住み替えの税金の全体像|売る・買う・持つで自分に関係する税がわかる

住み替えは「売る」と「買う」が同時に進むぶん、関わる税金が多くて複雑に見えます。

何が自分にかかるのか分からず、不安なまま動き出せない方も少なくありません。

この記事を読めば、税の全体像の中で自分に関係する税が分かり、次に深掘りすべき税を一つに絞れます。

住み替えの税金の全体像|売る・買う・持つの3場面

住み替えの税金は、「今の家を売る」「新しい家を買う」「その家を持ち続ける」の3つの場面に分かれてかかります。

売却と購入がほぼ同時に進むぶん、関わる税金も売る・買う・持つの3つに分かれます。ここでは計算や要件には立ち入らず、全体像から自分に関係する税金を見つけ、次に深掘りすべき1記事を絞り込みます。

税金がかかる3つの場面

住み替えでかかる税金は、売る・買う・持つのどの場面かによって種類が変わります。

場面かかる主な税金
売る印紙税(売買契約書)/登録免許税(抵当権の抹消)/譲渡所得税(売却益が出たとき)
買う印紙税(契約書)/登録免許税(名義変更・抵当権の設定)/不動産取得税
持つ固定資産税・都市計画税(毎年)

場面ごとに種類が変わるのは、住み替えでは今の家の売却と新居の購入が同時に進むからです。売る側の税金と買う側の税金が、ほぼ同じ時期に重なって発生します。

売る場面では契約書の印紙税と、住宅ローンを完済して抵当権を外す登録免許税がかかります。売却で利益が出た人には、ここに譲渡所得税が加わります。

買う場面では印紙税や名義変更の登録免許税のほか、不動産取得税が一度だけかかります。新居を持ち続けるあいだは、毎年の固定資産税と都市計画税が続きます。

必ずかかる税金と売却益が出た人だけの税金

住み替えの税金は、だれにでもかかるものと、売却益が出た人だけにかかるものに分かれます。

印紙税・登録免許税・不動産取得税・固定資産税は、金額の大小はあっても基本的にだれにでもかかります。住み替えをすれば避けにくい、固定の出費に近いものです。

この4つも中身は一様ではありません。契約書の印紙税や抵当権抹消の登録免許税は少額で済むことが多く、不動産取得税と固定資産税は物件の評価額をもとに決まります。

一方で譲渡所得税は、今の家を売って利益が出た人にだけかかります。利益が出なければ原則として課税はありません。

この違いがわかると、住み替えの税金の不安は譲渡所得税ひとつに絞り込めます。残りの税金は仕組みが決まっていて、おおよその見通しを立てやすいからです。

そこで次に確かめたいのが、自分に売却益が出るのかという一点です。これが決まれば、読むべき税金の話も自然に絞られます。

出典:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁

自分に関係する税金の見つけ方

どの税金が自分に関係するかは、まず売却益が出るかどうかを確かめると絞り込めます。

ここまでの全体像を持っておけば、あとは自分に関係する部分だけを読めば十分です。最初に売却益の有無で道が大きく分かれ、そのうえで売る・買う・持つの各税に進みます。

全体でいくらかかるかをまとめて知りたいときは、費用全体の試算から入る方法もあります。税金は住み替え費用の一部なので、総額の中で見ておくと負担感をつかみやすくなります。

売却益が出る人・出ない人で住み替えの税金は変わる

住み替えの税金で大きく差がつくのは、今の家の売却で利益(売却益)が出たかどうかです。

売却益が出なければ重い譲渡所得税はかからず、出ても特別控除で0円になる人が多くいます。まず自分に売却益が出るのかを見極めると、このあと読むべき先が決まります。

売却益が出るか出ないかの見分け方

売却益が出るかどうかは、売れた金額から、買ったときの費用と売るための費用を引いて判断します。

売却益 = 売れた金額 −(取得費 + 譲渡費用)

判定関係する主な税金
プラス(売却益あり)譲渡所得税と特例の確認が必要
ゼロ以下(売却益なし)購入・保有の税金が中心

売れた金額から差し引く「取得費」は、その家を買ったときの代金や仲介手数料などの合計です。差し引く「譲渡費用」は、今回の売却でかかった仲介手数料などを指します。

この引き算がプラスなら売却益が出た人、ゼロ以下なら出ない人です。買った値段より高く売れたかどうかが、おおまかな目安になります。

注意したいのは、取得費が分からないと売却益が実際より大きく出てしまう点です。古い家ほど購入時の書類が見つかりにくいため、売却益の判定では取得費の確認が欠かせません。

出典:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁

売却益が出ない人に関係する税金

売却益が出ない人は、譲渡所得税や売却の特例を気にする必要がほとんどありません。

関わるのは新居を買うときと、その後持ち続けるあいだの税金が中心です。具体的には、購入時の印紙税・登録免許税・不動産取得税と、毎年の固定資産税です。

売却で利益が出ていなければ、譲渡所得税の確定申告も原則として不要です。ただし売却で損失が出た場合は、税金が戻る特例を使えることがあり、その点だけ確認しておくと安心です。

売却益が出る人が確認する税金と特例

売却益が出る人は、譲渡所得税の大きさと、それを軽くする特例を順番に確認します。

最初に見るのは、譲渡所得税が所有期間によって変わる点です。同じ売却益でも、家を持っていた年数で税率が変わります。

次に確認したいのが、税負担を大きく下げる特別控除です。自宅の売却なら、売却益から最高3,000万円を差し引ける控除があり、これで課税がゼロになる人も少なくありません。

さらに住み替えでは、売る側の特例と新居の住宅ローン控除が同時に関わります。両方を同時には使えないこともあるため、どちらを選ぶかを次に確かめます。

出典:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁

売るときの住み替え税金|譲渡所得税と3000万円控除

売るときにかかる税金のうち、構えておきたいのは売却益が出た人の譲渡所得税だけです。

印紙税と抵当権抹消の登録免許税は少額で済み、重さがあるのは譲渡所得税です。ただし自宅の売却なら特別控除で0円になる人が多く、まず自分が課税されるのかを順に確かめます。

売却でかかる3つの税金

家を売るときは、印紙税・登録免許税・譲渡所得税の3つが関わります。

印紙税は、売買契約書に課される税金です。契約金額に応じて決まり、多くのケースで数千円から数万円ほどに収まります。

登録免許税は、住宅ローンを完済して抵当権を外す登記でかかります。土地と建物それぞれ1件あたり1,000円程度で、負担はごくわずかです。

残る譲渡所得税が、売却で利益が出た人だけにかかる税金です。3つのうち金額が大きく動くのは譲渡所得税で、ここからの確認の中心になります。

譲渡所得税は所有期間で税率が変わる

譲渡所得税の税率は、その家を持っていた期間が5年を超えるかどうかで大きく変わります。

売った年の1月1日時点で所有期間が5年以下なら短期、5年を超えれば長期に分かれます。短期はおよそ39%、長期はおよそ20%で、長期のほうがほぼ半分の税率です。

さらに自宅を10年を超えて持っていた場合は、長期よりも低い軽減税率を使える特例があります。具体的な税率や判定の基準は、所有期間と税率の解説で確認できます。

出典:土地や建物を売ったとき|国税庁

3000万円特別控除で税金が0円になる場合

自宅の売却なら、売却益から最高3,000万円を差し引ける特別控除があり、これで税金が0円になる人も多くいます。

数値例例1(売却益が小さい)例2(売却益が大きい)
売却益2,000万円4,000万円
特別控除−3,000万円−3,000万円
課税の対象0円1,000万円

この特別控除は、マイホームを売ったときに使えるもので、所有期間の長さに関係なく適用できます。売却益が3,000万円以内に収まれば、譲渡所得税はかかりません。

一般的な住み替えでは、売却益が3,000万円を超えるケースはそれほど多くありません。そのため、譲渡所得税の不安があっても、実際には課税ゼロで済む人がかなりいます。

ただし、だれでも自動で使えるわけではありません。住むために所有していた自宅であることや、家族など特別な関係者への売却ではないことなど、いくつかの条件があります。

自分が使えそうかの目安は、売る家が今のマイホームか、過去に住んでいた家なら引っ越しから3年以内か、という点です。細かな要件と必要書類は、3,000万円特別控除の解説で確認できます。

出典:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁

確定申告が必要になるのはどんな人か

確定申告が必要になるのは、売却益が出た人、特例を使う人、売却損を繰り越す人です。

売却益が出て譲渡所得税がかかる人は、翌年の確定申告で納税します。給与から天引きされる税金とは別に、自分で申告する必要があります。

見落としやすいのが、特別控除を使って税金が0円になる人です。控除で納税額がゼロでも、その控除を受けるには確定申告が欠かせません。

売却で損失が出た人も、税金を取り戻せる特例を使うなら申告します。申告の時期や必要書類、e-Taxでの手続きは、確定申告の解説でまとめています。

買うとき・持つときの住み替え税金

買うとき・持つときの税金は、譲渡所得税ほど重くはなく、軽減措置で抑えられます。

購入時の登録免許税や不動産取得税は住宅用の軽減で下がり、保有中は固定資産税が毎年かかります。ただし軽減の申請漏れと、遅れて届く不動産取得税の通知には注意が必要です。

新居の購入でかかる税金と使える軽減措置

新居の購入では登録免許税・不動産取得税・印紙税がかかり、住宅用なら軽減で負担を抑えられます。

登録免許税は、新居の名義変更(所有権移転)と、住宅ローンの抵当権設定でかかります。マイホーム用の住宅には軽減税率があり、本来より低い税率で済みます。

不動産取得税は、不動産を取得したときに一度だけ課される地方税です。住宅とその土地には軽減があり、要件を満たせば税額がゼロになることもあります。

印紙税は、売買契約書やローンの契約書にかかります。金額に応じた定額で、こちらも軽減措置の対象になる契約があります。

いずれの軽減も申請や要件確認が前提で、自動では適用されません。具体的な税率や軽減後の目安は、登記費用と印紙税の各解説で確認できます。

住み替え後も毎年かかる固定資産税・都市計画税

固定資産税と都市計画税は、新居を持ち続けるあいだ毎年かかる税金です。

どちらもその年の1月1日時点で物件を所有している人にかかり、固定資産税評価額をもとに計算されます。住宅が建つ土地には軽減があり、税額が抑えられます。

住み替えの年は、売った家と買った家で負担が切り替わる時期です。引き渡しのタイミングによっては、その年ぶんを売主と買主で日割りして分け合う精算をすることもあります。

後から届く不動産取得税の通知に注意

不動産取得税は、購入から少し遅れて通知が届くため、納税ぶんを残しておくと安心です。

この税金は、物件を取得してから半年〜1年半ほどあとに、都道府県から納税通知書が届きます。購入時に支払う他の税金と違い、忘れたころに請求が来ます。

住み替えで資金を使い切っていると、あとからの通知に慌てかねません。軽減で税額が下がるとしても、念のため納税ぶんを取り置いておくと安心です。

なお2026年度の税制改正では、課税が免除される基準(免税点)が引き上げられました。自分の物件が対象になるかは、最新の基準を総務省や自治体の情報で確かめてください。

住み替えで併用不可|売却特例と住宅ローン控除の選び方

住み替えでは、売却側の特例と新居の住宅ローン控除を同時には使えず、どれか一つを選びます。

ここからは売却益が出る人に向けた内容です。3,000万円控除・買換え特例・住宅ローン控除は重ねて使えないため、売却益の大きさや売買の順序を踏まえて、有利な一つを選びます。

売却の特例と住宅ローン控除を併用できない理由

売却益を消す特例と新居の住宅ローン控除は、同じ時期には併用できません。

組み合わせ併用
3,000万円控除 × 住宅ローン控除×
買換え特例 × 住宅ローン控除×
3,000万円控除 × 買換え特例×

住宅ローン控除は、入居した年とその前後の数年間に売却側の特例を使っていると、適用できなくなります。売って利益を非課税にした人は、買う側の控除を受けられません。

これは、売却益を抑える優遇と購入を後押しする優遇を、二重には認めない仕組みだからです。住み替えでは、売る側と買う側のどちらで得をするかを早めに見比べておく必要があります。

出典:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁

売却益が3000万円を超えるなら買換え特例も候補

売却益が3,000万円を超えそうなら、課税を先送りする買換え特例も選択肢に入ります。

3,000万円特別控除は、売却益が3,000万円までならその場で課税をゼロにできます。超える部分には税金がかかるため、利益が大きいほど控除だけでは収まりません。

そこで候補になるのが買換え特例です。新居に買い換える場合に、売却益への課税を今ではなく将来の売却時まで先送りできます。

ただし買換え特例は、税金が消えるわけではなくあくまで先送りです。今ゼロにするか先送りにするかは利益の大きさで変わるため、試算して見比べると判断しやすくなります。

出典:No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁

住宅ローン控除と売却特例どちらが得か

売却特例と住宅ローン控除のどちらが得かは、売却益の大きさと、新居でのローンの組み方で分かれます。

売却益が大きい人は、その益を非課税にできる売却側の特例で得をしやすい傾向です。課税される額が大きいほど、控除で消せる効果も大きくなります。

反対に売却益が小さい、または出ない人は、新居の住宅ローン控除を選ぶほうが有利になりやすいです。売る側で消せる利益が少なければ、買う側の控除で取り戻すほうが手元に残ります。

住宅ローン控除は2026年度の改正で5年延長され、令和12年末までの入居が対象です。借入額や控除の年数によって戻る総額が変わるため、売却益の見込みと並べて比べます。

どちらが得かは数字を並べないと決めにくいため、両方のケースを試算するのが近道です。具体的な比較は、住宅ローン控除と買換え特例の併用解説で確認できます。

出典:住宅:住宅ローン減税|国土交通省

売り先行・買い先行で変わる特例と控除のタイミング

先に売るか先に買うかで、特例の期限や住宅ローン控除の起点がずれることがあります。

売却側の特例には、住まなくなってから一定期間内に売る、といった期限があります。買うのを待ちすぎると、この期限を過ぎて使えなくなるおそれがあります。

一方で住宅ローン控除は、新居に入居した年が起点です。買い先行で先に入居すると、売却特例との併用できない期間と重なり、選択を迫られる場面が早く来ます。

売り先行と買い先行のどちらにするかは、資金繰りだけでなく税の使い勝手にも関わります。順序の決め方は、売り先行・買い先行とタイミングの解説で確認できます。

物件やケースで変わる住み替えの税金

関係する税金や使える特例は、物件の種類や住み替えの事情によっても変わります。

マンションと戸建てでは取得費の出し方が違い、相続した家や離婚にともなう住み替えには固有の注意点があります。自分のケースに当てはまる税金は、まず売却益の見込みを知ると見えてきます。

マンション・戸建ての住み替えで変わる税金

マンションと戸建てでは、売却益の計算に使う取得費の出し方が変わります。

建物は時間とともに価値が下がるため、取得費を求めるときに使った年数ぶんを差し引きます。構造によって目減りの度合いが違い、マンションと木造戸建てでは結果が変わります。

土地にはこの目減りがなく、買ったときの金額が取得費に残ります。建物と土地の割合は物件ごとに違うため、同じ売却額でも売却益は変わります。

相続した家を売る住み替えの税金

相続した家を売る住み替えでは、取得費が分かりにくく、相続税の一部を取得費に足せる特例があります。

親などから相続した家は、いついくらで買ったかの記録が残っていないことが多くあります。取得費が不明だと売却益が大きく出やすく、税負担も増えがちです。

そこで使えるのが、払った相続税の一部を取得費に加えられる特例です。取得費が増えれば売却益が圧縮され、譲渡所得税を抑えられます。

ただし、この特例には相続から売却までの期限があります。相続がからむ住み替えの税金は、相続向けの解説でまとめて確認できます。

離婚にともなう住み替えで注意する税金

離婚にともなう住み替えでは、財産分与で家を渡すときの税金と、名義の扱いに注意します。

財産分与で家を相手に渡す場合でも、渡す側に譲渡所得税がかかることがあります。分与した時点の評価額をもとに、売却と同じように利益を計算するためです。

共有名義のままにすると、あとで売るときの手続きが複雑になりがちです。離婚の住み替えに特有の進め方は、離婚向けの解説で確認できます。

売却益の見込みを知ると関係する税金が決まる

自分に関係する税金は、まず売却益の見込みを知ると、ほぼ決まります。

ここまで見てきたように、譲渡所得税も各種の特例も、売却益が出るかどうかが起点でした。売却益の見込みが分かれば、読むべき税金と特例を絞り込めます。

売却益の見込みは、今の家がいくらで売れそうかが分かると立てられます。複数の会社の査定を比べると、相場感をつかみやすくなります。

まとめ:住み替えの税金は「売却益が出るか」で決まる

住み替えの税金は、売る・買う・持つの3つの場面に分かれてかかります。重く見える譲渡所得税も、関係するのは売却益が出た人だけで、自宅の売却なら特別控除で負担が消える人も多くいます。

売却益が出る人は、売却特例と住宅ローン控除のどちらかを選ぶ場面が出てきます。物件の種類や、相続・離婚といった事情でも使える特例は変わります。

まず確かめたいのは、自分に売却益が出るかどうかです。今の家の売却見込みは、複数社の査定を比べると把握しやすくなります。査定とあわせて、気になる税は専門家への相談も検討してみてください。