、賃貸住宅に入居しやすくするための国の枠組みです。2025年10月に施行された改正法では、国の認定を受けた家賃債務保証のしくみや、安否確認・見守りなどの支援がついた「居住サポート住宅」が新たに設けられました。貸主の不安を和らげ、要配慮者が借りやすくすることを狙った改正です。
このほか、UR賃貸住宅のように保証人が要らず、年齢を理由に断られにくい選択肢もあります。制度は施行されていますが、認定を受けた住宅や保証業者の広がりは地域によって差があります。利用を考えるときは、お住まいの地域での最新の状況を確認しておきましょう。
マンションを売って賃貸に引っ越すのが向く人・向かない人
身軽さと維持からの解放を最優先し、家賃を無理なく払い続けられる家計なら向いています。老後資金を家賃で取り崩し続ける不安が大きいなら、いったん立ち止まる方が安心です。
ここまでの段取り・費用・審査を踏まえ、この住み替えが自分に合うかを最後に確認します。
賃貸への住み替えが向く人
維持費や管理の負担から解放されたい人、住み替えの柔軟性を重視する人には、賃貸への移り住みが向いています。
向いているのは、次のような人です。
- 修繕積立金や管理の手間といった、持ち家の維持の負担を手放したい
- 暮らしの変化に合わせて、住む場所を柔軟に変えたい
- 売却の手取りと年金で、家賃を無理なく賄える見通しがある
- 資産として住まいを子に残すことには、こだわらない
こうした条件に当てはまるほど、身軽さという賃貸の利点を活かしやすくなります。あくまで傾向であり、最後は自分の家計と暮らし方に照らして判断するのがよいでしょう。
慎重に考えたい人・向かない人
老後に家賃を払い続ける原資が細い人や、住まいを資産として残したい人は、慎重に考えたいところです。
家賃は暮らす限り続く支出です。年金や手取りに対して家賃の負担が重いと、老後資金を取り崩し続けることになりかねません。将来さらに歳を重ねてからの住み替えや審査に不安が残る場合も、いったん立ち止まって考える価値があります。住まいを資産として手元に残したいという価値観も、無理に賃貸へ移らない理由になります。
賃貸へ移るほかにも、住みながら売却して住み続けるリースバックや、次の家を買う買い替えといった道もあります。売るか、それとも貸して持ち続けるか、まだ方向を決めかねているなら、それぞれの費用と手残りを比べたうえで選ぶのが安心です。
まとめ:引き渡しと入居の日を近づけるなら、住み替えのトビラ
マンションを売って賃貸へ引っ越すなら、引き渡しの日と入居の日をできるだけ近づけます。順番が入れ替わると、家賃と住宅ローンの両方を同じ月に払うことになります。
近づけるには、いつごろ引き渡せるのかを早めにつかみます。時期が読めないまま部屋を押さえると、空いた期間の家賃だけが出ていきます。
部屋の申し込みへ進む前に、売却の日程がどこまで見えているかを確かめておきましょう。住み替えのトビラでは、引き渡しと入居の日をそろえる段取りも含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
住み替えのトビラ 
