マンションを売って賃貸に引っ越す進め方と費用・審査

マンションを売って賃貸に引っ越す進め方と費用・審査

マンションを売って賃貸へ移ると決めたものの、売却と賃貸契約をどの順で進めれば二重家賃を避けられるのか、手元にいくら残るのか、高齢でも借りられるのか、迷いは尽きません。 この記事では、売り先行を軸にした段取り、かかる費用と手取りの見方、シニアの入居審査への備えまで、実行に移す人が知りたい順序でまとめます。 読み終えるころには、いつ何を動かせばよいかの全体像がつかめます。

マンションを売って賃貸に引っ越す全体の流れ

売却と賃貸探しは、どちらか一方を終えてから次に動くのではなく、2つの道筋を並行で進めるのが基本です。

この章では、売却が査定から引き渡しまでどう進むか、賃貸探しが物件探しから入居までどう進むかを、それぞれの道筋として押さえます。売却はおおむね数ヶ月、賃貸は数週間と、進むテンポには差があります。

売却の流れ(査定から引き渡しまで)

マンションの売却は、査定から引き渡しまでおおむね3〜6ヶ月ほどを見込む一連の流れで進みます。

まず不動産会社に査定を依頼し、売り出し価格の目安をつかみます。次に売却を任せる会社と媒介契約を結び、売り出しを始めます。この間は今の住まいに暮らしたまま、購入希望者の内覧に対応するのが一般的です。買い手が決まれば売買契約を結び、代金の受け取りと同時に物件を引き渡して売却が完了します。

売却にかかる期間は3〜6ヶ月程度が目安ですが、相場や物件の条件、売り出す時期によって前後します。早く売りたいからと価格を下げすぎず、値付けと売り出しのタイミングを落ち着いて考えることが、納得のいく売却につながります。

賃貸探しと入居までの流れ

賃貸探しは、物件探しから入居まで数週間ほどで進められ、途中に入居審査という関門があります。

気になる物件を探し、実際に部屋を見る内見を経て、住みたい部屋が決まれば入居を申し込みます。その後、貸主や管理会社が支払い能力などを見る入居審査があり、通れば賃貸借契約を結んで入居となります。

売買のように数ヶ月を要さず、数週間で入居まで進められるのが賃貸の身軽さです。一方で、審査という関門がある点は売買と異なります。審査の中身や高齢での注意点はのちほど詳しく取り上げます。入居時にかかる初期費用は、家賃4〜6ヶ月分程度が目安になります(物件や地域によって変わります)。

二重家賃を避ける売却と賃貸契約のタイミング

引き渡し日と賃貸の入居日をできるだけ重ね、家賃やローンの二重払いを小さく抑えることが、この住み替えの肝になります。

賃貸は買い替えと違って新居を早くから押さえる必要が薄いため、段取りの自由度が高いのが特徴です。この章では、売り先行という考え方、日程の合わせ方、日程がずれたときの備えを順に見ていきます。

賃貸への住み替えは「売り先行」が基本

マンションを売って賃貸へ移るなら、売却を先に動かす「売り先行」が基本の進め方になります。

理由は賃貸ならではの身軽さにあります。賃貸は申し込みから入居まで数週間で組めるため、買い替えのように新居を数ヶ月前から確保しておく必要がありません。先に賃貸を借りてしまうと、まだ売れていないマンションの住宅ローンと新居の家賃を同時に払う期間が生まれます。売却の引き渡し日が見えてから賃貸を決める方が、こうした無駄が出にくいのです。仲介する物件を持たない立場から見ても、取引を急がせて二重の負担を抱えるより、売りの見通しを立ててから借りる順番に無理がありません。

ただし、人気の物件は早く埋まります。探し始めは早めに動き、契約の確定だけを引き渡しの時期に合わせる、という緩急をつけるとよいでしょう。売り先行が基本とはいえ、市況や物件の状況によって最適な順番は変わります。

引き渡し日と入居日をどう合わせるか

日程は、売買契約で引き渡し日を決め、その日に退去して同日か翌日に賃貸へ入居する形に重ねるのが理想です。

多くの場合、今のマンションに住みながら売却活動を進め、買い手との売買契約で引き渡し日を確定させます。その日をゴールに、退去と賃貸への入居を合わせていきます。賃貸は入居希望日をある程度後ろへずらす調整がしやすいため、引き渡しの時期に合わせやすいという利点があります。

一方で、空室は先着で埋まっていくという緊張もあります。良い部屋を見つけても、入居時期が先すぎると押さえきれないことがあります。探し始めと申し込みのタイミングを、引き渡し日の見通しとにらみ合わせながら進めるのが現実的です。

仮住まいを挟む場合と二重家賃・二重ローンの注意

日程がずれると、仮住まいの費用や二重家賃、二重ローンといった余分な負担が生じます。

引き渡しが先に来て入居が後ろへずれれば、その間の住まいとしてマンスリーマンションや実家などの仮住まいが必要になります。逆に賃貸を先に借りてマンションが売れ残れば、家賃と住宅ローンの二重払いが続きます。仮住まいや二重家賃の負担は、おおむね家賃1〜数ヶ月分の上乗せが目安です(ずれる期間や物件によって変わります)。

もう一つ気をつけたいのが、住宅ローンが多く残っているケースです。売却額と自己資金を合わせても残債を返しきれない状態(オーバーローン)だと、そもそも引き渡し自体ができず、組んだ段取りが崩れてしまいます。残債と手取りの詳しい見方は、次の費用の章で取り上げます。

マンションを売って賃貸に移るときの費用と手取り

費用は「売却で出ていくお金」と「賃貸で新たにかかるお金」の2方向で押さえ、最後に手元へ残る額で全体を判断します。

売却では仲介手数料や税金、賃貸では初期費用や引っ越し代がかかります。この章では両方向の費用を見たうえで、手取りと残債の確認まで進みます。

売却でかかる費用と税金

売却では、仲介手数料や登記費用、印紙税に加え、利益が出た場合の譲渡所得税がかかります。

売却で出ていく主なお金は次のとおりです。

  • 仲介手数料
  • 登記費用(住宅ローンが残っていれば抵当権抹消の費用)
  • 売買契約書に貼る印紙税
  • 利益が出た場合の譲渡所得税

このうち仲介手数料は、法律で上限が決まっています。売買価格が400万円を超える場合は、「売買価格×3%+6万円」に消費税を加えた金額が、依頼者一方あたりの上限です(速算式)。上限であって定額ではないため、この範囲内で会社と合意します。

出典: 国土交通省 建設産業・不動産業:宅地建物取引業法関係(報酬額の告示)

譲渡所得税は、売って利益(譲渡所得)が出たときにかかる税金です。ただしマイホーム(居住用財産)を売った場合は、一定の要件を満たせば利益から最高3,000万円まで差し引ける特例があり、税負担を抑えられる場合があります。対象になるかどうかは、移り住む先が賃貸かどうかではなく、売る家が居住用財産にあたるかどうかで決まります。親族など特別な関係の人への売却では使えないなどの要件があり、適用できるかは個々の事情で変わります。詳しい計算や自分が対象になるかは、税理士や国税庁で確認しておくと安心です。

出典: 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例

賃貸への入居・引っ越しでかかる費用

賃貸では、入居時の初期費用と引っ越し費用が新たにかかり、その後は家賃が毎月続きます。

入居時の初期費用には、敷金・礼金・仲介手数料・保証会社の利用料・前家賃などが含まれます。合計で家賃4〜6ヶ月分程度が目安ですが、物件や地域、契約条件によって幅があります。引っ越し費用も、荷物の量や時期、移動距離によって変わるため、あくまで目安として見積もっておきましょう。

見落としがちなのが、毎月の家賃が続く負担です。売却でまとまったお金が入っても、その後は家賃を払い続けます。この負担に無理がないかどうかは、最後の章であらためて確認します。

売却で手元に残るお金と残債の確認

手元に残るお金は、売却額から住宅ローンの残債と売却費用を差し引いた金額で、これが賃貸生活の原資になります。

計算の考え方はシンプルです。

  • 手取り = 売却額 − 住宅ローンの残債 − 売却費用

ここで確認しておきたいのが、住宅ローンの残債です。マンションに住宅ローンが残っている場合、売却代金でローンを完済し、金融機関が設定している抵当権を外してから買い手へ引き渡します。売却額と自己資金を合わせても残債を返しきれない状態(オーバーローン)だと、抵当権を外せず、そのままでは売れません。まずは残債の額と、売れそうな価格の見通しを突き合わせておきましょう。

賃貸へ移ると、この手取りが老後の暮らしの原資になります。毎月の家賃をこの原資と年金でどこまで賄えるかが、住み替え全体を判断するものさしになります。金額は物件やローンの状況で大きく変わるため、自分のケースに当てはめて考えることが大切です。

高齢になっても賃貸を借りられるか

高齢になると入居審査は慎重になりやすいものの、本人ができる備えも公的な支援もあり、借りられないと決めつける必要はありません。

この章では、なぜ審査が慎重になりやすいのか、借りやすくするために何を用意できるか、どんな公的な受け皿があるかを順に見ていきます。

入居審査が慎重になりやすい理由

高齢者の入居審査が慎重になりやすいのは、収入や健康、単身での万一に対する貸主の不安が背景にあります。

現役を退くと収入は年金が中心になり、貸主は家賃を払い続けられるかを気にかけます。加えて、健康面の変化や、単身の場合に室内で万一のことが起きるリスクを心配する声もあります。こうした不安から、保証会社の利用や緊急連絡先を求められる場面が増える傾向があります。

もっとも、これらはあくまで貸主が慎重になりやすい理由であって、高齢だから借りられないという話ではありません。次に、この不安に本人がどう応えられるかを見ていきます。

賃貸を借りやすくするための備え

貸主の不安には、支払い能力を示す材料をそろえ、保証の手当てをし、早めに動くことで応えられます。

まず、年金の受給額や預貯金など、家賃を払い続けられることを示せる材料を用意しておきます。売却で得た手取りを厚めに残しておくと、こうした支払い能力を示しやすくなります。次に、保証会社の利用や、緊急連絡先・身元を引き受けてくれる人を確保しておくと、貸主の不安を和らげられます。さらに、審査には時間の余裕を持たせ、早めに探し始めておくと安心です。

ただし、備えをそろえても審査に通るとは限らず、結果は物件や貸主の判断によります。うまくいかない場合もある前提で、複数の候補をあたっておくと落ち着いて進められます。

高齢者を支える公的な受け皿

高齢者が賃貸を借りやすくするための公的な受け皿として、住宅セーフティネット制度があります。

これは、高齢者や低額所得者など住まいの確保に配慮が必要な人(住宅確保要配慮者)が、賃貸住宅に入居しやすくするための国の枠組みです。2025年10月に施行された改正法では、国の認定を受けた家賃債務保証のしくみや、安否確認・見守りなどの支援がついた「居住サポート住宅」が新たに設けられました。貸主の不安を和らげ、要配慮者が借りやすくすることを狙った改正です。

出典: 国土交通省 住宅:住宅セーフティネット制度

このほか、UR賃貸住宅のように保証人が要らず、年齢を理由に断られにくい選択肢もあります。制度は施行されていますが、認定を受けた住宅や保証業者の広がりは地域によって差があります。利用を考えるときは、お住まいの地域での最新の状況を確認しておきましょう。

マンションを売って賃貸に引っ越すのが向く人・向かない人

身軽さと維持からの解放を最優先し、家賃を無理なく払い続けられる家計なら向いています。老後資金を家賃で取り崩し続ける不安が大きいなら、いったん立ち止まる方が安心です。

ここまでの段取り・費用・審査を踏まえ、この住み替えが自分に合うかを最後に確認します。

賃貸への住み替えが向く人

維持費や管理の負担から解放されたい人、住み替えの柔軟性を重視する人には、賃貸への移り住みが向いています。

向いているのは、次のような人です。

  • 修繕積立金や管理の手間といった、持ち家の維持の負担を手放したい
  • 暮らしの変化に合わせて、住む場所を柔軟に変えたい
  • 売却の手取りと年金で、家賃を無理なく賄える見通しがある
  • 資産として住まいを子に残すことには、こだわらない

こうした条件に当てはまるほど、身軽さという賃貸の利点を活かしやすくなります。あくまで傾向であり、最後は自分の家計と暮らし方に照らして判断するのがよいでしょう。

慎重に考えたい人・向かない人

老後に家賃を払い続ける原資が細い人や、住まいを資産として残したい人は、慎重に考えたいところです。

家賃は暮らす限り続く支出です。年金や手取りに対して家賃の負担が重いと、老後資金を取り崩し続けることになりかねません。将来さらに歳を重ねてからの住み替えや審査に不安が残る場合も、いったん立ち止まって考える価値があります。住まいを資産として手元に残したいという価値観も、無理に賃貸へ移らない理由になります。

賃貸へ移るほかにも、住みながら売却して住み続けるリースバックや、次の家を買う買い替えといった道もあります。売るか、それとも貸して持ち続けるか、まだ方向を決めかねているなら、それぞれの費用と手残りを比べたうえで選ぶのが安心です。

まとめ:マンションを売って賃貸へ引っ越す段取り

マンションを売って賃貸へ移るなら、売却を先に動かす売り先行を軸に、引き渡し日と入居日を重ねて二重家賃を抑えるのが基本です。

費用は売却で出ていくお金と賃貸でかかるお金の2方向で押さえ、住宅ローンの残債を引いた手取りで全体を見極めます。高齢での入居も、支払い能力を示す備えと、住宅セーフティネット制度などの公的な受け皿があります。

税制や賃貸の制度は、改正のたびに少しずつ変わっていきます。住み替えのトビラは、そうした変わり続ける情報を最新の形で届け、後悔のない住み替えの判断を支えていきます。