住宅ローンの変動と固定はどう選ぶ?住み替えの視点

住宅ローンの変動と固定はどう選ぶ?住み替えの視点

住み替えで新居を買う段になると、変動と固定のどちらを選ぶかという問いが目の前に現れます。金利上昇のニュースが続き、まわりは変動が多いと聞くけれど、自分はどうすればいいのか。迷って当然の場面です。

この記事では、金利タイプそれぞれの仕組みと、金利が上がったときに返済がどうなるかを整理します。そのうえで、住み替えという自分の条件から納得して選ぶための考え方をお伝えします。

なお、金利の水準は時期によって動くため、本記事では具体的な数値ではなく、選び方の考え方を中心にお話しします。

住宅ローンの金利タイプは大きく3つ(変動・固定選択型・全期間固定)

住宅ローンの金利タイプは、大きく分けて3種類あります。

金利が動く「変動金利」、完済まで変わらない「全期間固定金利」、そしてその中間にあたる「固定金利選択型」の3つです。住み替えでの金利タイプ選びは、まずこの3つの性質の違いを押さえるところから始まります。それぞれの金利水準は時期によって変わるため、ここでは水準そのものではなく、仕組みの違いに絞って見ていきます。

変動金利:金利が低い代わりに将来の金利が動く

変動金利は、借入当初の金利が最も低い一方で、返済の途中で金利が見直されていくタイプです。

金利の見直しは、半年ごとなど定期的に行われるのが一般的です。世の中の金利が動けば、それに合わせて自分のローン金利も上下します。当初の金利が低い分、借入直後の返済額を抑えやすいのが大きな利点です。

その代わり、将来の金利が上がれば返済の負担も増えていきます。借りたときには低くても、10年後、20年後にどうなっているかは、いま見通すことが難しいところです。この先の金利上昇を自分の家計で受け止められるかどうかが、変動を選ぶかどうかの分かれ目になります。

具体的な金利の水準は各金融機関で異なり、時期によっても変わります。検討するときは、その時点の水準を各金融機関で確認してください。

全期間固定金利:総返済額が最初に確定する安心と引き換えの金利

全期間固定金利は、借入時に完済までの金利が決まり、総返済額が最初に確定するタイプです。

代表的な商品が、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する【フラット35】です。フラット35は最長35年の全期間固定金利で、資金の受取時に返済終了までの借入金利と返済額が確定します。世の中の金利がその後どう動いても、返済額は変わりません。

出典: 住宅金融支援機構 長期固定金利住宅ローン【フラット35】

この仕組みの利点は、返済計画が最初から立てやすいことです。毎月いくら返すかが完済まで動かないため、家計の見通しを長期で持ちやすくなります。金利が上がる不安から解放されるのも安心材料です。

一方で、当初の金利は変動より高めに設定されるのが通常です。安心を先に確保する分、スタート時点の負担は大きくなります。この安心と当初負担のバランスをどう見るかが、固定を選ぶかどうかの判断になります。

固定金利選択型:一定期間だけ固定し、その後を選び直す中間型

固定金利選択型は、当初の一定期間だけ金利を固定し、その期間が終わったあとに改めて金利タイプを選び直すタイプです。

固定される期間は、3年・5年・10年など商品によって幅があります。この期間中は金利が変わらないため、当面の返済額は見通せます。ただし固定期間が終わると、その時点の金利で改めて選び直すことになり、金利上昇のリスクはそこへ先送りされる形になります。

ここで注意したいのが、全期間固定との違いです。全期間固定は完済まで金利が変わりませんが、固定金利選択型が金利を約束するのは当初の一定期間だけです。名前が似ていて混同しやすいため、固定される範囲が「完済まで」なのか「最初の数年だけ」なのかを、必ず区別して確認してください。

変動金利で金利が上がると返済はどうなるか(5年ルール・125%ルールの限界)

変動金利を選ぶときに最も気になるのが、金利が上がったら返済がどうなるのかという不安です。

多くの変動金利型には、返済額が急に増えないよう抑える仕組みが備わっています。ただし、その仕組みは金利上昇の負担そのものを消すわけではなく、商品によっては仕組み自体が無いこともあります。この章では、返済額を抑える仕組みと、その限界、そして商品による違いを見ていきます。

5年ルールと125%ルール:返済額の急増を抑える仕組み

多くの変動金利型では、金利が上がっても毎月の返済額がすぐには増えない仕組みがあります。

代表的なものが「5年ルール」と「125%ルール」の2つです。5年ルールは、金利の見直しが半年ごとであっても、毎月の返済額の見直しは5年ごとにまとめて行うというものです。この間に金利が上がっても、返済額は据え置かれます。125%ルールは、5年ごとの見直しで返済額が増える場合でも、それまでの返済額の1.25倍を上限とするものです。たとえば毎月8万円を返している人なら、見直し後の上限は10万円までにとどまります。

出典: 全国銀行協会 変動金利住宅ローンの未払利息とは?

これらの仕組みがあることで、金利が急に動いても毎月の返済額が跳ね上がる事態は避けられます。急な負担増から家計を守るクッションと考えるとわかりやすいでしょう。ただし、これは多くの変動金利型で採用されているという一般的な傾向で、すべての商品にあるわけではありません。

仕組みには限界がある:未払利息と元金の減りにくさ

5年ルールと125%ルールは返済額の急増を抑えるだけで、金利上昇の負担そのものを消してくれるわけではありません。

返済額が据え置かれている間も、金利自体は上がっています。すると、毎月返すお金のうち利息にまわる割合が増え、元金の減りが遅くなります。返済額は同じでも、借金が思ったほど減っていかないという状態が起こりうるのです。

さらに大きく金利が上がると、毎月の利息が返済額を超えてしまうことがあります。この場合、返済額をすべて利息に充てても足りず、払いきれなかった利息が「未払利息」として残ります。元金に充てられる分がゼロになり、利息だけを払い続ける状態が続くこともあります。

出典: 全国銀行協会 変動金利住宅ローンの未払利息とは?

つまり「返済額が変わらない=安心」と受け取るのは誤解のもとです。返済額が据え置かれていても、その裏で負担が積み上がっている可能性があります。仕組みに守られているように見えても、金利が上がれば最終的な負担は増えるという点を、変動を選ぶ前に理解しておく必要があります。

これらのルールが無い商品もある(元金均等・一部ネット銀行)

すべての変動金利にこうした仕組みがあるわけではありません。

たとえば元金均等返済という返し方や、一部のネット銀行の商品では、5年ルールや125%ルールが設けられていないことがあります。この場合、金利が上がると翌回の返済額にそのまま反映され、返済額がすぐに増える可能性があります。急増を抑えるクッションが無い分、金利上昇の影響を直接受ける形です。

だからこそ「変動なら5年ルールで守られる」と一律に考えるのは避けたいところです。自分が検討している商品にこれらの仕組みがあるのか無いのかは、契約前に必ず確認しておきましょう。

変動と固定はこう選ぶ:自分の条件から判断する軸

変動か固定かは、「どちらが得か」ではなく「自分の条件でどちらのリスクを取れるか」で決まります。

判断の手がかりになるのは、返済期間の長さ、家計と自己資金の余裕、返済比率と金利上昇への耐性の3つです。これらを自分に当てはめて考えることで、一般論ではなく自分にとっての答えが見えてきます。決めきれないときの折衷の選び方もあわせて見ていきます。

返済期間の長さ:短いほど変動、長いほど金利上昇の影響が大きい

返済期間が短いほど金利上昇の影響を受けにくく、長いほど影響が大きくなります。

短い期間で返し終える見込みなら、金利が上がる前に完済できる可能性が高く、変動の低金利をそのまま活かしやすくなります。逆に35年など長期で組む場合、途中で金利が上がる場面に遭遇する可能性が高まります。長く借りるほど、完済までのどこかで上昇局面に当たるリスクを抱えるためです。

期間が長いケースでは、総返済額を最初に確定させる固定の安心が生きてきます。何年にもわたって返済額が動かない見通しは、長期の家計設計を支えてくれます。返済期間は人によって大きく異なるため、自分が何年で返す計画なのかを起点に考えるとよいでしょう。

家計と自己資金の余裕:上昇を吸収できるかで許容度が変わる

金利が上がった分を貯蓄や家計の余裕で吸収できるかどうかが、変動を選べるかの分かれ目になります。

自己資金が厚く、繰上返済にまわせる余力がある人は、金利が上がっても貯蓄で返済を前倒ししたり、負担増を家計で受け止めたりしやすくなります。上昇のリスクを自分で吸収できるなら、当初金利の低い変動のメリットを取りにいく選択が現実味を持ちます。

一方で、自己資金が乏しく毎月の家計にも余裕が少ない場合は、返済額が確定する固定のほうが生活を守りやすくなります。金利が上がっても返済額が変わらなければ、家計の見通しが崩れずに済むためです。手元の余裕がどれだけあるかを、正直に見積もることが出発点になります。

返済比率と金利上昇への耐性:返済額が増えても耐えられるか

いま無理なく返せていても、金利が上がって返済額が増えたときに耐えられるかどうかで判断します。

ここで手がかりになるのが返済比率です。返済比率とは、年収に対する年間の返済額の割合を指します。この割合が高いほど、金利上昇で返済額が増えたときの打撃が大きくなります。いまはちょうど返せていても、上昇局面では家計が一気に苦しくなりかねません。

大切なのは、現在の返済額ではなく、金利が上がった前提で試算してみることです。返済額が増えたと仮定してシミュレーションし、それでも生活が回るかを確かめると、自分の耐性が見えてきます。なお、無理のない返済比率の目安は金融機関や個々の状況によって異なるため、一律の安全ラインとしては考えず、自分の家計に照らして判断してください。

迷ったときの折衷:ミックス型・固定金利選択型という選択

変動か固定かをひとつに決めきれないときは、リスクを分ける折衷の選び方があります。

そのひとつがミックス型です。借入額の一部を変動、残りを固定にして組み合わせる方法で、変動の低金利を一部取り込みながら、固定部分で上昇の影響を和らげます。もうひとつが固定金利選択型で、当初の一定期間だけ金利を固定して、その間の上昇リスクを抑えます。

これらは、全期間固定より当初の負担を抑えつつ、変動よりも金利上昇の影響を小さくできる中間の選び方です。ただし、いいとこ取りというわけではありません。組み合わせによっては手続きや金利の面で割高になることもあり、固定金利選択型は固定期間が終わったあとに上昇リスクが戻ってくる点も残ります。折衷にもそれぞれのデメリットがあることを踏まえて選ぶことが大切です。

住み替えで金利タイプを選ぶときに考えたいこと

住み替えで組む新居のローンは、初めて家を買うときとは前提が違います。

年齢や退職の時期、旧居と新居のローンが重なる期間、前の家に残る住宅ローンなど、住み替えならではの事情が金利タイプ選びに影響します。銀行の商品を比べる前に、自分の生活設計から逆算して考える視点が欠かせません。

残りの返済年数が短くなりやすい:完済を退職までに収める視点

住み替えでは購入時の年齢が上がりやすく、完済を退職までに収めたいという制約が金利タイプ選びに影響します。

多くの金融機関では、完済時の年齢に上限が設けられています。目安として完済時80歳未満などとされることがありますが、上限は金融機関によって異なるため、実際の条件は各金融機関で確認してください。この上限があるため、年齢を重ねてからの住み替えでは、そもそも組める返済年数が限られてきます。

ここで方針は二手に分かれます。退職までに完済する計画で返済年数を短く組むなら、期間が短い分だけ変動の低金利を活かしやすくなります。一方、退職後も返済が残る計画になるなら、収入が減る局面で金利上昇の負担を抱え込まないよう、固定で返済額を確定させておく安心が優先されます。いつまでに返し終えるのか、そのときの収入はどうなっているのかを、年齢と退職から逆算して考えることが住み替えでは特に重みを持ちます。

二重ローン期間があるなら上昇リスクは重くなる

旧居と新居のローンが一時的に重なる期間があると、金利上昇の負担は通常より重くのしかかります。

家の売却より先に新居を買う「買い先行」では、旧居が売れるまでの間、2つのローンを同時に返す期間が生まれます。この二重返済の間は、毎月の支出が大きくなり、家計の余裕がふだんより小さくなります。

その苦しい時期に金利が上がると、負担の増加が二重にのしかかります。だからこそ、二重ローンの期間中に金利が上がったと想定しても返済を続けられるかを、あらかじめ見ておく必要があります。旧居がいつ売れるか読みにくい場合は、その期間が長引く前提でも耐えられるかまで含めて考えておくと安心です。

前の家の残債・売却額で借入額と選び方が変わる

前の家に残る住宅ローンや売却額の見込みによって、新居の借入額が変わり、それが選ぶべき金利タイプにも影響します。

旧居を売ったお金で残りのローンを完済でき、さらに手元にお金が残るなら、その分を新居の頭金にまわせます。借入額を抑えられれば、金利が上がったときの影響も小さくなります。反対に、売却額が残債に届かない場合は、返しきれない分を新居のローンに上乗せする必要が出て、借入額が膨らみます。

借入額が大きくなるほど、金利が1つ上がったときに増える返済額も大きくなります。借入額が膨らむ見込みなら、金利上昇の影響をより慎重に見て、固定で総返済額を固めておく判断も現実味を増します。まずは前の家がいくらで売れそうか、残債がいくら残るかを見積もることが、新居の資金計画と金利タイプ選びの出発点になります。

まとめ:住み替えの生活設計から金利タイプを選ぶ

住宅ローンの金利タイプには、変動・全期間固定・固定金利選択型があり、それぞれ当初負担と将来の見通しやすさのバランスが異なります。変動には返済額の急増を抑える仕組みがありますが、金利上昇の負担そのものが消えるわけではなく、商品によっては仕組みが無いこともあります。

どのタイプが合うかは、返済期間の長さ、家計と自己資金の余裕、返済額が増えたときの耐性という自分の条件から判断していきます。住み替えでは、退職までの返済年数、二重ローンの期間、前の家の残債といった固有の事情も加わり、生活設計に照らした検討が欠かせません。

金利の水準や各商品の条件は時期によって変わります。最終的に決める際は、その時点の情報を各金融機関で確認し、資金計画に迷いがあればファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談したうえで、自分の住み替えに合った金利タイプを選んでください。