結論──頭金は「最低0~1割でも可、安心ラインは10〜20%+生活予備費6か月」
まず押さえておきたいのは、頭金ゼロ(フルローン)でも住み替えは可能だという事実。
ただし安心して返済を続けるには物件価格の10〜20%+生活費6か月分を手元に残しておくと心強い。
1-1 3行でわかる頭金目安
頭金割合 | 審査の通りやすさ | 月々返済例 (5,000万円/35年/金利0.3%) |
---|---|---|
0% (フルローン) | △ 金利上乗せや貯蓄確認あり | 約12.5万円 |
10% | ○ 銀行推奨のライン | 約11.3万円 |
20% | ◎ 最優遇金利が狙える | 約10.0万円 |
30% | ◎ 返済負担率が大幅低下 | 約8.8万円 |
- 頭金ゼロでも審査自体は通るが、金利が0.1〜0.2%高くなる傾向。
- 頭金1〜2割を入れると、借入比率が下がり金利優遇を受けやすい。
- 旧居の売却益を頭金に充当すると実質負担を抑えられる。
1-2 フルローンOKでもおすすめしない理由
- 諸費用ローン(金利2〜3%台)まで組むと、毎月返済が1万円以上増えることも。
- 生活防衛資金が尽きると、急な修繕や転職時にカードローンへ頼るリスクが高まる。
- Loan To Value(LTV)=「借入額 ÷ 物件価格 × 100」。この割合が80%を切ると銀行は“安全圏”とみなして金利を優遇しやすい。
結論:頭金はゼロでも動けるが、LTV80%を目安に1〜2割を用意すると家計も審査もグッと楽になる。
住み替えの頭金が決まる3つの視点
頭金は「貯金がいくらあるか」だけで決めるものではありません。銀行が審査で重視する論点と、家計を守るための安全マージンを掛け合わせてこそ、無理なく続く返済計画が描けます。
ここでは ①売却益の扱い ②手元キャッシュ ③金利と返済負担率 という3つのレンズで順に解説します。
2-1 売却益をどう使うか
旧居を売ったときに手元に残るお金——「売却価格 − 住宅ローン残債」——は、住み替え頭金に充てられる最優先資金です。
たとえば 600 万円の売却益が出た場合、その全額を頭金に入れれば借入額が 600 万円減り、LTV(Loan To Value:借入額 ÷ 物件価格 × 100)も下がります。
LTV が 80%を切ると銀行はリスクが低いと判断し、変動金利で 0.05〜0.15% の追加優遇が出るケースが多いのです。
ただし売却と購入の決済がズレると、いったん ブリッジローン(年 3〜5%)で資金をつなぐ必要が生じます。
利息コストを最小に抑えるには「売却→購入」の売り先行スケジュールを基本に、どうしても買い先行になる場合はブリッジを3か月以内に完済できるよう日程を組むのが鉄則です。
2-2 手元キャッシュと生活防衛資金
頭金を考えるときに見落としがちなのが「残すお金」のラインです。総務省家計調査によれば、4人世帯の平均生活費は月 27 万円。
万一のケガや転職を想定すると、その半年分——ざっと 160 万円前後——は住宅ローンとは別にキープしておくと安心です。
防衛資金が底を突くと、車検や医療費でカードローンに頼り、せっかく 0.3% で借りた住居費を、一時金利 15% の負債が上回ってしまう“本末転倒”が起こりかねません。
したがって「貯金をすべて頭金へ」は危険。売却益と合わせても、生活費 6 か月分は死守し、そのうえで 1〜2 割を頭金に回すバランスが、家計と金利メリットの両立点になります。
2-3 金利と返済負担率(年収の○%以内)
銀行は最終的に返済能力を 返済負担率(Debt-to-Income:年間返済額 ÷ 年収)で判断します。
多くの金融機関が基準とするのは 25〜35%。頭金を増やすと借入額が減り、返済負担率が下がるため審査は通りやすく、同時に LTV が下がって金利も下がる——ここに「頭金を 1〜2 割は入れよう」と言われる根拠があります。
年収 | 頭金10% | 頭金20% | 返済負担率 |
---|---|---|---|
600万円 | 月11.3万円返済 | 月10.0万円返済 | 22.6% → 20.0% |
800万円 | 月11.3万円返済 | 月10.0万円返済 | 17.0% → 15.0% |
上の例のように、たとえ金利差が 0.1% でも 35 年総返済では160万円以上の開きが生まれ、返済負担率も2〜3%改善します。
その数字が奨学金や学資保険、さらには投資のタネ銭として再び家計に戻ってくる——それが頭金を戦略的に決める価値と言えるでしょう。
頭金割合別メリット・デメリット
頭金の額を決めるとき、多くの人が「貯金いくら出せるか」で迷います。しかし銀行が見るのは〈頭金=自己資金〉そのものではなく、頭金によって変わる〈借入比率=LTV〉と〈返済負担率=DTI〉です。
この章では代表的な4つの割合――0%・10%・20%・30%超――を取り上げ、それぞれのリアルなメリットと落とし穴を掘り下げます。
3-1 頭金0%〈LTV100%〉――“フルローン”の自由と重さ
頭金ゼロでも審査に通る住宅ローンは多数あります。とくにネット銀行は物件価格100%まで融資可能な商品をそろえ、「貯蓄は教育費や投資に回したい」という層を取り込んでいます。
ただしフルローンはLTVが100%のため、銀行側はリスクを上乗せし、適用金利を0.1~0.2%ほど高めに設定するのが一般的です。
月々の返済は大きく変わらなくても、35年総返済では150万円前後の差が生まれることも。さらに諸費用ローン(金利2~3%台)まで借りると、毎月返済が+1万円程度増え、DTIが審査基準ギリギリになる点に注意が必要です。
3-2 頭金10%〈LTV90%〉――銀行が推奨する“最低ライン”
物件価格の1割を頭金に入れると、LTVは90%に下がり、金利はフルローンより0.1%程度有利になります。
例えば5,000万円の住み替えで頭金500万円を入れると、借入は4,500万円。変動0.30%なら月々返済は約11.3万円で、年収600万円世帯のDTIは22.6%――銀行が“健全”とみなすゾーンです。
ここで重要なのは「頭金を入れても生活防衛資金が残るか」という視点。教育費・医療費など予定外の支出に備えて、最低でも生活費6か月分を確保できるかを必ずセットで確認しましょう。
3-3 頭金20%〈LTV80%〉――“最優遇金利”が顔を出すボーダー
LTVが80%を切ると、銀行の商品パンフレットに小さく書かれた「さらに▲0.05%」の追加優遇が実際に適用される確率が高くなります。
5,000万円の物件に1,000万円(2割)の頭金を入れると、借入は4,000万円、月々返済は約10.0万円。変動金利が0.25%台になる例もあり、総返済額はフルローンより160万円以上圧縮できます。
加えてDTIが20%前後に下がるため、将来の教育ローンや自動車ローンを組む余地も確保しやすく、家計全体の“呼吸”が楽になるのが大きなメリットです。
3-4 頭金30%以上〈LTV70%以下〉――返済の軽さと資産運用のせめぎ合い
3割を超える頭金は、月々返済8万円台という心理的な安心感をもたらします。
一方で「頭金に現金を入れ過ぎて、投資や教育資金を取り崩す」という機会損失も見逃せません。
変動0.3%の住宅ローンで節約できる利息は年率に直すと0.3%前後。それより高いリターンを期待できる運用プランがあるなら、頭金を2割に抑えて余剰資金を長期投資に回す選択肢も合理的です。
つまり30%超の頭金は「住宅ローンの金利 vs 手元資金の運用利回り」を見比べたうえで、家計の成長戦略として判断する領域と言えます。
LTVとは?(Loan To Value)──銀行が“80%ライン”を気にする本当の理由
住宅ローンの審査書類をじっと見ると、どの金融機関にも必ず登場する指標がLTV(Loan To Value)です。
これは「物件価格に対してどれだけ借りるか」を示す借入比率で、銀行にとっては“もし返せなくなったとき、担保で回収できるか”を測る体温計のようなもの。
住み替えローンで頭金を検討するとき、LTVの動きを理解しておくと金利と審査の両面で大きな差がつきます。
4-1 LTVの計算式と3つの基準値
計算はシンプルです。
LTV = 住宅ローン借入額 ÷ 物件価格 × 100
LTV | 銀行の見え方 | 適用されやすい金利 |
---|---|---|
100% | 担保余力ゼロ。価格下落に弱い | 基準金利より+0.10〜0.20% |
90% | 最低限の自己資金あり | 店頭▲△%〜ネット最優遇 |
80%以下 | 安全圏。自己資金が厚い | さらに▲0.05〜0.15%の上乗せ優遇 |
100%がいわゆるフルローン、90%が頭金1割、80%以下になると銀行は「もし不況で物件価格が下落しても貸し倒れリスクが小さい」と判断し、追加優遇を提示しやすくなります。
4-2 “80%”で金利が下がる仕組み
国内銀行は国際ルール(バーゼルⅢ)で、金融資産ごとに定められたリスクウェイトを自己資本と照合して管理しています。
住宅ローンは元来リスクが低い商品ですが、LTVが高いほどリスクウェイトは加点され、自己資本を多めに積む必要が生じます。
つまり LTV80%を切る案件は、銀行にとって自己資本を節約できる“優良顧客”。コストが下がる分、金利を削っても利益が確保できるため、優遇幅が大きくなるのです。
もうひとつの理由は中古流通価格。過去の統計では築10年のマンション平均下落率が10〜15%前後。
仮に担保評価が15%下がっても、LTV80%なら金融機関は担保回収でほぼ元本を確保できます。安全マージンがここにあります。
4-3 住み替えでLTVを下げる3つの実践策
① 売却益を頭金に全投
旧居の売却益は課税前に買換え特例を使えば譲渡所得税を先送りできます。実質的に“非課税の自己資金”としてLTVを押し下げる効果が大きい。
② リフォーム費用を住宅ローンに一体化
リフォーム分を別ローン(2〜3%台)にすると借入総額は同じでも LTV は変わらず、金利差で逆ざやになることも。
最近は「リフォーム一体型」で0.3%前後の本体金利にまとめられる商品が増え、総合的な LTV が見た目より低く評価されるケースがあります。
③ 貯蓄と投資の“境界線”を見直す
株式や投資信託を保有している場合は「毎月いくらまで取り崩すと家計が揺らぐか」を再計算し、運用益の一部を頭金へシフト。
実質利回りが住宅ローン金利を下回る局面(たとえば低金利維持+相場調整期)では、LTV圧縮のほうがリスク対効果で勝ることがあります。
LTVを意識した頭金設計は、単に“いくら払えるか”の議論を超えて、金利・税制・家計防衛までを横断的に最適化する作業です。
次章では、あなたの手元資金や売却益のボリューム別に「現実的に選べる」頭金シナリオを具体的にシミュレーションしていきます。
資金プラン別シナリオで見る“現実解”
同じ「頭金1〜2割が安全」と言われても、貯蓄額も売却益も人それぞれ。ここでは典型的な3パターン――
A)貯蓄200万円しかない、B)売却益600万円が確定、C)共働き年収1,000万円超――を例に、頭金と返済計画の落としどころを立体的に描きます。
物件価格は5,000万円、住宅ローンは変動0.3%・35年で試算しました。
5-1 シナリオA:貯蓄200万円しかない場合
貯蓄200万円では、生活防衛資金6か月分(約160万円)を確保すると自由に動かせる頭金は40万円程度。
フルローンを選ぶしかないように見えますが、ポイントは「諸費用ローンを組まない」こと。諸費用(登記・保険・仲介手数料など)は物件価格の6〜7%、約300万円かかります。
ここをローンにすると金利は2〜3%台へ跳ね上がり、毎月返済+1万円が固定されるうえ、LTVも100%超になり審査が厳しくなります。
最適解はフルローン+諸費用は現金払い。月々返済は約12.5万円、DTIは年収600万円なら25%。
売却益がほぼ出ない前提なので、繰上げ返済用の積立を月1万円スタートし、5年で60万円貯めたら“まとめ返済”する――この遅効性プランが「貯蓄は薄いがキャッシュフローは回る」家庭には現実的です。
5-2 シナリオB:売却益600万円を頭金にする場合
旧居を売却して600万円のキャッシュが確定しているなら、話は俄然ラクになります。
まず500万円を頭金、100万円を諸費用に充当すると、借入は4,400万円(LTV88%)。変動0.3%なら月々返済は約11.1万円、DTIは600万円世帯で22%台。
LTV90%を切ることで金利はフルローンより▲0.1%優遇される可能性が高く、35年総返済で約140万円を節約できます。
残る課題は決済タイミング。売却益が受け取れる前に購入決済が来る場合は、ブリッジローンを3か月以内で完済できるよう日程調整を最優先に。
年3.5%×3か月=利息約5万円で済み、金利差益140万円と比べれば十分“黒字”の計算です。
5-3 シナリオC:共働き年収1,000万円超で資産運用もしたい場合
共働きで手取りキャッシュフローに余裕がある家庭は、頭金を多めにして月々返済を圧縮するのか、それとも運用資金を残して“借りたまま増やす”のか――
ここが最大の悩みどころです。鍵を握るのは投資利回りと住宅ローン金利の比較。
頭金割合 | 借入額 | 月々返済 | 35年総返済 | 投資に回せる元本 |
---|---|---|---|---|
20%(1,000万円) | 4,000万円 | 約10.0万円 | 約4,197万円 | 0円 |
10%(500万円) | 4,500万円 | 約11.3万円 | 約4,720万円 | 500万円 |
頭金を1割減らすと総返済は約+523万円増えますが、浮いた500万円を年3%で複利運用すると35年後のリターンは約1,400万円。差し引き900万円強のプラスです。
もちろん運用リスクをどう見るかで結論は変わりますが、少なくとも「頭金は出せるだけ出せば得」という単線思考ではなく、住宅ローン金利(0.3%)と長期投資リターン(3〜5%)の相対比較で資本配分を設計する――これが最適解となります。
このように、同じ物件価格でもキャッシュポジション・売却益の有無・運用利回りが違えば答えは異なります。
次章では、ここで導いた頭金戦略を実行に移すための5ステップ具体行動を示します。
住み替えの頭金を準備する5ステップ
頭金の「理想形」は見えてきた。あとは実際にお金を動かし、銀行に提示できる状態にするだけです。
カギとなるのは順序と可視化。貯蓄の取り崩しや売却益のタイミングを誤ると、せっかくの資金計画がブレてしまいます。ここでは迷わず進めるための5ステップを時系列で示します。
6-1 物件価格×10%を“概算頭金”として電卓に打ち込む
最初の作業はシンプルです。希望物件のおおよその価格に 0.10 を掛け、その数字を紙とスマホ両方にメモします。
頭の中ではなく視覚に落とすことで、「これだけは確保する」という心理的アンカーができます。たとえば 5,000 万円 × 0.10 = 500 万円。この 500 万円は動かす優先度が最も高い「頭金一次目標」になります。
6-2 生活費6か月分を別口座に移して“動かせないお金”を固定
家計用メイン口座とは別に、ネット銀行で目的別口座をひとつ開設。そこへ生活費の半年分(共働きなら4か月分でも可)を先に移し、口座名を「生活防衛資金」と変更します。
こうして物理的にブロックしておけば、頭金に回しすぎて緊急資金まで削るミスを防げます。以後、住宅購入関連ではこの口座の残高を動かさないのが鉄則です。
6-3 売却査定3社で“頭金ブースター”の上限を見積もる
旧居を売る場合は、ここで一括査定サービスを利用し、机上査定ではなく訪問査定で3社以上の価格を取得します。
ポイントは「いつ売れるか」と「いくらで売れるか」をセットでヒアリングすること。
売却益の額と着金時期が分かれば、頭金ブースターの金額とタイミングを具体的に計算でき、ステップ4以降のローン審査日程がブレません。
6-4 住宅ローン仮審査で金利差とLTV優遇を“数字化”する
売却益のシナリオが見えたら、ネット銀行と都市銀行を最低2行選び、同時に仮審査を申し込みます。
借入額を頭金1割・2割・ゼロの3パターンで入力し、金利と毎月返済を一覧で取得。ここで LTV が 80% を切ったときに金利がどれだけ下がるか、具体的な数字で把握できます。
複数パターンを比較すれば、頭金を1万円増やしたときの金利カーブが可視化され、「あといくら積めば一段階優遇が取れるか」が秒で分かります。
6-5 “頭金用”サブ口座を作り、資金をプールして動線を1本化
最後に、頭金と諸費用をまとめて入れる専用サブ口座を立ち上げます。売却益が振り込まれたら即座にこの口座へ移し、同時に貯蓄からの取り崩し分も投入。
以降は売主への手付金や諸費用の支払いもすべてこの口座から行う──支出の動線を1本化すると、入出金履歴がそのまま家計簿になり、銀行との面談でも「ここにまとめています」と一目で説明できます。
余った資金は引渡し後、繰上げ返済やリフォーム費用に充てられるためムダがありません。
以上5ステップを実行すれば、頭金は「いくら必要か」から「いつどこにあるのか」へと輪郭が変わります。
数字とタイミングが見える化されれば、住み替えの資金不安は8割がた解消できるはずです。次章ではこれらのステップを回収しながら、読者のよくある疑問をFAQ形式で整理します。
住み替えの頭金に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 頭金ゼロだと金利はいくら上がるの?
頭金ゼロ=LTV100%のフルローンは、商品スペック上は「最優遇金利」と同じ数値が掲げられていても、実際の適用段階で+0.10〜0.20%の上乗せが入るケースが大半です。
たとえば変動0.30%のネット銀行なら、フルローン審査後に0.40〜0.45%が提示されるイメージ。月々返済は5,000万円借入でおよそ+5,000〜6,000円ですが、35年総返済では150万円超の差になります。
銀行がリスクプレミアムを乗せる根拠は「価格下落や延滞時に担保だけで回収できる保証がない」ため。頭金1割でLTV90%に落ちると、この上乗せはほぼ消えます。
Q2. 諸費用もローンに含めていい?
諸費用ローン(登記・保険・仲介手数料などを物件価格とは別枠で借りる仕組み)は年2〜3%台が一般的で、本体ローンより金利が高く返済期間も最長15〜20年と短めです。
月々返済はさほど増えなくても、総返済コストは本体ローンの約2倍のスピードで減価償却される計算になるため、金利負担が重くのしかかります。
もし現金一括が難しい場合でも、①引越し費用の平準化(オフシーズン予約)、②火災保険を5年一括→年払いへ変更などで現金支出を分散し、諸費用ローンは最後の手段に回すのが家計防衛の鉄則です。
Q3. 頭金を多くするより繰上げ返済を優先した方が得?
頭金を入れて金利を下げるメリットと、運用や繰上げ返済で後から元本を減らすメリットは、「金利差 × 時間」で比較すると判断しやすくなります。
– 変動0.30%のローンを
・頭金+100万円で金利が▲0.05%
→ 年利ベースの節約額は約5,000円。
・投資や事業で年3%以上の利回りが期待できる
→ 手元資金で運用 → 5年後に一括繰上げ返済の方がリターンは大きい。
一方、確定拠出年金やつみたてNISAをフル活用しても余剰資金が低金利の普通預金に眠るようなら、初期の頭金を厚くしてLTV80%未満にし、確実に金利を抑える方が合理的です。
結論:
- 運用利回りが住宅ローン金利+0.5%以上で“安定的に”回る自信があれば、頭金を抑えて繰上げ返済を後倒し
- リスク許容度が低い、あるいは教育費などで大きな支出予定が読めない場合は、頭金で先に返済負担を軽くする
いずれにしても「防衛資金6か月分」を削ってまで頭金や投資に振り向けるのは禁物。安全マージンを確保したうえでどちらが家計の将来像にフィットするかを指標に選びましょう。
おわりに──まずは「頭金=物件価格×0.1」をメモしよう
住み替えは家族の未来をかたちにする一方で、大きな資金が動くライフイベントです。この記事でおさえて欲しいポイントは、わずか3つしかありません。
- 頭金の安心ラインは物件価格の10〜20%
- LTV80%以下を意識して金利優遇を引き出す
- 生活費6か月分は決して崩さない
ここまで読んだら、スマホの電卓で「物件価格 × 0.10」を叩き、その数字を手帳やメモアプリに書き留めてください。たったこれだけの行動が、資金計画を「漠然とした不安」から「具体的な数字」へ変える第一歩です。