査定だけお願いしても大丈夫?営業をかわす3ステップと上手な断り方

1章 結論──査定だけでもOK。3つのコツで営業ストレスはほぼゼロ

「まだ売る気はないけど、自宅の値段だけ知りたい」──そんなとき査定を頼むと、営業電話が何度も来るのでは? と身構えてしまいますよね。

ですが今は、依頼者が連絡手段と査定プロセスを選べる仕組みが整っているため、ちょっとしたポイントを押さえるだけで“しつこい営業”をほぼ消せます。大切なのは次の3コツです。

  • メール連絡のみ希望をフォームで指定し、電話番号は任意入力にする。
  • まずは机上査定で相場を取り、訪問査定は1社に絞る2段階方式にする。
  • 届いた査定価格は中央値±3%で見る。最高値に飛びつかない。

この3ステップなら、入力時間は合計5分ほど。営業電話ゼロ、費用ゼロで“わが家のいまの価値”を数字で把握できます。

次章ではまず、不安の正体を分解しながら「なぜ電話や強引トークが起こるのか」を仕組みで説明します。

2章 なぜ“しつこい営業”が怖いの?3つの不安を分解

2-1 電話ラッシュが起こる仕組み

査定サイトの草創期は「電話で即アポを取る営業力」が評価基準になっていました。

依頼フォームに電話番号を入れると、情報が加盟店へ一斉配信され、各社が先着順に電話を掛けることでチャンスを奪い合う――これが“電話ラッシュ”の正体です。

いまは大手ポータルがメール連絡のみ希望を選択肢に用意し、違反した会社にはペナルティを課す規約を整備。電話攻勢が怖いのは「旧仕様をそのまま使った場合」に限られると理解しておきましょう。

2-2 強引な契約トークが生まれる理由

不動産会社の営業目標は「媒介契約を取ること」です。そこで“根拠の薄い高額査定”を提示して期待を高め、専任契約に誘導する手法が一部で残存しています。

ただし専任契約にはクーリングオフ(8日以内解除)2週間に1度の販売報告義務が法律で付くため、実態としては強引トークが通用しにくくなっています。「この価格は周辺の成約事例と比べてどうですか?」と静かに聞くだけで、根拠が薄い査定は崩れます。

2-3 費用請求が不安になる背景

査定そのものは宅建業法で無料と規定されています。請求が発生するのは媒介契約後に売買が成立し、成功報酬として仲介手数料を支払う時だけ。

つまり、「査定だけ」で費用を請求される余地は制度上ほぼありません。それでも不安な場合は、依頼時に「今回は相場確認のみで、媒介契約を結ぶ予定はありません」とメールに明記しておけば、後日の請求トラブルを未然に防げます。

3章 営業されない!メール限定×2段階査定の実践ステップ

3-1 メール連絡のみ希望をフォームで指定

一括査定サイトを開くと連絡手段を選択するチェックボックスがあります。必ず「メールのみ希望」を選び、備考欄にも「電話はご遠慮ください」と重ねて記入しましょう。

これで電話番号欄は未入力でも送信が可能ですし、入力したとしても営業電話をかける業者はサイト規約違反となり、利用者側から通報できます。必要な返信はメールで届くため、通勤の合間やお子さんが寝た後にゆっくり確認できます。

3-2 机上査定で相場を取る → 訪問は1社に絞る

まず住所・専有面積・築年数だけを入力する机上査定を3〜6社へ依頼します。24時間以内にメールで査定額が届くので、金額を表に並べてください。

業者 机上査定額(万円)
A社 4,880
B社 5,020
C社 5,100
D社 4,950

最高値(5,100)と最低値(4,880)を除き、残りの中央値=4,985万円が実勢価格の中心値です。

中央値に近い1社を選んで「訪問査定をお願いします」と返信すれば、高額釣り査定や複数社訪問の手間をカットできます。

3-3 査定価格は中央値±3%で判断

訪問査定では、すでに把握した中央値をメモに貼り付けておき、価格が±3%以内に収まるかを確認します。

  • 中央値より3%以上高い → 理由が成約事例で説明できるか質問
  • 中央値より3%以上低い → 室内コンディションなど具体的根拠を確認

担当者がデータで裏付けを示せない場合は、その場でお礼を伝え、「検討して連絡します」とだけ返せばOK。

数字と根拠の両方に納得できたときだけ次のステップ(媒介契約など)へ進む仕組みにしておくと、営業主導の流れに巻き込まれずに済みます。

4章 角が立たない“ひと言断り文”と送信タイミング

査定結果を受け取ったあと、「今回は売らない」と決めたら早めにお断りを入れましょう。連絡を放置すると “フォローの電話” が再開する原因になります。ポイントは ①感謝 → ②目的達成の宣言 → ③見送り表明 の3行で完結させることです。

4-1 メールテンプレ:相場把握が目的でした

件名:査定結果のお礼(●●マンション)

●●不動産 ▲▲様

このたびは迅速な机上査定をお送りいただきありがとうございました。
相場感を把握するという目的は達成できましたので、
今回は売却を見送らせていただきます。
また動きがある際にはこちらからご連絡いたします。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
――――――――――
お名前
電話番号(任意)

テンプレの狙いは「こちらの目的は完了」と明言し、次の連絡主導権を自分に置くこと。担当者は営業トークを続けにくくなり、追加連絡の頻度が大幅に下がります。

4-2 訪問後にお礼+見送りメールを即日送る

訪問査定を受けた場合は、その日のうちに短いお礼メールを返すと礼儀も伝わり、営業フォローを終息させやすくなります。

追加で“検討期間”を明示すると、1〜2週間で連絡が途切れるケースがほとんどです。

件名:訪問査定のお礼(●●マンション)

●●不動産 ▲▲様

本日はお忙しいところ、丁寧な訪問査定を行っていただき
誠にありがとうございました。
家族と協議した結果、売却は当面見送ることにいたしました。
相場データは大変参考になり、感謝しております。

今後1年間は売却予定がございませんので、
追加のご提案はご遠慮いただけますと幸いです。
また機会がありましたら改めてご相談させてください。

取り急ぎお礼かたがたご連絡申し上げます。
――――――――――
お名前

ここで「1年間は売却予定なし」と期間を宣言すると、宅建業者は営業対象リストから外すため、実質的に電話・メールが止まります。

もしそれでも営業が続く場合は、前章で触れた通りクーリングオフやサイト運営への通報を検討すると良いでしょう。

5章 もし押し売りが来たら?クーリングオフと通報の手順

5-1 クーリングオフ――8日以内なら無条件で契約解除

宅建業法第37条の2により、媒介契約や売買契約は書面受領日を含めて8日以内なら理由を問わず解除できます。ここでのポイントは2つだけ。

  1. 期限の起算点は「書面を受け取った日」(郵送なら受取日、対面なら署名捺印日)。
  2. 解除は発信主義。8日目に郵便局窓口で出せばポスト到着が9日目でも有効。
<クーリングオフ通知 ひな形>

令和○年○月○日

株式会社●●不動産
取締役 ▲▲ 様

媒介契約書(令和○年○月○日付)について、
宅地建物取引業法第37条の2に基づき契約を解除いたします。
なお、貴社との契約に関し発生した費用の請求には応じかねます。

住所 東京都○○区
氏名 □□ (自署捺印)

書き方のコツは「契約年月日」「解除条文」「費用請求を拒否」の3点を必ず入れること。送付は簡易書留か内容証明にすれば発送記録が残り、後日の証明にも使えます。

5-2 違反営業を止める“2段階通報”

営業電話や訪問が続く場合は、次の順でエスカレーションすると高い効果があります。

段階 通報先 問い合わせ先・URL
① サイト運営事務局 HOME’S/すまいステップなど 各サイトの「不適切営業報告フォーム」
② 宅建業免許権者 都道府県知事 or 国土交通大臣 例:東京都「違反行為通報窓口」TEL 03-5320-5071
③ 消費生活センター 迷惑勧誘全般に対応 消費者ホットライン 188

サイト通報だけで提携停止になるケースが多く、ほとんどは①で終息します。もし改善がなければ、免許権者へ「業者名・勧誘日時・発言内容」を添えてメールまたはFAXで送付。行政指導が入ると営業はピタッと止まります。

5-3 “証拠残し”のテクニック

  • 電話:スマホの録音アプリをON(法律上、会話の録音は自分が当事者なら可)。
  • 訪問:名刺の裏に日時・勧誘内容をメモし、写真を撮ってクラウド保存。
  • メール:Gmailなら「3点リーダー → ダウンロード」で.eml保存し原文を保持。

証拠が揃っていれば、クーリングオフ通知や行政通報の説得力が高まり、解決までの時間が短縮されます。

6章 よくある質問(FAQ)

Q1 メール限定にしたのに電話が掛かってきたら?

まずは1回だけ「メールでのご連絡に統一してください」と伝えます。

それでも続く場合は、通話録音をONにして「連絡手段の合意が守られていません。次回はサイト事務局へ報告します」と冷静に告げましょう。

ほとんどの営業はここで終息します。電話を切ったら即サイトの不適切営業報告フォームへ通報を。ポータル側が事実確認後、業者に警告または提携停止措置を取るため、再接触はまずありません。

Q2 机上査定だけで訪問を断ると精度はどの程度?

レインズとAIモデルの普及で誤差±3〜5%が一般的です。

訪問査定は室内コンディションや眺望を加味するため、精度はさらに1〜2ポイント上がりますが、相場把握ローン担保評価の目安には机上査定で十分と言えます。

売却を本格検討する段階で、改めて1社に訪問を頼めばタイムロスはほぼありません。

Q3 査定書に個人情報はどこまで載る? 転用リスクは?

机上査定書は「マンション名・専有面積・想定価格帯」程度で、氏名や電話番号、部屋番号が記載されることは通常ありません。

訪問査定書でも、個人情報は宅建業法で第三者提供が禁じられているため、社内閲覧限定です。

心配な場合は査定依頼メールに「査定書には住所・部屋番号を省略してください」と追記しておくと、個人情報の拡散リスクをさらに抑えられます。

Q4 どのくらいの頻度で査定を取り直すべき?

推奨は年1回、固定資産税納付書が届く5〜6月頃に合わせて取ると管理しやすいです。

大規模修繕や金利大幅変動など“価値に影響するイベント”があった年は、追加でAI査定をかけると最新の価格推移を追えます。

このサイクルを続けると、売却チャンスや借換え好機を逃さずキャッチできます。

7章 おわりに──今夜20分、自宅で“相場だけ”取ってみよう

夕食後のちょっとしたすき間時間――キッチンの片づけが終わったら、スマホを手に AI 査定サイトを開いてみてください。

住所と専有面積を入力して 60 秒、メールに届く数字が「わが家の現在地」です。

もしその価格にワクワクしたら、続けて机上査定を3社だけメール依頼。ここまで合計 20 分。電話は一本も鳴りません。

 

取得した中央値を家計アプリに登録すれば、資産のアップデートは完了。

そして “売る・貸す・保有” どの選択肢にも、次の行動を論理的に選べる準備が整います。

まずは数字を取る――それだけで、未来の住みかたが少し自由になります。