親が施設に入ったら家はどうする?売る・貸す・残すで選ぶ

施設に入った親の家を前に、毎月の費用や管理、手放す決心がつかず迷っていませんか。

売る・貸す・残すと選択肢は多く、どれが自分に合うのか分からなくなりがちです。

この記事を読めば、3つの出口を比べて、自分のケースに合う方向を2〜3案まで絞り込めます。

施設に入った親の家、出口は「売る・貸す・残す」

施設に入って誰も住まなくなった親の家は、「売る・貸す・残す」の3つの方向で考えられます。

空き家が全国で約900万戸と過去最多のいま、施設費用や維持費、手放しにくい気持ちを前に迷う方は少なくありません。この記事は介護施設の選び方ではなく、空いた実家をどう動かすかを絞り込むための地図です。

出典:総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」

まず全体像|売る・貸す・残すの3方向

親の家の出口は、突き詰めると「売る・貸す・残す」の3つに分けられます。

実家の使い道として、売却や賃貸、解体や子の同居などがすぐ思い浮かびます。こうした手段は数こそ多いものの、手放す・貸す・残すという3つの方向に整理できます。

売るは家を現金に換えて手放す方向です。貸すは所有を続けたまま、第三者に貸して家賃を得る方向になります。残すは手放さず、当面は保有を続けながら活用や様子見の余地を持つ選び方です。

この3つは進み方も向いている状況も大きく異なります。どれが正解と決まっているわけではなく、家の状態や家族の希望によって選ぶ方向は変わります。施設に入った直後は気持ちの整理もつきにくいため、まずは大枠をつかむところから始められます。

一覧表で比べる費用・手間・将来性

費用や手間など5つの軸で並べると、3つの方向の違いがつかみやすくなります。

出口お金の動き手間現金化の早さ気持ちの負担将来の選択肢
売るまとまった現金が入る売却の手続きのみ早い手放す重さが残る売れば元に戻せない
貸す家賃収入と管理費の両方入居中ずっと続くゆるやか他人に託す迷い当面は売りにくい
残す維持費が出続ける管理が続く換金はしない手放さない安心売る・貸すへ移せる

売るは現金化が早く、固定資産税や管理の負担からも解放されます。その一方で家を手放すと元には戻せず、決めるまでに気持ちの整理も必要になります。

貸すは家を持ったまま収入を得られ、いずれ家族が戻る道も残せます。ただし入居中は管理や原状回復の手間が続き、その間は売りにくくなります。

残すはすぐに決めずに済み、後から売る・貸すへ移ることもできます。ただし空き家のままなら維持費と固定資産税はかかり続け、管理も自分たちで担うことになります。

出口選びを分ける3つの問い

方向を絞り込むとき、手がかりになる問いが3つあります。

  • 親が再び家に戻る見込みはあるか
  • 家を継ぐ人や住む人はいるか
  • 施設費用に売却資金を充てる必要があるか

今すぐ答えが出なくても問題ありません。3つを頭の片隅に置いておくと、自分のケースに合う方向が選びやすくなります。

施設に入った今が、親の家を動かす分岐点

親が施設に入った今は、家の方針を本人の意思で決められる貴重な時期です。

存命の今なら売却も賃貸も親本人が選べますが、認知症が進むと手続きは止まり、相続後では使えない税の選択肢もあります。出口を選ぶ前に、今だからこそ確かめたい前提を押さえます。

親が元気なうちは本人の意思で動かせる

家を売るか貸すかは、親の判断能力があるうちは本人が自分で決められます。

不動産の売却や賃貸の契約は、その家の持ち主である親自身が結ぶものです。親に判断能力があれば、子が間に入って話を進めながらも、最終的な意思は本人が示せます。

元気なうちに家族で方針を話し合っておくと、後の選択を進めやすくなります。施設に入ったばかりの時期は、本人の希望を直接聞ける数少ない機会でもあります。

まだ売却や賃貸に踏み切れない場合でも、できることはあります。家の名義や必要書類を確かめ、不要品の整理から始めておくと、いざ動くときに慌てずに済みます。

名義と認知症|動かす前に確かめる2つの壁

家を動かす前に、登記の名義と親の判断能力という2つの点を確かめておきます。

まず確かめたいのは、家が誰の名義になっているかです。親の単独名義なのか、すでに別の家族と共有になっているのかで、必要な手続きや関わる人が変わります。

親名義のままでは、子が代わりに売ったり貸したりはできません。売買や賃貸を子が進めるには、親本人の意思にもとづく委任など、正式な手続きが必要になります。

認知症などで親の判断能力が低下すると、本人の意思を確認できず、契約そのものが進められなくなります。その場合は家庭裁判所を通じた成年後見の手続きが必要になり、時間も手間もかかります。判断能力があるうちなら、こうした遠回りを避けられます。

出典:法務省「成年後見制度・成年後見登記制度」

つまり、家を動かせるかどうかは親の状態と時間に左右されます。名義と判断能力の2点を早めに確かめておくことが、選べる出口を狭めないことにつながります。

相続前の今だからこそ税で有利になる場合

親が存命の今と相続後とでは、売却にかかる税の扱いが変わることがあります。

親が住んでいた家を本人が売る場合は、居住用財産の特別控除で税を抑えられることがあります。ただし住まなくなってから一定の期間を過ぎると使えなくなるため、動ける時期には限りがあります。

相続後は、相続した人が使える別の特例に切り替わり、要件や期限も異なります。どちらが有利かはケースで分かれるため、税理士など専門家への相談を前提に判断するのが安心です。

出典:国税庁 No.3302「マイホームを売ったときの特例」

【売る】施設費用に充て、管理から解放されたい人へ

売却は、家に戻る見込みが薄く、継ぐ人もいない場合に検討しやすい出口です。

毎月の施設費用に充てたい、管理の負担から離れたいという思いがあるなら、売却はその受け皿になります。ここでは売却が向く状況と、現金化の利点や見落としやすい注意点を整理します。

売却が向くのはどんなケースか

売却が向いているのは、親が家に戻る見込みがなく、継ぐ人もいない場合です。

親が施設で暮らし続け、実家に戻る可能性が低いなら、家はこの先も使われないまま残ります。そこに住んだり継いだりする家族がいなければ、空き家として持ち続ける負担だけが積み重なります。こうした状況では、早めに手放す判断が家計の安定につながりやすくなります。

施設費用に売却資金を充てたい場合も、売却が現実的な選択になります。家計の負担を軽くしたいという事情は、出口を売るに傾ける大きな理由です。

現金化の利点と、売る前の注意点

売却の利点はまとまった資金ですが、税や売れやすさ、気持ちの面も合わせて見ておきます。

家を売れば、施設費用や生活費に充てられるまとまった資金が手に入ります。固定資産税や日々の管理からも離れられ、気がかりが一つ減ります。

一方で、売却で利益が出ると譲渡所得税がかかります。親が住んでいた家を親本人が売る場合は、居住用財産の特別控除で税を抑えられることがあります。ただし住まなくなってから一定の期間を過ぎると使えなくなるため、時期の見極めが欠かせません。

出典:国税庁 No.3302「マイホームを売ったときの特例」

売れやすさは立地に大きく左右されます。需要の少ない地域では買い手が見つかりにくく、希望の価格や時期で売れるとは限りません。

そして、まだ生きている親の家を手放すことには、特有の重さがあります。思い出の残る家を売る判断は、家族の気持ちが追いつくまで時間がかかることもあります。

売ると決めたら|まず価値を把握する

売ると決めたら、まずは家がいくらで売れそうかを把握するところから始めます。

今の相場が分かると、施設費用にどれだけ充てられるか、いつ動くべきかの見通しが立ちます。複数の不動産会社に査定を頼むと、価格の開きや各社の見立ての違いも見えてきます。

査定額はあくまで目安で、実際の成約価格とは差が出ることもあります。数字を一つの判断材料として、無理のない範囲で進め方を考えていきます。

【貸す】親の家を手放さず家賃収入を得たい人へ

賃貸は、家を手放さずに残しながら、家賃収入で維持費をまかないたい場合の出口です。

いずれ親や家族が使うかもしれない、今は手放したくないけれど空けておくのは惜しい。そんな思いに応えるのが賃貸です。向く状況と、貸す前に知っておきたい手間や制約を見ていきます。

賃貸が向くのはどんなケースか

賃貸が向いているのは、家を手放したくなく、その地域に借り手の見込みがある場合です。

いつか親や子が戻って住む可能性を残したいなら、売らずに貸す道があります。所有を続けながら、空けておくよりは家賃で維持費をまかなえます。

ただし、借り手がつくかどうかは立地や物件の状態しだいです。駅や生活施設が近く、賃貸の需要がある地域ほど、貸す選択は現実味を帯びます。

家賃収入の利点と、貸す前の注意点

家賃収入という利点の一方で、管理の手間や将来の売りにくさも見ておく必要があります。

貸し出せば、毎月の家賃が入り、施設費用や維持費の足しになります。家を手放さないまま収入を得られる点が、賃貸の一番の魅力です。

その一方で、貸主には管理の手間がついて回ります。入居者の対応や設備の修繕、退去時の原状回復には費用も時間もかかります。借り手が見つからない空室の間は、家賃が入らず維持費だけが出ていきます。

貸し出すと、その期間は売却に動きにくくなります。さらに、家を空けてから一定の期間が過ぎたり賃貸に回したりすると、売るときの税の特例が使えなくなる場合があります。

そして、親の家に他人が住むことへの抵抗を感じる家族も少なくありません。思い入れのある家をどう扱うかは、お金の面に加えて気持ちの面でも話し合っておきたいところです。

貸すと決めたら|相談先と確認事項

貸すと決めたら、相場の家賃と必要な準備を、賃貸に詳しい会社へ相談するところから始めます。

地域の家賃相場や、貸し出す前に必要な修繕やリフォームの程度を確かめておきます。管理を自分で担うのか、管理会社に任せるのかも、早めに決めておきたい点です。

賃貸には専門の知識が必要な場面も多く、不動産会社や管理会社に相談すると判断しやすくなります。

【残す】親の家をまだ手放したくない人へ

残すは、すぐに答えを出さず、家を持ち続けながら時間をかけて考えたい場合の選択です。

家族の中で意見がまとまらない、思い出の整理に時間がほしい。そんなときの残すは、先送りではなく、状況が定まるまで選択肢を保つ前向きな判断です。向く状況や残し方、備えたいリスクを順に見ていきます。

残すのが向くのはどんなケースか

残すが向いているのは、心情的に手放せない、または将来の活用や同居の余地が残る場合です。

親が築いた家を、今はまだ手放したくないという気持ちは自然なものです。すぐに決めなくても、家を持ち続けながら家族で考える時間を確保できます。

いつか子や孫が住むかもしれない、リフォームして活用したいといった見込みがあるなら、残す価値は高まります。親が戻れる可能性がわずかでも残っている間も、急いで手放さない判断は理にかないます。

残し方の3つの形(保有・子が住む・資金化)

残すといっても、空き家のまま持ち続ける、家族が住む、資金化するという3通りがあります。

一つ目は、空き家のまま持ち続けるやり方です。手をかけずに済む反面、維持費と固定資産税は払い続けることになります。

二つ目は、子や親族が住むやり方です。家を活かせるうえ、親から相続する際に評価額を抑えられる相続税の特例が使える場合もあります。一方で、住む人と住まない人の間で公平をどう保つかは、きょうだいで話し合う必要があります。

三つ目は、家を残したまま資金化するやり方です。自宅を担保に金融機関から資金を借り、亡くなった後に家を売って返すリバースモーゲージなどがこれにあたります。

残すと決めたら|維持費とリスクに備える

残すと決めたら、毎年かかる費用と、空き家ならではのリスクに備えておきます。

家を持ち続ける限り、固定資産税や火災保険、修繕や見回りの費用がかかり続けます。誰も住まない家でも、傷みを防ぐには定期的な管理が欠かせません。

管理が行き届かないと、自治体から管理不全空き家や特定空き家と判断されるおそれがあります。そう勧告されると、土地の固定資産税を軽くする住宅用地特例が外れ、税負担が大きく増えます。2023年の法改正で、特定空き家になる前の段階でもこの扱いが及ぶようになりました。

出典:政府広報オンライン「空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化」

こうした事態を避けるには、誰がどう管理するかと、いつ方針を見直すかを最初に決めておきます。残すと選んだ後も、状況が変われば売る・貸すへ移れるよう、定期的に見直す姿勢が安心につながります。

あなたのケースは?親の家の出口を絞る

ここまでの3つの出口を、自分のケースに当てはめて2〜3案まで絞り込みます。

一つに決め切らなくても大丈夫です。3つの問いに答えながら候補を絞り、最後に家族で合意して動き出すところまでを整理します。方向性が見えれば、それで十分な一歩になります。

親が再び家に戻る見込みで分ける

最初の分かれ道は、親が再びその家に戻る見込みがあるかどうかです。

戻る見込みが残っているなら、家を空けて待てる残すが軸になります。戻る可能性がほとんどないなら、使われない家をどうするかという視点から、売る・貸すが候補に上がります。

家を継ぐ・住む人の有無で分ける

次に、家を継ぐ人や住む人がいるかどうかで候補が変わります。

住む人がいるなら、子が住む残すや、その人へ引き継ぐ道が現実的です。誰も住まず継ぐ予定もないなら、手放す売るか、貸して活かす方向に絞られていきます。

施設費用に充てる必要があるかで分ける

そして、施設費用に売却資金を充てる必要があるかどうかも、大きな分かれ目です。

毎月の負担が重く、まとまった資金が必要なら、現金化の早い売るが優先されます。家計に余裕があって急ぐ必要がないなら、貸すや残すも落ち着いて選べます。

2〜3案に絞り、家族で合意して動く

候補が2〜3案に絞れたら、家族で話し合って合意をつくり、実際の価値を確かめて動き出します。

3つの問いに答えると、多くの場合は売る・貸す・残すのうち2〜3案に候補が絞られます。ここで一つに決め切る必要はなく、進めながら最後の一案を選んでいけば十分です。

方向が見えたら、着手の前にきょうだいや家族で意向をそろえておきます。施設入居をきっかけに動いた人たちからは、早めに話し合えて良かったという声や、後回しにして関係がこじれたという振り返りが聞かれます。誰がどこまで関わるかを先に決めておくと、後の負担やすれ違いを減らせます。

どの案を選ぶにしても、実家が今いくらで売れそうかを知っておくと判断の土台になります。複数の不動産会社にまとめて査定を頼める一括査定なら、各社の価格を見比べながら相場をつかめます。

査定は無料で使えるものが多く、依頼の際に連絡方法や時間帯の希望も伝えられます。気が進まなければ断っても構わないので、まずは相場を知る一歩として気軽に使えます。

まとめ:売る・貸す・残すから、自分のケースに合う出口を選ぶ

施設に入って空いた実家は、売る・貸す・残すの3方向で考えられます。毎月の施設費用や管理の負担、まだ手放したくない気持ちをどう見るかで、向く方向は変わります。

親が元気な今は、本人の意思で動かせる貴重な時期です。3つの問いに沿って、無理に一つへ決めず2〜3案まで絞れれば十分です。

どの方向を選ぶにしても、出発点は実家の今の価値を知ることです。複数社の査定を見比べたり、専門家に相談したりしながら、家族で納得できる答えを探してみてください。