親と同居することになったとき、今のマンションをどうするかは、同居の形が定まってはじめて答えが出ます。
親を迎えるのか、親の家に入るのか、近くに住むのかによって、売るか貸すか残すかを同じ条件で比べられます。
本記事では、同居の形からどう逆算するのかを、資金と税、家族の合意まで含めて説明します。
親との同居でマンションを売る前に、同居の型を決める
今のマンションを売るかどうかは、どんな同居の形にするかが決まって、はじめて判断できます。
同居には大きく4つの型があり、型ごとに今の住まいの行き先が変わります。売却を先に考えるより、まず同居の形から逆算するほうが、遠回りに見えて近道になります。
親を呼び寄せて同居する(自分の住まいに迎える)
今のマンションに親を迎えられるなら、売らずに住み続ける選択もあります。
まず、いまの住まいが親との同居に耐えるかを見ます。部屋数や間取り、玄関や室内の段差、駅までの距離、こうした点が親の暮らしに合うかどうかが分かれ目です。親の足腰の状態によっては、段差の解消や手すりの設置で対応できる場合もあります。
手狭だったり、間取りの面で難しかったりすれば、広い住まいへの買い替えを考える流れになります。その場合は、今のマンションを手放すことになります。
マンションは、壁や配管の位置を大きく変える二世帯化が難しい区分所有です。だからこそ、呼び寄せであっても「売って住み替える」方向に傾きやすい面があります。
親の家に入る・実家を二世帯にする
子どもの側が親の家へ移ると、今のマンションは使わなくなります。
子世帯が実家へ引っ越すため、今のマンションが空くパターンです。親の家が持ち家かどうか、二世帯にする余地があるかどうかで、進め方は変わります。まずは、今のマンションが使わなくなる、という点を押さえておきます。
二世帯住宅を新築・購入して住み替える
新たに二世帯の住まいを用意する場合、今のマンションを手放して住み替えるケースが多くなります。
親世帯の土地を活用できたり、建築費を親子で分担できたりすると、費用を抑えやすくなります。一方で、土地と建物の名義や、将来の相続の扱いが複雑になりやすい面もあります。
費用の規模感としては、住宅金融支援機構の2024年度フラット35利用者調査で、注文住宅の所要資金が平均3,936万円でした。ただし、二世帯住宅を型別(完全同居型・部分共用型・完全分離型)に切り出した建築費の公的統計・業界団体統計は存在しません。「完全分離型なら◯◯万円」といった型別の金額は、出典を示せる数字ではありません。二世帯にすることでいくら増えるかは、実際の見積もりで確かめてください。
同居にこだわらない「近居」も選択肢に入れる
同居を前提にせず、近くに住んで見守る「近居」なら、今のマンションを売らずに済む場合もあります。
親の家の近くに住み替えたり、今の住まいのまま行き来したりする形です。介護や見守りといった目的は、近くに住むことでも果たせます。同居の一歩手前として、今の住まいを手放さずに親を支える道もある、という選択肢の広げ方です。
空いたマンションは「売る・貸す・残す」で比べる
同居で今のマンションに住まなくなるなら、「売る・貸す・残す」を同じ物差しで比べてから決めます。
3つの選択肢にはそれぞれ向き・不向きがあり、マンション特有の費用が判断を左右します。感情で急いで手放すと、後悔につながりやすい点にも気をつけたいところです。
売る・貸す・残すを分ける判断軸
同居後の住まいに資金が要るか、賃貸に出せる立地か、将来戻る・資産として持ちたいか、この3点で大枠が決まります。
| 観点 | 売る | 貸す | 残す |
|---|---|---|---|
| 資金化 | まとまった資金になる | 家賃が入る | 資金にはならない |
| 維持費 | かからなくなる | 払い続ける | 払い続ける |
| 家族の思い | 手放す踏ん切りが要る | 戻りにくい期間ができる | 将来戻れる余地が残る |
| 税・手間 | 売却の諸費用と税 | 賃貸の管理の手間 | 管理費などを払う手間 |
大枠の当てはめ方はシンプルです。同居後の住まいにまとまった資金が要るなら、売る方向が合います。好立地で当面は手放したくないなら、貸して家賃を得る道があります。将来の同居解消や実家への回帰が頭にあるなら、残しておく判断もあります。
マンションならではの注意点(管理費・修繕積立金・賃貸需要)
マンションは貸す・残すを選んでも、管理費・修繕積立金・固定資産税が、住まなくても続きます。
空室のあいだも、これらの固定費は毎月出ていきます。金額は物件や管理組合によって幅がありますが、規模感としては全国の平均があります。国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、1戸あたり月額の全国平均が管理費11,503円、修繕積立金13,054円でした(いずれも使用料等からの充当額を除く系統。回答はそれぞれ1,589件・1,522件)。合わせて月24,557円で、ここに固定資産税が加わります。年に直すと、管理費と修繕積立金だけで約29万円です。
なお、修繕積立金は完成年次に対してまっすぐ増えるわけではありません。同じ調査では、平成7〜16年完成が14,317円で最も高く、平成27年以降が11,405円で最も低くなっています。新しい物件ほど当初の額が低く抑えられ、その後に上がっていく形をとることが多いためです。自分のマンションの実額と、管理組合の長期修繕計画で今後の予定を確かめてください。
貸す場合は、賃貸の需要が立地に左右され、借り手がつかない空室リスクもあります。マンションは区分所有のため、戸建てのように建物を大きく作り替える二世帯化や大規模な改修は難しく、そこも戸建てとは違う判断材料になります。
マンションを売るタイミングと住宅ローンの確認
売ると決めたら、「同居の開始」と「売却の完了」の順番、そして住宅ローンの残債、この2点を先に押さえます。
同居の予定日から逆算して段取りを組むと、二重の住居費や仮住まいといった失敗を避けやすくなります。まず住み替え先の入居時期との兼ね合いと、残債の有無を確かめておくと安心です。
同居の開始と売却の順番を決める
先に売るか、住み替え先を決めてから売るかで、資金繰りと仮住まいのリスクが変わります。
住みながら売る場合は、内覧の対応など生活への負担があります。いったん空室にしてから売る場合は、内覧はしやすい一方で、二重の住居費がかかりやすくなります。
住み替え先の入居時期と、今のマンションの引き渡し時期がずれると、二重の住居費や仮住まいが生じます。親と同居する場合は、親の入居希望の時期や介護の状況が、動き出しの期限になりやすい点にも配慮します。
住宅ローンが残っているマンションの引き渡し条件
ローンが残るマンションは、売却代金や自己資金で完済して抵当権を外さないと、引き渡せません。
売却額が残りのローンを上回れば(アンダーローン)、代金で完済して引き渡せます。逆に、売却額が残債に届かない場合(オーバーローン)は、不足分をどう用意するかが引き渡しの条件になります。
まずは、いま残っているローンの額と、売却の見込み額を並べて、どちらの状態かを確かめておきます。
同居に向けた資金計画を立てる
売却代金は、「新しい住まいの費用」と「同居後の暮らし」の両面から使い道を決めます。
入ってくるお金と出ていくお金を並べると、過不足が見えてきます。親との費用分担を最初に決めておくと、後からの不公平感を防ぎやすくなります。
売却代金の主な使い道と手取りの目減り
売却代金は住み替え先の頭金や二世帯の建築費、親の住まいのリフォームなどに充てますが、諸費用や税で手取りは目減りします。
- 住み替え先の住宅の頭金
- 実家(親の家)の改修費
- 二世帯住宅の建築費の一部
これらのどれに充てるかは、選んだ住まいの形によって変わります。ただ、売却代金がそのまま手元に残るわけではありません。仲介手数料などの売却の諸費用や、売却益にかかる税を差し引いた金額が、実際に使えるお金です。
売却額が残債に届かない場合は、不足分を自己資金で補うか、新居のローンに上乗せする住み替えローンといった方法で埋めることになります。組めるかどうかは金融機関の審査によるため、早めに相談しておくと安心です。
親との費用分担をあいまいにしない
住宅ローン・固定資産税・将来の修繕費など、誰がいくら負担するかを、同居の前に決めておきます。
費用の分担があいまいなままだと、後から不公平感やもめごとにつながりやすくなります。二世帯での暮らしで多く聞かれる後悔の一つです。「何を・誰が・どの割合で」払うのかを、暮らし始める前に言葉にしておくと安心です。
親子で住宅ローンを組めるかどうかなどは、金融機関によって取り扱いが変わります。原則として組める場合も、条件や年齢で変わるため、一律には言えません。個別の資金計画は、FP(ファイナンシャルプランナー)に相談すると、家計に合った形が見えてきます。
マンション売却の税金と二世帯の名義で確認したいこと
マンションを売るときの税と、二世帯にする場合の名義・相続は、要件が細かいので早めに押さえます。
自宅を売るときには、税の負担を抑える特例があります。二世帯の名義の決め方は、将来の相続に影響します。個別の判断は専門家に相談する前提で、ここでは要点にしぼります。
自宅マンションを売るときの3,000万円特別控除
自分が住んでいたマンションを売る場合、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。
この特例は、自分が住んでいた家(マイホーム)を売るときに使えます。今は住んでいない場合でも、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば、対象になります。譲渡所得から最高3,000万円を差し引けるため、税の負担を抑えられます。
気をつけたいのは、親子や夫婦など特別の関係がある人へ売った場合は、この特例の対象外になる点です。たとえば、今のマンションを同居する親に売る形にすると、控除を使えないことがあります。
出典: 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例
適用できるかどうかは、個々の事情によって変わります。判断に迷うときは、税理士に確認すると安心です。
二世帯の名義と相続(小規模宅地等の特例)
二世帯住宅を親子どちらの名義にするかは、将来の相続税を左右します。
名義には、親子で持ち分を分ける共有名義や、二つの住戸として別々に登記する区分登記などがあります。どの形にするかで、相続のときの扱いが変わります。
相続では、小規模宅地等の特例という制度があります。特定居住用の宅地では、限度面積330平方メートルまで、評価額を80%減らせる枠組みです。
誰が相続するかで要件が変わります。大きく3つの立場があります。
- 配偶者が相続する場合|居住や保有の継続といった要件はありません
- 同居していた親族が相続する場合|相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その家に住み続け、その宅地を持ち続けることが要件です
- 同居していない親族が相続する場合|いわゆる「家なき子」の枠で、配偶者も同居親族もいないことなど、別に定められた条件を満たす必要があります
この記事が扱う「親と同居する」という選択は、2番目の立場に自分が入るかどうかを決める話でもあります。ただし要件は細かく、名義の形によっても結論が変わります。
ただ、適用の要件は細かく、名義の形によっても結論が変わります。名義変更や相続登記は司法書士、税額の試算は税理士へ、早めに相談しておくと安心です。
家族で合意し、気持ちを整理する
住まいとお金の方針が見えたら、最後に家族の合意をつくり、自分の気持ちを整理します。
同居は当事者に加え、配偶者やきょうだい、親本人の意向がそろって、はじめて動きます。親孝行と介護の不安のあいだで、無理のない距離を選んで構いません。
配偶者・きょうだい・親の意向をそろえる
同居は、同居する本人はもちろん、配偶者やきょうだい、親本人の納得が欠かせません。
配偶者にとっては、生活のリズムや仕事への影響が大きく変わります。きょうだいがいる場合は、介護や費用の分担、実家をどうするかの話し合いが必要です。そして、親自身が本当に同居を望んでいるかも、確かめておきたい点です。
実家(親の家)の相続や処分が、きょうだいの間の調整に絡んでくることもあります。早めに、それぞれの思いを言葉にして共有しておくと、後の行き違いを防ぎやすくなります。
親孝行と介護の不安のあいだで距離を選ぶ
同居だけが親孝行の形ではありません。近居や、別居のままの見守りも含めて、無理のない距離を選んで構いません。
同居を始めてから、生活の距離の近さや介護の負担で後悔する例もあります。住まいの形は、後からでも見直せます。完璧な答えを一度で出そうとしなくて大丈夫です。
まずは、住まいとお金の情報を整理して、家族で話す一歩から始めてみてください。気持ちの上で無理のない距離を選ぶことが、長く続く関係につながります。
まとめ:同居の形で変わる今の部屋の扱いなら、住み替えのトビラ
親と同居するなら、誰の家でどう暮らすのかを家族で先に決めます。住まいの話から入ると、親や配偶者の考えが後から出てきて、決めたことをやり直すことになります。
暮らし方が定まったら、空いた部屋を売るのか貸すのか残すのかを同じ条件で比べます。形が定まらないうちに手放すと、後から住まいが必要になり、買い直すことになります。
売りに出すと決める前に、同居の形が家族の間でそろっているかを確かめておきましょう。住み替えのトビラでは、同居をきっかけにした住まいの決め方も含めて、住み替えで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。
住み替えのトビラ 
