住み替えの費用を見積もるとき、登記費用だけは相場の見当がつかず止まりがちです。
売るときと買うときで何がいくらかかり、誰が負担するのかも分かりにくい費目です。
売却側と購入側に費目を分けて、総額の見当までつかめるように整理しました。
不動産の登記費用とは?内訳と住み替えでの全体像
不動産の登記費用は、国に納める登録免許税と、登記を代行する司法書士への報酬の2つに分かれます。
住み替えでは家を売るときと買うときの二度、登記の場面が訪れます。負担する人も金額の決まり方もそれぞれ違うため、まずは費目ごとの全体像をつかむところから始めます。
登記費用の中身は「登録免許税」と「司法書士報酬」
登記費用は、法務局へ登記を申請するときに国へ納める登録免許税と、その手続きを任せる司法書士への報酬で成り立ちます。
登録免許税は、不動産の名義や権利の変更を登記簿へ反映させるときにかかる国税です。納める額は登記の種類ごとに法律で定められ、自分で申請しても司法書士に頼んでも変わりません。納付は登記を申請する場面でまとめて行います。
司法書士報酬は、登記に必要な書類の準備から法務局への申請までを代行してもらう対価です。登録免許税と違って金額は一律ではなく、依頼する登記の内容や事務所によって差が生まれます。住み替えのように複数の登記が重なる場面では、この報酬がいくつか積み重なります。
見積書では、国へ納める税金部分と司法書士へ払う報酬部分が分けて記されます。両方を合わせた額が、その登記で実際に支払う登記費用です。
住み替えは売却時・購入時の2回、登記費用がかかる
住み替えでは、いま住む家を売るときと、次の家を買うときの二度、登記費用がかかります。
売る家でかかるのは、完済した住宅ローンの抵当権を消す登記と、引っ越しで変わった住所を直す登記です。どちらも一定額で収まるため、金額そのものは小さく済みます。
買う家でかかるのは、物件の名義を自分へ移す登記と、新しい住宅ローンの担保を設定する登記です。こちらは評価額や借入額に連動するぶん、売却側より金額が大きくなりやすい費目です。
同じ住み替えでも、売る側と買う側では費目も金額の水準も異なります。売却時と購入時を分けて見積もっておくと、資金計画のズレを防ぎやすくなります。
【早見表】住み替えでかかる登記費用の全体像
住み替えで関わる登記費用を、売却側と購入側に分けて一覧にまとめました。
下の表は、どの場面でどの登記がかかり、誰が負担するのかを並べたものです。金額の細かな計算ではなく、費目の位置関係をつかむ地図として使ってください。
| 場面 | 登記の種類 | 主な負担者 | 金額の決まり方 |
|---|---|---|---|
| 売却時 | 抵当権抹消登記 | 売主 | 定額(不動産1件ごと) |
| 売却時 | 住所・氏名変更登記 | 売主 | 定額(不動産1件ごと) |
| 購入時 | 所有権移転登記(新築は保存登記) | 買主 | 評価額に連動 |
| 購入時 | 抵当権設定登記 | 買主 | 借入額に連動 |
売却側は定額で収まる費目が中心で、購入側は評価額や借入額に応じて動く費目が並びます。ここからは、この一覧にある費目を売却時から順に見ていきます。
売却時にかかる登記費用は抵当権抹消と住所変更
家を売るときに売主が負担する登記費用は、住宅ローンの抵当権を消す費用と、住所や氏名の変更を直す費用が中心です。
どちらも金額は小さいものの、決済までに済ませておかないと引き渡しが滞ります。売買による名義移転は買主の負担となるため、売る側はこの2つを押さえておけば足ります。
ローン完済後の「抵当権抹消登記」は売主が負担
抵当権抹消登記は、住宅ローンを完済したときに、担保として設定されていた抵当権を登記簿から消す手続きです。
住宅ローンを借りると、金融機関は対象の不動産に抵当権を設定します。完済しても登記簿の抵当権は自動では消えないため、売主側で抹消の登記を行う必要があります。
登録免許税は不動産1件あたり1,000円で、土地と建物があれば合計2,000円です。これに司法書士へ依頼する場合の報酬が加わり、全体でも1万円台に収まることが多い費目です。
抹消の費用は、売主が負担するのが通例です。買主へ引き渡す前に抵当権が残っていると売買に支障が出るため、ローンの完済とあわせて決済日に処理します。
住所が変わっていると「住所・氏名変更登記」も必要
登記簿に記録された住所や氏名が現在のものと違う場合は、売却の前に住所・氏名変更登記で情報を更新します。
登記簿の名義人情報は、引っ越しや結婚で住所や氏名が変わっても自動では書き換わりません。記録が古いままだと本人確認が滞り、売買による名義移転の手続きが進められません。
登録免許税は抹消と同じく不動産1件あたり1,000円です。手続き自体は比較的単純で、自分で申請する人もいますが、決済を急ぐ場合は司法書士へまとめて任せることが多くなります。
2026年4月から、この住所・氏名変更登記は法律上の義務になりました。住所や氏名が変わった日から2年以内の登記が求められ、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料が科される場合があります。
義務化より前に変わった住所も対象で、その場合は2028年3月末までに登記が必要です。一方で「検索用情報」を申し出ておけば、法務局が職権で変更登記を行う「スマート変更登記」も使えます。
所有権移転登記は買主負担|売主は原則払わない
売買による所有権移転登記の費用は、原則として買主が負担します。
名義を売主から買主へ移す登記は、新しく権利を得る買主側の費用とするのが一般的です。そのため売主が売却時に負担する登記費用は、抵当権抹消と住所・氏名変更でほぼ完結します。登録免許税は1件あたり1,000円の積み重ねで、司法書士報酬を含めても数万円ほどが目安です。
ただし相続した家を売る場合は、先に故人から相続人へ名義を移す相続登記を済ませておく必要があります。この費用は売主側で発生するため、売却の段取りにあらかじめ組み込んでおくと安心です。
購入時の登記費用は所有権移転と抵当権設定
次の家を買うときに買主が負担する登記費用は、名義を移す所有権移転登記と、住宅ローンの担保を設定する抵当権設定登記が柱です。
売却側と違い、これらは物件の評価額や借入額に税率を掛けて計算するため、金額が大きく動きます。条件を満たせば税率が下がる軽減措置もあるので、合わせて確認しておきたい費目です。
名義を移す「所有権移転登記」(新築は保存登記)
所有権移転登記は、不動産の名義を前の所有者から自分へ移し、買主であることを登記簿に記録する手続きです。
中古の家を買う場合は、土地と建物のそれぞれに所有権移転登記がかかります。登録免許税は固定資産税評価額に税率を掛けて求め、売買による移転では本来2.0%が基準です。
新築の家では、まだ誰も登記していない建物に初めて名義を記録するため、移転ではなく所有権保存登記となります。こちらの登録免許税は、評価額に0.4%を掛けた額が基準です。
税額の基準となる固定資産税評価額は、市区町村が個別に定めた価格で、売買価格とは異なります。実際の金額を試算するには、自分の物件の評価額を先に把握しておく必要があります。
移転登記の費用は、新しく所有者になる買主が負担するのが通例です。売主側の抹消や変更とは別に、買う側でまとまった登記費用がかかると考えておくと資金計画が立てやすくなります。
住宅ローンを組むとかかる「抵当権設定登記」
抵当権設定登記は、住宅ローンを借りる際に、金融機関が担保として不動産に抵当権を設定する手続きです。
買う家で住宅ローンを利用すると、貸し手である金融機関のために抵当権を設定します。登録免許税は借入額に税率を掛けて求めるため、借りる金額が大きいほど費用も増えます。
本来の税率は借入額の0.4%で、3,000万円を借りれば12万円が基準です。住宅取得のための借り入れには軽減措置があり、要件を満たすと負担が大きく下がります。
住宅用家屋の軽減措置で登録免許税が下がる条件
自分が住むための家には、登録免許税の税率を引き下げる軽減措置が用意されています。
軽減を受けるには、自分の居住用であることや、床面積が50平方メートル以上であることなどの要件を満たす必要があります。適用には、家屋の所在地の市区町村が発行する住宅用家屋証明書を登記の際に添えます。
軽減が適用されると、土地の移転登記は1.5%、住宅用家屋の移転登記は0.3%まで下がります。住宅ローンの抵当権設定は0.4%から0.1%になり、借入額が大きい人ほど効果が大きくなります。
これらの軽減には適用期限があり、住宅用家屋と抵当権設定は2027年3月末まで、土地の移転登記は2029年3月末までです(2026年時点)。期限は税制改正で延長されることもあるため、購入の前に最新の情報を確認しておくと安心です。
出典: 国税庁「登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ」(PDF)
買う側の費用は、軽減措置を使えるかどうかで負担が変わります。売る側の小さな費目とあわせて、最後に全体を合算すると総額の見当がつきます。
登記費用を安くする方法と司法書士に頼む判断
登記費用のうち抑える余地があるのは司法書士報酬の部分で、自分で登記すれば報酬は浮きます。
ただし住み替えは売却と購入が同時に動くため、手続きに割ける時間は限られます。どの登記を自分で行い、どこを専門家に任せるかを、状況に照らして選ぶことになります。
司法書士報酬は法律で決まらず相見積もりで差が出る
司法書士報酬は法律で一律に決められておらず、依頼する事務所によって金額に差が出ます。
かつては司法書士会の報酬基準がありましたが、2003年に廃止され、現在は各事務所が自由に金額を定めています。同じ抵当権抹消でも、事務所ごとに数千円の差が生まれます。
報酬を抑えたいなら、複数の事務所から見積もりを取って比べる方法があります。不動産会社が紹介する司法書士に任せる手もありますが、その場合も内訳を確認しておくと納得して進められます。
自分でできる登記・司法書士に頼むべき登記
売主側の抵当権抹消や住所変更は自分でも申請できますが、売買にともなう登記は司法書士に任せるのが現実的です。
抵当権抹消や住所・氏名変更は手続きが比較的単純で、法務局の窓口や案内に沿って自分で申請する人もいます。書類をそろえる手間はかかるものの、報酬のぶんを丸ごと節約できます。
一方、売買による所有権移転や抵当権設定は、決済の当日に売主・買主・金融機関が同席し、お金の動きと登記を同時に進めます。ここで書類に不備があると取引全体が止まるため、司法書士が立ち会って処理するのが通常です。
つまり時間に余裕があり手続きも単純な売却側の登記は自分でも対応でき、取引の安全がかかる売買の登記は専門家に委ねる切り分けになります。住み替えでは両方が並行するため、すべてを自分でやろうとすると負担が重くなります。
売却と購入が同じ決済日|どこを削れるか
住み替えで費用を削るなら、自分で対応しやすい売却側の抵当権抹消に絞るのが現実的です。
住み替えでは、いまの家の売却と次の家の購入を同じ日に決済することがよくあります。売却の抵当権抹消と購入の移転・設定が同じ場で連続するため、買う側の登記は司法書士がまとめて担うのが自然な流れです。
この流れを踏まえると、購入側の登記まで自分でやるのは時間的にも手続き的にも難しくなります。費用を抑えたい場合は、決済より前に余裕をもって進められる抵当権抹消を自分で行うのが、無理のない方法です。
売却と購入が重なる住み替えでは、すべてを節約しようとするより、削れるところを一つに絞る考え方が合っています。浮く金額と手間のバランスを見て、抵当権抹消だけ自分で動く形が落としどころになりやすい費目です。
住み替えでかかる登記費用の総額と確認の手順
住み替えの登記費用は、売却側の数万円と購入側の数十万円を合わせた総額でとらえます。
売る側と買う側で見てきた費目を足し戻すと、自分の住み替えでかかる登記費用のおおよその姿が見えてきます。ここでは登記費用だけに絞り、ほかの諸費用とどう並ぶのかも合わせて確認します。
売却側+購入側を合算した登記費用のモデルケース
売却側と購入側の費目を一つの例で合算すると、住み替え全体の登記費用が具体的な金額として見えてきます。
ここでは、3,000万円の中古マンションを売り、新たに4,000万円の中古マンションを住宅ローンで買う場合を例にします。評価額や借入額は物件ごとに違うため、あくまで目安としての金額です。
| 区分 | 含まれる登記 | 登記費用の目安(税+報酬) |
|---|---|---|
| 売却側 | 抵当権抹消・住所変更 | 2万〜3万円 |
| 購入側 | 所有権移転・抵当権設定(軽減後) | 20万〜35万円 |
| 合計 | 住み替え全体の登記費用 | 22万〜38万円 |
売る側は定額の登記が中心で、数万円ほどに収まります。買う側は評価額と借入額に連動するため、軽減措置を使っても20万円台から30万円台になることが多くなります。
この例では、住み替え全体の登記費用がおよそ22万〜38万円の幅に収まります。売却側だけ、購入側だけを見ると一部しか見えないため、両方を足してはじめて準備すべき総額がつかめます。
登記費用は住み替え諸費用の一部|全体での位置づけ
登記費用は、住み替えにかかる諸費用の一部にすぎません。
住み替えでは登記費用のほかに、仲介手数料や印紙税といった費用もかかります。これらは登記費用と並ぶ別の費目で、それぞれ計算の仕方も負担する場面も異なります。
登記費用だけを見て資金計画を立てると、ほかの費目を見落とすおそれがあります。総額を正しくつかむには、仲介手数料や印紙税も含めて全体を見渡しておくことが大切です。
自分の物件での総額は費用シミュレーションで確認
自分の物件と借入額での正確な登記費用は、費用シミュレーションを使うとまとめて確認できます。
ここまでの金額はあくまで目安で、実際の登録免許税は物件ごとの評価額で変わります。手取りまで含めた住み替え全体の収支を見たいときは、費用シミュレーションでまとめて試算するのが手軽です。
試算の前提になる売却見込み額は、査定でおおよその水準をつかめます。登記費用と売却額の両方が見えると、住み替えの資金計画がより具体的になります。
まとめ:住み替えの登記費用は売却・購入の2回でとらえる
不動産の登記費用は、国に納める登録免許税と司法書士への報酬で構成されます。住み替えでは売るときと買うときの二度かかり、負担する人も金額の決まり方も場面ごとに違います。
売却側は定額の費目が中心で数万円ほど、購入側は評価額や借入額に連動して数十万円規模になります。軽減措置を使えるかどうかや、どこを自分で手続きするかで負担は変わります。
正確な総額は物件ごとに異なるため、評価額や借入額をもとに試算するのが確実です。売却見込み額を査定でつかみ、登記費用と合わせて見れば、資金計画を具体的に固められます。
住み替えのトビラ 